Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー長濱博史(アニメーション監督)/Rooftop2014年3月号

『蟲師 続章』

2014.03.01

 その独特の世界に魅了され、連載が終了した今もなお多くのファンを持つ「蟲師」。月刊アフタヌーン1月号・2月号にて前後篇「日蝕む翳(ひはむかげ)」が連続で掲載され、その新作が1月4日に異例の早さでアニメ放送された。その放送後に発表された待望のTVシリーズ2期。1期スタッフが再集結しファンの期待が否でも応でも高まる中、監督"長濱博史"氏にインタビューを敢行。「蟲師」に対する並々ならぬ愛を語っていただきました。(interview:柏木 聡/Asagaya/Loft A)

運命を感じる再開

——まずは8年ぶりに「蟲師 続章」が作られることになったきっかけをお伺いしてもいいですか?

長濱:結果的に8年ぶりになっただけで、1期放送が終わった直後から続篇をやりたいという話はしていたんです。ただ1期は皆で尋常じゃない労力を注いで作っていたので、すぐには考えられないという状況でした。でも続篇をやるとしたら、同じスタッフで作りたかったので、皆のエネルギーが回復したあたりでやりましょうという話をしていたんです。やりたい気持ちは常にあったんですけど、結果的に周りの状況が整わない状況だったんですね。それが今回全てハマったという感じですかね。

——偶然めいたものもあったんですか?

長濱:僕は必然的にこの時期になったんだと思っています。まず原作は全10巻で一区切りついているんです。アニメ1期では6巻の1話まで制作したので、ある意味きりがいいんですよ。第7巻では「棘のみち(おどろのみち)」というシリーズ初の前後篇の話がありますし。それが漆原さんの中で手応えとしてあったのかなと思うんですが、第10巻の最終話「鈴の雫(すずのしずく)」も前後篇で終わってるんです。もし数年前に「蟲師 続章」の企画を成立させていたら前後篇をどう扱っていいかわからなかったかもしれませんね。

——蟲師は1話完結が基本ですからね。

長濱:そうなんです。さらに今回8年ぶりが偶然じゃないなと思ったのは、TVシリーズをやると決まって動き始めたタイミングで、実は漆原さんが特別篇「日蝕む翳」を描き下ろしされることをアフタヌーン編集部の宮崎さんから聞いたんです。当時はどういうタイミングで蟲師を再開するか、話し合っている最中だったので、そのお話を伺った時にこの新作がアニメ化出来ればベストだと考えたんです。講談社やアニプレックスの方も「正月スペシャルでやりましょう、これが1番いい再開の方法だと思います。」って言ってくださいました。今だからこそ出来たことではあるので、なるべくしてなったんだという印象ですね。

——アニメ2期のプロモーションも兼ねて特別篇を漆原さんが描き下ろされたのかと思っていました。

長濱:普通はそう思いますよね。最初は1月に2期の1話・2話を先行放送して、4月から毎週放送の予定で考えていたんです。新作を描かれるという情報も、通常、現在進行形の作品でない限り、原作者とアニメスタッフのあいだでは極秘事項の開示というのはほとんど行われないんですが、1期では本当に漆原さんと2人3脚で作らせてもらったので、その信頼関係から教えていただけたんです。宮崎さんに話をしたら「やってもらえるのは嬉しいです。でも放送がほとんど雑誌連載と同時になりますよ? そんなこと可能なんですか?」と言われました。

——当然の反応だったと思います。

長濱:その時に特別に見せてもらった原作は、まだネーム(※1)の段階だったんです。セリフも絵もラフの状態のものを読ませてもらい、それを見ながら絵コンテを構成していきました。アフタヌーンに完成した原稿が載ると「オオッ! セリフがこう変わっている。」という事が有り、それに合わせてアフレコ現場でセリフを変えたりしました。

——漆原さんのプレッシャーも大きかったんじゃないですか?

長濱:漆原さんは今の自分が蟲師を描くコンディションへと持っていけるかということで緊張なさっていたのかもしれないですけど、そんなことは微塵も感じられない凄い作品でした。むしろプレッシャーは我々の方でした。漆原さんは一つ先に行っちゃったんです。「日蝕む翳」は今までの蟲師作品群と少し違って、たくさんの視点からスケールの大きな物語を描くエピソードだったので。

——確かに村人や化野など多数の人の目線が入っていますね。オールスターキャストで全員出てきてくれたという喜びもありました。

長濱:そういう点でもアニメ2期の始動のために作ったと言われても仕方ないのですが、全く違うんです。漆原さんが新作を描かれている頃は、いつから放送なのかも決まっていなかったので、プロモーションのためにとは考えられてなかったんですよ。

——運命を感じる再開ですね

長濱:まさにそうですね。

 

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