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INTERVIEW

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スネオヘアーの幸せな日常と音楽愛がギュッと詰まった1枚

2011.08.12

 8/24に発売する新作『スネオヘアー』はリスナーの日常にそっと寄添うような優しい作品。余計な飾りは一切なく、シンプルな作りだからこそ、混沌とした今の世の中に長く響くのではないだろうか。また、物越し柔らかいその佇まいとナチュラルな発言は、長い音楽キャリアがあるからこそ生まれるものだと強く感じた。新作『スネオヘアー』がより身近かに感じる事が出来ました。(intervew:樋口寛子)

自分の作品がまた出せるのは嬉しいです

── 早速ですが、『スネオヘアー』のレコーディングの他には、最近どういう活動をされていたんですか?
スネオヘアー「ちょうどアルバムを作り終えたばかりで、ロフトのリハをやったりしています。プロモーションもしていて、先日京都と大阪に行って来ました」
── アルバムの発売を目前に控えている今の心境はどんな感じですか?
「お客さんの反応が楽しみだし、ベスト盤をレーベルが変わる時に出して以降これから音楽どうしようかなぁ…と迷った時期がありましたが、その都度音楽は正直に発信してきたなという感じがありますね。だから環境が変わって、自分も40歳になったし、プライベート面や音楽面、世の中が変わっていった中で自分の作品がまた出せるというのは嬉しいです」
── 長いキャリアの中で様々な作品を発表していますが、今回は何故アルバムタイトルに自身の活動名を付けたのかが気になりました。
「自分の名前がついたアルバムをまだ出していなかったなぁと思いまして。まだこのカードがあったなって(笑)」
── アルバム全体を通して聴いた時の第一印象は、公私共々順調なんだろうなぁという印象を受けました。従来からのファンをはじめ、安心して聴ける作品だと思います。
「タイトルを付けるとアルバム自体に意味合いが出て来るんですよね。今回は幅広く、日々暮らしていく中で嬉しい気持ちとか悲しくなったりと色んな気持ちが誰しもあると思っていて、やっぱり音楽が好きなので、それを正直に歌いたい。その時に、自分がそのまま出るみたいな。イチ・シンガーソングライターでありたいというか…。自分が感じている日常感を広く表現しているので、聴いてくれる人にリンクする部分もあるのかなと思い、『スネオヘアー』がいいんじゃないのかなぁと思いつけました」
── 確かにスネオヘアーさんの日常を感じた1枚でもあり、優しい1枚にも感じました。
「そうかもしれないですね。結婚して幸せなんですけど、幸せな時ってそれで満たされていてアウトプットする必要性を今まで感じていなかったんです。それよりも、言えないもどかしさとかを言葉にしたり、上手く出来ない事や感じている事を曲にしていて、幸せな事は自分の中で成立しているから曲にする必要性がないと感じていたんです。でも、区切りというか、これはこういうメッセージがあるからこうだとかよりは、まずは音楽のファンだし、良いメロディーを作りたいというがあったので、幸せなものを感じている時に歌にしたいなと思ったんです。」
── それは今回制作していく上でこだわった部分でもあるのですか?
「あまりえぐい事はやりたくないし、つらい言葉は聴きたくないなっていうのがありました。サウンドにしても、混沌としていくような音はあんまり出したくないなっていうのはありましたね。3.11の震災後、震災に絡めた曲を歌うミュージシャンがいる中で自分もっていうふうにはならないのですが、どこかでギスギスしたものは嫌だなぁと思っている部分はありました」
── やはり今回歌詞を書くにあたり、震災の影響は大なり小なり受けていたりするのですか?
「そうですね。メッセージが聴き手に何か残るとしたら、それは良い気持ちで残りたいなぁというのがあって。それまではなんか引っかかるというか突き刺さっていくというか、そうなれたらいいなと思っていたのですが、今回はみんなハッピーになれたらいいのになって思いました」
── 今回の作品の中に、以前発表されたミニアルバムの中から3曲が収録されているのですが、そのセレクトはどういった経緯からですか?
「『逆様ブリッジ』と『赤いコート』はミニアルバムの表題曲で、キングレコードさんと繋がりが出来た曲で、アニメのタイアップを取った曲でもあったんです。『さらり』は『逆様ブリッジ』に入っている曲なんですが、これからも聴いてもらいたい大事にしている曲ですね」
