Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー新井陽次郎(アニメーション監督)(Rooftop2015年6月号)

友情とワクワク感、好きだという気持ちを青春時代の瑞々しさとともに描く!!

2015.06.01

 日本のアニメーション界に新しい彩をということで注目をされている"スタジオコロリド"。前作の『陽なたのアオシグレ』『寫眞館』から2年、待望の新作が発表される。新作の監督は『陽なたのアオシグレ』でキャラクターデザインを務めた"新井陽次郎"氏、また今作のキャラクターデザインは前作で監督を務めた"石田祐康"氏ということで、立ち位置が替わっての制作ということでも非常に興味深い。陣頭指揮をとる監督の新井氏に作品の魅力について語っていただきました。[interview:柏木 聡(Asagaya/Loft A)]

©2015 映画「台風のノルダ」製作委員会

男の子たちの友情と、台風のワクワク感

──新井(陽次郎)さんは元々アニメーター出身ですが、監督をやろうと思ったきっかけは何だったんですか。
新井:僕は表現ができればいいと思っていて、表現の方法は一枚絵でも文章でも良かったんです。でも映像に感情をのせて、表現して伝えられるものは大きいなと思って。そうするとアニメーションが、何かを表現するにはもってこいだったんです。
──今回の映画制作に至った経緯を聞かせて下さい。
新井:企画自体は一昨年にスタートしたんです。最初は小さな姉妹のお話だったんですが、子どもを主人公にしたものはこれまでもコロリドでは作ってきているので、このままの内容ではスタジオのスキルに広がりが出ないんじゃないかと思ったんです。今回の作品では石田(祐康)君がキャラクターデザインをやってくれることになったことと、美術監督の西村(美香)さんが参加してくれることになったというのがあって、それならこれまで手掛けたことがない中学生も描けるじゃないかと思い、中学生の男の子たちの友情の話にすることにしました。
──元は女の子が主人公の作品だったんですね。ちなみに元々のアイデアはいつ頃から温めていたものになるのですか。
新井:『陽なたのアオシグレ』に携わっていた時からです。友情ものがやりたいと思っていたんです。
──予告の雰囲気から『風の又三郎』のような伝記的な作品だと私は感じていたのですが、友情ものだったんですね。発想のきっかけになった作品などはあったのですか。
新井:『風の又三郎』は昔から好きだったので、多少なりとも今回の作品に反映されているかもしれません。台風の話はかなり前から考えていました。少年少女たちが台風の中で解放されていくような作品を作りたいと思っていました。男の子たちの友情と、あとは台風のワクワク感。映像作品ではないのですが、そのアイデアで一枚の絵を描いたんです。その絵は空に浮かぶクジラが重要なモチーフになっていたのですが、そのクジラが映画ではノルダになったような感じで、発想のキッカケにもなっています。
──台風とともに今作は文化祭前日が舞台ということですが、このふたつを選ばれた理由は何ですか。学園生活の中では特別な日のひとつでもありますが、新井さんの実体験もあってのことなのでしょうか。
新井:常に子ども時代の特別な感覚みたいなものを作品に落とし込んでいきたいというのがあるんです。今回で言えば、それがまさに台風のワクワク感や、文化祭を前にした生徒たちのワチャワチャ感だったりするんですよ。
 

一番描きたかったのは「何かを好きだ」という気持ち

──確かに台風の中や文化祭前日といった空気感というのは誰しもが経験したことがある独特なものがありますから、物語の舞台としても面白いものになりますよね。また、友情ものを作りたいと考えてらしたとのことですが、今回の作品のテーマは「友情」ということになるのでしょうか。
新井:「友情」もテーマのひとつではありますが、一番描きたかったのは「何かを好きだ」という気持ちです。あと、テーマのひとつとしてあるのは「話せばわかる」ということです。これは作品に関わらず自分の中のテーマとしてずっとあるものでもあります。自分が口下手で伝えるのが下手なほうなので余計にそう思うのですが、素直に人と人が話すことができたら争いも起こらないんじゃないかなと思っています。
──新井さん、石田さんを含めキャストの皆さんも新人で、若い方が先頭に立って作品を作られているように感じますが、現場の雰囲気はどのような感じですか。
新井:雰囲気はわきあいあいとしていて、他のスタジオと比べても部署に関係なく仲がいいと思います。みんなで作品も、そしてスタジオも作っているという感じですね。形が決まって安定してしまうのはつまらないので、コロリドは不安定でいてほしいです(笑)。僕が上のほうになった時も、下の人たちにもチャンスがいくスタジオであってほしいです。
──キャストの皆さんは声優がほぼ初体験だと思うのですが、演技はいかがでしたか。
新井:皆さん、演技は素晴らしかったです。特に野村(周平)さんに演じていただいた“東シュウイチ”は思っていることを表に出さずに内に秘めている性格なので、その素直になりきれないもどかしさを演じるのは難しいのではと思っていたんです。野村さんの演技は東の持つ表に出していない感情もうまく表現していただいて、繊細さが出ていて良かったと思います。
──最後に、ファンの皆さんに向けてのメッセージをお願いします。
新井:一生懸命取り組んでいることがあっても、それを実現することは難しくて逃げたくなる時があると思うんです。そんな時に作品を観てもらって、少しでも何か感じていただけたら嬉しいです。
 

LIVE INFOライブ情報

『台風のノルダ』
同時上映『陽なたのアオシグレ』
2015年6月5日(金)より 全国にて3週間限定ロードショー
TOHOシネマズ新宿 ほかにて上映
©2015 映画「台風のノルダ」製作委員会
配給:東宝映像事業部
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