某月某日、都内某スタジオ。リハーサルを終え、まだ余韻の残ったスタジオの中でインタビューは行なわれた。そこには「持ち曲をすべてやる!」をコンセプトに、全10公演、発表された各アルバムに焦点を当てたツアー真っ只中のつしまみれが待っていた。なんと彼女たちの楽曲のリフは語呂合わせから誕生するという。ユニークなセンスを武器に3人で活動してきた彼女たちが15周年という節目で改めて打ち出す『バンドは水物』とは? 夢は「武道館でぶどうパンライブ」と宣言する彼女たちに、15年目に思うこと、そしてこれからの話をたっぷり聞いてきた。(interview:上里 環、大山紗都子/下北沢SHELTER)
『バンドは水物』とは?
──結成15周年、本当におめでとうございます!
一同:ありがとうございます!
──『バンドは水物』ツアー真っ只中のつしまみれですが、タイトルにインパクトを感じました。そもそも『バンドは水物』とはどういう意味なのでしょうか?
まり(g, vo):はい。「バンドは水物だ」って言い出したのはもうかれこれ5年以上前の話で、イベント名にする前から言ってたよね?
みずえ(ds):友達のバンドの解散とかの話を聞いて。
まり:当時だとピンクリボン軍とか、セツナブルースターとか。
やよい(b):ピンクリボン軍の解散は大きかったよね。
まり:一緒にツアーやってた大好きなバンドがやめちゃうんだよね。で、「私たちは食らいついて海産物(“解散”物)になろう」って思いを込めて『バンドは水物』ってイベントを結成10周年の時に恵比寿リキッドルームでやったの。バンドっていつ終わっちゃうか分からないものだけど、10年以上やっている私たちの仲間たちを呼んで。その時40数曲だったんだけど、持ち曲をすべてやったの。「今までの歴史をすべてやろう」っていうことで。今回、15周年って区切りでもう1回『バンドは水物』をやろうって話になった時に、今では90曲以上あるから、「これを1日でやりきるのは無理だろう」ってことになって、各アルバムごとにお世話になっているライブハウスでやることにしました。さすがに5年も経つとリキッドで一緒にやった花団とかも解散してて。だから今回は新旧問わずに、一緒にやってみたいとか、カッコいい仲間のバンドを呼んで『バンドは水物』って名前でやろうということになりました。
ロフトはドロドロ、シェルターはフレッシュな感じで
──各アルバムとライブハウスの組み合わせはどのように選んだのでしょうか。
まり:たとえば『創造妊娠』ってアルバムのライブは東京で初めてライブやり始めたところでやりたいなって思って吉祥寺シルバーエレファントにして、シェルターとロフトに限ってはハコ自体がカッコいいし、音が良いから「自分たちのどのアルバムも似合うな」というのが正直なところで。
みずえ:『GIVING BLOOD』のゴリゴリした一発録りだけで作ったアルバムはロフトが似合うだろうっていうのもあって。
やよい:やさぐれたロックな感じがね。シェルターはずーっとお世話になってたし、『つしまみれ』は冠的なアルバムだからシェルターにも凄くイメージが合うし。
まり:実際どうなんだろうね。シェルターはもっと爆音系なやつでも良かったかもしれないけど。
やよい:いろんなツアーでファイナルとかやらせてもらってるから、「シェルターはもうなんでも行けるだろう」という安心感があります。
──この『つしまみれ』の制作中にはシェルターのスタッフに「1曲目どれがいい?」と相談されたそうですね。
まり:聞いた聞いた聞いた!(笑)
──でも反映されなかったとか(笑)。
一同:あーーーっ!(笑)
まり:そうそう。「さいあくま」を選んでくれたよね。女子人気を狙ってそれも考えたんだけど、マネージャーの堀さんが「絶対『愛の夢』だー!」って言うから、「あ、じゃあそうします」ってことで。最新のオリジナル・アルバムは今のつしまみれが反映されているものなので、「シェルターでやれば間違いないっ!」ってことで。まぁ、このアルバムじゃなくても絶対ロフトとシェルターではやろうっていうのは決めていました。
みずえ:ロフトも久しぶりだから楽しみだよね。
まり:いつから出てないんだろう、思い出せない。でもあれだよね? 打ち上げで出てくるオムライスに字書いてくれるよね? そんなことばかり覚えています。
