現在、"怒濤/驚愕の'10-'11年"を"DO10!!"と銘打って活動しているmonobright。"DO10!!"とは"怒濤"という意味があり、今年2月に今後のリリースやツアープランを発表したのだ。3rd.アルバムすらリリースされていないのに、来年春までに4th.アルバムをリリースするという大胆不敵なプランを先行発表したり、3rd.アルバムリリース時に4th.アルバム収録楽曲全曲のダイジェスト盤サンプラーを限定配布することも予定されていたり、怒濤のMUCHAっぷりである。しかし、それだけ今のmonobrightは音楽に対する情熱を燃やしているということだろう。その充分すぎるほどに感じられる意欲と情熱は、今年4月にリリースされたシングル『英雄ノヴァ』から短期間で今作『雨にうたえば』をリリースしていることからもわかる。また、10月には3rd.アルバム『ADVENTURE』のリリースが控えており、発表された通り来年春には4th.アルバムもリリースされる。もちろん数ヶ月間制作だけに携わっていたわけではない。イベントへの出演や、"monobright LIVE TOUR 2010「真夏不思議アドヴェンチャーへ!」"の開催、夏フェスへの出演などなど、どこに時間を見つけたらこれだけ多くの楽曲を作る事ができるのだろう。
今回は、monobrightに9th.シングルとなる『雨にうたえば』について桃野陽介(Vo&Gt&Key)にお話を伺った。3rd.アルバム『ADVENTURE』の話は、来月号本誌にてどどーんと掲載させて頂くのでそちらに思いを馳せながら、今作をじっくり聴いてもらいたい。(interview:やまだともこ)
まだまだエネルギーは充分にある
── 皆さんが提示したプラン"DO10!!"はどう考えてもMUCHAすぎるんじゃないかと思ってしまうところがありますが、この一大プランを今年2月に発表したのはどういった意図があったのか、改めて教えて下さい。
「一言で言うと"やってなかった事が思いついた"という事になりますね。この先やろうとしてる事が丸見えのバンドなんて聞いた事ないし、そんな状況で新しい事が出来たら、バンドにとってもいいなという思いつきですね。予想通り無茶苦茶だと実感してます(笑)」
── バンド内で立てたプランを提示したことによって、何が何でもやってやる! という気持ちにはなったりするのですか?
「あくまで目標なので、そこまで思い詰めた感覚はないです。プラン通りやりきる事よりも、良い曲を作って良いライブをするってのが前提にあります。だって良いものを作りたいと思っているのに、妥協してDO10を達成しても全く意味が無いですからね」
── 自分を奮い立たせるという意味でも掲げられたプランだったのでしょうか?
「そこはかなりありますね。デビューして4年目を迎えるバンドって、ベテランやニューカマーなバンドよりもエネルギーが無いように思われる気がして。そういうイメージを覆す様な活動をしたいって気持ちが大きいです」
── 昔から"有言実行"という言葉はありますが、実は心が折れそうになった時期ってありましたか?
「もちろんあります。先々のスケジュールを見て、"ウワッ"ってとっさに感じる時とか。でもよーく考えてみると、出来るっていう隙間が必ず見えてくるので、その時には有言実行の感触があるんですよね」
── 実際、寝る間も惜しんで曲作りに取り組んだこともあったのですか?
「ツアー中に作る時、ライブの後は寝ずですね。でもライブに専念しながら合間で作ってるので、しんどさはあまり無いです。そもそも曲作りがかなり好きな方だと思うので、夢中になってると"俺についてこいやー!"と体に言います。結果、寝る間は惜しくならないです」
── 音楽に対する向き合い方が、昔に比べると変わってきているのでしょうか?
「変わらないですね。変わった所があるとすれば、自分が出来る音楽、作れる音楽ってのが見えてきて、monobright像がはっきりしてきた感覚ってのはあります。DO10はそれがとてもわかりやすく感じられて、新たな自分を知る良い機会だと思います」
── そしてリリースされるニューシングル『雨にうたえば』は、前作の『英雄ノヴァ』もそうでしたが、初回盤では1曲目からインスト楽曲のカヴァー(今作は『RYDEEN』)となっており、大胆なことをやるなと感じました。こういった楽曲を1曲目に持ってきた意図はどんなところですか?
「これもやってない事やろうっちゅう事で、インストのカヴァーもmonobrightではやった事無いし、シングルの1曲目がボーナストラックってのも聴いた事ないなー、じゃあやろうという感じです。何でもやってみないと、それが良かったかどうか判断出来ないですからね」
── 収録されている楽曲は、『英雄ノヴァ』完成後から作られたものなのですか?
