バンドを続けていけばいくほど輝きを増すように生きたい
──「花」はライブで着実に育ってきた手応えがありますか。
佐々木:ありますね。最近はセットリストの一番最後にやってますし。決して一筋縄ではいかない10年だったけど、ここまでいろんなアクシデントを経験をしてこなければ「花」みたいな曲は絶対に書けなかっただろうし、いま頃はもっと形式ばったブルースをやっていたでしょうね。ちょうど20歳の頃に川崎のクラブチッタで行なわれたシェルターの15周年記念イベントに出たんですけど、その時にTYPHOON24のmiya38さん(宮沢昌宏)に「砂利道を踏んでないバンドだな」って言われたことがあって。いま思えば激励を込めた言葉だったのかもしれないけど当時は凄く悔しかったし、いつか見返したいと思っていたのに、その数年後にmiya38さんが亡くなってしまったので見返す機会を永遠に失ってしまった。その後に俺たちは山ほど砂利道を踏み締めてきたから、miya38さんがいまのAFOCを見たらどう思うかなとたまに考えたりするんですよ。
──miya38さんに見て欲しかったですね、10周年を迎えて逞しくなったAFOCの勇姿を。
佐々木:10年前に憧れで始めたブルースはまだ生き様に追いついてなかったですからね。20歳の頃に数枚アルバムを勢いだけで出して燃え尽きるようなバンドには当時から憧れてなかったし、続けていけばいくほど輝きを増すような生き方に昔から惹かれていたんです。それも何となく続けているようじゃダメで、常にギリギリのところまで自分をひたすら磨き続けて作品を世に出さなくちゃいけない。その結晶をこうしてベスト盤としてまとめられたのは純粋に誇りに思います。こうして10年やってきたものの達成感は全然なくて、悔しさのほうが圧倒的に多いんですけど、ここまでの道のりや選択は決して間違いではなかったという自負だけはあるんですよ。
──AFOCを象徴する青の色も、活動の速度と馬力を増してきたこの10年でどんどん濃くなってきている感じですか。浅葱色から濃紺へと移ろっていくように。
佐々木:“flood”は“洪水”という意味なので、バンドを象徴するカラーとして青を使ってきたんですよね。メジャーで最初に出した『BUFFALO SOUL』のジャケットの文字の色は割とポップな感じの明るい水色だったんですけど、それがいまの自分たちはもっとシンプルな青になってきた気がします。まさに今回のアー写のような、シンプルではっきりとした色合いの青のイメージですね。
──ワンマン・ツアーはやはりベスト盤的な内容になるんですか。
佐々木:そのつもりです。いつもはライブによってリード曲同士を入れ替えたりするんですけど、今回ばかりはもうえげつないくらいの全部盛りを喰らっていただこうかなと(笑)。ちょうどいまそのセットリストを考えていて、いい流れを作れそうなんです。一つだけ間違いなく言えるのは、こんなセットリストは二度とやれないっていうくらいヤバい内容になるので、これを見逃したら本気で後悔しますよ! ってことですかね。
──できれば、かつて熱心なAFOCのリスナーだった人にも今回のベスト盤を聴いてもらいたいし、いまのライブもぜひ見て欲しいですね。
佐々木:離れていったすべての人たちにいまのAFOCを見て、聴いて欲しいですね。このベスト盤を聴けば、俺たちがどう筋を通して10年間やってきたかが分かってもらえる自信があるので。ファンの人に限らず、離れていったメンバーやスタッフにも今日に至るAFOCのストーリーを面白く受け止めてもらえると思うんです。
──インタビューの冒頭で話に出た「Black Eye Blues」に「すべての歌を唄ってもまた/新しいブルースを吐き出してく」という歌詞があるように、AFOCは絶えず新たなブルースやストーリーを生み続けられるからこそ、10年間の集大成と呼べるベスト盤も気負いなく出せるのかもしれませんね。
佐々木:偉そうなことを言うと、ブルースやロックンロールの100年分の歴史を背負いながら音楽と向き合ってますからね。その音楽を聴かせる時に重さを感じさせず、軽快に聴かせたいから「青く塗れ」もあんな感じにしたんです。ロックンロールは強面で取っつきにくいと感じる人もいるかもしれないけど、俺は楽しくて親密な音楽だと思ってやっているので、AFOCのベスト盤がその良い入口になれば嬉しいですね。