Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューよしむらひらく(Rooftop2012年10月号)

過去にない手応えを感じた自信作を引っ提げ新たなステージへ進む!

2012.10.05

 昨年、Song-CRUXよりシングル「春」とミニ・アルバム『はじめなかおわり』でCDデビューを果たした25歳のシンガー・ソングライター、よしむらひらく。9月19日に約1年2ヶ月ぶりとなる4曲入りの新作「2012 EP」を発売し、新境地を見せている。今作では自主制作時代の頃のように、全楽曲のレコーディングからミックス、演奏の大半を本人が行い、より"よしむらひらく"を感じる事の出来る内容となっている。また、「2012 EP」には、スピッツの草野マサムネ氏やGOING UNDERGROUNDの松本素生氏らからも賞賛の声が届いており、その注目度の高さが十分に伺える。
 今回は、「2012 EP」の完成に至るまでの葛藤や心境の変化を、本人とマネージャーによる対談形式で深く掘り下げてみた。

“自分のための歌”からの変化

──昨年、ロフトのレーベル“Song-CRUX”からシングル「春」とミニ・アルバム『はじめなかおわり』をリリースさせていただきました。初めての全国流通盤だった訳だけれども、率直な感想はどうだった?

「うーん、10万枚は固いと思ってたんだけどね(苦笑)。なかなか、世知辛いですよ。それでも、リリース前と比べたら状況は激変したし、期待を裏切られた!っていう感じは全然無かった。ただ、『はじめなかおわり』を出して半年ぐらい経った頃…ちょうど『2011』(2011年末に期間限定でリリースした自主制作CD-R)を出した頃は、物足りなさみたいなものを感じた事はあった。俺は諦める事が好きというか、諦めがちな人間だから、どうやって音楽を辞めていこうかなって事を考えていたかなぁ。」

──…えっ? 思い描いていたような売れ方をしなかったからとはいえ、そこまで思い詰めていたの?

「いや、全然暗い感じでは無いよ。これと言ってドカーンと大きな変化が無かった訳じゃない? だから、どんな辞め方がカッコ良いかなー、どんな仕事しようかなー、とか。まあ、考えていたと言っても、俺は絶対に働けないっていう確信はあったから(笑)。そんなに真剣には考えてなかったよ。」

──それでも約1年2ヶ月の間が空いたけれど、やっと新作リリースまで辿り着きました。すごく良い作品が出来たと思います。今回の『2012 EP』は、まず今までと違うのは、今回収録されているのが主にまだライブでも披露されていない曲であって、その曲作りというのはまず作品のための、ということだったよね。『決壊』だけはライブでも披露済みだったけれど。

「うん、そうだね。曲を作らなければいけない期間がちゃんとあって作ったのは初めてだったから。かなりの缶詰状態で。辛い思い出になりましたが(苦笑)。とは言っても、作品が完成した今は、苦労したとかは何も思わないし、苦労して作ったからどのうこうのっていうのは無い。」

──〆切期間もそうだし、どういうテーマで曲を制作かっていう課題の元での制作も初めてだったよね? 苦労はしたけど、お陰で『tokyo2012』という、今までのひらくくんには無い新たな方向性の曲も生まれました。

「そこはね、必殺の4つ打ち(笑)って事で。自分の中では完全に禁じ手って感じだった。だから、これだけ世の中によくある “4つ打ち”っていうフォーマットで、どうやってよしむらひらくに寄せて行くかっていう考え方で作ったんだけど。だから、そういう意味で曲を作る人、ソングライターとしての新しい経験が出来た事は面白かったかな。そういうフォーマットの中でも、自分らしい温度感みたいなものだったり、メッセージを上手い事盛り込めたのかなと。結果、“tokyo2012”は、今までに無い手応えを感じた曲になりましたね。」

──でも、今までなら、テーマを事前に持って制作するなんて事はほぼ無かったし、そういう提案をしたとしても受け入れなかったでしょ? だから、成長というか、ひらくくんの中での大きな変化があったんだろうなって。スタッフとしては嬉しくもあり、頼もしくもありです。

「なるほどね。たしかに、そうだよね。前はヤケになってた時期とか瞬間はたくさんあったから。でも今回、リード曲として作り上げる事が出来たってのは、ひとつ大きな自信になったかもしれないな。なんだかんだ言って、自分でも気に入った曲になったし。でも、今までのよしむらひらくが好きだった人や、自主盤出してた頃が好きだった人からしたら、はじめ聴いて瞬間ははてなマークなのかもしれないけど、何度か聴いたら分かってもらえる…っていうと偉そうだけど、ああなるほど間違って無かったなって思ってもらえる自信はある。」

