Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューTHA BLUE HERB(Rooftop2014年4月号)

伝説と呼ばれたライブから15年
5月2日下北沢SHELTERにて“演武15周年GIG”開催

2014.04.01

 映像作品『演武』に収められた地元北海道以外での初めてのライブとなり、後に伝説と呼ばれる1999年5月2日六本木COREで行なわれたライブから15年目の2014年5月2日、"演武15周年GIG"が下北沢SHELTERで開催される。ラッパー ILL-BOSSTINO、トラックメイカー O.N.O、ライヴDJ DJ DYE の3人からなる一個小隊THA BLUE HERB。1997年に現在も拠点としている札幌の地で結成以降、HIP HOPの精神性を堅持しながらも楽曲においては多種多様な音楽要素を取り入れ、文字通り日本列島を席巻、あらゆるジャンルのアーティストと交流を持つ。表立った活動を全て休止していた列島激動の2011年は沈黙を貫き楽曲制作に専念していたが、2012年元旦に自身のウェブサイトでシーンへの復帰、活動第4期の幕開けを宣言した。常に現在進行形、己を研ぎ澄まし走り続ける彼らがこの特別な1日をどのように表現するのか、下北沢SHELTER公演を震えて待て。(interview:峯崎智弘/下北沢SHELTER)

俺等の力だけではここまでは来れなかった

── はじめに、その後日本中を震わせる爆心地となったあの日から15年目に“演武15周年GIG”を開催する経緯を教えて頂けますでしょうか?

「15年前のあの日、1999年の5月2日以前から、北海道においてだけど、俺等の歴史は始まってはいた。でも、やはりその日を境に大きく時代は変わっていった。あの六本木の夜から日本全国に大きな波が伝わっていった。だから毎年その日になると、思い出してもいたし、どこかの街でライブをやってても特別に力が入っていた。10周年に都内でやった時から15周年も都内でやりたいって思ってたんだ」

── 個人的な話で恐縮ですが…当時働いていました新宿LOFTで10年前にTHA BLUE HERB×54-71を経験して、ライブハウスに関わり続けようと思った人間なので今回たいへん嬉しく思っています、今回はなぜ濃密な接近戦になるSHELTERでの開催になったのでしょうか?

「盛大に祝うのは10周年でやったし、何というか、もともとその日を祝うというよりもまたその日を乗り越えるっていう気持ちの方が強いんだ。そもそもその日だからって普段やってない事をするとかじゃなくて、いつも日本中でやっている事をやりたいしね。だからお客との距離が近い方を選ぶよ」

── 音源、LIVE、活動スタイルも一貫した信念で向き合っているという印象がありますが、ライブのスタイル(PAと照明の同行なども含め)は15年前と比べて変化はありますでしょうか? また音源の曲を実際にライブで演奏する際に気をつけていることなどはありますか?

「15年前なんて、自分等が楽しければそれで良いって思ってたよ。でも、この15年、数え切れないライブの中で俺等も多くを学ばせてもらってきた。お客に助けられた夜も多々あった。俺等の力だけではここまでは来れなかった。自然と、与えられた時間、来てくれたお客が楽しんで、上がって、また次回来たいって思ってもらうために何をすれば良いか、音源だけしか聴いた事がないお客にライブの特別さを感じてもらうためには何をすべきか、そう考えるようになった。ヒップホップのフィールド以外にひしめいている強者たちともライブで闘わなくてはならないし。そのためにはPAや照明と密に連係したしっかりしたライブを見せなくてはならないっていう気持ちになったね」

── BOSSさんはリハーサル準備中に新聞を読んでいるイメージがあったのですが、その日起こった事をタイムラグ無しにライブに反映することはどのように考えていますか?

「その日のライブのためってワケでもなく、ラッパーなら世の中で起こってる事を可能な限りリアルタイムで知って、自分の考えを持たなくてはならないのは普通の事だと思うよ」

── 活動を始めた当初と現在ではリリックや楽曲に対する考え方の変化はありますか?

