言葉で何か刺さるものがあれば嬉しい
──とは言え、来たるべき未来を“残酷で美しい真実”と表現する「ミライチガイ」の歌詞はかなり赤裸々で、胸をえぐるような殺傷性も高いですが。
小浦:歌詞では嘘をつきたくないんですよ。ある程度のオブラートには包むんですけど、包みすぎると味がしなくなっちゃうと言うか。それじゃ曲を作る意味がないですから。Chapter lineは言葉を大事にするアレンジだし、演奏を止めて歌だけを聴かせるポイントもあるし、ちゃんと歌詞を伝えたいんです。藤もベースが歌の邪魔をしていないか凄く気にかけてくれるので、余計にそれは思いますね。
──「夜が終わり」には「今を変えたいよ」、「微かな光」には「あなたの言葉で今が変わる」、「大言壮語の逆襲」には「今を変える」「今を越える」、「ミライチガイ」には「やっと今分かったんだ」、「虚無感」には「今日も自分を探してる」、「不完全」には「それを今光と呼ぼう」、「BELIEVE」には「今を見失って」といった具合に、“今”という言葉が歌詞の中に頻出しています。これは意図的なものなんですか。
小浦:そうですね。今の僕は物事の終わりについてよく考えるんです。人間はいつか死ぬ。花はいつか枯れる。太陽はいつか沈む。そういう物事の終わりに関心があるんです。今回のアルバムのタイトルも『夜が終わり』で、今日という1日は夜が来て終わりを告げるんだから、明日になんか期待せずに今精一杯頑張れよ、っていうニュアンスなんですよ。収録曲が8曲出揃って、そのほとんどが物事の終わりや今この瞬間を生きることについて唄っているのに気づいたんです。
──物事の終わりをテーマにした作品がChapter lineの本格的な始まりというのも面白いですよね。“終わりは始まり”という言葉もありますけど。
小浦:確かに。ここ数年ずっと考えていることなので、そのモードから脱すると曲のテイストも変わってくるのかなと思いますけどね。
──バンドとして長い尺の作品を作り上げるのは、弾き語り時代とまた違う喜びがあるのでは?
小浦:そうですね。アレンジを一緒に作り上げる楽しさもあるし、自分の想像を超える瞬間がChapter lineにはあるんです。弾き語りの場合は曲作りがそのまま作品になるけど、バンドの場合は作品になるまでアレンジとか緻密な作業が必要になってきますよね。そんな当たり前のことが自分にとっては新鮮で、僕が生み出した曲がどんどん豪華になっていく面白さがあるんです。
──Chapter lineの楽曲を弾き語りでやってみたらどうなるだろうと考えたりは?
小浦:実はバンドと並行して弾き語りもやってるんですよ。割と違和感なくやれてますね。
──こうして1枚の作品を完成させると、Chapter lineとして表現したい欲がどんどん出てくるんじゃないですか。
小浦:今もアレンジの段階でやりたいことがいろいろありますからね。ただ今はバンドの名刺代わりとなる1枚が出来たタイミングなので、この方向性をしっかり磨き上げたい気持ちもあります。もちろんこの先も常に変化はしていきたいですけど、ちゃんと磨き上げる前に変化はしたくないんです。いろんなことに挑戦はしていきたいですけどね。
──先ほどギターロック・シーンのことについて言及されていましたが、Chapter lineをカテゴライズするならばギターロックがその出自だと考えているんですか。
小浦:僕らはギターロック・シーンの中にいると思っているし、それを担っていく存在になりたいですね。
──小浦さんの中で今のギターロック・シーンはどんなふうに見えているんですか。
小浦:今は踊れる曲をやるバンドが多いし、お客さんもライブハウスに踊りに来てるのかなと思いますけど、それだけでいいのかな? と。僕らもそういう現状を見据えつつ、Chapter lineならどんな表現をするだろう? と常に考えていますね。
──踊れるノリの良さを軽視することなく、ちゃんと爪痕を残したいと言うか。
小浦:そうですね。言葉で何か刺さるものがあれば嬉しいです。言葉は自分にとって大きな武器のひとつなので。歌を通じて誰かを攻撃したいわけじゃないし、僕もあなたと同じように悩んでるんですよって唄いたいだけなんです。そんなふうに聴き手と寄り添える歌を作っていきたいですね。別に応援歌を唄いたいわけじゃないし、共感を求めるわけじゃないので、歌詞はひねくれているかもしれませんけど(笑)。
──向こう何年かで達成したい目標はありますか。
小浦:3年後、5年後のことよりも、3日後、5日後の目標を優先してしまうんですよ。今回のアルバムの収録曲のように、“今”を生きているバンドなので。ただ今はようやく勝負できるアルバムを完成できたし、ライブもだいぶ成長してきた自負がある。今の状況を突き詰めて少しでも大きなステージへ駆け上りたいし、ギターロック・バンドの代表格と言われるようになりたいですね。そのためにもやっぱり“今”を大切にしなくちゃいけないし、ライブ・バンドとしてはグッとくる瞬間や熱量をしっかり届けていきたいです。