──歌詞にも変化があったよね。メッセージの打ち出し方とか。

「うん、そこは明確に作り方を変えたからね。今までは、すごく内向きに想像力を働かせていて、自分のための歌っていう部分がすごく大きかったと思うんだけど。今回は聴く人がどういう風に感じるか、っていうことだけを考えて歌詞を書いたかな。『決壊』だけは、昔のよしむらひらくっぽいっていうか。割と内向きな曲ではあるかな。」

『2012 EP』の完成は大きな自信に繋がった

──で、ラストの『dancin’/Autumun fair』がね、また面白い曲で。よしむらひらくにはこういう一面もありますよ、っていうのを伝えられるかと。

「うん。曲のデモ自体は2010年ぐらいからあって。まさか世に出る事になるとは思わなかったけど。スタッフ陣も“まぁ、いいんじゃない(笑) ”っていう悪ノリが発動した感じで。『dancin’/Autumun fair』を収録出来たっていうのは、チームの中での互いの信頼度みたいなものや、連携のスムーズさみたいなものができてきたからこその選曲だったんじゃないかな。それは自分としても凄く実感がある。あと、『tokyo2012』とか『決壊』という安心できる曲が既にあったからこそ、こうやって選曲にもゆとりが出来たっていう面も明らかにありますね。」

──前作はエンジニアの杉山オサムさんを迎えて、初めて外部の方と制作をしましたが、今作は自主盤時代に戻って、全て自分でレコーディングからミックスを行なったというのも大きなトピックだと思いますが。

「セルフレコーディングに戻ったっていうのは、オサムさんと一緒にやった事が悪かったって訳じゃ無くて、まだ自分が人と一緒に録音をして音源を作るっていう作業をする技量がないなって思って。自分の方が録音を上手く出来るからっていう考え方は全く無い。ずっと自分一人で録音してきたから、それに慣れているし、その方が今の俺にはやりやすかったってだけで。昔から使っていたMTRから新しい機材に変えて、1ヶ月ぐらいで直ぐに録ったんだけど。なんとかなった感じですわ。今の技術の進歩には本当に驚かされた(笑)。」

──演奏面でも、自分で担当するパートが増えたよね。

「それも、同じ理由で、自分の方が楽器が上手いからって訳では全然無い。自分でやった方が呼吸は分かっているし、人と一緒に演奏する事の方が俺にとっては難易度の高い事だから。ただ、次はもうちょっとメンバーと一緒に作ろうかなと思ってますが。」

──次もまだまだ良い曲が控えているからね。

「うん、出し惜しみしかしてないからね、ずっと(笑)。この先2年分ぐらいの曲数はあるんじゃない? 今回、ずっと雲の上の存在だと思っていたスピッツの草野マサムネさんや、GOING UNDERGROUNDの松本素生さんにコメントを頂いたり、くるりの佐藤さんにも他誌だけどディスクレビューを書いて頂いたり。そういう人たちに音源を聴いてもらって、言葉をもらったっていう経験がすごく自分の中で生きていて。それはステージに立っている時も、普段生活している時にも、今までと違う気持ちが確実にある。だから、そういう中でこれから生まれてくる曲も変ってくるだろうし。この先が本当に楽しみ。あと、今回のEPは4曲収録だけど、俺はやっぱりフルアルバムでようやく音源を作ったって思えるタイプの人間だから。そういう意味では、フルアルバムという形でのリリースはまだな訳で、それまではゆっくり温かく見守っていてほしいなと。わがままなお願いだけれど、待ってもらった価値があるものを作る自信はあるから楽しみにしていてほしいです。100万枚売りたい。」

──昔から「売れたら城を建てたい」と言ってるけど、その夢は変らず?

「うん。城を建てたいな(笑)。と言うのは置いといて、まあ、でも、もしもお金が余るぐらいあったとしたら、人のための使い道が今の日本にはいっぱいあるから。そういう事を考えると思う。昨年の3月以降、売れたいっていう気持ちがすごく強まったのは、ああいう時に自分じゃ本当に何も出来ないなっていう悔しさがすごく大きかったからっていうのがあって。そういう意味でも、何か出来る力をつけていきたい。ちょっと偽善っぽいけど、本当に、そう思うな。そのためにもっていうか、そのためにはまず自分が一人の社会的存在として認められるようにならなきゃいけない。だから、売れたいっていう気持ちはどんどん強くなる一方で。どんな手を使ってでも売れてやりますよ。俺は。皆さん応援して下さい。」

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2012 EP

RTSC-021 / 1,000yen (tax in)
IN STORES NOW
レーベル:Song-CRUX

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LIVE INFOライブ情報

10.07(日)タワーレコード新宿店7F ※観覧フリー
10.31(水)新宿Motion
11.22(木)渋谷O-Nest(レコ発)
12.01(土)大阪 梅田HARDRAIN(レコ発)
12.02(日)京都 二条livehouse nano(レコ発)

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