Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー片山ブレイカーズ&ザ☆ロケンローパーティ('10年5月号)

西の都発信!
ミラーボールに照らされた現代版ロケンロー浪曲の極み!

2010.04.15

 ちょいとチラ読む皆様方よ、日本語ロックに興味はおありか? 京都名産かっこいい日本語ロック凝縮エキス配合、且つ、今時珍しい長いバンド名でもお馴染み、片山ブレイカーズ&ザ☆ロケンローパーティの2ndフル・アルバム『サカサマデアル』リリースを記念しての、フロントマン片山尚志(vo)のインタビューだァ。本誌初登場、巷を騒がせている京都の5人組のお話。トザイトーザイ。(interview:石川 愛/下北沢SHELTER)

アルバム・リリースごとにいろいろひっくり返してきた

──活動10年目、そして2ndアルバム・リリースということで、おめでとうございます。

片山:ありがとうございます。

──出来上がったものを初めて手に取られてみて、如何ですか?

片山:ジャケットがかわいいなーと思います。僕ら京都にいて、レコーディングは東京でするから、時間の掛かったアルバムやなと思います。

──前作までは、"片山尚志というピン・ヴォーカル"ありきのバンド、というパブリック・イメージが強かったと思うのですが、ご本人としては如何ですか?

片山:曲作りに関しては、結構僕が作ってきたものがバンドをリードしてきたっていうふうに思っているので、そのイメージが強いとは思いますけど...どうだろうなぁ...個性の強いメンバーが集まっているので、ライヴでは食い合いな感じがあったりしますね。結成当初は、ライヴでの食い合いがバンドの特徴ではありました。持ち札って言うか、カードが増えていくにつれて、作曲の段階から僕の歌に注目した部分で曲をアレンジするっていうのも増えたりした。今回はリード曲が歌物なので、そのイメージがあると思う。ライヴでやると、「あ、やっぱり片山ブレイカーズやな」ってなるやろけどね。

──そもそも片山ブレイカーズとは?

片山:僕らは京都出身の5人でやってるバンドです。結局自分らのサウンド的に血となり肉となっているのは、60年代のモッズ、それ以降のブリティッシュのバンド、70年代頭くらいのアメリカのバンド、70年代全般の日本語のかっこいいロック、いわゆるニュー・ロック以降のロック・バンドだったりとか。そういうのが土台なんです。でも、10年間同じことをずっと続けていたら、3、4年目でサプライズがなくなってきて、自分らがバンドを動かしていく原動力にならなくなる。同じ音を追っかけるだけやったらね。だから、非日常と言うか、このアルバムのタイトル『サカサマデアル』っていうのがそういうことを表現したかった。ライヴって非日常を体感したくて皆来るでしょ。見たいのはいわゆるピエロやったりとか、圧倒的なイメージ、自分の経験とダブるような情景だったりとかじゃないかなぁ。でも僕は、自分の印象とかで歌詞や曲を書けない。生活やね。京都で僕が暮らしてる感じ、友達の家、いつも行く店。自分の家から半径1.5kmくらいの歩ける距離範囲のもののイメージをベースに曲を作っていて、それが人の求めているイメージとダブればいいなと。そこは吟味している。

──メンバー全員京都在住で、5人分の意見の凝縮というわけですな。片山さんが主に作詞作曲してらっしゃいますが、メンバーに伝える時はどのように?

片山:これな、パターンがいくつかあんねん。一番判りやすいのはメンバーの前で弾き語り。それは結構すぐ曲になる。あとは、歌とかはあるけどとりあえず置いといて、片山ブレイカーズらしくって言うか、昔作ってたみたく5人が5つ違う方向を向いて、且つ同じ車輪を回しているという感じにしたい時は、断片を伝える。「ここでこの言葉をバンと入れたい」とだけ伝えて。そういう場合はリフひとつってこともある。それだけを見せてスタジオで「いっせーの」でやってみる。ライヴでやるまで時間が掛かるけど、衝動でやってるわけじゃないって言うか...。3つ目は「家でデモ・テープを作る」。でもそれがそのままの感じで曲になることは100%ない。宅録へたくそ過ぎるから。そもそも宅録はほとんど遊びでやることが多い。