──『GIVING BLOOD』のジャケットもケチャップっぽいですね。
まり:あ、良いこと言うね。それじゃ(打ち上げの)オムライスは血染めな感じでお願いします。
──対バンもアルバムのコンセプトに合わせて選ばれていますよね。すべてお聞きしたいところではありますが、今日はロフトとシェルターの2公演の対バンの理由を教えて頂けますか。
まり:はい。まず、先にあるロフト公演のキノコホテルと後藤まりこちゃんね。
やよい:これは…血液感出てるね(笑)。
まり:まりこちゃんは前にミドリと一緒にライブやって凄い衝撃を受けて以来、尊敬しているし、「会ったら仲間」っていう意識がある。違うフィールドで戦っている音楽の仲間だなっていう感じがするから一緒にやりたいなって思っていました。キノコホテルは、郡山で一緒にやったんだけど、なんか変で良いよね。
みずえ:なんかインパクト感と、女の部分…なんかゴリっとした部分。
まり:でもまだ仲良くはないから、今回をきっかけに仲良くなれたらいいな。そこは期待値がある。ロフトにも凄い似合っているし、まりこちゃん・キノコホテル・つしまみれのスリーマンって「見たいだろっ!」って。
みずえ:期待度が高まるよね。
──その後のシェルターがSEBASTIAN Xとピロカルピンですよね。
まり:これは、『つしまみれ』ってアルバムのポップ感、カラフルな感じに合うバンドがいいなって思って。しかも両者とも数少ない私たちの友達という。去年雑誌で、女子座談会をやった時にFLiPとピロカルピンとSEBASTIAN Xとつしまみれでボーカルが集まって、「一緒にライブやりましょう!」って約束したんだよね。それで、今年みんなと対バンすることができました。それぞれタイミングはバラバラだけど、東京でできたから良かったです。
やよい:ロフトもシェルターも女子のバンドなんだけど、ロフトはちょっとドロドロしてて、シェルターの日は爽やかと言うかフレッシュな感じで。それぞれアルバムのジャケットを見ながらイメージしました。
リフは語呂合わせから!?
──90曲以上ある過去の自分たちの楽曲をすべてやるのって大変じゃないですか?
まり:面白いです。非常に。なんか「うわっ、こんな曲作ったっけ?」とかなる。でもパワーパフガールズの曲とか、ライブで1回もやったことない曲もやらなきゃいけないから。今日も猛練習ね。
みずえ:一応ね、アルバムの曲は全部やりたいってことになってるから。
まり:だから大変ではないですね。
やよい:新鮮だよね、凄く。改めて良い曲だな、とか。
まり:「どうやって作ったんだろう」とか言いながらいつもやってる。
みずえ:アルバムのツアーの時にしか聴いたことないと言うか、やってない曲があるから、お客さんも「聴ける時に行こう」みたいな感じで来てくれる人もいるし、「この曲初めて聴きました」って凄い喜んでくれる人もいるし。
やよい:あと久しぶりに演奏すると、いろんなことを思い出す。
まり:この前さ、「キューティービューティーキューピー」っていう曲で、やよいが本番直前に「あ、コーラス思い出した」とか言い出して。
やよい:CDのとライブ・バージョンが何か違ったんだよなーとか思いながら。
まり:何回も練習やってたんだけど、別のラインをずっと唄ってて。で、直前に「あたし、あそこじゃなかった」とか言い出して。
みずえ:楽屋でね。みんな「!?」とかなって。
まり:もうTHE PINBALLSがライブやってて、もうあと何曲かで出番みたいな状況で。
──ゾッとする話ですね(笑)。
まり:そうそう、でも他の曲で言うと、指が覚えていたりするの。思い出せないで悩んでいたら指が勝手に動いたり。
みずえ:あとは語呂合わせもあるよね。
まり:そうそう、「“キューピー”だから9フレットからだった」とか。
──へぇー、面白いですね。
まり:だいたい語呂合わせでリフとか決めてるから。思い出すきっかけにはなるよね。
やよい:音が分かっても「なんかちょっと弾いた感じ違うなー」とか思って。「ここは“ツシーマミレ・ツシーマミレ”って弾いているんだよ」って言われて「あっ、こっちか!」とかなる。
まり:“ツシーマミレ”だと2・4・0・3・0(フレット)になるから。こういうふうに指が動くの。
やよい:無理矢理な感じだけど、そっちのほうがしっくりくる。
まり:そういうのは自分たちの記憶力を補ってくれています(笑)。