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INTERVIEW

トップインタビュー旅団 ──メンバー脱退を経て辿り着いた"覚悟"の一枚

一枚ずつ衣が無くなって、素っ裸になった

2010.12.26

インストバンド旅団が、遂に動き出した。2010年初頭のメンバー脱退を経て、9人編成(以前は13人編成)では初音源となるミニアルバム『Lingua Franca』を完成させた彼ら。そこにぶち込まれていたのは、凄まじくタイトにチューンナップされ、グッと身体の芯を鷲掴む怒濤の4トラックだった。前作から2年半。初のスタジオ録音となる本作には、どんな想いが、どんな覚悟が込められているのか。バンド・マスターでジャンベの毛利元祐と、バイオリン・向山聡孝の2人に訊いた。(インタビュー・文:前川誠)

より“バンド”という形に近付けた

──まず、メンバー脱退の経緯について伺いたいのですが。

毛利:そもそも13人のバンドだったんですが、そこから1人抜けて、12人の状態で1年くらい活動を続けていくなかで、徐々に個々のスケジュールが合わなくなってきたんです。それで皆で話し合いをもったときに、旅団としてよりも個人の活動を大事にしたいという人が当然出てきて。でも僕は、もうちょっと旅団としての活動を大事にしたかった。ということで、物理的に活動に参加できないメンバーに外れてもらったんです。

向山:正直に言うねえ(笑)。まあ、そもそもスタジオに来れるか来れないか、という問題があったんですよ。毎年年末くらいになるとそういうミーティングをやるんですが、そこで「旅団を来年活かすにはどうすれば良いか」という話し合いをした結果、メンバーをシェイプして、作品作りとライブに専念するべきじゃないかということになったんです。13人のままだとツアーにも出られないし、そこで少ない本数のライブをやるより、全員が(活発な活動を)できる状態で動いた方が良い。そういう判断の元に、残ったのが今の9人だったんです。

毛利:13人でやっていたときって、全員が出演できるタイミングが少なかったんですよ。でも、できるなら全員で出たい。“旅団は自由参加”という色を薄くしたかった。

向山:そして、より“バンド”という形に近付けたんです。……9人でも充分人数は多いんですけど(笑)。

──確かに(笑)。

向山:でも僕らの中では、ガラガラですから(笑)。

毛利:9人になって一番戸惑ったのは、僕ら自身でしたね。9人の音を旅団の音として出して良いのか、という葛藤はありました。

向山:そこから1年、もがいてきたのを形にしたのが、『Lingua Franca』なんです。

──当時のブログを読むと、かなり苦悩していたようですね。

毛利:そうですね。一番の理想は13人でやることだったんですけど、それと現実のギャップもありました。でもそれって突き詰めると、結局「皆が幸せになる方法って何だろうね」とか、そういう話になっちゃうんですよ(笑)。

──急にテーマが大きくなってしまう(笑)。でも、メンバーが抜けた穴を新しいメンバーで塞ぐ、という方法もあったと思うのですが、そうしなかったのは何故?

毛利:そういう意見もなかった訳じゃないんですけど、僕の中では無かったんです。減るなら減るで、減った状態の旅団っていうのを見せたかった。一枚ずつ衣が無くなって、素っ裸になっている状態をひとつの形としてやりきらないと、また新しい音を入れたところで同じことを繰り返しちゃうんじゃないかなって。それって新しく入ってくる人にとっても面倒くさいと思うし。それよりも、今いるメンバーでちゃんとした形を作りたいなって。そこの方が強かったですね。

名刺代わりの一枚

──なるほど。そしてバンドが形を為すようになるまで1年。具体的にはどんな作業を積み重ねたんでしょうか。

毛利:2010年の1月末に12人でやる最後のライブがあって、その後すぐ、3月に渋谷7th FLOORでイベントをやったんです。いま考えると焦っていたのかもしれないけど、とにかく9人になった音をできるだけ早くお客さんに届けなくちゃいけないと思って。でも、そのイベントが上手くいかなかった。イベント的にもコケたし、9人の音に関してもダメだったし、“今の旅団”をどう見せれば良いのかっていう覚悟も足りなかったんです。

向山:“9人になった旅団の見せ方はこんなもんでいいかな?”って出したら、見通しが甘かったんですよ。自分たちの納得できるクオリティというか……テンションですね。13人のときに盛り上がっていたところで、まるで盛り上がれてなかったり。

毛利:9人のやりたいことが、ライブハウスのスタッフにもお客さんにも伝わらなかったし、メンバー内でも共有できていなかったんです。9人それぞれがバラバラだった。で、それが5月になってようやく、どういう音を出せば良いのかが見え始めて、夏頃に曲作りに取り組んで、すぐレコーディングをして。

──5月以降の展開が、結構急ですね。

向山:見切り発車です(笑)。本当は、次はフルアルバムで……と考えていたんですけど、いろいろ事情が重なりまして。というのも、僕らが所属しているレーベル、Penguinmarket recordsがコンピを出すことになったので、どうせならそこに参加しようと。そして、それなら名刺代わりに1枚作品を作っても良いんじゃないかという話になったんです。ミニアルバムって賛否両論あるとは思うんですが、とにかく簡単な形で、すぐ僕らのことを分かってもらえるモノを作りたかったんです。

