2013年は3枚のシングル(『Would You Be My Valentine?』、『Velocity』、『Crowds』)リリース、5月にはメジャーレーベルへの移籍を果たし、この1年もバンドとして大きな変化を遂げたWHITE ASH。その彼らが1年5ヶ月ぶりとなる2枚目のフルアルバム『Ciao, Fake Kings』を12月11日にリリースする。WHITE ASHならではの骨太なサウンドを鳴らす『Casablanca』や、ライブハウスやフェスで盛り上がり必至のダンスチューン『Extreme』、キャッチーな『(Y)our Song』、日本語で壮大なラブソングを歌う『Xmas Present For My Sweetheart』などなど、彼らの成長の過程を見ることが出来る楽曲の数々。また、「シンプルかつカッコいい」というバンドコンセプトからさらに進化をするため、プロデューサーに蔦谷好位置氏を迎え、自身の音と真剣に向き合って制作された今作は、全曲新曲のバンドの強い決意が込められていた。
この作品を持って2月からは全国ツアーを行ない、ファイナルは自身最大キャパとなる渋谷AXでのライブが決定している。ロックシーンの王様を目指して、WHITE ASHはこれからも自分たちの音楽を信じて進んでいく。(interview:やまだともこ)
全曲新曲の意図とは
── 昨年7月にリリースした『Quit or Quiet』以来、1年5ヶ月ぶりとなるアルバム『Ciao, Fake Kings』がリリースされますが、アルバムとしてはリリース期間があきましたね。
のび太:アルバムで言うと1年5ヶ月ぶりですけど、WHITE ASHとしてはシングルとかアルバムとか分け隔てなくひとつの作品としてリリースしているという感覚で、僕らにとって前作は『Crowds』(2013年8月リリースのシングル)だと思っているので、そこまであいた感じはしないんですよ。
── 今作のタイトルは『Ciao, Fake Kings』ですけど、これはどんな意味を持たせたんですか?
のび太:曲とかアルバムタイトルは、僕の場合まず最初に頭文字が直感で降ってくるんです。今回のアルバムを作ってる時に、「このアルバムタイトルの頭文字はCから始まるな」って思って、直感で思いついたのが「Ciao」だったんです。「Ciao」ってイタリア語の挨拶で、挨拶から始まる印象的なフレーズって何かあったかなって考えた時に、ニルヴァーナの『Smells Like Teen Spirit』の歌詞にある「hello, how low?」が思い出されて、それを「Ciao」に置き換えてみたら言葉の響きとして「チャオ、チャウオー」になり、そこから「チャウオー」って何だろうって考えていって、“チャウ”は関西弁で言うと「違う」という意味で、“オー”は「王様」というイメージから、「チャウオー」は「王様じゃない」という言葉が浮かび、「偽物の王様」という言葉に行きついたんです。
── ダジャレみたいですね(苦笑)。
のび太:それで、「偽物の王様」を英語にしたのが「Fake Kings」で、『Ciao, Fake Kings』というフレーズが生まれたんです。その後、タイトルに意味を持たせようと考えていた時に、王様って実力とかを兼ね備えた人がなるものだと思うんですけど、いろんな分野において、力を持ち合わせてないのに王様の座にいる見せかけの王様が少なからずいるということを感じていて。僕たちは音楽で勝負していますけど、この世界にもいる偽物の王様に僕たちの信じる音楽を見せつけたいという思いがあるんです。直感で付けたタイトルの行きついた先が、偶然にも普段自分が思っている意志と同じようなところに繋がったんです。
── 思いがけず、タイトルに良い意味が付いたというか。
のび太:そうなんです。それと、リード曲が1曲目の『Casablanca』なんですけど、カサブランカって別名“百合の女王”って呼ばれていて、『Ciao, Fake Kings』がニセモノの王様を倒しに行くという意味を持ったタイトルで、そのリード曲が“百合の女王”って、ストーリーがある感じがしません?
── まぁ、言われてみたら。
のび太:それとカサブランカってウエディングブーケとして使われることが多い花だそうで、ラストの11曲目『Xmas Present For My Sweetheart』は大切な人に向けたラブソングなんですけど、これからもずっと一緒にいようというプロポーズの意味もあって、良い流れで繋がってるなぁと思ったんです。
── 偶然が重なったんですね。
のび太:偶然なのに、すごい良く出来たんです。
── ところで、今回のアルバムに収録されている11曲は全部新曲ですけど、シングルリリースもありましたし、全曲新曲のアルバムって珍しいですよね。
のび太:シングルもアルバムもひとつの作品というところで、シングルは小さいサイズの絵で、アルバムは大きいサイズの絵だとしたら、大きいサイズの絵の中に前に書いた絵の一部が入りこんでると、絵として完成しない感じがあったし、全部新曲のほうが僕らの作品に対する姿勢が伝わるんじゃないかと思ったんです。WHITE ASHはひと味違うというのもひとつ見せられるんじゃないかと思いましたし。スタッフの人たちは、まさかと思ったみたいですけど(笑)。
── 「シングル入れないの?」って。
のび太:アニメのタイアップが付いたシングルもあるのにって。でも、そこは絶対に良いものが出来るからって押し通して。僕自身好きなアーティストのCDを買ったら、新しい曲をいっぱい聴きたいと思うので。『Quit or Quiet』には『Paranoia』と『Kiddie』が入ってるんですけど、この2曲は限定発売でもう売ってないので、今CDショップで手に入るWHITE ASHのCDを全部買っても1曲もかぶらないんです。
曲にとって大事なことは何か
── WHITE ASHはロフトレーベルのバンドなので身内っぽい話になってしまいますけど、レコーディング中に事務所に出社したマネージャーは、いつも「レコーディングがちょっと遅れていて…」と焦った顔をしていて心配だったんですよ。全曲新曲でレコーディングの曲数が多いからかなぁなんて思ったりもしたんです。
のび太:ギリギリなのは毎回なんです。でも、火事場の馬鹿力じゃないですけど、追いつめられるといつも以上に力を発揮するタイプの人っているじゃないですか。僕はそのタイプなんじゃないかと思っていて、納得してもらえるものは出来たと思います。
── 11曲が全部揃ったのはいつぐらいだったんですか?
