Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー頭脳警察(Rooftop2015年5月号)

“無冠の帝王”の45年にわたる反逆の軌跡を凝縮したドキュメントDVDをめぐって

2015.05.01

先人から否定されるような音楽が時代を変える

──DTMでの音楽制作が主流となった昨今、ちゃんと楽器を演奏できない人でも手軽に作曲ができる一方、熟練アレンジャーの活躍する場が狭められてアレンジが貧弱になるという一長一短がありますよね。
P:ラジオを聴いていると大原櫻子とかなかなかいいなと思うけど、たとえば今の地下アイドルやアニメの楽曲は、打ち込みが音楽の体を成していないことが多いんだよね。聴いててあまりに酷いし、ファンもダメ出しするべきだと思うよ。まぁ、楽器の概念を全く無視して曲作りができる、音だけで勝負できる良い面もあるから何とも言えないけどさ。それは昔、ちゃんとしたクラシックの素養のある人がロックを聴いて酷いと感じていたのと似ているのかもしれないし。ただひとつ言えるのは、先人たちにも素直に受け入れられる音楽じゃなく、「こんなのじゃダメだよ」って上から否定されるような音楽こそが時代を変えていくってことだよね。
──頭脳警察も先達から槍玉に挙げられていたわけで。
P:うん。あと、新曲を書いていきたい一方で、古き良き名曲が埋もれていくのを懸念しているんだよね。菊池章子の「星の流れに」とか李香蘭の「蘇州夜曲」とか、日本にもいい曲がいっぱいあるんだ。俺は歌唱力がないけど、そういう過去の名曲を何らかの形で唄い継いでいきたい気持ちがある。
──今回のDVDにも、「螢転〜そして第二景〜」の後にわらべ歌の「ほたるこい」を唄っていたりしますしね。
P:音楽のルーツを辿る面白さが忘れ去られている気がしてね。今の若い世代は洋楽をあまり聴かないでしょう? 俺たちが若い頃は洋楽に影響されまいとして反発していたんだけど、それは洋楽を熱心に聴いてきたことの裏返しであり、洋楽に育てられたとも言えるわけ。誰か好きなミュージシャンがいたとしたら、その人がどんな音楽を好きで聴いてきたのか、そのルーツを辿って欲しいよね。それくらい音楽は熱中できて面白いものなんだからさ。たとえばこの間のグラミー賞でサム・スミスがメアリー・J・ブライジと一緒に「Stay With Me」を披露していたけど、ピアノを基調とした抑制の効いたアレンジで凄く良かった。あれこそ熟成した音楽だと思うけど、日本ではまず流行らないよね。
──なぜなんでしょう?
P:熟成した音楽を受け入れる土壌に乏しいし、日本はそもそも優れた音楽が継承されづらいんじゃないかな。文化の地層が積み重なっていかないと言うかさ。だからこれからは、頭脳警察でも若い世代と年輩の世代を混在させるような客席を作っていきたいんだよね。
──その意味でも、『真夜中のヘヴィロック・パーティー』とかでキノコホテルやシャロウズといった若い世代と共演するのは有意義ですよね。
P:そうだね。この間もアーバンギャルドのライブを見に行って、いろいろと刺激をもらえたばかりなんだよ。(浜崎)容子嬢も(松永)天馬君も音楽とファッションの感性が素晴らしいし、能天気なJ-POPとは全然違うよね。そのライブに例のゴーストライター問題で注目を浴びた新垣隆さんもいらっしゃって、2ショットの写真をFacebookに上げたんだよ。「実は自分の曲を書いてくれている人です」って(笑)。新垣さんと会うなりいきなり「マーラーズ・パーラー」の話を振られて、グスタフの話で盛り上がったんだけどね。同行されていた吉田隆一さんと出したアルバム(『N/Y』)をいただいて、聴いてみたらジャジーな雰囲気でとても良かったし、いつか一緒にセッションをやれたら面白いだろうね。
──今回のDVDに収録された頭脳警察〜ソロの代表曲の数々は若い世代にも訴えかけるものが多々あると思うし、文化の地層を重ねるためにもアピールしていきたいですよね。
P:いっそのこと顔も姿も表に出さないで、思いきり新人のフリをして俺っぽい曲をやってみるのも面白いかもしれない。露出はラジオのみで、「あの新人バンド、格好良くない?」なんて噂になったりして。
──そうすれば楽曲そのもので勝負できますね。
P:そうそう。一般の人が曲の判断基準をどこに置くかが分かるよね。どうしても表に顔を出さなきゃいけないってことなら、ダミーでもいいよ。もの凄いイケメンの役者やモデルに代わりに出てもらってさ。まぁ、それじゃホントにゴーストになっちゃうけどね(笑)。
 
