Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューamazarashi(2010年12月号)

未来への絶望と希望が交錯する珠玉の詩歌集

2010.12.01

電流が流れたような衝撃を受けた

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 超高層ビルに囲まれた喧騒うずまく街で、私は彼らの楽曲を聴いている。
 恐山のある青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたロックバンドamazarashiに出会ったのは、青森県限定シリアル番号入りEP『0.』をリリースした時だった。この作品を聴いて、人間なら誰しもが持っているだろう心の奥底にある、人には見せない表情や一番見られたくない部分をえぐり、さらけだされたようだった。どうしたらよいのかわからない感情がこみ上げてきた。心がキリキリと痛みを訴えていた。だが、それと同時に、自分が人前では出さないようにしていた陰鬱な感情が肯定されたような、晴れ晴れとした気持ちになったのも事実だった。その後、むさぼるように彼らのことを調べ、『光、再考』のPVを見た時に、自分の内面と、そこに映し出されている不気味なてるてる坊主のイラストがリンクした。ただ吊されていたはずのてるてる坊主が姿形を変え、時に人をあざ笑うような表情をしたり、無表情になってみたり、悲しい表情をしたり、まさに人間そのものなんじゃないかと感じた。日々の生活を送っていく中で、組織に属する中で、笑顔を無理矢理作り、感情を押し殺すことはある。“時々虚しくなって全部消えてしまえばいいと思うんだ”このフレーズを聴いた時は、体中に電流を流されたような衝撃を受けた。こういう感情って、これまでに何度も沸いた事があったが、口に出さないまま生きてきた。まさに言葉にしたかったのはこのフレーズだったんだと思う。でも、そんな鬱屈した感情だけが込められた作品だったら、私は一度聴いたきり、この作品をCD棚の奥にしまい込んだだろう。自分の感情ですら簡単にはコントロールできないのに、人のペシミズムまでは請け負うことはできない。しかし、彼らの作品には「希望の光」があった。
 “今君は日陰の中にいるだけ ただそれだけ”どれだけ泥水を掴んでも、そこに見える一筋の光。これを頼りに一生懸命生きているのだ。雑草のように踏み潰されても、石ころのように蹴飛ばされても、照らす太陽があるからまだ上に向かおうと思うのだ。ありふれた言葉であるはずなのに、こんなに心に染みたことはなかった。そこから私はamazarashiの生み出す楽曲に夢中になった。
 そして2010年6月、彼らから新しい作品『爆弾の作り方』が届けられた。1曲目に収録された『夏を待っていました』から感じ取れるセンチメンタルと、過去を振り返った時に感じるノスタルジア。歌詞で表現された風景が、音声が聴き取りづらいフィルム映画のように映像化されていった。愛だの恋だのといった甘い言葉もたまには良いかもしれないが、それ以前に当たり前のこととして、誰にも過去があって、その中には幸せだった記憶と同じぐらい封印したい悲しい過去もある。でも、消したい過去はあっても、経験しなければ良かったという過去はない。それがなかったら今には繋がらないから。過去を踏まえて、今と未来を見据える。そうして前を向いていく力強さがamazarashiの音楽にはあるのだ。