のび太:レコーディングをする前々日ぐらい…。ある程度曲がたまった段階で、みんなでデモを聴くんですけど、もっとノリの良い曲を入れたほうが良いんじゃないかという意見が出て、最終的に2曲目の『Number Ninety Nine』を作ったんです。曲を作る時は昔から「シンプルかつカッコいい」というコンセプトがあるので、とにかく1曲1曲大事に作ることをこだわって。ある程度曲数が見えて来たら、こういう曲を入れたいなというので残りの曲をバランスを取りながら作っていくという作業でした。
── 今作を作るにあたり、1年5ヶ月前の1stアルバム制作時に比べて、自分たちの意識が変わったと思うことってありました?
のび太:今回のアルバムが今までと一番大きく違うところは、『Number Ninety Nine』と『Xmas Present For My Sweetheart』はプロデューサーに蔦谷好位置さんを迎えてレコーディングに臨んだんです。その時に、これまで僕が思っていた「シンプルかつカッコいい」は、4人で表現出来ることに重きを置いていたんですけど、本当にそうなのかという検証をしたんです。ラストの『Xmas Present For My Sweetheart』は今までに比べるといろんな楽器を入れているんですけど、蔦谷さんと話をしていく中で、この曲に関してはライブで再現出来るかを基準に考えると作品としては物足りなさが残ってしまうんじゃないかと。それで、曲にとって大事なことは何かを考えて、出来上がった曲はギターとベースとドラムとそのほかにもいくつもの音が入っているんですけど、4音以上に音が増えたからシンプルではなくなったのではなく、その曲において本当に必要な音だけが鳴らされているというものがシンプルであるということを実感したんです。この曲をライブでどう表現していくのかは一旦置いて、この曲を一番良い状態に持っていくという意味で言えば、今まで以上に「シンプルかつカッコいい」の核がはっきりして、振り幅が自由になったんです。「シンプルかつカッコいい」に対する考え方が変わったというのがありました。
── ライブはライブ、作品は作品という考え方になった感じもありますね。
のび太:そうですね。『Number Ninety Nine』は同じフレーズを4つのアンプで一度に鳴らすということをしているんです。僕とギターの山さんで一度に鳴らすアンプは2つですけど、サビで4つ鳴らすことによって、サビの爆発感を出すことが出来たんです。聴感上は基本的にはフレーズしか聴こえないから、何個の音かっていうのはわからないんですけど、すごくパワーがある音になったと思います。今までの僕らだったらそういうアイディアは思い浮かばないし、蔦谷さんと一緒にやれたことで学ぶものも多かったです。
── 蔦谷さんとの作業を経て、他の曲の作業が変わったりは?
のび太:他の曲も、この曲の良さを100%引き出すことが出来たのかというところは考えましたね。例えばサビでもうちょっとアコースティックギターのコード感を出そうと思っても、今までだったらライブだともう1人必要になっちゃうから、それはやらないほうがいいってなったところを、その曲のサビが引き立つのであれば試しに入れてみようって。6曲目の『Bacardi Avenue』ではギロを使用してますけど、曲の雰囲気を作るものとして必要な音を考えるようになったし、積極的により曲と向き合うようになったと思います。
── それはメンバーみんなでアイディアを出して行くんですか?
のび太:『Bacardi Avenue』は、どこに何をどう入れるかはドラムの剛が率先して言ってました。
── 『Bacardi Avenue』は、メロディーが歌謡曲の感じもあって面白い曲ですよね。曲の作り方はこれまでと変わらずのび太くんが元ネタを持って行って、そこにみんなのアイディアが加わって行くという流れですか?
のび太:そうですね。今回は曲自体が今までの曲よりも、より表情が豊かなポテンシャルのある曲だったから、『Xmas Present For My Sweetheart』も出来上がった時に、もっといけるんじゃないかなというところで蔦谷さんにお願いしたんです。アレンジの考え方を変えたことで、曲がより表情豊かになった感じはありますね。