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歴史からとびだせ
〜結成45周年記念ドキュメントDVD〜

テイチクエンタテインメント TEBN-72056〜57
定価:6,667円+税/2015年4月22日(水)発売

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【DISC-1】
01. オープニング
02. リハーサル1
03. 風の旅団
04. 彼女は革命家
05. J
06. PANTA スペシャル・インタビュー#01
07. 螢転〜そして第二景〜
08. つれなのふりや
09. PANTA スペシャル・インタビュー#02
10. 429 STREET
11. Geard
12. 夜と霧の中で
13. PANTA スペシャル・インタビュー#03
14. 反逆の軌跡
15. PANTA スペシャル・インタビュー#04
16. R☆E☆D
17. マーラーズ・パーラー
18. PANTA スペシャル・インタビュー#05
19. TAMBOURINE
20. P.I.S.S.
21. PANTA スペシャル・インタビュー#06
22. IDカード
23. つれなのふりや
24. ルイーズ
25. マラッカ
26. PANTA スペシャル・インタビュー#07
27. 人間もどき
28. 13号埋め立地から
29. PANTA スペシャル・インタビュー#08
30. 波紋の上の球体
31. PANTA スペシャル・インタビュー#09
《ボーナス・トラック1》
32. 七月のムスターファ
33. 時代はサーカスの象にのって

【DISC-2】
01. リハーサル2
02. 少年は南へ
03. スホーイの後に
04. 銃をとれ
05. PANTA スペシャル・インタビュー#10
06. 嵐が待っている
07. パラシュート革命
08. 時々吠えることがある
09. PANTA スペシャル・インタビュー#11
10. 歴史から飛びだせ
11. 前衛劇団“モーター・プール” 〜PANTA スペシャル・インタビュー#12 〜前衛劇団“モーター・プール”
12. それでも私は
13. PANTA スペシャル・インタビュー#13
14. ふざけるんじゃねえよ
15. 間違いだらけの歌
16. PANTA スペシャル・インタビュー#14
17. 風の旅団
18. People
19. PANTA スペシャル・インタビュー#15
20. 銃をとれ
21. サラブレット
22. PANTA スペシャル・インタビュー#16
23. 時代はサーカスの象にのって
24. 落ち葉のささやき
25. 真夜中のマリア〜転換のテーマ〜
26. 夜明けまで離さない
27. PANTA スペシャル・インタビュー#17
28. 万物流転
29. コミック雑誌なんか要らない
30. 悪たれ小僧
31. PANTA スペシャル・インタビュー#18
《ボーナス・トラック2》
32. 白いヨット
33. J〜エンディング

LIVE INFOライブ情報

交感ひろば@SPACE ZERO Part17
伝説のロッカーたちの祭典
〜スーパー・レジェンド・フェス 2015〜
2015年6月28日(日)全労済ホール/スペース・ゼロ
OPEN 16:30/START 17:00
出演:頭脳警察/外道/めんたんぴん/THE 卍(ROLLY、佐藤研二、高橋ロジャー和久)/三文役者
全席指定 前売6,000円/当日6,500円
*チケットぴあ(Pコード:260-648)、ローソンチケット(Lコード:75798)、e+(イープラス)、スペース・ゼロ チケットデスク、CNプレイガイド、アイノアでチケット発売中。
問い合わせ:アイノア(03-3561-8751/平日9:30〜18:30)、スペース・ゼロ(03-3375-8741/平日10:00〜18:00)
 
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