日本もアメリカも、DCもマーベルも、コミックも映画も、フィギュアもTシャツもゲームもアニメも! いつのまにか老舗イベントとなった雑食系アメコミ・イベントは、これからもユルく行きます!?
イベントの中心人物であるアメコミ・エディターの柳 亨英、アメキャラ・ライターの杉山すぴ豊のお二人に、近年の日本でのアメコミを取り巻く環境の変化、イベント独特の空気感について聞きました。日本よ、これが『アメコミnight!』だ![interview:齋藤 航(NAKED LOFT)]
アメコミの、イベント?
──最初の『アメコミnight!』は2010年7月、ロフトプラスワンで開催しました。この5年でアメコミにまつわる環境はかなり変わりましたね。
柳:かなりいい状況になっているんじゃないですかね。書籍に限っても、アメコミの翻訳書籍の刊行数とスピードが5年前から比べると格段に上がってます。定期的に何かが出ているっていうのが一番大事だと思います。定期的にShoProさん、ヴィレッジブックスさんのアメコミが出ている状況で、定期的にアメコミ映画も公開されていて、さらに『アメコミnight!』みたいなイベントをやらせてもらっている。アメコミ系のWEBラジオとかUst番組も増えているんですよね。
すぴ豊:街でマーベルとかバットマンのTシャツを着ている人が増えましたよね。その前後でハロウィンの仮装ブームともリンクしてて、アメコミのコスプレをする人も増えましたよね。やっぱり去年で言うと、アナ雪の格好してるか、バットマンの格好してるか、スパイダーマンの格好してるか、みたいな。日本の日常生活の中にアメコミが溶け込んできた気がします。あと、僕の本業は広告屋なんですけど、前はアイアンマンのTシャツを着てても誰も分からなかったんです。でもこの前会ったタレントさんに「あ、それアイアンマンですね!」といきなり言われましたから、時代は変わったなと(笑)。
まさかロフトの人気定番イベントになるとは思わなかった!
柳:アイアンマンの認知度は凄い上がりましたよね! それまではスパイダーマンとバットマンだけだったところに、アイアンマンが急浮上してきた感じ。
すぴ豊:イベントが5年も続いた理由としては、やっぱりアメコミがコミックの枠を超えて、映画やゲーム、グッズに広がっていく中、こういう「アメコミが今来ている!」的な現象を俯瞰で見るイベントがここしかなかったからのような気がしますね。“広く浅く”取り上げるっていうのは、あるものがブームになっていく過程でとても大切な気がします。抽選会の時にあれだけいろんな種類のプレゼントがあるってことは、あれだけ世の中にグッズがあるってことで、それだけ世に普及しているってことですよ。あとイベントならではってことで言うと、“会場限定のネタ”ってあるわけですよ。例えば“無責任な噂話”とか“ここだけの話”みたいなやつ。そういうのって話してて楽しいんですよね。「今度のバットマンの映画にこのキャラが出そうだ」とか「アベンジャーズの撮影の裏側でこういうことがあったらしい」とか。でも『アメコミnight!』のお客さんって、「この話はネットとかに書かないで」と言うと絶対書かないから(笑)、本当にいいお客さんたちだと思う。そのお客さんとの一体感もこのイベントのいいところかな。イベントを続けてきて、ライブハウスで無名のバンドがお客さんと一緒に育っていくってこういうことなのかなって思いましたね。イベント自体がお客さん共々、定着していったという感じ。
『アメコミnight!』の登場人物
──さまざまなゲストの方をお呼びしてきたこのイベントですが、印象に残っている方は?
