昨年10月6日にロフトプラスワンで開催された、『モテキ』や『アゲイン!!』の作者・久保ミツロウと、『くすぶれ! モテない系』や『ドリカム層とモテない系』の作者・能町みね子のトークライブ"男子禁制!! 俺たちデトックス女子会"。この第2回目の開催が決定した。
"モテ"に対して敏感なお2人による"デトックス"の内容と言ったら、日頃モテない女子が友達(もちろん同性)とクダを巻きながら呑んでる時の会話そのものでもあり、前回のイベントに参加して思ったことは、非常に共感が出来るお話しかない! ということだった。"モテない"というワードは、時に自分を惨めに感じさせることもあるが、それを共有出来る者同士が集まって、笑って話せる、笑って聞ける、私たちが求めていたイベントがこちらなのだ。今回も男子禁制、お2人が日頃からため続ける毒素を"ぷー"と丁寧に吐き出していくそう。「このイベントで何が生まれるのか?」と聞かれると正解は出せないが、ステージと客席の結束力だけは充分に生まれると思う。そういうイベントのご紹介。(interview:やまだともこ)
共有できそうな人に吐き出したい
久保:インタビューまで載ったら、これでわしらもロフトっ子になれるのぉ。
── (笑)今回は1月26日にロフトプラスワンで行なわれる“俺たちデトックス女子会”と、10月6日に開催された第1回を振り返ったお話を聞かせて頂けたらと思っています。
能町:あのイベントの後、“俺たちデトックス”のTwitterアカウント(oretachi_detox)を作ったんです。@で普段言えない愚痴とかを言って下さいという場所です。
── @で愚痴を書いたら回答してもらえるんですか?
久保:まだ情報源として使うのかどうかも悩んでいるところなんですけど、年末年始に心揺れること多いと思うから。
── ここでデトックスして、2012年明るく過ごせたら良いですね、という?
能町:「明るく過ごそう」でもないんですよね。明るくなれないのはわかってるけど、少し一旦出しておこうって。
── 1回目に参加された方はご存じだと思いますが、まずお2人が出会ったきっかけを教えて下さい。
久保:能町さんの日記とか本を前から読んでいて、この人とは仲良くなれるというよくわからない自信があったんです。いつか私たちは会わなきゃいけないと。それで、能町さんがプラスワンでやったイベントに1人で行って、『モテキ』の1巻を持ってサインの列に並んで「これ読んでください」って渡して。
能町:まだ『モテキ』が発行される前ですよね。イブニングも読んでなかったので正直知らなかったんですけど、読んでみたら自分と同じタイプの人だって思って(笑)。
── どこか通じるものが(笑)。
能町:ひっかかるところがありますね。でも、この人とこの人とこの人は同じ系統だよねって読者の目線から見て思うよりも、私たちが仲間だと思うのはもうちょっと狭い。固有名詞出したいんですけど。…これは、イベントでは言いましょうね。私たちは一括りだと思ってないということはよくあります。
久保:細かい違和感はありますよね(笑)。セックスもしていろいろやって今があります、みたいな本を書かれてる方とかとも同じラインに私たち立たせられるけれど、このラインで泣きそうな顔になってるのがバレないかっていう(笑)。セックスを謳歌されてる方と一緒にされても、私らは遠くの華やかな人をいいな…と思う外野の存在だし。謳歌されてるわけじゃないのかもしれないけれども。いろいろなくてこうなってる人とはちょっと違いますよ。
能町:いろいろあった上で悟ってるっていう人と、何もなさすぎてこじれちゃった人とは、一緒になるわけがないんです。
── イベントをやろうと思ったのは、日々感じる違和感を吐き出したいと思ったからですか?
久保:Twitterとかでエゴサーチして、小さなことで傷ついたりもするんです。
能町:それを共有できそうな人に吐き出そうと。でも、会場に来てくれる人も、条件は“女の人”ってだけだから、リア充が来る可能性は当然あって、仲間か敵かわからない部分はありますけど。
── 前回の客席は、お2人から見てどんな印象でしたか?
能町:イベントの最後にけん制と冗談を込めて、「そんなこと言っても、ここにいる7〜8割彼氏いるんだろ!?」って言ったんですよ。そしたら反応が微妙で。あとでTwitterの感想見たら、「あの時の空気が変だった」とか、「全然彼氏いないんですけどね」って書いてあって、サインをもらいに来てくれた人を見ても、7〜8割はないなって(笑)。
── その後、言わなくていいのにTwitterで「彼氏いるのは3割ぐらいかなと思いました」と訂正してましたよね。
能町:ついつい訂正しちゃいました。
久保:でも、あれが求めていた世界だったんです。「今回女性限定でやったけど、次回男子とか入れたらどうします?」って言ったら、みんなの反応が「えー。男子呼ばないでー」って大ブーイングで。学生の頃の男子こっち来るなという感じがして。想像以上に手応えがあった。あとでロフトの人に聞いたら、「今日はフードがすごく出ました」って。うちらのお客さんは、フードをめちゃめちゃ食いながら、独身で、彼氏もいなくて、っていう人が多いことがわかった。そこに男のお客さんがいて、私たちもウケが良いように着飾ってると他の女の人に思われたくないし、カップルの客に笑われたくない。私たちのモテないトークを聞いて、2人で顔を見合わせて「あはは」ってされたら、うわーー!! ってなりますよ。
能町:他の人と喋った時に出たのが、女子会は普通の女子が飲み会って言った時に男がいる前提だからこそ、女子だけでやるのを敢えて女子会って言うんであって、普通に飲み会で女子しか来ない人は、女子会ってそもそも呼ばない。だから、女子会とは言ってますけど、うちらは女子会って言葉に違和感があるんだって。
── その差を共有したいんですか?
