ベスト盤でもあるファースト・アルバム
── モーニングスは2005年に自主的な海外ツアーを経験しているんですよね。むしろこういう音楽は海外の方が正当に評価する土壌があると思うんだけど、手ごたえはありましたか?
けいか:ありました。もうね、「フーッ!!!」って歓声が凄くて。
キシノ:おばちゃんまでね(笑)。40歳くらいのおばちゃんまで喜んでくれました。日本でも、周りのバンドに比べて外人の客は多少多いですね。ラリーが帰国子女ということもあって、外国の人を呼ぶことも多いんです。
けいか:“パトリック”とか“ユージーン”とかいう名前が取り置きリストに載ってる(笑)。
── そういう意味でも楽しみですよ。あと、メンバー同士のパワー・バランスはどうですか? 誰がリーダー?
一同:不在……
キシノ:曲作りにおいては多分僕です。ただ、曲持ってきたからと言っても「ヤダ」とか普通に言われるし(笑)。(けいかを指して)こいつとか。
けいか:「疲れるからヤダ」って(笑)。
キシノ:『opening act』は、BPM270のテンポで、「この8ビートの刻みをマジでやってくれ」って言ったんですけど、断られた(苦笑)。
けいか:たいがいのドラマーはそんなのヤダよ(笑)。
── でも結局はやってるじゃないですか(笑)。音楽的にもめることは多いんですか?
ポンタ:ありますよ。そっちの方がいいものもできるでしょ。まあ、話し合いですけどね。
── 話し合いで落とし所が見つかるんだ。
キシノ:とりあえずアイディアが出たやつは全部やってみるか、って感じで。でも、そうやって出来た良いものに関しては、みんな「これだ!」って思うんで。
ポンタ:アルバムに入ってる曲は、みんなが「ちゃんと落とし込めたな」って思ってるやつです。
キシノ:曲作りに半年くらい時間かかったやつもありますけどね。『冤罪テンプテーション』とか。これは歌が入ったとこの最初のビートが出来て、その続きを考えて来て、次に中盤の間奏のギター・ソロみたいなとこが出来て。つぎはぎのままだったんですけど、どうにかつじつま合わせて曲にしたんです。でも最後、バックトラックは出来たんですけど歌も乗らなくて(笑)。ポンタが叫ぶだけじゃつまらないから、どういう風に乗せようか、「フーッ!」とか言ってみようか……とか。童話っぽくしたいなというコンセプトはありましたけど、凄く試行錯誤した曲ですね。
── トーキング・スタイルのヴォーカルの部分はポンタさんが考えてるんですか?
ポンタ:そうです。
キシノ:でもレコーディングで自分が書いてきた歌詞、全っ然言えないんですよ(笑)。
けいか:字が多いんだよね(笑)。
ラリー:作る時は最初“ポンタ語”みたいなのでやって、後からはめてるからね。
ポンタ:直前まで書かないし(笑)。
けいか:レコーディングの日にまだ歌詞決まってないんです(笑)。
── それは、その時の衝動とかノリを大事にしたいから?
キシノ:いや、いいかげんだから(爆笑)。
けいか:後回しにしすぎ(笑)。
ポンタ:でも曲の核になるところはちゃんと決めてやってるし。曲に入れる空気感みたいなののも、考えながら作ってます。
── 歌詞はポンタさんに一任してるんですか?
キシノ:いや、結構バラバラですね。
けいか:唄う人が自分の歌詞を書いて持ってくる。
キシノ:『冤罪テンプテーション』は、ポンタとけいか、2人のヴォーカルなんですけど、それぞれバラバラで書いてますね。一応テーマだけは「赤ずきん」で童話っぽくしたいというのがあったんで、あとは唄う人が自由に。
── 『SAVE THE MORNINGS!』は、セルフ・プロデュースですけど、将来的にこのプロデューサーに任せて作ってみたいというような人はいますか?
キシノ:あまり知らないけど……スティーヴ・アルビニとか……?
ラリー:デイヴ・フリッドマン!
── そうした人達なら、もしかして現実にあるかもしれませんよ。
キシノ:でも、アルビニのプロデュース法って、そのバンドの特性を活かすってやり方じゃないですか。そうなったら俺らはマジでブラフしかないんで、不安でしかない(笑)。
── (笑)次はどこを目指しますか?
キシノ:これ(ファースト・アルバム)をもって、すべてを出し切った感があるので、新しい持ち曲がないんですね。今までやったことをこれに押し込めたから。ファーストを出したことで、ある程度俺らの方法論というか「こうやったらモーニングスらしくなるんだ」ということがわかったし、今の流れではやり終わったなという感じがあるんで、次はもっと新しい、違うことをしたいですね。そう思ったら最近曲が全然出来ないんですけど(笑)。
── 抜けがら状態ですか(笑)。では、さらに未来の話。どんなバンドになりたいですか?
ポンタ:20年後ぐらいまで続けていたいなぁ。
ラリー&キシノ:(うなずく)
けいか:私はほっといてもお客さんが来るバンドになりたい。ワンマンやったらシェルター埋まるぐらいの集客力を持ちたいです。
キシノ:特に今年はいろんなことがある予定なんで、それを楽しみたいですね。
── では、最後にファースト『SAVE THE MORNINGS!』の聴きどころを自分達で解説してください。
ラリー:曲ごとに聴きどころがありますね。うちらが演奏したパートはもちろん、ゲストもおもしろいしね。サックスはロレッタセコハンの出利葉さんだし、河野岳人さん(LAGITAGIDA、元マヒルノ)が参加してくれたおもしろいパートもあるし。おもしろいところがいっぱいあると思う。
キシノ:これはベスト盤ですね。モーニングスの現状でのベスト盤がこれです。
けいか:名刺が出来たみたいな感じだね。