良い意味で頑固になっていかないと
── ところで、音速ラインのお2人はSAKANAMONを聴いたことはありますか?
藤井:ふくしまFMでラジオをやってるんだけど、そこでSAKANAMONの曲をかけたことあります。
SAKANAMON:ありがとうございます!
藤井:歌詞の書き方とかが、フジファブリックのDNAがありそうな気がした。
藤森:文化祭でコピーさせて頂いたことがあります。
藤井:それと、『na』はデビューアルバムならではの瑞々しさというか、僕らが忘れているものが詰め込まれていて、それは次のアルバムで出したいなって。
大久保:毎回言ってるけど。
藤井:若いバンドのCDを聴くと定期的に思うことで、瑞々しさがすごく出てた。ほとばしるというか。大久保わかる? わかんないよな。
── でも若さは戻せないですからね。
藤井:だから若い時期にしか出来ないことをちゃんとやっておかないと。その時にしか出来ないことなんて、なかなかわからないんだけどね。それに、俺らも昔やってたと言えばやってたんだろうし。
── 音速ラインの『風景描写』を昨日聴いていたんだけど、「これからやってやるぞ」というのがすごく伝わる作品ですよね。
藤井:グイグイ感が自然に出ているんでしょうね。今の俺らは、グイグイ感を出そうぜって話さないと出ないから(苦笑)。
── この2バンドは世代が一回り違うんだけど、30代のバンドも今の20代のバンドのように「これから行くぞ!」って意気込んでいた時代があって、そこから一周して原点に立ち返っているという印象があるんですよね。時代は変われど、一緒だなということがいっぱいある。それと、30代のバンドと最近話していると、「売れたい」と素直に言い始めた人が多い印象があって、SAKANAMONの世代が言う「売れたい」と、音速ラインの世代が言う「売れたい」は種類が違うかもしれないんだけど、お互い現状に満足せずに走り続けてる感じはありますね。
藤井:現状に満足なんかは絶対しないよね。僕は年齢的に40歳で区切りの年なので、今年はいろいろと出来そうな気がするんだよね。
── 藤井さんも剛くんも活動を始めてから10年以上経ちますけど、今の状態はデビュー当時からイメージ出来てました?
大久保:長く続けたいなとは思っていたから、そのために何をするかというのは常に考えてましたね。
藤井:でも、ミュージシャンは先を見過ぎちゃったら出来ないと思う。
大久保:ただ、目先の目標は作っておかないと。
藤井:目先の目標を作って、それをクリアしていって、気が付いたらこうなってたという感じかな。
── 長く続けていることはすごいことだと思うけれど、もっともっとと本人が思っているから応援しがいがあるんです。
藤井:SAKANAMONは3人のバランスが良さそうだから、ずっと続く気がする。
藤森:ホントですか! ありがとうございます。嬉しいなぁ。
藤井:俺なんかに言われてもなんの保証もないけどね(苦笑)。
── 先輩からメジャーでやってくことだったり、音楽をやっていくにあたってのアドバイスってありますか?
藤井:他人の意見を聞くな。自分らが良いと思った事をやるしかないからね。いろんなことをいろんな人に言われるから、絶対に。どこまで自分を貫けるかで、続けられるかどうかが決まってくるような気がする。それと、納得していないものは出さない。納得してないものを出してる人もいるからね。そういう人らはいなくなっていく。良い意味で頑固になっていかないとと思います。
好きだったら続けられる
── SAKANAMONのみなさんから聞いてみたい事はありますか?
藤井:難しいよね。あんまり考えこまない方がいいよ。バカでいたほうがいいから。そのバカな感じを共有出来るメンバーであればたぶん大丈夫。考えてるようで考えてないようで考えてる。そこだよね。
大久保:自分らでそういうペースを掴んじゃえば。
藤井:誰か1人深刻になったヤツがいたら、全力でバカに戻す。めちゃめちゃ考えてやってる人はやってるし、それぞれタイプにもよるけど、俺らはバカになったほうがラク。
大久保:バカは深刻な部分を表に出さないからね。
── 最近はTwitterの発言ひとつにしても、悩んでいるということをストレートに言う若いバンドも多いですからね。それが良いのか悪いのかはわからないし、お客さんからしたら、こんなに悩みながら書いてるんだというところにリアルを感じるんだろうし、書いてる側もラクして生んでるものじゃないんだよということを伝えたいのかもしれないけれど、総じて駆け出しのバンドは、難しく考えてる人が多いという印象もありますね。
藤井:考えてないわけがないからね。でも、出すか出さないかはバンドのカラーにもなっていて、俺らは出さない方が良い気がする。
大久保:自分らもそれが一番合ってると思うし。
── SAKANAMONはどう?
藤森:僕らも出さない方ですね。
大久保:Twitterとかで発言しちゃうと、結局は自分に跳ね返ってくるから辛くなるんだよね。
藤森:僕は否定されるのが怖いから、なるべく自分の中だけに。自分を否定されたくないんです。
大久保:それも良いと思うよ。
── Twitterをやってると、ネガティブな意見とかを直接見てしまうことはないですか?
藤井:全くない。…あ、全くいないことはないや。「まだいたんだ」みたいなことを言われてることはありますね。でも、否定的なことじゃなくて、「まだいたんだ。ひさしぶりに聴いてみよう」って。そういう位置になっているのもわかりますけどね。デビューして8年だもんな。デビュー当時の僕らを聴いてくれていた中学生や高校生と、こうして対バンするわけだから。最近は「中学生の時に聴いてました」って言ってくれる人が多いね。
── 私も最近20代前半の人たちと話すと、音速ラインとかフジファブリックとかメレンゲとか「高校生の時に聴いていました」と言われることが多いですね。そうやって彼らが聴いていたバンドが今も現役で活躍しているし、SAKANAMONも何年経っても続けて後輩に刺激を与えて欲しいなと思いますよ。
藤井:好きだったら続けられる。どこかで音楽を嫌いになる瞬間が一度はあると思うんだけど、そういう時は1回辞めてみるのもテかも。おそらく辞められないから。
大久保:藤井さんは一度音楽を辞めようと思って「ギターを触らない」って言った夜に触ってたから(笑)。
藤井:これはやるしかないんだなって思った。バンドやってると辛いこともたくさんあるんですよ。
── ツアー先のホテルとか(笑)。
藤井:オバケが出そうなボロボロのホテルに泊まることも多くて、ワンステップ上がらないとこの地獄から抜け出せないって(笑)。ナニクソ! って思うわけですよ。だから若いうちに良い思いはしないほうが良いと思いますよ。それがバネになると思うから。