Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューa flood of circle TOUR「PARADOX PARADE」2010.3.05(fri)恵比寿LIQUIDROOM('10年4月号)

なくした分だけ得られたものの大きさに気付く

a flood of circle、渾身のワンマンライブ!!

2010.03.04

 2月6日の仙台PARK SQUAREを皮切りにスタートしたTOUR"PARADOX PARADE"は、恵比寿LIQUIDROOMがファイナルワンマンとなった。前回が新宿LOFTで行った2009年1月30日になるので、東京では約1年ぶり2回目のワンマンだ。この1年の間に、メジャーデビューしたり、ギターの突然の失踪もあったが、それでも立ち止まることなく2nd.アルバム『PARADOX PARADE』の制作に取りかかり、環境もだいぶ変わって一回りも二回りも大きくなったa flood of circle。
 3月5日、周りの心配も吹っ飛ばすほどのオーディエンスで埋め尽くされたフロアは、照明が消えると同時に拍手と歓声で溢れ、メンバーが登場するとそれはより一層大きなものとなった。1曲目は『Forest Walker』だ。じわりじわりと迫ってくるようなサウンドを聴かせるこの曲が、始まりの合図のようでもあった。お決まりの「おはようございます。a flood of circleです」という言葉以外は、ほとんど止まることなく6曲目の『シーガル』まで駆け抜ける。次に演奏された『春の嵐』では、それまでのヒリヒリとした空気から一変。春の訪れを感じさせるような、a flood of circleには珍しいほどのポップな楽曲。そして、そのままMCへと突入。先程まで、少しウエーブがかった長い髪を揺らしながらクールに演奏していたベースの石井による、失笑多めのトークショーが微妙なテンポで繰り広げられる。この時の、「お前、それだから全国で"石井"って呼び捨てされるんだよ」と佐々木が言った言葉が忘れられない。佐々木はこの後雰囲気をなんとか元に戻すかのように、淡々と話し始めた。「昨年はなくしたものも得たものもあったけれど、今日ここまで来れたことがとてもうれしい」といった発言から、彼らがめげずにどれだけ強い意志をもってここまで活動してきたのかを少しだけ感じられた。
 中盤戦は『水の泡』でスタート。スロウテンポの楽曲ではあるが、壮大に広がる大海原のようにのびのびとしたギターがとても心地よい。『Buffalo Dance』では、それまで寡黙に弾いていたサポートギターの奥村 大(wash?)がネイティブアメリカンのような雄叫びを上げる。続いてオーディエンスに促すと、誰もが幸せそうな顔をして雄叫びを上げていた。これだけ多くの人を引っぱっていけるバンドになったんだと実感して少し感涙。ここから『泥水のメロディー』、『プシケ』、『ロシナンテ』と一気に畳みかける。オーディエンスは、待ってましたとばかりの歓声を上げ、フロアは大きな波が押し寄せたかのようにうねりをあげていた。『世界は君のもの』を演奏し終えてギターの奥村が退場し、メンバーが3人だけステージに残る。ライブが始まって2曲目ぐらいにはすでに上半身裸になっていたドラムの渡邊が、カホン(高かったとステージ上で語っていた)を持ってステージ前方まで出てくると、アコースティックスタイルで『月に吠える』が演奏された。先程まで、演奏中は全身から狂気が滲み出ていた佐々木だったが、ここでは見るからに好青年の表情に戻っていた。
 アンコールで再びメンバーが登場...と思いきや、先ほど失笑のMCを展開した石井が懲りることなく一人で登場。今度はツアーグッズについて流暢に説明をする。フロアからは温かい声援がかかるが、そろそろ話すネタもなくなった石井は困った顔をしてメンバーを呼び込む。佐々木曰く、このツアーの中では一番良いMCだったそうだが、これまでどんなMCをしていたのかと想像すると若干ゾッとした。アンコールは『Flashlight&Flashback』と『象のブルース』。『象のブルース』は、23歳のa flood of circleにしては渋いと感じる曲だが、年々味わい深くなっているように感じられた。
 これで終わりの予定だったのかもしれないが、止まないアンコールに応え、再度照れくさそうに登場したメンバー。最後に歌われたのは代表曲とも言える『ブラックバード』だ。サビのフレーズが印象的なこの曲は、もう何年も前から歌われているのに色褪せることがない、不朽の名作だと言えるだろう。無数のこぶしがフロアから上がり、お互いの熱を感じたところでa flood of circleの2回目のワンマンは幕を閉じた。今年も変わらずにライブをやり、生き急いでるかのように走り続けるa flood of circleの活躍が楽しみで仕方がない。(Rooftop:やまだともこ)


SET LIST
01. Forest Walker
02. 博士の異常な愛情
03. Ghost
04. Paradox
05. Thunderbolt
06. シーガル
07. 春の嵐
08. 水の泡
09. SWIMMING SONG
10. 噂の火
11. Buffalo Dance
12. 泥水のメロディー
13. プシケ
14. ロシナンテ
15. 世界は君のもの
16. 月に吠える
<アンコール>
17. Flashlight&Flashback
18. 象のブルース
<ダブルアンコール>
19. ブラックバード



photo by:Terumi Fukano

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