──バンドの方向性さえ変えるような、宅録での打ち込みから出来た新しい曲も収録されていますね。

片山:"この曲、ほんまにバンドでやんのー?"って最後まで思ってたけど、入ったねぇ。でも、自分の考えでバンドの足枷を作ってしまうと良くないと思うし、こりゃ完全に実験や。『空に穴あく夜にある』とか...。

──タイトル長いですよね。

片山:て言うか、片山ブレイカーズ&ザ☆ロケンローパーティってバンド名自体、長いよな。

──いかにも。でもその辺に関しては貫いて欲しいです。平成の内山田 洋とクールファイブ的な。

片山:僕らが自分らの感じを貫くのって、きっとね、他のロック・バンドとかとちょっと違うと思うねん。自分らの持ってるイメージ、持たれているイメージをあまり破壊せずに、やけどそん中でちょっとずつ新しいことをやっていくってことだと思うねん。でも、僕らはそれには当てはまらないと思う。ライヴもアルバムも、変える時は変える。しかも、どっちもかなり力入れてやってる。

──ということは、結成当初から随分変わった?

片山:それこそ、全く別のバンドに見えると思うよ。昔はガレージ・バンドやったし。このアルバムで言ったら『輩に穴』みたいな曲しかなかった。当時は全曲こんな感じ。で、そこからやね、インディーで初めて出した時に『月猫』っていう曲が出来た。『○×』(ちなみに"マルペケ"と読みます。正式なタイトルは『○月×日』)も古い曲やけど、それらが出来て『月猫ガール』を録音しようって思った。で、『○×』を出した辺りから、今まで一緒にやってたロックンロール・バンドとは一気に違うバンドになった。ツアー回っていろいろコミュニティが出来かけたりもしたけど、そこで『ヌマヌマヌー』っていうアルバムを出して『鏡よ、カガミ』っていう曲が出来てからまた更に変わった。そこは、敢えて"歌"を作るっていうことに挑戦し始めた頃やね。

──ライヴとアルバムの印象がここまで違うということも、片山ブレイカーズの特徴のひとつでは?

片山:そうやね。前作の『生まれてはみたものの』辺りから、ライヴとアルバムに入れる曲作りっていうのを、頭の中で乖離して考えることができるようになった。メンバー全員、頭を切り替えて録音に挑んだんです。「ライヴではこれやらへんかもしらんけど、音源ではここは必要やからここを足して弾こう」とかね。自分らの音楽がスピーカーに乗った時にどう聴こえるか、僕らの音楽の母体は60's〜70'sやったりするけど、今になってそれが古臭くないかどうかとか。そういうのを最初から考えて作った。

──シングル・カットされ、PVにもなった『地球最期の朝がきて』ですが、今の片山ブレイカーズとして、この曲のような表現の仕方には満足されていますか?

片山:してますしてます。この曲から知るっていう人も出てくるだろうし。

──映画『GSワンダーランド』にもバンドとしてメンバーさん全員出演されていますけど、あれから知った方も多いのでは?

片山:いるんすかね...(照れ笑いながら)。ふふふ。判らんやろ、だいたいカツラ被っとるからなぁ...。

──衣装も奇抜で。

片山:あれな、衣装全員自前やねん。

──ヒャッハッハ!

片山:「私服を持ってきてください」って言われて。

──ミラッミラの柄シャツで、きちんと誂えたかのような。

片山:まぁ、私服やからね(更に照れ笑いながら)。でも、大学生の時あんな格好してたわー...(ハッピーターンの包装をねじねじしながら、若干遠い目で)。もともとはミック・ジャガーが好きやって、京都におるからっていうのもあるけど村八分を知って、ちぇるしぃとか...。キング・ブラザーズもそうやね...あと、騒音寺もおるし...。僕の世代的にはくるりの影響が強かったから、みんな普段着でライヴをしてたよ。でも、自分のライヴはきっとそういうんじゃないんだろうなというのは判ってた。だからステージに上がる前の、着替えた時のチャンネルが切り替わる感じが凄い好きやったりしてね。ステージに立つ時は、素な感じでは出たくない。て言うか今回の衣装、決して"素"ではないよな、これは。あと、みんな僕と考え方は一緒なんやと思う。あんまりずっと同じことを続けたくないっていう。どちらかと言うとメンバーのほうが強いなぁ。次はこんなんやってみよう、とか全員言ってくれるしね。

──安藤(亘)さん、最近ライヴでギター回さないですね。

片山:そう? ほんま? そうかー。でもそういうのも、別にみんなで取り決めていることでもないしね。あいつが勝手に自分の中で「今や!」って自分ルールでやってるだけやから。ライヴ中に「あ、ここで回すんやろうな」っていう時は、ぶつからんようにしてるけど。

──阿吽の呼吸だ。片山ブレイカーズの魅力のひとつでもある、ライヴ中にフロント4人がザッ! と一列に揃うっていうのとかも含めて?

