昨年11月に1st.アルバム『千年幸福論』をリリースしたamazarashiが、早くもニューアルバム『ラブソング』をリリースする。
2009年12月に青森で500枚限定の『0.』をリリース後全国盤『0.6』をリリースし、突如音楽シーンに現れた彼ら。作品の発表はコンスタントに行なっていたものの、ライブは一切やらず、メディアへの登場もほとんどなかったが、昨年6月に初ライブとなる"この街で生きている"を渋谷WWWで開催した。その後、恵比寿リキッドルームで追加公演、11月にリリースした『千年幸福論』のワンマンライブは渋谷公会堂(2012年1月)、その追加公演として3月にSHIBUYA-AXとumeda AKASOで行ない、次の東京公演はZepp DiverCity TOKYOが決定している。
彼らのライブはライブ写真を見てもらえたらわかるように、ステージ前方に半透明のスクリーンが設置され、終始スクリーンにPVや曲に合わせた映像が映し出される。そのため表情を窺うことはほとんど出来ないが、詞世界、サウンド、映像が強烈な衝撃を与え、視覚と聴覚がフル稼働し、見る者の感情を揺さぶって行く。しかし、amazarashiの中心人物・秋田ひろむは以前こんなことを言っていた。「ライブを意識して曲を作っても、そんなに変わらない様な気がしています」と。だが、ライブの数を重ね、多くの人が彼らのライブを待ち望んでいたことを目の辺りにしたからか、少し心境に変化があったようだ。
今作『ラブソング』を制作するにあたり、彼は何を思い、何を憂い、何に喜び、どんな刺激を受けながら作品を作り上げたのだろうか。今回もメールを通じてインタビューを行なった。(interview:やまだともこ)
それでも生きて行かなければならない根拠を歌う
── 昨年6月に渋谷WWWで初ライブを行ない、その後、恵比寿リキッドルームや今年に入って渋谷公会堂、SHIBUYA-AX、umeda AKASOでライブが行なわれました。ライブをやることでリスナーとの距離が縮まったり、リスナーの感情をダイレクトに受け取ることにより、その後の音楽活動に変化はあったのでしょうか?
「変化はあったと思います。今回のアルバムにそれが反映されています。ファンだけじゃなくお世話になった身の周りの人達も含めて、リスナーを意識して曲を作る事が多くなった気がします」
── では秋田さんにとって、昨年はどんな1年間でしたか?
「あっと言う間に過ぎた感じがします。amazarashiの活動で新しい体験もあって、常に緊張していたというか、肩肘に力が入っていた気がします。もっとリラックスしてやるべきかな、と思っています」
── そして、2012年が始まって半年が過ぎましたが、どのような2012年になっていますか?
「今の所、まだ準備期間かな、と思っています。アルバムは完成しましたが、ライブをやってからが本番だと思っています」
── 昨年11月に1st.アルバム『千年幸福論』をリリースして以降は、ご自分の作った曲をこれまで以上に多くの人が聴いてくれているという手応えはありましたか?
「その辺は相変わらずないですね。普段暮らしていて、実際にamazarashiに対しての反応を見る事はほとんどないです。でもメジャーで音源を、今回のものを含めて5枚リリース出来ているので、悪くはないんだろうなと思っています」
── すごく短期間でのアルバムリリースとなりますが、曲は常に書いているのでしょうか? まだまだ世に出してない曲はたくさんありますか?
「曲を作るのはあまり早くないと思うのですが、定期的に作るようにしています。世に出していない曲はそこそこあります」
── ニューアルバム『ラブソング』ですが、制作時期や期間はどのぐらいだったのでしょうか?
「アルバムを意識して曲を作っていた訳ではないので、具体的には難しいのですが、大体の曲が『千年幸福論』のリリース前後に作った曲です。『ハレルヤ』は古い曲で、昔に作った曲です」
── アルバムの曲順は、すんなり決まりましたか?
「最後ギリギリまで悩みました。大体ポエトリーリーディングの曲を最後に作るのですが、それが出来てから全体の流れがしっくり来た気がします」
── アルバムの制作に取り掛かる時点で“愛”がテーマとしてあったのでしょうか? SHIBUYA-AXのライブ時には「くそったれの世の中に送りたい曲」と言ってから『祈り』『未来づくり』『千年幸福論』が演奏されましたが、くそったれな世の中だからこそ“愛”を歌う必要があるということでしょうか?
「テーマは全く無かったです。出来た曲を並べてみたらそういう曲が多かったので『ラブソング』というタイトルにしました。愛を歌う必要性は特に感じていませんが、歌いたい歌を作ったらこうなってしまったので、無意識にそういう事を感じていたのかもしれません」
── 『ラブソング』は、“未来は無いぜ 陽も射さない 時代葬ったカタコンペ”という強烈な歌詞で始まりますが、読み進めて行くと、未来は見えないけれど、それでもどうにしかして生きていくという気持ちが入っているのではないかと感じました。『ラブソング』にはどんな思いを込めているのでしょうか?
「未来に期待出来ない時代だと感じているのですが、それでも僕らは生きて行かなければならないので、その根拠を歌いたかったです。自分を肯定するというのがamazarashiの歌の主眼だと思うのですが、その延長線上にある今の気持ちを歌った歌です」
── また『ラブソング』の歌詞に“愛こそ全て”とありました。この歌詞全体を読んだ時に、タイトルこそ『ラブソング』ですが、社会に対する風刺的なニュアンスを私は感じましたが、秋田さん自身は“愛”についてどうお考えですか? お金を払ってでも愛は手に入れる価値があるものだと思いますか?
「この曲では“愛こそ全て”と皮肉で歌っているのですが、僕自身は“愛こそ全て”というのはその通りだと思います。“お金を払えば愛は手に入れられる”と思い込ませようとしている社会の仕組みに対しての皮肉です」
── 『ラブソング』は、どこか昨年の震災後の世の中の混乱を思い出してしまいますが、それをきっかけとして書いた部分はありましたか?
「今でも日本中がそういう空気ですので、僕も影響されていると思います」