ああ、聴いてた人がいたんだ

──『LOVE』の次の『マッシュルームカットとダッフルコート』は個人的にもすごく思い入れの強い名盤なんですが、僕は当時、GARLICBOYSがどんどん進化していると感じて興奮してました。
LARRY：そう思うんですけどねえ。アルバムのあり方としては軸があって最初から最後まで統一してたほうがわかりやすいじゃないですか。いろいろなタイプの曲が入っているとリスナーの方も戸惑うというか、何がしたいの？って。
──いろいろなタイプの曲が一つの流れとして入っている所なんかはコンセプトアルバムと言ってもいいですよね。『狂気』ぐらい評価されてもいいと思います。
PETA：それは言い過ぎ！
──でも僕は当時これを聴いて、30歳を過ぎた人の青春歌集だと感じたんです。
LARRY：等身大のメッセージだったんですかね？
PESSIN：この頃、あちこちのライブハウスにアルバムのポスターが貼ってあったのをよく憶えてます。自分もバンドやり始めた頃で。
LARRY：そういう世代には届かなかったんですかねぇ。20歳にはわかりづらかった？
PESSIN：うーん、曲のよさはわかったと思うんですが、今思うと深い所まではよくわかってなかったですね。
──他にも「昭和旅つばめ」とか名曲ぞろいです。
PETA：世間にどう受け取られているのか全然わからなかったですね。時々人から「聴いてました！」って言われると、「ああ、聴いてた人がいたんだ」って思ったり。
LARRY：ようやく最近ですよ。そういうこと言われるのは。
PETA：当時はツイッターとかもないし、なんて言われてたのか全然わからなかった。
──ジャケットもここから佐伯俊男さんが担当して、より独特の世界観が出てきたと思います。
LARRY：もともと三上寛とか好きだったんで、ダメもとで依頼してみたんです。引き受けてくれるとは思わなかった。
──『＋(ten)』からは「GARLICBOYS」と「荒野のさびしん棒」が入ってますね。
LARRY：「DQ69」とかもライブでやってるんで入れたかったんですが…。まあ、次（『収録ベスト２』？）も考えての選曲です。
──その時は「ハナクソマン」とかも入れて欲しいですね。
PETA：なぜか「ハナクソマン」を好きな人多いんですよ。
──あと「自殺同盟」はすごい名曲です。これは集団自殺を題材にした曲ですが、こういう作品って他のジャンルにもほとんどないんじゃないかと思います。
LARRY：　『ロマン』の「B-side」とかも、当時少年犯罪が増えていた時期でそれをテーマに歌ったんですけど、なかなか気づいてもらえないですね…。
──まあ「ハナクソマン」の方がわかりやすいですから（笑）。

また１人から始めればいい

──一番最近の『激情』からは「失恋モッシュ」が再録されてますが、これは実話を元にしている曲だとか。
LARRY：よく来てくれるお客さんに失恋した人がいて「そういう時は泣きながらモッシュすればいいよ」って言ったのを曲にしました。
──GARLICBOYSに兄貴的なキャラを求めるお客さんは多いんじゃないですか。
PETA：まあライブでは「俺はキミの兄貴じゃない」っていつも言いますけどね。
──「傷だらけの天使」の修ちゃんみたいに、普段はだらしないけど頼れる兄貴って感じだと思いますよ。
LARRY：昔の青春ドラマはもちろん好きです。「俺たちの旅」とか「飛び出せ!青春」とか。まあ好きってだけで、自分が中村雅俊になれるとは思わないですが。
──いや、そういう部分はありますよ。メンバーの方々から見てどうですか？
RYO：もちろん、僕にとってはもともとステージの下からまぶしい姿を見上げていた存在でしたから。
PESSIN：外側から見てる時もそうでしたが、メンバーになってからは特にそう思います。悩んでいる時とかアドバイスしてくれるんですが。
──なんかいいエピソードがあったら是非聞かせて下さい。
PESSIN：いろいろありますが…。最初に僕がGARLICBOYSに入るって話になった時に、前任のベーシストがすごい人だったから「僕が入ってお客さんがいなくなったらどうしましょう？」って言ったんです。そしたらLARRYさんが「お客さんがゼロになったとしても、また１人から始めればいいから」って言ってくれて。それを聞いた時、この人スゲエって思いました。それで不安がふっきれたんです。
LARRY：だってライブでお客さんがいないのなんていっぱい経験してきたし…。
──いやー、いい話ですね。いずれドラマ化したらいいんじゃないですか。「ガーリックボーイズ物語」とか。
LARRY：それ、タイトル安っぽすぎ（笑）。「南極物語」じゃないから。

まあ歌うしかないですよ…

──ざっと振り返ってみましたが、四半世紀にわたるGARLICBOYSの長い歴史においてもこの『再録ベスト』は珠玉の作品と言えますね。
LARRY：大成功ですよ。これからツアーがあるから、そこでまた曲を育てていくって感じです。１年後はまた変わりますから。とりあえず今の１番いい瞬間をパッケージにしたのがこれですので、この先はまたどうなるかわかりませんよね。新曲もいくつかありますが、まだまだ再録したい曲もあるし…。まあ自分らがやりたいことをやりますわ。
──常にマイペースですね。でもあと4年もすれば30周年ですよ。
PETA：その時は俺、もう50歳ですけど。
──50歳になっても「ちんかす」とか歌ってて欲しいですね。
LARRY：まあ歌うしかないですよ…そういう曲なんで。それは間違いない（笑）。