Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューChapter line(Rooftop2015年3月号)

ギターロックの寵児が奏でる“残酷で美しい真実”の歌

2015.03.02

 タワーレコード店舗限定&1,000枚限定シングル『大言壮語の逆襲』が発売後約1ヶ月で完売、それに伴いライブの動員も着実に伸ばしつつあるなど、目下各方面で急激に話題を集めているChapter line。1stミニ・アルバム『夜が終わり』は彼らの出自であるギターロックを基軸としながらも、その範疇にはとても収まりきらない硬軟織り交ぜた楽曲とアレンジ、絶望を起点として現状を乗り越えていこうとする気概溢れる歌詞が秀逸で、何よりその卓越した三位一体の表現力は久々に現れた大器であることを予感させるに充分だ。初の全国流通盤にして圧倒的なクオリティを誇る『夜が終わり』について、ボーカル&ギターの小浦和樹に話を聞いた。(interview:椎名宗之)

バンドが攻めの姿勢になった転機

──ドラムの宮内(沙弥)さんが小浦さんに声をかけたことがChapter lineの始まりなんですよね。
小浦:はい。それまでは各自バラバラで活動していて、僕はバンドをやっていた時期が少しはあったんですけど、基本的に弾き語りで活動していたんです。2年くらい前に宮内と僕が対バンした時に声をかけてもらったんですよ。
──小浦さんの歌声を聴いた宮内さんが運命的なものを感じたそうで。
小浦:僕のしゃがれた声が、宮内の好きだったsyrup16gとリンクしたところがあったのかもしれないですね。あと、僕が弾き語りでやっていた時の曲も宮内が気に入ってくれて、後日スタジオに入ってみることにしたんです。
──ベースの藤(教順)さんも宮内さんのヘッドハンティングだと聞きましたが。
小浦:前任のサポートがやめることになって、宮内と僕が何人かに打診したんですよ。その中の一人が宮内の知り合いだった藤で、彼のやっていたバンドがちょうど活動休止になるというタイミングだったんですね。藤と一緒にスタジオに入った時、宮内も僕も一発で「この人だ!」と直感的に思って、その日のうちに「是非一緒にやって欲しい」とお願いしたんです。
──宮内さんのドラムは小浦さんの理想とするものだったんですか
小浦:最初に会ったイベントの時からボーカルよりも目立ってましたからね(笑)。華もあるし、ドラムの音も好みだったし、いいなと思ってました。ただその時点ではバンドに対して憧れを抱いていたものの、「よし、これからはバンドをやるぞ!」って感じでもなかったんです。だから宮内にはいいタイミングで背中を押してもらった感じですね。
──小浦さんのそれまでの活動がバンドではなく、弾き語りメインだったのはどんな理由で?
小浦:音楽を始めた時からソロのスタイルで、それが普通だったんですよね。途中、バンドに入ったりもしましたけど、結局は弾き語りに戻ったりしたし。
──Chapter lineを結成して丸2年、今はバンド活動の手応えを感じているんですよね。
小浦:ふたりとも僕の作る曲を気に入ってくれてるし、共感してくれてる部分が多いので凄くやりやすいですね。バンドって人間性や相性ありきだし、そこが上手く噛み合う人がいればバンドをやりたいとずっと思っていたんですよ。今はこのChapter lineを続けていくことに不安はないですし、もっともっと上へ行けるはずだとも思っています。
──弾き語りとバンドでは曲作りの方向性が変わってくるものですか。
小浦:歌詞やメロディ・ラインといった根本的な部分はほとんど変わりませんね。今は小浦和樹個人がバンドに対して曲を書いている感じです。ただ弾き語りとバンドのステージは見せ方が全然違うし、アレンジの仕方も違うので、少しずつ変わってきているのを感じています。
──先行シングルの「大言壮語の逆襲」がタワーレコード渋谷店のJ-INDIESウィークリーチャートで1位にランクインするなど、Chapter lineの認知度が着実に上がっているのを肌で感じていますか。
小浦:今まではライブハウスで自主盤を手売りしていたんですが、今回はタワーレコード限定でシングルを出させてもらって、ライブは見たことないけど名前は聞いたことがあるという人でも手に取ってもらえているようで嬉しいですね。ツイッターで良い反応も窺えるし、何だか不思議な感覚です。これまではライブに来てくれた目の前の人にCDを手渡していたのに、今は自分の知らないところで誰かがChapter lineのCDを手にしてくれているわけですから。
──ライブの動員も増えているんですか。
小浦:シングルをきっかけにして来てくれる人が増えましたね。「大言壮語の逆襲」をライブでやると盛り上がるし、その意味でもシングルを出せて良かったです。
──シングルでリリースしただけあって、「大言壮語の逆襲」は今のChapter lineを象徴する自信作と言えますよね。キャッチーなメロディと歌声、軽快な四つ打ちビートが絡み合うバンドの特性がよく出た曲だと思うし。
小浦:結成当初は弾き語りの延長線上にあるバンド・スタイルみたいな感じでしたけど、ここ1年は純然たるロック・バンドになってきた手応えがあるんです。そうした変化の中で、お客さんを楽しませる、沸かせる曲が欲しくなったんですよ。「大言壮語の逆襲」はそんなタイミングで生まれたし、今のChapter lineを表す1曲ですね。結成当初はもっとミドル・テンポの曲が多かったし、この1年でだいぶ変わってきたんです。
──今回の『夜が終わり』は頭の3曲が象徴的ですが、グイグイと攻めるアッパーな楽曲が多い印象を受けますね。
小浦:藤が加入した頃からバンドが攻めの姿勢に転じたんですよね。腕が立つだけならサポートでも充分だし、バンドの進むべき方向や目標、喜怒哀楽を共有できるメンバーが欲しかったんです。それが藤だったんですね。彼が入るまではライブも楽曲も内に向いていたと言うか、ライブでは僕らも壁を作っていた気がするんです。でもここ1年はその壁を全部取っ払って、外に向けて発信するようなバンドになれたんじゃないかと思いますね。
 