柳:脚本家の中島かずきさんとアニメ監督の今石洋介さんはやっぱり嬉しかったですね。中島さんはもともと凄い脚本家だったけど、どんどん出世されてて…。なんだかどんどん声を掛けにくくなっているという小市民感があります(笑)。造型師の浅井真紀さんもまたお呼びしたいなぁ。本当にいろんな方に出ていただいて、とても有り難いです。
すぴ豊:この間のSENさん(※註)の、あれは本当に良かったね。
柳:あれは何十年に一回、できるかできないかのものだと思いますよ。あと麻宮騎亜先生! 生きる伝説ですから。DCでもマーベルでもスカイウォーカーランチでも仕事してますからね。そういう行動力のある人がアメコミに限らず、たくさんいると世の中面白くなるし、目立ってきますよね。自分で道が出来ちゃうと言うか。カプコンの新妻良太さんに出ていただいたのも嬉しかったですね。おかげで『アルティメット マーヴル VS. カプコン 3』のほうは翻訳をやらせてもらったりして。あとプレゼントを提供してくれているコトブキヤさんから『アメコミnight!』で取ったアンケートを元に新作のリル・ゴッサムのフィギュアが生まれたっていう有り難い話もありますし、ファンの声が直接届けられるような機会を作れたのかなって思いますね。
すぴ豊:そう言えば『アメコミnight!』は女性のお客さんが多くてみんな可愛いんですけど、ひとり凄く目立つ女性がいて、あの緒川凛さんだったんですよ(笑)。僕はスーパーマンが彼女と引き合わせてくれたんだ、と思いましたね(笑)。
柳:ここに来てくれた人たちが好きになったことをまた広めてくれると嬉しいですよね。
すぴ豊:柳さんとかと他でトークショーをやることもあるんですけど、やっぱり呑んだり食べたりできる所のほうが楽しいですよ。ロフトさんっていう場所も好きで、新宿から降りると、ゴッサムとかパニッシャーがいそうな所を歩いてくるわけですよ。ヘルズキッチンみたいな(笑)。アメコミっぽいゴチャゴチャしてる感じが味わえる。
柳:ロフトプラスワンの前なんか、とうとうゴジラが建っちゃいましたもんね(笑)。
映画とアメコミ
すぴ豊:来年『Batman v Superman: Dawn of Justice』があって、いよいよ映画でもDCがやって来ますね。
柳:来年はDCをもっと応援できるといいですね。なるべくバランス良くやっていきたいんですが、どうしても映画が入口として一番分かりやすいんで、映画をメインに扱うとマーベルが中心になりがちでしたからね。なんとなくDCも他の出版社もいろいろと応援したいんです。DC原作は『FLASH』、『ARROW』とTVシリーズのほうがいい感じですね。『FLASH』は最高ですよ! バカっぽいのがいい。赤くて早いじゃないですか。もうこんなに良いことないですよ! 赤い、早い、バカ。もう三拍子揃った素晴らしいヒーローだと思うんで(笑)。
すぴ豊:DCは『アメコミnight!』でも何とかしてあげたいなって思いますよね(笑)。マーベルから2020年までの映画化スケジュールが発表されたってことは、『アメコミnight!』も10周年までやらないと。映画で言えば今年のアカデミー賞の授賞式、ジャック・ブラックがオープニングで「最近の映画はみんなヒーローばっかりじゃないか! なんとかマンはうんざりだ!」って唄ってたのに、『バードマン』が作品賞を受賞(笑)。
これからの『アメコミnight!』
──次回、5月3日の『豆魚雷(アメコミ)night! アメキャラTシャツ大戦争リターンズ!!』があります。これは昨年から始まった、アメコミやアメリカン・キャラの狂ったデザインのTシャツを着てきて自慢し合うという…(笑)。
柳:ある意味、一番ハードルが低い回(笑)。未だに去年優勝したTシャツが脳裏に焼き付いていますよ! 『Tシャツの帝王』さん(お客さん)、アイアンマンマークVのアーマー型ケースに狂ったTシャツをビッチリ詰めてやって来た彼は今年も来てくれるのかな? あとは毎回プレゼントを提供してくれているフィギュアショップ『豆魚雷』の大宮店の店長がかなりTシャツ・キチらしいんで、昨年大活躍された同じく『豆魚雷』の黒須さんとアメキャラTシャツ大戦争が勃発しますね。その後は『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』公開記念イベント、夏にはアメリカで開催される世界最大のコンベンション・コミコンの現地レポートも予定してます。
──ネタは本当に尽きないですよね。そう言えば2010年7月の初回のテーマは『マーベル・キャラクター大辞典』の発売記念だったんですよ。
すぴ豊:あんな専門的な書籍のイベントでトークショーっていうのが、そもそも成り立つのかどうかっていうのも分からなかったですよね。ロフトのイベントって、来ているお客さんのほうが壇上にいる人よりも詳しかったりすることがあるから心配でした(笑)。
柳:昔から一貫しているのはハードルが高くないってことですよね。アメコミっていうジャンルがそもそもハードルが高いんで。いかに初心者に優しいかっていうのを大事にしたいですね。
──『アメコミnight!』ってタイトルを聞いて、少しでも「行ってみようかな?」と思う程度の感覚がある人だったら絶対楽しいですよね。
柳:いろいろな楽しみ方をして欲しいですよね。『アメコミnight!』もそうだし、今やらせてもらっているレッドブルのサイトのコラムもそうだけど、アメコミには「いろんな入口があるよ、最初の一歩は怖くないよ」っていうのを言い続けたいですね。ウチは基本的に出演者もお客さんもみんな同じ目線だと思うんですよ。オフ会に毛が生えたくらいの(笑)。
【※註】SENさん:『シャザム!』が好きすぎて勝手に翻訳(!)、出版社に直接掛け合い共同翻訳として邦訳版発売にまで漕ぎ着けた凄い人。