「もちろんそうです」
── ホントによく予定通りに進んでいるなと感心しています。
「こんなにリアルタイムな楽曲をみんなに届ける事が出来て、正直嬉しいです。僕らにとっても作りたての曲って、ほやほや感からテンション上がってますからね。レコーディングにもそのテンションを込める事が出来るし最高です」
── 『雨にうたえば』は、最初から畳みかけるようなサウンドで聴かせる『英雄ノヴァ』に比べて、じっくり聴かせるという全く違うアプローチをしてきたなと感じましたが、最初にどんなイメージを持って制作に取り掛かったんですか?
「僕らの楽曲って3分〜4分のシンプルな尺にいろんな要素をポップに詰め込むって事が多かったので、いっちょ壮大なものを作ろうというイメージがありました」
ここでついに新ジャンル確立!?
── また聴いた時に、切ないラブソングという印象を受けましたが、"涙の数だけ、恋をした..."というテーマがあるそうですね。以前失恋した時に書いたという『music number』がありますが、言える範囲で一番辛かった恋の経験を教えて下さい。
「高校の頃から付き合ってた子と遠距離恋愛をしていて、お互い大人になっていくにつれてどんどんすれ違っていって疲れていって、耐えられなくなった相手にフラれたという事があって、それはかなり引きずりました」
── 高校時代の失恋って、すごく残りますよね。ところで、この曲は心に染み入るメロディーもさることながら、コーラスが切な感をより増幅させていると感じましたが、曲を作るにあたり、気に留めた点がありましたら教えて下さい。
「リフレインするメロディーだったりビートだったりってのが、切ない要素なんじゃないかと思いますね。ジョン・レノンの『LOVE』とか繰り返される感じって、恋を引きずる感じに似てる気がします」
── なるほど。その反面2曲目の『KISS』は、最初のキラキラサウンドを始め、ポップで踊れるダンスチューンとなっていて、リズム隊の活躍が窺える楽曲でした。歌詞自体、そこまで言葉数が多くないということは、こればボーカルだけでなく、全パートを聴かせたいということなのでしょうか? 曲を作る時に、どんな完成形をイメージしながら作っていかれたのかも教えて下さい。
「本当は女の子に歌って欲しかったんです、この曲。Perfumeとか(笑)。でも、メンバーに女もいないし、じゃ僕が女の子になればいいかなと。ほどよく気持ち悪くて、キモくてキュート。キモキュー。新ジャンルです(笑)」
── キモキュー(笑)。気持ち悪さは感じなかったですが、歌い方はだいぶ大人びてるなと感じましたよ。ボーカル録りの際に意識したところはどんなところでしたか?
「歌詞のキャラクターに忠実に歌いたいなというのがありました。KISSを知ってる女性の気持ちでね、歌うんすよ、僕は」
── 最後の『黒』ですが、monobright史上最も暗い世界観だそうで、弾き語りのみで収録されている曲ですが、真っ暗な闇の中に見える一筋の光や希望というのは常に御自身で感じているところにはなるのでしょうか? また、ここ最近感じた絶望と希望がありましたら教えて下さい。
「世の中ってホント表裏一体だなと思うんですよね。出会いがあると別れがあって。得るものがあると失うものがあって。基本、人生ってちっぽけなのに辛い事をしていて、その中にごくたまーに幸せを感じて。そういう事は夜中眠れなくなると考えて、ぼーっとなります」
── ここ最近のシングルは特に、同じような曲が一切ない! と思いますが、曲を作るにあたり、気にかけていることや、monobrightの軸、monobrightらしさとして感じているものはどういうところなのでしょうか?
「本気で型が無いというのがmonobrightの持ち味だと思います。変幻自在なんだけど一貫してポップみたいな。なので迷走してると思われると困るんですよね。迷いが全く無いので、曲でそれが伝わればいいなと思ってます。『雨にうたえば』についても、いろいろ言ったけど皆さんの感じる様に素直に聴いて下さい」
── 10月にリリースされる『ADVENTURE』が、どんな作品になるのか楽しみにしている読者の方に、少しだけ教えて頂けますか?
「日常のすぐ側で鳴る音楽が、今回は集まってると思います。みんなの日常の中で、ともに歩きながら成長していくアルバムだと思うので、是非いろんな場所でiPodに入れて聴いてもらいたいです」
── では来月のアルバムインタビューも楽しみにしています。よろしくお願いします!
「こちらこそ宜しくお願いします!」