── 個人的には『さらり』は大好きな曲で、歌詞にある「曖昧なものは曖昧なままで 大切なものはやっぱそのままで」の言葉にとても励まされました。この曲はどんな心境で書かれたのですか?
「みんなが見えない先を“大丈夫だから付いてこい”と言えるタイプのミュージシャンではなくて、自分も葛藤していますし、みんな幸せになればいいのになって思うのですが、やっぱり上手くいかない事もありますし…。それも含めて日常だし、人生観だし死生観だし。光があって影があって、両軸をいつも歌いたいというのがありますね。幸せになればいいって言っていますが、そんなはずはそうないなって事はみんな分かっていて、悲しみとかも認めて寄り添っていける強さがあればいいなって思うんですよね。頑張れ! 頑張れ! だけじゃなくて。自分自身がそう思うし、強過ぎると言葉が入って来なくなってしまうんですよ」
── また10曲目『秘密』がすごく夏っぽくて、こちらが勝手に抱いているスネオさんのイメージと違うというか、失礼を承知で言いますが夏っぽさがあまりない方だなと思っていたので、面白いと思いました。
「季節感がいつもあるんですよね。生まれも育ちも新潟なので冬になる時の匂いだとか、四季それぞれの移ろいとか、夏の特殊な祭り感というか。どの季節も短いのですが、夏は特に短く感じます。特有の気温が高いだとか、ソワソワするというか、日本特有の子供の頃の色々だったり」
── 以前も夏の曲がありますよね? それが原風景だったりするんですか?
「それは新潟の風景だけではなくて、イギリスの田園風景を見た時に懐かしいなって思ったんです、初めて行ったのに(笑)。サウンド的には、合宿で作った曲は大陸系というか、歌詞を載せる前にニセ英語で歌うのですが、アメリカの真っ直ぐに伸びる道だったり、ネオン管があるような、そういった大陸のイメージがあって。声のショートディレイのダブル感とか、ロン・セクスミスのようなフォークロックというか、エレキギターでガーっとやらないというかをイメージしています」
── それとアレンジ、歌詞も含めてシンプルって良いなと改めて思いました。個人的にも勉強になった作品です。
「引いていくアレンジでやりましたね。地味なんですけどね。今、色んなかっこいいバンドがいる中で、自分的にはこのほうが盛り上がれるなって。ギターの出し音はあまり前には出ていないし、歪んでもないので新鮮ですね」
── ちなみにアルバムの制作自体はいつ頃から着手しはじめたのですか?
「曲自体は昨年の年末位から書き留めていました。具体的には5月中旬位あたりから合宿に入って、デモの中から色んな曲を試しながらやって。そこである程度楽曲や構成を決めて。やっぱり電気ものやエレキをあまり鳴らさないようにしたいという話はして、夜は呑んだりしながらイメージを共有させて。東京に戻ってきてからベーシックを録音したりしました」
── 本当出来立てホヤホヤですね!(笑)
「そうなんですよ」
── 合宿ってどれ位入るんですか?
「今回は4泊5日かな」
── 合宿で合わせる事によって全然変わっていった楽曲もありますか?
「ありますよ。テンポとかビートとか。曲の内容が変わった曲もあります。『空想します』とか『家庭に入ろう』は最初からあんな感じで。『団欒』はモチーフみたいな感じで持っていきましたね。これまではハットの位置とかまで要望を言っていましたが、あんまりそういう事はやりたくなくて。メンバーと共有してもっとアイディアを出すというかバンドとしてグルーヴが欲しかった。ビートは結構打ち込みしたようなエディットした感じになっているんですけど、実は人力でやっていたりして。人力感が新鮮に感じています」
── 一緒に作品作りをしていく上で、クレジットにサニーディ・サービスの田中さんの名前があるのですが、スネオヘアーさんにとって田中さんはどんな位置に価する人ですか?
「曲自体にはそんなに影響は受けてこないんですけど。本当に僕の書くメロディーのファンでいてくれて。僕は彼にとってサニーディでいう曽我部さんみたいな感じだと思うんですよね。サニーディでも曽我部さんの書くメロディーをとても愛していると思うので。シンパですが、悪く言うとイエスマンです (笑)。何でも言えるメンバー。すごいシンプルな事も一緒に出来るので」
── ジャケットへのこだわりはどんな感じですか?
「今回はどんな意味で? と聞かれると、あんまり意味がなくてね。孤高感というか、シーンとリンクしてこないというか、人の気持ちなんて、全部が全部共感出来るのも怖いじゃないですか。でも、その中で何で分からないのかな? っていう思いもあって、結局一人でキャンプしているみたいな」
── 旧譜のジャケットを見ているとかなりインパクトのある個性的なジャケットが多いですよね
「何の統一性もないですよね(笑)。でもやりたい! という事は形にしてもらっていますね。」