『ワンルーム叙事詩』に秘められた情感とは

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 11月24日、amazarashiのニューアルバム『ワンルーム叙事詩』が発表された。私は空腹で耐えきれなくなった時に与えられたクッキーの袋を勢いよく破った時のように、この作品の封を急いで開けた。ここに大切なものが詰め込まれているような気がしていたから。
 プレイボタンを押した瞬間から、飛び込んで来る言葉の強さに圧倒された。“こんな夜は消えてしまいたい”
と死を意識しながらも、走り続けていることを描いた『奇跡』。生きていれば、嬉しい事も楽しいことも、もちろんその逆もあるが、起こる全ての奇跡が自分の機動力となっているという前を向いた作品。『クリスマス』は、赤い鼻をしたトナカイに乗って陽気なサンタが来るような曲ではもちろんない。どこか遠くで飛んだミサイルを、流星と見間違えた少女が願いを唱えるという幻想的でもあり切なくもあるお話。でも、たとえそれが錯覚だったとしても、この少女はクリスマスに幸せを感じたに違いない。どんなに汚い世界だとしても、そこにも小さな小さな幸せがあるんだと置き換える事が出来る。『ポエジー』では、“死ななくて良かったと思う日がたまにある事を伝えたい”というフレーズが強烈な印象を放つ。並べられている言葉は歌詞というよりは「詩」に近い。剥き出しになった心の叫びを吐露しているようである。この曲に光はない。あるのは、ただ剥き出しになった欲望だけ。ある種恐ろしいとすら感じられる楽曲だった。“もう全部嫌になったから この部屋に火をつけた”“薄笑いをこらえきれなくなったところで 羽交い締めにされた”という細かい描写が素晴らしく、映像が頭の中を駆け巡り、想像力を掻き立てる『ワンルーム叙事詩』。部屋と共に自分の魂までもを燃え上がらせ、焼け野原になったらまた新たな自分が生まれるかもしれないという表現の妙。現代社会を独特の表現で風刺しつつも、その中で必死に藻掻く姿を想像した。そして最後の『真っ白な世界』。今日から全てをやり直すために、雪で真っ白に染めて欲しいという、白という何にも染まっていない無垢さと、たくさんの色が付いてしまった自分との対比が美しい。
 これらが、amazarashi流のロックサウンドに乗って届けられる。1曲に詰め込まれた言葉の数は多いと思うが、わかりやすい言葉であるため、聴く人を選ばない楽曲として昇華しているはずだ。歌声と鮮やかな情景描写、煌びやかなピアノの音色、バンドサウンド…。全てが絶妙のバランスで成り立っていた。

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まだ見ぬamazarashiを描いている

 未だ、どんな人が歌っているのか、どんな人が演奏しているのか、そして普段何を考えながら曲を作っているのか全くわからない状態であるのに、恐ろしい新人が出てきたという気持ちでゾクゾクする。そして、なぜ自分がここまでamazarashiに夢中になっているのかを再び考えた。そこでまず浮かんだのは、詞の強さだ。私は、人間のドス黒い感情が渦巻く小説を好む傾向にあるらしい。そういった小説に近いものが、amazarashiの楽曲にはあるのだと思う。現に、今回本誌のために撮影してもらった本棚の写真(次ページ参照)でも、中原中也、町田 康、中島らも、寺山修司などの著作が確認できる。これを見た時に思い浮かんだことがあった。かつて中原中也は、父方の荒い血と、母方の静かな血の混血からなるものと言われていたが、まさにamazarashiの楽曲にも荒々しく燃え上がる部分、いつ何をしでかすかわからないという危うさ──『ワンルーム叙事詩』にある“もう全部嫌になったから この部屋に火をつけた”というフレーズは特に象徴的だ──と、やさしく語りかけるように物事を伝えていく部分や“それでも 人生って奴には 負けるわけにはいかない”のように、静かな情感を奮い立たせる部分との二種類の血が混ざり合っているのではないかと思う。そして、人が生きていく上で感じる喜び、幸せ、痛み、悲しみ、怒り、悔しさといった感情が渦巻き、剥き出された歌詞は、彼が敬愛する作家にも通じるものがあるのではないだろうか。
 この作品を聴いて、改めて“生”と“死”について考えた。生きてきたからには、必ず訪れる死。それがいつになるか、どこになるかはわからないが、“死”と常に向き合っているからこそ、改めて“生きる”ことについて考える事が出来る。嬉しい事、悲しい事、腹が立つ事、そして火を付けて全てをリセットしたいという思いもないわけではない。欲望が渦巻く街とも言われる新宿に毎日通っていると、目に飛び込む何もかもが馬鹿馬鹿しく思えることがある。全てなくなってしまえと思うこともある。それでも、どこかに救いを求めようとしている自分がいた。彼らが表現しているその中にある一筋の光を頼りに、ゆっくりではあるがまた一歩ずつ、前を見つめて歩いて行こうと思う。そして、まだ見ぬamazarashiという名を持つ人物に会える日を楽しみにしていよう。生きていれば必ず良い事があるのだ、と。(Rooftop:やまだともこ)

biography
青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンド。
2009年12月    青森限定500枚 シリアル番号入り EP「0.」をrelease.
2010年2月    全国盤「0.6」release.
2010年6月    ソニーミュージックアソシエイテッドレコーズ移籍
      初回ARブックレット+詩集付 EP「爆弾の作り方」release.

 

光、再考(『0.6』より)

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