ようやくバンドの進む先が見えた

── でも、歌詞とは対照的にというか、サウンドは意外とキャッチーですよね。だから聴きやすいのかなという感じはありましたけど、そこは意識しているんですか？
松本：各々が好きなものをやってるだけです。
村田：一時はそういうのを求めようと思いましたけど、今は詞が先に出来て、曲を後から乗せるので、なるべく詞にリンクさせたいというのは強く思っています。
── アレンジでガラッと変わるところはあります？
村田：あります。けっこう一生懸命変えるかも。
松本：『グライダー』とかは随分変わってますよ。
村田：この曲は何回アレンジしても全然イメージに合わなくて、ほぼ諦めかけていた時にもう1回やってみようってなったらものの見事にできたんです。大貫が加入して行く方向を示してくれたような気がします。松本が自分の方向性が見え始めて、収録する時ぐらいに良い感じにまとまって、よし行けるぞ！ って。
── 『グライダー』は、タイトルのわりにはスローテンポの曲じゃないですか？
村田：死ぬ間際とかってスローモーションになるとか言うじゃないですか。いろいろなことが走馬燈のように過ぎるって。それをアレンジしている段階でみんなに伝えたかったんですけど、僕の日本語が下手すぎて全然上手くいかなかったんですよ。それでも一生懸命伝えて、いざ、やっぺってなった時に表現がうまくいったというか。
── サウンドは全体的に前作に比べてやりたいことは増えましたか？
村田：僕は変わってません。前作は前作、今作は今作ですから。コンセプトも、前作はストーリー仕立てでしたけど、今回はいろんな感情が渦巻いていて人間らしい心の中みたいなものを考えていたので、サウンドはガラッと変わっていると思いますし。
松本：僕は前作以降、人を巻き込みたいという気持ちが強くなりました。ストレンジャーたちを巻き込みたい。前回は松本明人が充分伝わったので、今回は真空ホロウを伝えようじゃないかと。

── この1年で随分巻き込めてる感じはあるんじゃないですか？
村田：巻き込むと言うよりは、周りで手助けしてくれている方々とか、一緒に戦うバンドが増えた。だから、いろいろ考えられるようになった。対バンだけじゃなくてスタッフの方々からも刺激をすごく受けますし。
── やらなきゃという気持ち？
村田：やらなきゃというよりは、やってやるという気持ちです。
── 環境も変わってきてますからね。
村田：でもどんなに環境が変わっても、ロフトは東京に来たら毎回来たいですよね。良くしてもらっているし、期待は裏切りたくないし、いつか結果で応えたい。
── 7月にはロフトでワンマンがありますけど。ロフトでのワンマンは初めてですか？
松本：はい。前回のワンマンはシェルターで無料公演でした。
── シェルターでは4ヶ月連続自主企画もありましたし、どんどんバンドが逞しく成長していきますね。
村田：7月のロフトは全てがきっかけになるんじゃないかな。全国8ヶ所ツアーに回りますけど、どこに行ってもそういう1日になるきっかけになる1日になると思います。何かに迷っているんだったら見に来ればいい。
── さあ自己開放（パーティー）だということですね。
村田：地震以降ライブも出来なくて、1ヶ月振りにやった時すごく気持ちいいなって思ったんです。ずっとライブがやりたいと思って、音が出せないと思うと出したくなるんですよね。会えないと思うと会いたくなる恋人みたい。まあ恋人いないですけどね（笑）。いろいろなものが開放される日になると思いますよ。

photo by：Miwa Tomita“shirivasta”