ご飯を食べられる音楽じゃない
── こうして話してると、音でもスタンスでも、あえてバランスはとらないという部分が伺えますね。個人的な部分でもそうですか? みなさんって……ヒネクレもの?(笑)
けいか:どうでしょうねぇ……(笑)。でも「みんなぁ、がんばろうぜ! おーっ!」みたいなのはないです。「まあ、やるかぁ」って感じ(笑)。
── 熱いの嫌いなのね。
けいか:うん、あんま好きじゃない。
キシノ:たぶん、ヒネクレものなんですよ(笑)。
ポンタ:俺も会社の人とかと話してると「俺ってヒネクレてんのかなぁ」と思うなぁ。
けいか:ああ、もちろん一般社会の中ではヒネクれてる方だと思うけど。
── そういえば、みなさん仕事を続けてるんですもんね。どんな仕事をしてるか、訊いてもいいですか?
ポンタ:僕は印刷会社です。
ラリー:僕はフィギュア作ってる会社に勤めてます。秋葉原で売ってる女の子のフィギュアとか、海外の映画系──スターウォーズとかスーパーマンとかのフィギュアの海外宣伝。
けいか:私はWEBニュースサイトでライターやってます。担当はマンガ情報なんで音楽のことは一切やってなくて。音楽よりマンガが好きです(笑)。
キシノ:俺は新卒採用関連の営業ですね。
── えっ、じゃあスーツ着て会社行ってるの?
キシノ:俺とポンタはスーツで。
── わぁ、そうなんだ。バンドって、バイトしながら活動してる人多いですよね。でもみなさんは生業があって、でも音楽が“趣味”ってわけでもない。そのあたりはどういうスタンスで?
ポンタ:元々俺らがやってる音楽は、それでごはん食べられる類のものじゃねえだろうって思って。
── どうしてそう思ったの?
ラリー:それはいろいろ聴けばだいたいわかる(笑)。
ポンタ:うん、だって周りのバンドもだいたい食えてないし。
ラリー:音楽では食おうとしてなかったもんね。最初から。
キシノ:俺らは売れるために音楽やってるわけじゃないんで。それでも大学2年生くらいの時なんかは「もしかして、これ、売れちゃう?」なんて思ったりしましたけど(笑)。今は完全に仕事と音楽は分けて考えてますね。
── 音楽に100%賭けてなかったら「覚悟がない」と考える同業の人も多いと思うんですけど、そういう意見に対しては?
キシノ:そんなの悪しき風習じゃないですか(笑)。
ポンタ:それがどういう覚悟かにもよるしね。
キシノ:それで食えてるんだったら、しがみついてやればいいし。
ポンタ:音楽以外何もできない人間なんて、そうそういないんじゃない? 俺は売れてないんなら就職しろ、と言いたいけど。
けいか:最低限生活できるぐらい稼いでないとねぇ。特に親元にいてだらだらしてる人、イヤですね(笑)。
ラリー:俺、実家だよ(笑)! でも、生活はちゃんとしてるから。
── メンバー全員が自活してるというのは珍しいですね。
キシノ:地方にはそういうバンド多いんですけど、そういう人達の方がカッコいい音楽やってると思うし。仕事しないで100%音楽に賭けてるふりしなくても、もっとカッコいい音楽作る方法って他にあると思うし。そういうみせかけの覚悟みたいなのはいらないから。
── 地に足がついてるなぁ。
ポンタ:うん、さっきの話じゃないけど、売れたいと思ったらこういう音にはならないと思うし(笑)。
キシノ:でも、間違いが起こって欲しいとは思いますよ(笑)。誰か勘違いしてほしいなって。
ラリー:フジロックとか出たいってめちゃくちゃ思ってますし。
キシノ:2年ぐらい音源送ってますけど、まだ出られない。
ラリー:去年は奇跡が起こるかな、とは思ったんだよね。マヒルノが出て、YOLZ IN THE SKYが出て、僕ら『朝・昼・夜』って企画やってたんで次は朝だからモーニングスだ!って(笑)。
── そうは言うけどね、思ってるより一般性の低い音楽ではないですよ。スタイルを凌駕して伝わるものがあるから。
キシノ:ええ、別に難しいことをしたいわけじゃないんです。単純にカッコいいことをしたいんで。
ポンタ:作る時もちゃんとポップなものを作ろうと思って作ってますしね。
── やっぱりポップであることっていうのは重視しているんですね。だって複雑な構成の『chief』でさえも口ずさめるキャッチーさがあるもんね。
キシノ:『chief』はその中では一番古い曲なんです。
けいか:昔の方が複雑だったよね。