8年間の集大成となるアルバム『未完成の商業音楽』
——渡邊さんとはずっと一緒に活動されてたんですもんね。では今回のアルバムはどういった経緯で作ることになったんですか?
前から繋がりがあったPCI MUSICという流通の会社の上島さんが声をかけてくれたんです。
——いつ頃制作が決まったんですか?
今年入ったくらいに、年内にアルバム出したいなっていうのはあって。渡邊さんとの話も解決したところで制作に入りました。
——選曲はどのように?
ライブでよくやってる曲やCDにしたかった曲ですね。
——メンバーと話し合われて?
いや、僕1人です。バンドで話し合いとか1回もしたことないですね(笑)。
——長い付き合いで信頼されてるからですかね。
いや何も考えてないんじゃないですか。メンバーは一緒にいてもおもしろくないんで、友達としては会いたくないですし(笑)。雑務が得意でスタッフみたいな感じです(笑)。
上島:澤田の追っかけですよ(笑)。
——レコーディングは順調でしたか?
今までは楽器は一緒に録ってそれで歌を入れるっていう一発録りでやっていたんですけど、今回はドラムだけ、ベースだけっていうようにプロっぽいやり方でやってみようよって、友達のバンドマンに格安で頼んで。そいつとは18の時くらいからの付き合いなんで。
——信頼してレコーディングができたんですね。別々に録るっていうのはどうでしたか。
なまら難しかったですよ。みんなうまくないんで(笑)。ドラムとかクリックと合ってなくて、次にベースパートを録ってもずれてるドラムに合わせるのでどんどんずれていくっていう。そこが一番難しくて、もう二度とやりたくないです。
——期間はどのくらい?
前のアルバムは1日で終わらせてたんですが、今回はバイトとかで入れない週もあったりしたのもあって、3ヶ月くらいかかりましたね。
——レコーディング中話し合いとかは…?
全くないですね。僕が1人で判断して、指示出して。
——鬼コーチみたいですね(笑)。では1曲ずつお話を伺いたいのですが。
1 未完成の商業音楽
1枚目のCDが出た年の夏くらいに作った曲で、札幌にいた時に付き合ってた子に対して音楽をやってるけど君のことが好きだよっていう気持ちを込めましたね。
——そのテーマは澤田さんの作る曲によく出てきますが、音楽をやってるけど君のことが好きだよってどういうことですか?
この曲はより直接的かもしれないですね。自分にとって音楽が1番だからお前のことないがしろにするけど、それでも好きだから付き合おうよって。
——それに対して好きな子はなんて?
うんって言いますよ。僕が好きな音楽をやってお金を貰って好きな子を養えたらなと思いますね。
2 シロツメクサ
——「一体あと何をいくつ捨てれば君は死んでくれる」っていう歌詞が印象的ですが。
これも昔の曲で、歌詞が恥ずかしいですね。最近曲を作ってなかったので昔の曲を引っぱりだしてやってみようよって入れました。
3 見切り日和
新しい曲をやりたいと思って作りました、テーマはいつも通りです。
——見切るというのは?
なんだろう、頑張ることに対しての意欲とか。逃げたりすることを肯定しようというか。悪いことじゃないんじゃないかなって。
4 スピッツの言いなり
——これは1stアルバムにも収録されている曲ですよね。
あれはデモ音源だったので今回ちゃんとやってみようかなって。
——このタイトルは?
スピッツがすごく好きで『うめぼし』という曲に「星占いで全てかたづけたい」っていう歌詞があるんですけど、それを聴いてなんて歌詞だと。すげえ曲だと感銘を受けて作りました。星占いで片付けられたらそんな楽なことないんじゃないかと。
5 東京と金木犀
金木犀って北海道にないんですよ、だから東京来たときになんだこれ、すげえいい匂いするじゃんってその時付き合ってた女の子に言ってて。その子のこと、好きだったなって考えながら。金木犀の匂いは東京に来た頃のことを思い出させますね。
6 こわい話
僕の中のレミオロメンのイメージで作ったんですけど、ライブではなかなかやる気にならなくて。ただ曲自体はとても気に入ってるんでCDに入れたいなって思って。
7 歪むテレキャスター
この曲を作った当時、バンドはキメたりブレイクしたりするのがかっこいいって思ってて。速い曲をやってみたくて作ったんです。だからこれ以降そういう曲が多くなりましたね。
——ファンにとってはようやくアルバムに入ったなという感じです。
8 GM7のなんちゃら
これは弾き語りの時からやってた曲なので一番古いんですよ。それがバンドでやって音源になったっていうのは感慨深い感じがありますね。
9 タイトルなし
——このタイトルは澤田さんが?
僕はタイトルはあんまり自分で決めてないんです。札幌でバンドをやってた先輩が東京に出て来てて、その人が「これは空白がいいんじゃない」って。それで空白いいじゃんって(笑)。僕が上京した時も何のアテもなく出て来たんで1年くらい泊めてもらって。バンドのHP作ってもらったり、タイトル何がいいとかこういう文章書いてよとか頼んだりして。今回のアルバムだとこの曲と1、3、5曲目のタイトルを決めてもらいました。
——これまでのジャケットは渡辺ペコさん、榎屋克優さんといった漫画家さんにお願いされてましたよね。
今回はイラストレーターのフクザワさんに。もともと一緒にやりたいって言ってくれていて、僕もフクザワさんのデザインに好意をもっていたのでお願いしました。すごくいいですよね。
澤田さんにとっての「未完成vs新世界」
——グッズも楽しみですね。ずっと伺いたかったんですけど、このバンド名にはどんな思いが込められてるんですか?
同じタイトルの曲もあるんですけど、説明するのがいつも難しいんですよ。自分が見ている世界とその子と付き合ってから見える世界について。自分とその子は未完成で、でも今まで見た景色とか過ごした場所も2人で見ると全部新しいなって。それは音楽も一緒なんじゃないかなって思っていて。同じ場所で同じメンツでやっても同じライブにはならなくて、毎回新しい世界が見れるんじゃないかな。そして僕らは完成されてないっていう意味で未完成。
——澤田さんにとって音楽をやっていく軸というのは何ですか?
好きな女の子に対して歌うというのと、ダメな部分を肯定しようっていうこと。「どうせ死ぬ」んだから、嫌なことはやんなくてもいいっていう。
——それがどの曲にも繋がるテーマになってますね、最後に今後の目標を教えてください。
このCDで僕らのことをちょっとでも知ってもらってライブハウスに足を運んでくれる人が増えてくれたらな、と。
——今後レコ発ツアーも控えてますしね。本日はありがとうございました!
未完成VS新世界 / 「未完成の商業音楽」
http://youtu.be/n4jpFePwJ08