久保:共有したいのかな。Twitterで言ったら角が立つし、形に残っちゃうから、形に残らないトークショーならいいんじゃないかって。能町さんとお酒を飲んでる時の会話とか、電話してるような内容でトークショーできるんじゃね? って意味もわからず確信を持ってた。
能町:最初のノリはそれですね。イベントやろうというノリは、私が久保さんにグチの電話をしたのがきっかけなんです。そしたら、2人で喋るだけでイベント出来るんじゃないの? って話になったんです。
基本自分は嫌われてると思っている
── 文句になることも笑えればいいですから。
能町:そう。笑えればいいんです。基本、やっぱりそれなりにエンターテインメントにはしないとと思っていて。ただ「ムカつくんだけど」って話ばかり言ってるんじゃなくて、それが聞いて楽しいものになるようにはと思っています。“モテ”だけの話じゃなくて、基本自分は嫌われてるという先入観から入ってしまうクセで、いろんなことがうまくいかないという話もけっこうあるんです。そこにいることを喜ばれてないんじゃないかって。ライブに招待された時にどうしたら良いかわからないとか…モテないところから派生した話ですけど。
久保:基本嫌われてますという基礎がしっかりしてるから、基礎から間違ってるよって言われても、その上に家建てちゃったからどうしようもないんだよ、元からやり直すとか出来ないんだよって(笑)。
能町:すごい建て替えになっちゃいますよね。
── その気持ちはよくわかります。私もライブハウスでバンドに挨拶と言っても、歓迎されてないというのも考えているので、パッと挨拶して、じゃあ帰りますって帰るということはよくあります。
久保:そうそう(笑)。早く私がいない世界で安定してくださいって。
能町:呼ばれてることすら義理だと思っちゃってるから。付き合いで呼んでくれてるんだろうなって思ってるから、呼ばれた時に「元から行きたかったんです」って過剰に返信しちゃったりするんですよ。でも行っても、関係者には一切挨拶しないで帰って、後からTwitterだけで「すごい良かったです」って伝える。
久保:私も、本人からライブに呼ばれて行ったんだけど、ライブ後に残ってる人たちが明らかに友達とか業界の人で、1人で行ったから知り合いも全然いなくて、居場所を見つけられなかったから挨拶もせずに出て、すぐに近くの喫茶店に入って「挨拶苦手だから帰っちゃってごめんね」というライブの感想および、ピンポイントであの曲とかホント良かったよってメールを30分かけて打って送ったら、その後本人がすごく良いメールもらったのって喜んでくれてたっていうのを聞いて、大成功! って(笑)。
能町:某バンドのメンバーと面識があって、この間TwitterのDMでライブに呼んでもらったんですけど、私が「元からすごい行きたかったんです!」って返したら、向こうから「ちょっとビックリした」って感じの返事が来て、ますます義理で誘ってたんだって思っちゃって。もちろんライブには行って、関係者席がちゃんとあるところだったから、挨拶しようかと悩んだんです。ここで待ってれば来るんだろうなって思ってたんですけど、業界の人ばかりでその空気にも耐えられなかったし、誰も知り合いがいないからずっとiPhoneいじるくらいしかすることなくて、結局なかなか出て来なかったので仕方なく帰って、後からDMで感想送ったんです。そしたら、「H(ボーカル)が会いたがってましたよ」って返信が来て、うそだろ? って。私はHさんも挨拶だけはしたことがあって、でも向こうは覚えてないだろうなと思っていたんです。でも、これ以上疑わないでおこうって。嘘かもしれないけれど。
久保:嘘かもしれないけど(笑)。やっぱり基礎がしっかりしてる。
能町:嘘かもしれないけど、これ以上疑ってこじらせるのもめんどくさいから信じたことにしといたほうが安心だと思って、「今度はぜひ」って返して終わったんですけど、まだ疑ってますね。たぶん実際会ったらそんなに話もはずまないだろうと予想してます。
── でも挨拶はしないけど、メールではちゃんと伝えるというところは似てますね。
久保:タイミングを逃す、それが私たち。たとえタイミングがずれたとしても、今までの人類の英知を集めてタイミングを掴めなかったことを取り戻したいって。若い頃は憧れのミュージシャンで近づけないよって思ってたら、何気に本人に認識されてライブに呼ばれるとか。せっかく憧れの世界に来たのに何やってるんだろうって。服を着たままシャワー浴びたい気分。何してるんだろう、私って。