社団法人ロックンロール協会発足か!?
──今や欧米諸国でもアナログレコードやカセットテープの人気が再燃しているなんて話を聞くと、果たして文明が進化しているのか逆行しているのか訳が分からなくなりますよね。
M : 俺からすると、「えっ!? 今なんで言うの? 昔っからそうやん!」って言いたいよね。なんやろね、次に来るもんがないって時にそんな話になる気がする。今ならデジタル配信の次に来る新しいメニューがないから一歩下がるみたいな。ただ、アナログ・ブームの捉え方は日本と海外ではだいぶ違う。日本では昔懐かしの…ってニュアンスだけど、若い人たちからすれば新鮮なメディアなんやから、わざわざレトロな取り上げ方をしなけりゃいいのになって思うね。アメリカは今、中古レコード屋をニューヨーク辺りに作る動きが活発で、それを新しいビジネスとして捉えてる。別にレトロなことをやろうなんて思ってない。そういう感覚が日本にもあればいいのになと思うね。あと、大手のレコード屋さんはもっと自分らから仕掛けなきゃあかんね。世の中がレコード・ブームになってから動き出すんじゃなく、大手なんやから「今こんなにアナログが流行ってますよ!」って嘘でもいいから言い回ればいいのにね(笑)。そういう誇大なやり方ってある程度必要やと思う。
──ニートビーツはアナログ・レコードやCDといったメディア形態をどう捉えているんですか。やはりレコードを出し続けるのが理想?
M : もちろんアナログが一番だけど、レコードとテープの2種類が市民権を得ればいいなと思うね。
──CDはもう要らないと?
M : まぁ、今回もこうしてCDを出してるからアレやけど(笑)。メーカーも宣言すればいいのにね。「業界全体の総意としてCDは今後一切作りません。レコードとテープだけにします」って。全員でやれば怖くないやん(笑)。今やアナログ・レコードのプレスは東洋化成一社だけになったけど、昔はもっといろんな会社がプレスしてたはずでしょ? そういう保存力がないこと、昔の良かったものを常に最高潮の状態で残す力がないことが古き良きロックンロールが日本に根づかない理由のひとつやと思う。どのジャンルにも保存力は必要やないかな。たとえば新幹線にしても、0系が一番かっこいいのになんで顔のかっこ悪い700系ばかり走らせんの? って俺は思うしね。ええやん、人を乗せない0系を1台くらい現役で走らせても、って(笑)。
──それも保存力のなさにつながるわけですね。
M : そうそう。博物館に展示するんじゃなくて常に走らせるのが大事。楽器でもそうじゃない? 古いのを置いといてもしょうがないし、使ってるからこそみんながかっこいいと思うわけであって。車もそうやしね。日本では古い車に乗れば乗るほど税金が高くなるけど、海外には長いこと乗ったら車の税金が安くなる国もある。ドイツでは製造から30年以上経った車に乗ってると価値が認められて特殊なナンバーが与えられて、税金や保険が優遇されるわけ。日本にはそういう感覚がないよね。
──ものを大切に扱う感覚、先人を敬う姿勢が。
M : 音楽業界なんて特にそうで、売れてる・売れてないのモノサシで評価するのは簡単なんやけど、長いこと続けてる・続けてないのモノサシはないのよ。だから音楽の世界でも落語協会みたいな団体を作ったほうがいい。
──ロックンロール界における社団法人を(笑)。その音頭を取るなら真鍋さんしかいないでしょうね。
M : 絶対に逆らえない師匠格が最高顧問でいるみたいなね。柴山(俊之)さんや鮎川(誠)さんは理事として当然いてさ(笑)。そういうロックンロールの協会が今後絶対必要だと思う。あとライセンスね。ロックンロール認定制度を作る。「君がやってる音楽はこれからロックンロールと呼んじゃダメだよ」って協会が認めない(笑)。
バンド名はなるべく“ザ”と“ズ”を入れましょう
──誰もが手軽にCDを出せないようにして、音源を出すのはレコードとテープに制限するとか(笑)。
M : それも要るね、ロックンロール裁判所みたいなのが(笑)。「君はなんでアナログを出そうとするんだね? 配信で充分やろ!?」みたいなね(笑)。そういうの要るなぁって気がすんねん。誰でも何でもできるのが自由やとみんな思ってるけどそうやなくて、ある程度のフォーマットや規則があって、その網をどうかいくぐるかが本当の意味での自由やと思うから。
──リーゼントも認可制にしたりして(笑)。
M : リーゼント・ライセンスね。ヤンキー文化とかもあって、クールなものとして捉えられることが少ないから必要かもね。でもその人の容姿もあるから、協会としては「ウチの一派ではない」みたいな判断を下す(笑)。そうやって適正な判断を下す有識者の存在、一定のルールは必要だと思う。「全国5ヶ所のライブだけではツアーと呼んではいけません。ツアーを名乗れるのは30本以上からです」とか(笑)。あとバンド名ね。「それバンド名なん!? ダメでしょ!」ってバンド名が最近多いから、全バンド“ザ・○○ズ”にする。「バンド名はなるべく“ザ”と“ズ”を入れましょう」みたいな(笑)。それと、☆とか付けちゃうヤツらね。なんて読むのか分からないから「☆は推奨しません」とか(笑)。
──☆を付けていいのはつのだ☆ひろさんだけってことで(笑)。
M : だから☆は永久欠番ね。もしくは、つのだ☆ひろさんの認可が必要(笑)。そういう規則があったほうが面白いし、制限があることでもっと面白いことをしようってヤツが出てくると思うねんけどね。今は制限がなさすぎて、「これ面白いやろ?」って本人だけが思ってるケースが多いし、そいつがホントに面白いかどうかを判断できる人がいないよね。居酒屋のトイレにも親父の小言みたいなのが貼ってんねんから、ロックンロールにも小言みたいな規約書があってもええやん? 「普段着でライブをやるのはやめましょう。半ズボンでライブをやっていいのはAC/DCだけです」、「中途半端に女子を1人メンバーに入れるのは揉め事の原因です。特にキーボード。入れるなら2人以上で」、「4つ打ちをしていいのは50歳を超えてから。若いうちは8回叩きましょう」、「MCの時にドラムでドトパン!と叩くのはやめましょう」、「お客さんに『ありがとう』を言っていいのは2回まで」……挙げたらキリがないけど(笑)。
──ロックンロール協会の発足が結成20周年に向けての急務かもしれませんね(笑)。来年は賑やかな1年になりそうですが、準備は着々と進めているんですか。
M : 周りからもやれやれ言われてるし、何かしら面白いことをいっぱいやりたいとは思ってる。オリジナル・アルバムももちろん出したいしね。10周年の時はいろいろやる予定だったのに、気がつけばあっと言う間に11周年になっててね。10周年の時に在籍してたレコード会社の担当と揉めに揉めて、ようケンカしてたら1年経ってもうて(笑)。だから20周年はみんなと仲良くやりたい(笑)。世代を超えたロックンロール・シーンの団結力も欲しいし、そういうのも含めてみんなと仲良くやる1年にしたいね。
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