DJ-namijinが42歳で始めたカバーパンクバンドNUM42を封印し、オリジナル曲を聴かせるNUMBER.42を結成した。そしてついに1st.アルバム『PUNK ROCK NEVER DIE』がロックの日である6月9日にリリース!! 敬愛して止まないラモーンズの新曲を作っている気分で、8ビートのシンプルなパンクロックチューンを聴かせる本作。
常にポジティブシンキングを心がけるDJ-namijinから放たれる歌詞は、照らし続けてくれる太陽のように明るく、DJ-namijinそのもののようで聴いていて気持ちが良い。不況だのなんだのと暗いニュースが流れる中、実はこういう音楽って必要とされているんじゃないかと思う。
今回は、バンドのベース&ボーカルで全曲の作詞&作曲を手がけるDJ-namijinにお話を伺った。パンクロックの伝道師として生きる彼は、今どんなことを考えながらバンドに取り組んでいるのだろうか。(interview:やまだともこ)
年齢関係なく好きなものをやり続けよう
──アルバム『PUNK ROCK NEVER DIE』の対訳を読みながら聴かせて頂いたんですが、言いたい事が一貫してますよね。それがいつものnamijinさんらしいというのはすごく感じたんです。私、英語が得意ではないんですけど、聴こえてくる"ENJOY"とか"PUNK ROCK"とか単語もわかりやすいですし、トータルとしてnamijinさんのポジティブさがすごく出ている作品だと感じましたよ。
「2曲目に入っている『LET'S GO ENJOY PUNK ROCK』がNUM42の時からある曲で、言いたい事はこの1曲に詰め込んであるから、本当はこの1曲だけがあれば良かったぐらいなんだけど、それをちょっと広げてアルバムにしたんだ。NUM42時代の唯一のオリジナル曲が『NUM42のテーマ』で、アルバム出す毎に『〜テーマ1』『〜テーマ2』ってなって、メロディーが変わったり英語になったり日本語になったり、その続きとなる予定だったのが『LET'S GO ENJOY PUNK ROCK』。だけど『NUM42のテーマ』とは違うオリジナル曲にしたいなと思って。だからこの1曲がNUMBER.42というバンドの原型になったと言っても過言ではない。これが俺がやるべきオリジナルのスタイルなんだと思えて、こういう曲ばっかり作ろうと思ったんだよ」
──確かに近い雰囲気の曲が多いですよね。歌詞には、"パンクロックは永遠"や"パンクロックを楽しもうぜ"というフレーズが多く見られましたが、年齢とか関係なくこれだけ楽しいことをやれてるよということを提示したいというのはありますか?
「それが一番だね。やっぱり自分がHEADROCKのイベントをやっていて一貫して伝えたい事は、実年齢に関係なく好きなものをやり続けようよってことなんだよ。人に言ってるようで、自分に言ってることでもある。好きなものを続ける、好きなものが見つかったらチャレンジする、それはいくつになってもやるべきだろうって。自分にとってはその生き方を集約した言葉が"ENJOY PUNK ROCK"であり"HEY HO LET'S GO"なんだよ。"HEY HO LET'S GO"はラモーンズの借り物だけどね。僕はパンクロックのDJとして、オーガナイザーとして、パンクロックの伝道師として生きていくという使命を自分自身に課したんだよ。ラモーンズが1975年ぐらいに作ったパンクのスタイルに感化されてバンドを始めた人間なので、人生をかけて伝えたい。NUMBER.42はオリジナルバンドではあるんだけど、ラモーンズだったり、初期パンクロックの功績であったりを、自分を媒体として世の中に伝えたいと思ってる。『1974』という曲でも歌っているけど、自分にとってパンクロックの一番大きな役割は、簡単な3コードさえ弾ければ誰でも表現者になれたってこと。ステージとフロアの間にあった垣根をぶっ壊してくれたのがパンクロックだったんだよね。で、一番わかりやすいスタイルをやっていたのが、自分にとってはラモーンズだった。ギターソロがないというのは大きかったよ。それまではギターソロって必ずあったんだけど、楽しくなかったから(苦笑)。だからこそ、パンクってパーティーミュージックだと思うし、みんなで楽しもうぜという音楽だと思うんだ。俺もテクニックよりはどっちかと言うと人間性とかメッセージ性とかを強く見たいと思うので、技術者みたいなところを見せられても...。だから、このアルバムでは、いろんなリズムパターンとか曲調はできるけど、敢えて絞ってやりたかったんだよ」
──8ビートが多いのもそういう理由で?
「そう。世の中いっぱいバンドがいるし、自分は原点回帰じゃないけど、いろいろやってきて自分が一番好きなのがこれだなとしつこいぐらい出して、1枚でもうたくさん!っていうぐらい押し通したいって思ったんだ。まあ、その割にはバリエーションに富んだ気はするけどね」
ポジティブに生きるには努力がいる
──音を重ねたりするバンドって多いと思いますけど、そうではなくて3人でやれる音で作っていったんですか?