結局はどれも希望の歌なんです

──藤さんが加入したこと以外にも何かターニング・ポイントみたいなものがあったんですか。
小浦:以前はミドルやスローの曲が多くて、その反動もあったんじゃないですかね。藤も速くてノリの良い曲が好きだったし、ライブで盛り上がるテンポ感のある曲が増えていったんです。それに合わせてお客さんの反応も変わっていって、身体全体で聴いてくれる感じになったんですよ。それを目の前で見ると、曲作りに対する僕らの意識も自然と変わりますよね。
──音楽を介して社会と関わりを持つという意識が芽生えたり?
小浦:僕個人は意識が内に向かっちゃうタイプですけど、日常の中でつまづいたことや苦しんだことを歌にしているので、そこはリンクしているでしょうね。
──「大言壮語の逆襲」を筆頭に、表題曲の「夜が終わり」も「微かな光」も跳ねるビートと力強いベースラインが心地好くて無条件に踊れる曲ですが、小浦さんの詞はどれも現実と対峙してもがき続ける内省的なものじゃないですか。だからダンサブルな曲調ではあるんだけれども、「一緒に踊ろうよ!」みたいな一体感を聴き手に対して強引には求めていないんじゃないかなと思って。
小浦:今のギターロック・シーンはハッピーな感じで踊れる、ノレる曲が多くなってきた印象があるんですが、それと同じことをやってもしょうがないですからね。僕の根本にある曲の書き方と今の時代にマッチしたものの融合がChapter lineらしさになっているんだと思います。踊れる曲だけど、歌詞を見るとしっかり読めるものになっていると言うか。
──アレンジはリズム隊のふたりに委ねる部分も多いんですか。
小浦:いろいろ試しますね。1曲持っていったら、そのバラード・バージョンもやるし、テンポの速いバージョンもやるし、音を凄く詰め込むこともやるんです。アレンジは凄く時間のかかるバンドでしょうね。
──アルバムの収録曲でだいぶアレンジが変わった曲もあるんですか。
小浦:「虚無感」はもっと音数が多くて雑多な感じでしたね。それがクールな雰囲気の不思議なテイストにまとまったりして。「夜が終わり」もあそこまで四つ打ちな感じではなかったんですけど、けっこう変わりました。「大言壮語の逆襲」も最初はあんなにお祭りっぽい感じじゃなかったですね。どの曲もまずライブを想定したアレンジを施すんですけど、3ピースで音数が少ないぶん、お客さんをハッとさせられるアレンジにしたいんです。ブレイクする時は3人一緒に大げさにやってみるとか(笑)。
──どの曲にも3ピースとは思えない音の厚みと深みがありますよね。
小浦:音に関して言うと、3人ともストイックに3ピースで演奏することにこだわりはないんです。作品も3ピースで最大限のことを精一杯やるより、とにかく曲が面白くなることしか意識していません。そのために3人以外の楽器が入っても全然構わないんです。実際、今回は「その隙間から」の伊藤康佑君にサポートで数曲ギターを弾いてもらって、「大言壮語の逆襲」の印象的なフレーズをお願いしたんですよ。
──今回のアルバムで「微かな光」や「不完全」など自主盤の収録曲を取り上げたのは、もう一度世に問い直したいからですか。
小浦:「微かな光」も「不完全」も今のChapter lineらしさがある曲だし、今もライブでよくやっているし、1枚の作品の中に入れておきたかったんです。今回のアルバムの構成を考えても必要な曲でしたからね。逆に「大言壮語の逆襲」や「虚無感」は今回のアルバムのために書き下ろした曲なんですけど。