片山:そうやねー。

京都に寄せるキモチ、それ即ち外国人観光客目線の郷愁

──日本の中でも地方によって音楽のジャンルってありますよね。

片山:京都はブルースとフォークソングやね。それは僕のルーツでもある。

──相変わらず京都感高いですね。『キョート・トリッパー』は文字通り特筆に値しますよ。京都に憧れている人が、京都に行ってみたい、京都を歩いてみたいと思って唄っているという感じがしました。

片山:あ、それビンゴです。

──まんまと京都に行きたくなりました。

片山:あの曲は実は最後まで歌詞がなかってん。前奏とハーモニカのリフしかなくて、レコーディングの段階ではお蔵入りになる予定やってんけど、これはライヴで武器になると思うから、演奏するかどうかは判らんけどオケだけ録っちゃおうよって、無理矢理構成、アレンジして。だから(音源のサビの)回数とかおかしいやろ?

──いやはや、お話を伺うまで無理矢理とは思いませんでした。

片山:東京におる時に「歌まるまるないけど明日歌録や。どうしよ」と。で、たまたまテレビ見てたらJR東海のCMで有名な"そうだ、京都へ行こう"ってあるでしょ、あれは当然のことながら京都では流れてないわけよ。

──確かに、京都在住の方の目線ではないですもんね。

片山:京都の人間は"そうだ、京都へ行こう"なんてフレーズ知らんで。でも、だいたいの日本人ってあのCM知ってるんやなーと。日本人にとって京都ってちょっと特別なところで、懐かしさとかノスタルジックなものを求める場所なんかな。で、この歌に出てくる「まるたけえびすにおしおいけー」っていうのは、京都の"横の(=東西の)通り名歌"っていって、子供が迷子にならないようにおじいちゃんおばあちゃんから教わる歌。京都の人間はみんな唄えんねん。道の頭文字ね。

──実用的な歌ですね。

片山:タクシーの運転手さんとか使ってるよ。あねさんろっかくーやから、ここから3本目やねーっていう感じで覚えてはると思う。結構前からやねんけど、通り名歌の歌詞を引用して曲ができないだろうかとメンバーから言われてて、「あ、ようやく使えるかもしれん!」と。以前も通り名歌では何度か挑戦してんねんけど、まるまるはめ込んでここまで「あ、いける」ってなったんは初めてやね。嬉しかった。どうせやったら京都の町を歩いているような...地元の人やったらちょっと、にやっとするような...。「ここは戻り橋かな?」「これは葵祭りのことを唄ってるんかな?」というような、ピンと来るような感じ。それも織り交ぜての"京都に行きたくなる"歌にできたと思います。

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サカサマデアル

DANGUY RECORDS YCCL-10007
2,625yen (tax in)
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LIVE INFOライブ情報

サカサマデアル TOUR
5月5日(水・祝)岡山 CRAZYMAMA 2nd Room
5月7日(金)滋賀 B-FLAT
5月8日(土)西川口 Hearts
5月9日(日)千葉 LOOK
5月15日(土)京都 磔磔
5月16日(日)福岡ベイサイドプレイス博多埠頭内 サンセットパーク野外特設ステージ[博多埠頭音楽祭]
5月21日(金)金沢 vanvanV4
5月22日(土)上越 EARTH
5月23日(日)富山 MAIRO
5月27日(木)広島 BACK BEAT
5月29日(土)福岡 四次元[ワンマン]
5月30日(日)尾道 JOEBOX
6月1日(火)松山 サロンキティ
6月3日(木)徳島 club GRINDHOUSE
6月12日(土)宇都宮 KENT
6月13日(日)仙台 パークスクエア
6月15日(火)名古屋 UPSET
6月18日(金)新宿 LOFT[ワンマン]
6月20日(日)札幌 SUSUKINO810
6月26日(土)大阪 十三 FANDANGO[ワンマン]
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