悔いのない作品ができた
──そういえば『PUNK ROCK NEVER DIE』は、『ワールドプロレスリング』のテーマ曲として流れているんですよね?
「プロレス中継って、今や地上波では新日本プロレスしか放送されてないんだけど、そこにこっちから売り込んだの。僕は高校生の頃からプロレスとパンクロックが大好きで、当時の自分がまさか30年後にパンクバンドを組んで、自分で曲も詞も書いて、ベース弾きながら歌って、それがCDになって、新日本プロレスの番組のテーマ曲になるなんて夢にも思ってなかった。人生、何が起こるかわからないよね。こうしてステージに立ってたりとか、ましてや、自分の店を持つなんてことも。この店だって、SHON(ex.ニューロティカ/30% LESS FAT)との出会いがなければなかったわけだし。昨年SHONと"PUNK-A-HOLiC"というコラボイベントをやった時に"『PUNK-A-HOLiC』という曲を書こう!"って思い始めて。で、NUMBER.42組んで一番初めに書いたのが『PUNK-A-HOLiC』。当時SHONがやっていた五六という店名も歌詞に出てくるし、まさに、『SHONそして五六ありがとう!』という曲だね」
──あと、『THE HOLLY NIGHTS』は、"ジョーイが歌うラモーンズの新曲"をイメージして書いたんだと驚きましたが...。
「基本的には全曲ラモーンズに新曲を書くつもりで書いているんだけど、特にこの曲はジョーイのあの声で歌ってくれたら素敵になるんだろうなと思って書いているから、自分が歌ってるバージョンを聴いて本当はちょっとまだ不満...(苦笑)。俺の中でこの曲は常にジョーイが歌ってるイメージだから、俺が歌ってるバージョンはイマイチ(笑)。唯一この曲だけボーカルを何度か録り直した。当たり前だよね、ジョーイが歌ってるイメージしか頭にないから。だからジョーイ・ラモーンの歌マネが得意ですって人がいたら、ぜひ歌って欲しい」
──『AMAZING GRACE』が、まさかこうなるとは! とも思いましたけど。
「ちょっとサーフパンクみたいな単弦のギターソロを入れてみたいなと思って。ギターソロは単弦以外は弾かない。僕らのアレンジって、ラモーンズだったらここまでしかやらないでしょというのが一応の目安。後期のラモーンズはギターソロが入っていたけど簡単な単弦ソロだったから、たとえ弾けるとしてもそれ以上は弾かない。俺のバンドをラモーンズだと言われたら、それは最大なる褒め言葉。これを、ラモーンズを知らない人に聴いてもらいたいんだよ。知ってる人も、こういう解釈もあるかって。俺たちは、もっとおバカなことやってるし、90%脳天気なおバカって思ってもらって良いんだ。でも残り10%に、言いたい事はビシッと入ってる。俺的には今回のアルバムはアンセムソングだらけだと思っていて、『PUNK ROCK〜』『LET'S GO ENJOY〜』『IDIOT SAVANTS』『PUNK-A-HOLiC』は、定番のパンクアンセムを書いたという感じなんだよね。アルバムに1曲しか入らないテーマ曲を、4曲も入れちゃったというイメージだから」
──となると、このアルバムでかなり出し切った感はありますよね。今後はどうなっていくんですか?
「NUM42を組んだ時に英語のカバーを2枚、日本語のカバーを1枚を出したいと思っていて、そこまでは出来たんだよ。で、実はNUM42名義でオリジナルアルバムを出したかったんだけど、活動を封印しちゃったので形を変えてこうなったけど、本当に思い描く通りの展開なんだ。NUM42で楽器を持ってバンドマンとして人前に立とうという時に、思い描いた青写真がここまでで、ここから先のことはまだ考えてない」
──そこで想像したところまでは来たということですからね。
「パンクアンセムを何曲も作って、ライブで絶対にはずせない曲が何曲もあって、今の自分の生活パターンで行くと、ライブを年間に何十本もできないし、俺としてはこの1枚を大事にやり続けていきたい。ラモーンズだって、デビューしてから30年『電撃バップ』をやり続けたわけだし、それで良いかなって。アンセムソングって人生で何曲も書けるわけじゃないし、まあでも、無理して量産しようと思えばいくらでも作れるけど、今は相当満足していてやりきった感がある。よっぽど新しいテーマが出てきたら曲を作るかもしれないけど、今はこれを歌っていきたい。これ以上のことは今のところ思い浮かばない。無理に作らなきゃって思って、密度の薄いものを作りたくはないので。HEADROCKを始めてから、最初はイベントのオーガナイザーだけだったのに、DJやってバンドやって、レーベルを始めて、NUM42とTORNADOが同時に活動している時期があって、これ以上広げようがないと思ってたのに、お店が始まって、NUMBER.42を組む事になって、良い意味でこれから先の展開が全く見えない。NUM42とTORNADOをやってる時に、さすがにこれ以上の展開はないだろうと思っていたんだよ。でも、まさかの出来事は、きっとこれからもバンバン起きるんだろうね。少なくともこの1枚に関して言えば、曲、歌詞、伝えたい事、ジャケットの世界観を含めて、やりたいことをやり切ったよ」
──唯一『THE HOLLY NIGHTS』だけは...(笑)。
「そう(笑)。俺ね、自分の声は決して嫌いではないし、むしろ自分自身、個性的なボーカルだなとも思うし、割と自分で自分のボーカルが好きなんだけど、でもその反面、NUMBER.42のボーカルとして、俺以上に上手く歌えるヤツが現れたら、ボーカルで入れても良いと思ってる。俺は、別に自分一人だけ目立ちたいというわけでもないし。使命感で立っているだけだし。あと、自分がバンドでやってる姿を録画して見ると、ボーカルやらずにベーシストでやってる自分はかっこつけられるし、けっこう好きなんだよね(笑)」
──なるほど。でもこうやって話を聞いて、本当に満足のいく作品になっていることはちゃんとわかりました。
「本当に、何一つ悔いはない。だからもしこのアルバムを聴いてイマイチと言われても逆に諦めがつく。パンク好きには刺さると思うんだけど。パンクはこうだろって、頭が固い人には受け入れてもらえないかもしれないけどね。でもホントに悔いはないよ。メッセージ性から曲からバランスのあり方から、完ぺきなものができたぐらいに思っている。何回聴いても飽きないし、自分で聴いても楽しいし、愛着ありまくりだね。だから、満足しすぎてしばらくは曲を作らないと思う。NUM42は、自分がDJでかけられる音源を作れたという意味では悔いはない。今NUM42を封印しているとしても、DJ-namijinがNUM42が残した音源をDJでかければ済む話で、NUMBER.42はバンドでやりたいからDJではかけない。DJでかけて盛り上がる曲調でもないだろうし」
──今までやって来た事が全くムダになってない感じがしますね。
「ないね。NUM42がやれて本当に良かったと思っているし。こんなに楽しくて良いのかなって思うよ。ただ、唯一思ったほど売れてはないんだけど(苦笑)」
──でも本人が一番楽しんでやっているところが良いと思いますよ。自分が満足しないと人には伝わらないですから。
「"ENJOY PUNK ROCK"を貫き通すのは本当に大変なことだからね。そこに男気を感じてもらえたらと思う。そりゃ人間、落ち込むこともあるけれど、心に笑顔を持つ事が大事だよ。でも、だからと言って、頭に来る事を秘めすぎるのもよくないと思う。このアルバムは、俺なりの、ENJOY PUNK ROCKな生き方の提案なんだ。是非みんなに聴いてもらえたら!」