──スペイシーな味付けがユニークな「easy」では中盤でクロっぽいファンキーなアンサンブルが聴けますが、ああいう音楽的要素は小浦さん本来の嗜好なんですか。
小浦:特にそういう音楽を聴いていたわけじゃないんですけどね。中学や高校の頃にアコギのソロ・ギタリストが好きで、その影響が「easy」には出ている気がします。
──頭の3曲が名刺代わりと言うならば、「ミライチガイ」、「虚無感」、「easy」の3曲はちょっと毛並みの違ったアルバムならではの曲ですよね。マイナー調ながらグルーヴィーで、芯の強さも感じられて。
小浦:僕の根本にあるマイナー的な資質と、今のギターロック・シーンで戦えるChapter lineらしさを考えて組み合わせてみたらこうなった、という感じじゃないですかね。
──小浦さんが考える“Chapter lineらしさ”とは?
小浦:外に向けた曲のキャッチーさと内に向いた歌詞のバランス、それと今のシーンに合ったノリの良さじゃないですかね。ただハッピーなだけじゃない、ハッピーにはなりきれない歌詞の世界観も独特なのかなと思いますけど。
──漆黒の夜の闇に突き落とされて、そこからどうにかして這い上がっていくプロセスの歌が多いですよね。絶望の底から未来へ手を伸ばすような。
小浦:だから結局、どれも希望の歌なんですよ。決して後ろ向きなことを唄ってるわけじゃないと自分では思ってるんですけど(笑)。
 
このアーティストの関連記事

1st Mini Album
『夜が終わり』

redrec / sputniklab inc. RCSP-0057
定価:2,000円+税
2015年3月4日(水)発売

amazonで購入

【収録曲】
1. 夜が終わり
2. 微かな光
3. 大言壮語の逆襲
4. ミライチガイ
5. 虚無感
6. easy
7. 不完全
8. BELIEVE

LIVE INFOライブ情報

Chapter line『夜が終わり』発売記念ワンマンライブ
2015年4月15日(水)下北沢SHELTER
OPEN 19:00/START 19:30
前売 2,300円/当日 2,800円(共にドリンク代別)
*3月15日(日)より各プレイガイドにて前売 発売開始
 
◎2015年3月1日(日)横浜F.A.D
【ザ・キャプテンズ『失神サーキット2014-2015 〜メロメロ〜』/with:ザ・キャプテンズ、月光グリーン、THE TOKYO、HISTGRAM】
◎2015年3月10日(火)代官山LOOP
【『Recitatio』/with:Made in Asia、BACK-ON、bye-bye circus、オズ】
◎2015年3月12日(木)大阪 阿倍野ROCKTOWN
【『ヒカリトカゲ』reading note 2nd mini album“19200”release live/with:reading note、ホロ、Applicat Spectra】
◎2015年3月26日(木)新代田FEVER
【Mrs. GREEN APPLE presents ゼンジン未到とプログレス 〜実戦編〜/with:Mrs. GREEN APPLE 他】
 
休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