作り手も成長していく
——この作品が主人公デビューなど新人声優の方も多い作品ですが、どのようにキャストを選ばれているんですか?
鷲尾:自分たちが持っているキャラクターのイメージに一番近いイメージのある方を選んでいます。よくみんなで話してるんですけど、声が良い・お芝居が達者という点だけでは決められないんです。その2点ももちろん大事ですが、その場の空気も含めて「ああ、この人は多分このキャラクターにすっと馴染むな」とか「一緒に成長していく感じが出そう」というのも考えて選びます。
——それだけイメージに合う方を選ばれてということですと、制作を進めていくうちにキャストの影響を受けてキャラクターが変わってくるということもあるんじゃないですか?
鷲尾:それも楽しみの一つです。声が入ってくるとそこからキャラクターの雰囲気も出てきて、描き手や演出の方でもこういう風になってくるんだったらこんなお芝居入れてみようとか、こういうセリフを入れてみたらどうなるかなとイメージを膨らませていくことができるので、そういう意味でもキャストというのはとても重要な位置になります。
——アフレコの際に気をつけられていることはありますか?
鷲尾:シナリオ・絵コンテで気づかないで、声になった時に気づくことって結構あるんです。セリフの言い回しがおかしいとかをキャスト側から指摘される事もあるので、極力みんなで相談しながら良い方向に進められるようにやっていましたね。
——お気に入りのセリフはありますか?
鷲尾:ファーストシリーズのなぎさのセリフで「これからも勉強頑張るぞー、なるべく」というのがあるんです。全部頑張るの無理だけど、気持ちとしては頑張るぞって感覚はいいなと思った記憶があります(笑)。
——作られる上で気をつけられていることはなんですか?
鷲尾:携わった作品は全てそうしているんですが、嫌な映像やセリフはできるだけ外しておこうというのがあります。例えば女の子が顔やお腹を直接殴られるシーンはきちんとガードをして、ダメージ描写は吹っ飛んだ先のビルの壁が壊れるとかで表現しようと言ってました。あとは食べ物を残さない。少食であるとかダイエット・食べないというセリフは極力外しました。親にとって子供がよく食べるというのはものすごく嬉しいことなので、それに反することをテレビで憧れの主人公たちにやらせるのはやめようねとは監督と話をしていました。また、食べ物を粗末にするシーンも排除しました。嫌なシーンが重なると、親が見なくなるんです。親も一緒に観ていただける作品であり続ければ子供は安心して見ていられるし、親と子供が一緒に番組の話ができるので、そこは意識していました。
——映画でブラックとホワイトが喧嘩した話が不評だったというのを伺ったんですが、本当ですか?
鷲尾:2人が対立する映像を作ったら女の子が怖がっちゃったんです。普段仲がいい2人の関係が壊れて対決しないといけない、というのは流石に衝撃が強かったみたいです。そこは自分でも反省しました。
——5年経って作品から一歩退かれた理由というのは?
鷲尾:3作目で人気が少し落ち込んで、会社からは「4年目までは任せるけどうまくいかなかったらそこまで」と言われていて、私もそうだろうなと思いました。ただ、もし次がうまくいって続編ができるのならそこまではやらせて下さい、と言ったんです。幸い『Yes!プリキュア 5』は子供たちに受け入れられたので、『Yes!プリキュア5GoGo!』まで続けてから、担当を離れました。同じところに長く居続けると良くも悪くも影響が出てしまいますから、5年は良い頃合いだったと思います。
——そこから梅澤淳稔さん(※)、柴田宏明さん(※)にバトンタッチしていくわけですね。お二人の印象は?
鷲尾:全く新しいお話でシリーズとして見せていかなければいけないというのは、大変だと思います。ただ、それぞれの作品できちっと子供たちの心を捉えているというのは素晴らしいことだと思います。
——離れられてからの作品で気に入られているお話はありますか?
鷲尾:第1話はどれもすごいなと思います。こういう世界観でくるんだ、これは自分じゃ思いつかないなっていうことを各シリーズの第1話でやってきているので、すごいなと思いますね。
——10年続いた今、プリキュアシリーズについてどう感じられていますか?
鷲尾:こんなに続くと思ってなかったので、感慨深いですね。
——世代を超えて愛されている作品になっていますね。
鷲尾:嬉しいですね。作品を好きでやってくれてるスタッフもたくさんいらっしゃるので、そういうのもありがたいです。
——今後の展望についての希望があれば。
鷲尾:子供たちが好きだと思ってくれるものをきちんと創り続けられるのであれば、プリキュアである意味や形は問わなくて、変わっていってもいいと思ってます。
——お母さんお父さん世代や、所謂大きいお友達の方がメインの読者になるんですけども、そういった世代のファンの方々にメッセージをお願いします。
鷲尾:子供向けの作品ではありますが、見ている方が感情移入し気持ちが納得できる流れにすることが一番大事なことだと思っています。そういう点では大人の方が見ても楽しめる作品に仕上がっているので、是非これからも応援して頂ければ思います。
西尾大介…アニメーション監督。『ふたりはプリキュア』『ふたりはプリキュアMax Heart』のシリーズディレクター。他代表作に『ドラゴンボール』『ドラゴンボールZ』等。
小村敏明…アニメーション監督。『ふたりはプリキュアSplash Star』から『Yes!プリキュア5GoGo!』まで3作品のシリーズディレクター。他代表作に『キン肉マンⅡ世』等。
梅澤淳稔…プロデューサー。『フレッシュプリキュア! 』から『スマイルプリキュア!』までの4作品のプロデューサー。他代表作に『ボボボーボ・ボーボボ』『デジモンセイバーズ』等。
柴田宏明…プロデューサー。『ドキドキ!プリキュア』のプロデューサー。他代表作に『デジモンセイバーズ』『モノノ怪』等。