ネクストステージに切り替わったなという、良い場にしたい

sun_7thAlApht_MG5326.jpg── 音楽活動をやりながらも俳優業をやっていますが、スネオヘアーさんにとって俳優業と音楽活動との違いは?
「やはり俳優業はエクストラな感じで、出来ないものをやらさせてもらったという感じです。『アブラクサスの祭』では主役をやらせて頂いたんですが、別畑でとても新鮮でした。でも、結局撮影が終わって何が残るかというと“よし!これから役者として頑張るぞ!”とは全く思わなくって。やっぱりより音楽をやりたい! と思いましたね。映画とかって役者さんだったり録音だったり、照明だったり、大所帯でひとつのものに着手するように動いているので、それはすごいなって思って。それぞれの仕事を見ていたですが、とっても気持ちいいですよね。やっぱりこれが終わったら俺も音楽をやるぞ! という、あんなふうに貪欲に音楽を楽しんでやりたいなって思いましたね。撮影の時は全然余裕なかったですし(笑)」
──何で俳優業を引き受けようと思ったのですか?
「映画自体が音と結びつきが強いんです。『アブラクサスの祭』は主人公が色々と病気を抱えていて、悩んで苦しんでいて、でもエンドロールで最後に残るものはこうです! ってならない所が良くて。やっぱり日々っていうのは色んなものを抱えて続いていくものですし、そこが良いなと思ってやらせてもらったんです」
── また俳優業の機会に恵まれたらどうですかね?
「僕で大丈夫であれば是非(笑)。でも、それ以降一切オファーが来ないですね」
── 若い時は俳優業を目指していたんですよね?
「はい。舞台俳優を目指していましたね。何で辞めたかというとセリフが覚えられなかったという(笑)。滑舌が悪すぎて。根本的なスキルがなかったんです」
── 何をおっしゃいますか(笑)。では、ライブについてもお聞きしたいのですが、スネオヘアーさんにとってライブとはどんなものになりますか?
「曲を書いて演奏するというその両軸しかないので、音楽をやっているという軸になるものですね」
── 今回は新作を引っさげて6カ所のツアーがありますが、どんなツアーになりそうですか? 既に構想はありますか?
「本当にシンプルな構成なアルバムとなりましたので、新鮮な感じというか、ここでネクストステージに切り替わったな、スネオヘアーという良い場になりたいですね」
── 近日だと8/19に新宿ロフト公演が控えているのですが、どんなライブになるのかととても期待しています(笑)。
「実際のリハはこれからですが、新譜から何曲か出来そうですよ」
── 今回はおかげ様でチケットの売れ行きも良くて、良いブッキングだなと我ながら思っているんです。ちなみに新宿ロフトに出演したのはいつ以来ですか?
「最近だと大槻ケンヂさんと一緒にやらせてもらった時かな。昨年かなぁ。。。3人でアコースティックでやったと思う」
── 新宿ロフトの印象ってどんな感じですか?
「ロフトと言えば、老舗というか怖い所というか。田舎にいる頃から名前は聞いていましたから」
── 今の新宿ロフトは怖い場所じゃなくなりましたよ(笑)。今回は夏休み期間中の開催だったりしますので、若い皆さんに是非見てもらいたと思いまして、学割制度を取り入れました
「それはナイスですね!」
── ありがとうございます(笑)。今回こうやってお話をさせて頂き、改めてCDを聴くのが楽しみなりましたよ。最後に読者の皆様へのメッセージを聞かせてもらえますか?
「長く聴けるアルバムが出来たなと思ったので、先になっても良いので聴いて色んな季節を飛び越えてもらって、暮らしの中ですっと聴いてもらえたらと思います」

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スネオヘアー

【初回限定盤】KICS-91690 / 3,300yen (tax in) ☆初回限定版はDVD付
2011.8.24 IN STORES
☆初回限定版はDVD付:新曲「期待ハズレの空模様」PV(監督:入江 悠)、「逆 様ブリッジ」「赤いコート」PV(監督:須藤カンジ)が収録。
新曲「期待ハズレの空模様」は映画『サイタマノラッパー』や『劇場版 神聖か まってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』で知られる映画監督、入江悠 との初スネオヘアー楽曲とのコラボレート作品。

amazonで購入

1. 期待ハズレの空模様
2. 笑顔の数
3. 逆様ブリッジ(TVアニメ『荒川アンダー ザ ブリッジ』ED主題歌)
4. 空想します
5. 家庭に入ろう
6. 団欒
7. シャボン
8. 赤いコート(TVアニメ『荒川アンダー ザ ブリッジ×ブリッジ』ED主題歌)
9. 眠りにつく頃(映画「雪の中のしろうさぎ」主題歌)
10. 秘密
11. さらり
12. いいでしょ

【通常盤】KICS-1690 / 3,000yen (tax in)

LIVE INFOライブ情報

スネオヘアー TOUR 2011「スネオツアー」
2011年10月21日(金)【札幌公演】cube garden
2011年10月26日(水)【福岡公演】Drum Be-1
2011年11月5日(土)【大阪公演】JANUS
2011年11月6日(日)【名古屋公演】Electric Lady Land
2011年11月16日(水)【新潟公演】Goden Pigs Red
2011年11月24日(木)【東京公演】O-EAST

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