音楽の中にテーマは投げかけない
── この作品は、“新しい価値観を作っていきたい”というコンセプトの元に作られていったそうですが、みなさんは音楽を通してどんなことを伝えていきたいと思っているんですか?
照井(順):特にコレと言ったものがない感じをやりたいんです。各自の思っている問題意識とか、何をしたいとか、それぞれの生活スタイルがある中で思っている事も違うと思うんです。それに対して行動する力を刺激出来るような音楽をやれたらと思っています。意識しているところは、テーマを投げかけないこと。例えば僕らの曲を聴いていると、勉強がはかどると言ってくれた人がいたんですが、そういうことで良いんです。何かを刺激したいという思いでやっているので。
── 勉強がはかどるということは、お客さんは学生さんが多いんですか?
照井(順):若い人が多いです。僕らは若々しい音楽ではないと思いますが、残響レコードのバンドだということで興味を持ってくれている方々が多いです。
中村:今後はもう少し広がって行けばいいなと思っていますけど。
── 個人的に、ハイスイノナサって聴く人を選ぶ音楽なんじゃないかなって思っていたんです。紙資料を読んでも難しい言葉が羅列されていて…。
中村:とっつきにくいバンドだなと(笑)。
── そうなんです(笑)。でも、聴いてみると実はポップで聴きやすいんですよね。
照井(順):これからは、もっとポップにしていきたいんですよ。ポップスをやるんじゃなくて、僕らなりのやり方でポップな方向まで突き抜けられたらと。
田村:ポップにも聴けるものは意識しています。
── でも、6曲目の『engine city』はポップ感が出てますが、ほとんどインストに近い『ensemble 1』みたいな曲も、今後追究していきたいそうですね。
照井(順):そういった構想はあります。これはけっこう複雑な曲だと言われていて、やってることは複雑ですけど聴いてどんな気分になるかというのが一番大事なんです。この曲を聴いた時に、僕の中で複雑な気分にはならないですし、複雑な曲をやりたいというわけでもないですし。
── 1個1個の音を分解するとすごく複雑なことをやっていると思いますけど、まとまって聴くと総じてポップというか耳障りの良い音になっているから不思議ですよ。今回、楽器自体は5人だけで出している音が主なんですか?
照井(順):一応出してるのは僕らです。
中村:オーバーダブはやってますけど。
照井(淳):あと現実的に無理なものはパソコンに頼ったりしています。でもライブで再現できないものは少ないと思います。
── 人力でやれるものが多いと?
照井(順):こういう世界観を出したいと思って、もっと厚みが出したかったら人とか楽器を増やさなければならないんです。そこが最初に曲をイメージした段階で、理想を高く持ちすぎてしまった部分なんですよ。だから、すごく勉強になった部分でもあるんですけど、今はこの5人でやっているし、この5人で出来るアンサンブルの良さを考えなければいけないんですよね。イメージばかり追究してはいけないんだなと。
── ここでの経験や思いは、次に活かされると思うので、また楽しみがひとつ増えましたよ。
照井(順):今度は、今のうちからコツコツとです。これからの時代に必要なのは実際動くことなんですよ。例えば曲を書く以外にもいろいろな動きを見せていきたいし、そのアイディアを出すように、バンドの雰囲気がもっと良くなっていけば最高かなと思います。曲ももっともっといっぱい書きたいんです。いつも自分自身にはお尻を叩いてますし、いろいろな曲を聴いた時に、この曲も良いけど俺だったらもっと良い曲が書けるっていつも思うんです。それを今度は実行に移したい。
── 照井さんって、こん詰めて考えちゃうタイプな気がしますね。
照井(順):考えまくるのは好きなんですけどね。ただ、考えてるだけではなく行動に移そうと。
── ストレスは発散出来てますか?
照井(順):もしかしたらあまりうまくないかもです。格闘ゲームが好きで空き時間とかにみんなでやってますけど、めちゃくちゃ疲れるということに気付いて…。
田村:思いっきりやっちゃうから。
照井(淳): 気分転換にはなるけど疲れて、その後に何も出来なくなる。
照井(順):格闘ゲームを空き時間にやるのは向いてないですね(苦笑)。本当にリラックスできる瞬間を作った方が良いなと思います。
── とは言っても、このリリース後にはYamon YamonのJapan tourのサポートでライブが2本、そして、12月から来年2月にかけて『想像と都市の子供』のリリースツアーもあり、あっという間に年を越す事になりそうですね。
照井(順):ツアーまでに何曲か作りたいという思いもあったんですけどね。時間が経つのは早いですね(苦笑)。
── Yamon Yamonは対談の時に、中村さんが良いと言っていたバンドですよね。
中村:はい。あの感じは日本人の感性では作れるものではなくて、新しい感じもありますしすごく刺激を受けてます。
照井(順):Yamon Yamonが日本に来るのは初めてになるので、刺激しあえたらなと思っています。
── みなさんが海外に進出してやろうという野望はありますか?
照井(順):いずれは行きたいと思っています。
中村:This Town Needs Gunsというイギリスのバンドが僕らのことをすごい気に入ってくれて、良かったらイギリス来てくれよって言ってくれてますし、いつかイギリスでライブがしたいですね。個人的にもイギリスはすごく行ってみたい国ですし。
── Yamon Yamonのライブがあって、ツアーも始まり、ファイナルの渋谷O-nestでは、楽曲が成長するというか、やりきる事ができなかった部分が形になっているかもしれませんね。
照井(順):気持ちは次の音源に向いているので、この曲はライブの中で変化させていけたらと思っています。あと、『想像と都市の子供』で今回初めてPVを作ってもらえたんです。最近視覚的なものに興味があって、自分たちは出演していないのですが視覚的に楽しめるものになっていると思うので、ホームページとかで見てもらえたらと思います。
── そしたら今後は、ライブでVJを入れるのも良いかもしれませんね。
照井(順):そういうのもやりたいんですけど、やるからにはめちゃくちゃ懲りたいし、でも自分自身がそこまでは達してないので、まずは今できることをやっていきたい。2011年の目標は行動力なので、なんでもやってみようと思っています。