毛利:やらざるを得ない訳ではなかったんだけど、まあ、そんなこと言っててもしょうがねえなって。

向山:最近、守りに入っているからダメだねって。

毛利:Penguinmarketのコンピは、良いキッカケになりましたね。

向山:1曲録るなら4曲録っても一緒でしょ、ってね。結果それがどうだったかは、発売してみないと分からないけど(笑)。

──言い方を変えると、その時点で「録っちゃおう」と言えるくらい良いモノが仕上がっていたということですよね。

向山:今回録った4曲に関しては、そうですね。うだうだやって時を過ごすよりは、サッサと録って冬の市場に出してしまおうと。

──お年玉商戦ですか(笑)。

向山:それに、これがないと2011年、僕らは忘れ去られてしまうんじゃないかと思ったし、皆のモチベーションを保つためにも、ここで一回区切りが欲しかったんですよ。

毛利:バンドの転換点ということから考えると、確かに短いかもしれないけど、世間の流れから考えると前回のアルバムから大分時間が空いてますからね。

向山:「最近名前見ないけど、解散したの?」ってよく言われますから(笑)。

毛利:そういう意味ではギリギリのタイミングだったのかもしれない。そして、そのタイミングで4曲しか録れなかったのもまた現実で。

向山:自虐的だな(笑)。

毛利:いや、ほんとに。精一杯だったしね。

今の、9人の旅団を知ってもらいたい

──そうして完成した『Lingua Franca』ですが、以前に比べて驚くほどタイトに仕上がった印象を受けました。そこは意識しましたか?

毛利:しましたね。でもそれは音源に関してというよりは、“新しい旅団”に関して。13人で出していた音を9人で出しても、単純に物量が足りないから敵わないんですよ。それならもっと逆のアプローチをしなくちゃいけないんじゃないかと。ツインドラムがシングルドラムになっただけで全然違うし、じゃあそのシングルドラムに合わせてどういう音作りをするか、という。かなり苦労はしましたが、そこは一番考えましたね。

──相対的に楽器の数が減っているハズなのに、曲の構成がとにかくガッチリして、逆に音圧が増しているように感じたんです。特に前作にも収録されている後半の2曲は、以前と聴き比べると一目瞭然でした。

向山:ちょっと上から目線だけど、パーカッションの音の重ね方が上手くなったんですよ。音のレイヤーの作り方を、1人ひとりが意識するようになった。前はジャンベが3人いて、それぞれが力任せに、他を蹴散らすように音を出していたんだけど、今回はドラムとのコンビネーションを考えるようになった。……まあ、当たり前なんですけどね(笑)。そういう当たり前のことをやってみようとしたんです。それが音圧というか、音の抜け方の違いに繋がっていると思います。

毛利:その通りですね。セカンドアルバムのときも一応意識はしてましたけど、それ以前はバラバラで、とにかく“音を出す”ことしか考えてなかった。でも人数が減ったことで、バラバラな部分だったり飛び出した音が目立つようになったんですよ。だから、そこの合わせ方はパーカッションもドラムも全員が意識して、腹を割って話し合いながら詰めていったんです。そういう、曲自体のノリについて突っ込んで話すようになったのは、今回が初めてですね。

──作品全体の方向性にも変化がみられました。特に1曲目の「GOLDEN PEACH」。この曲の分かり易いインパクトだったりテンションの高さって、まるでロックバンドが初めて作った音源みたいだと思ったんですよ。もう“とにかく聴いて欲しい!”っていう情熱が溢れていると言うか。

向山:まさにそうですね。そういう曲を作ろうか、と言って作った曲ですから。

毛利:本当に、その一点しか考えてなかったよね。

向山:うん。とにかくシンプルに、短く。そうしたら旅団史上最短の3分代になったという(笑)。本当はもうちょっと長かったんですけど、とにかく余計なところは全部カットしたし、“これが新しい旅団です”って言える曲を作ろうと。

毛利:ディジュリドゥーの市川元太とトシくん(向山)の2人が主導して作ったんですけど、その分2人の個性がよく出ているんですよ。とにかく“ボーン!”と(笑)。

向山:バカっぽい感じで。タイトルもバカっぽく「“PEACH”ってカワイイよね!」みたいな(笑)。

──そして、そのテンションが4曲目まで持続してる、っていうのが新鮮でした。

向山:4曲入りだからこそ成し得たショートストーリーです(笑)。

──例えば今回収録されている「子午線の湾」って、以前はどちらかと言えば“聴かせる”タイプだったと思うんです。それが今回、“踊れる”作りになった。

向山:あれはパーカッションから作り込んでいって、グルーヴが出来たところで他の楽器がテーマをなぞったんです。それでちょっと頭良さそうな感じで展開させたら、良い具合にハマった。

毛利:この作品を通じて、9人の旅団を知ってもらいたい。とにかく聴いてもらいたい。それが一番デカかった気がしますね。

──ダンスミュージックであることを意識したのでしょうか?

毛利:いや、正直に言うと、個人的には旅団をダンスミュージックとかクラブミュージックのバンドだとは思ってないんですよ。もちろんそういう要素も求められているとは思うんだけど、今は出したい音を出すのがとにかく優先されていて、その結果としてノれる曲が増えているというだけで。あまりクラブシーンとかを過剰に意識している訳ではない。

向山:それよりもアンサンブルがしっかりあって、バンドとしてかっこいいかどうか、っていう方が重要ですね。そのうえで踊れるように作り込んでいく。決してその逆はないし、そういう意味でよりバンドっぽくなったのかもしれないです。

毛利:そうだね。

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1. GOLDEN PEACH
2. AOBAZUKU
3. CAMBRIAN EXPLOSION
4. 子午線の湾

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