「ポップでラウドなロックンロールを追究していくなら、必要最低限の音数で、これだけできるだろうって」
──ということは、レコーディングは意外とすんなりできたんですか?
「昨年の夏に4日間でレコーディングとミックスとマスタリングまでやっちゃった。みんなバラバラで録ったんだけど、ドラムもベースもギターも歌もほとんど一発」
──でも出来上がってからは、だいぶ時間が経ってますよね? 確か、一度聴かせて頂いたのが1年近く前だったような気がしますが。
「一旦完成して1年間寝かしといたの。発売のタイミングを伺っていたのと発売元を探していた。そしたら、KANちゃん(株式会社アンダーフラワー・アパートメント代表取締役・田中謙次氏)が"良かったら出しましょう"って言ってくれて、それなら"プロデューサーになって、ミックスからやり直してくれない?"って。1回ミックスまで戻って作り直してもらって、ミックスとマスタリングをKANちゃんスタッフにやってもらって完成した」
──けっこう直したんですか?
「元よりも音が荒々しくなったかな。KANちゃんには、かなり安心して任せられたね。だから立ち会ってなくて完全にお任せ。前は自分がレコード会社のディレクターで、KANちゃんは出入りしている事務所の社長だったから、まさかこういう形で一緒にできるとは思ってもいなかった。ジャケットもイメージを伝えて、あとはKANちゃんに作ってもらったし、本当にコラボという感じで楽しかったよ。だから、あの時に焦って出さなくて良かったなって。ヘッドロックカフェ(高田馬場にあるnamijinさんが経営するバー)を開くタイミングだったから、開店前にレコーディングしておこうという発想で急遽夏にレコーディングして、リリースのタイミングはゆっくり考えようって。今は市況が良いわけでもないからね」
──世の中的にも状況は良くはないですけど、このアルバムでは楽しいことを楽しいってストレートに伝えられるから、すごく響きますよね。
「まあ、決意表明かな。『PUNK ROCK NEVER DIE』はパンクは死なないという意味もあるけど、俺達くたばらねえぞって意味も含んでる。でも、楽しく居続けるとか笑顔で居続けるって大変なことなんだよ。ポジティブに生きるというのは努力がいること。そういなければと自分も鼓舞してるんだよ。ENJOYとか笑顔とかって言うから、ちゃらちゃらした感じと取る人もいるけど間違いで、心が強くなければできないんだよね」
──だから、namijinさんがいつも明るく振る舞う感じは、尊敬しているところでもあるんですよ。
「ありがとう(笑)。もともとそういう人間だというのもあるけれど、正直、頑張ってるよ。悩む時もあるけど、ここで笑顔を出さなければ自分が負けだと思うんだよね。右手の甲に太陽のタトゥーを入れたのも、これからの人生を太陽として戦い抜くって思っているからなんだ。太陽はギブ&ギブでしょ。そういう存在であり続けたい。HEADROCKというブランドを背負ってるのも、ENJOY PUNK ROCKって言葉を掲げて活動しているオーガナイザーも世の中に俺一人だから、自分しか背負えない使命感を背負ってるという感じはあるかな」
──そんなnamijinさんでも、『THE SONG ABOUT HATERS』では、けっこう毒づいてると思いましたけど。
「この曲はどうしても入れておきたかった。元々パンクロックって、怒りや不満をぶちまける音楽ジャンルだったし、1曲ぐらいはこういう曲があっても良いんじゃないかなって。誰にでも許せないヤツって、1人や2人はいるでしょ? 俺はね、殺人、強姦、暴力、詐欺とか、非人道的な事を平気でできる人間はもちろん許せないんだけど、人の噂話とか陰口ばかり言いまくる人種がとにかく大嫌いなんだ。陰で言ってる事って、大体本人の耳にも入ってくるもんだしね。『LET'S GO ENJOY PUNK ROCK』も実は、ある怒りをぶつけた曲なんだけど、多分歌詞からはわかりづらいから、この曲ではとにかくわかりやすいように。生きていればいろいろあるだろうということを、この曲では素直に出してみたんだ。ただ、怒りの気持ちばかり出したら俺の趣旨に反することになっちゃう。こういう曲がバランス的に12曲中1曲ぐらいあっても良いかな。まあ、これが俺の人間としてのバランスだとも思うんだよね」
──9:1ですね。
「ほんと、そんな感じ。でも実際は怒りの気持ちのバランスは1よりももっと少ないと思うけど」
──namijinさんでも怒るんだなという感じはありましたね。
「俺、どこかで聖人君子みたいなイメージを持たれてるみたいですけど(笑)、人間だから完ぺきじゃないところもあるよということもあって入れた。『THE SONG ABOUT HATERS』はリアクションが楽しみなんだ。その次の『WHERE'S MY BOOZE?』はまたオバカな曲になるでしょ? そういうバランス。この曲のイメージは打ち上げ会場で"ナミジンもう飲むなよ"って言われて、ビール隠されて探している場面。最近記憶なくすぐらい飲む事があって、ちょびっと反省してるんだよね(苦笑)」