人間の生きる力そのものを肯定するような運動
──映画の日本語のタイトルは『うりずんの雨』ですが、英語タイトルは『The Afterburn』となっています。一見違った印象の2つの言葉ですが、実は共通する意味もあるんですね。
ジャン:英語のタイトルを『The Afterburn』としたのは、アメリカの観客に対して、沖縄が焼け野原になってしまったこと、そしてその後遺症が今でも続いているということを伝えたかったからです。沖縄戦を体験した人々はそうしたトラウマと共に生きてきたし、元米兵もそうです。そして「うりずん」は、潤い初め(うるおいぞめ)が語源とされ、冬が終わって大地が潤い、草木が芽吹く3月頃から、梅雨入りする5月くらいまでを指す言葉です。戦後70年たった今もこの時期になると沖縄戦の記憶を思い出して体調を崩す人達がいることから、本作のタイトルを『うりずんの雨』としましたが、そこには、沖縄の悲しみの中にも「うりずん」という希望の声があるということを伝えたかったからでもあります。3.11以降の脱原発デモもそうですが、沖縄の運動に多くの若い人が参加するようになっています。そしてみんな明るいんです。「反対」と言うだけでなく、もっと人間の生きる力そのものを肯定するような運動になっているし、そこに参加することで自分自身も強くなっていく。基地の前で三線を弾いて島唄を歌うのもそういうことだと思います。どうしてこんなに厳しい現実に対して絶えず反対運動ができるかというと、そういう所にヒントがある。ずっと敗北し続けているようにも見える基地反対運動ですが、少しずつ勝利してきている。それは自分にとっても大きな力になっています。
(C)1945, 2015 The Heirs of W. Eugene Smith
(C)2015 SIGLO
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