「特に変わってないな。自分の言いたい事を言う、それだけだね。世の中や俺等を取り巻く環境、そして俺自身も変わっていく。だからその都度言いたい事は変わっていくけど、言いたい事を言うっていう姿勢は変わってないね」

── THA BLUE HERB の音楽が「THA BLUE HERB以降」といわれる程様々なジャンルの方々にも影響を与えていますが、音楽に限らずBOSSさんが最近影響をうけた表現者はいらっしゃいますか? また、いままでにもっとも影響をうけた表現者も教えて頂けますか?

「数えきれないね。中学生の時に知ったビートルズやボブ・ディランから始まって、ずっと音楽の旅は続いてるし、驚きも常にある。ここ最近はやっと自分の表現自体にある程度の自信もついてきたんで簡単に影響は受けなくはなったけど、誰かの音楽やライブに触れて、そこで自分のやってることを省みる事は今もいつでもあるよ」

── 自身の運営するレーベルTHA BLUE HERB RECORDINGSからのリリースを続けていくのにはどのような理由があるのでしょうか?

「人の指図を受けて音楽をやりたくなかったから」

── DVD『THAT'S THE WAY HOPE GOES』(2007年発売)ライナーノーツの冒頭でBOSSさんは“頂点とは、その瞬間でしかなく、それ以外全ての時間はそこに向かって登っているか、そこから降りているかの2つしかない。(中略)そして我々は無論、上へ上へと向かって行く、ということ。”と書かれていましたがこのスタンスはいまも変わらないものですか? そして今後THA BLUE HERBはどこに向かうのでしょうか?

「そうありたいと思ってるし、そのために走り込んで、練習して、ステージに挑んでるよ。ライブの最後にお客に拍手をもらってあの輝きの中、ステージを降りる。流行とかヒットチャートとかじゃない、そこにいた人しか知らない世界、俺はそこで毎夜、頂点を味わってる。そしてささやかな達成感と共に眠り、翌日チェックアウトする頃には、もうその栄光は過去のものだ。昨日より今日、今日よりは明日。また次のステージに向かって行く。それをこの15年間、延々と繰り返してきた。でもまだ完全ではない。俺自身、至らない所は常にある。そこに嫌になる事もある。でもその繰り返しの道自体は、幸運にも1度も嫌になったりはしなかった。“あったりめえだろ、まだまだこれから。俺等はもっと良くなる”って信じてるよ」

── 最後に、今回東京での5月2日のライブはどのような想いで迎えるのでしょうか? 当日来られる方々にメーセージをお願いできますでしょうか?

「その時になってみないと分からないな。上がりたいね。いつものように、この15年間ずっとそうしてきたように、東京のお客とがっつり上がりたい」

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LIVE INFOライブ情報

2014年5月2日(金)下北沢SHELTER
「演武15周年GIG」

OPEN 19:00 / START 20:00
ADV¥3500 / DOOR¥4000
【チケット】前売りSOLD OUT !! (当日券若干枚数あり)

我々THA BLUE HERBにとって5月2日というのは特別な意味を持っています。
15年前のその日、それまで地元北海道でしかライヴをやった事がなかったTHA BLUE HERBが、初めて北海道以外でライヴを行ったのです。
舞台は六本木CORE。その夜、都内では沢山のMCのライヴがありました。
我々のライヴはそれらの内の1つであり、注目度が高いとも言えず、そこに集まってくれた人達も、殆どが生身のTHA BLUE HERBを観た事がない、1999年5月2日当時はそういう状況でした。
あの夜に何が起こったのか、それはDVD「演武」に全てが映っています。
それから15年。我々は1度も他人様には雇われていません。
幸運にも言葉と音で生きてきた。無論、己の力だけでここまでこれたとは思ってはいない。
「縁起」という言葉があります。
集まってくれたオーディエンスを上げたい、驚かせたい、満足させたい、この使命にも似た想いが我々に努力を強い、成長を促し、結果ここまで生き残ってこれたのです。
言わば、我々はオーディエンスによって生かされてきたのです。

未来は思ってたよりもずっと広かった。

2014年5月2日、下北沢SHELTERを借りました。15年前のあの夜に出会っていた人、この15年の間に出会った人、そして今回初めて出会う人、その夜のTHA BLUE HERBを生かす事になる全ての人々へ。我々も出来るベストを尽くします。

上げに来てください。上がりましょう!

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