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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】ワイ・ユー・ジー(植木遊人グループ)(2009年12月号)- バンドという一番の武器を手に入れてから広がる新たなる可能性

バンドという一番の武器を手に入れてから広がる新たなる可能性

2009.12.01

"歌う学園ドラマ"と呼ばれて早数年。植木遊人が、最高のバンドメンバーと共にワイ・ユー・ジーとなって、ニューアルバム『ネヴァーエンディングストーリー』をリリースすることとなった!! ダブルオー・テレサを脱退してからの間、1人で日本中を駆け回っていく中で出会った音楽仲間や数々の経験が、この1枚には"植木遊人史"として詰め込まれているのではないだろうか。ずっと夢を追い続ける少年でもあり、現実を知り尽くしたかのように斜めから物事を見る大人でもあり、その狭間で藻掻きながらも、ぶち当たる壁を笑い飛ばせるのは植木遊人しかいないと思う。ロックもパンクもポップも、涙も笑いも怒りも、沸き上がる感情を全て封じ込めた渾身の作品。綺麗な言葉で綴られた愛の歌よりも、泥を掴んでも這い上がる男の歌のほうが、よっぽど真実味があるのではないだろうか。(interview:やまだともこ)

バンドだからできる化学反応

──今回の『ネヴァーエンディングストーリー』は、全国で流通されるのはダブルオー・テレサの時以来約4年振りだそうですね。

植木:アルバムで言うと、最後にダブルオーで出したのが2006年ですから。

──ソロになってからリリースしたものは、全てライブ会場限定でしたしね。

植木:そう。宅録で作ったものですね。ちゃんとしたエンジニアさんと一緒に作るというのもひさしぶりです。4年の間に感じた怒りとかの感情もみっちりぶち込んだアルバムになりましたよ。

──『ネヴァーエンディングストーリー』はワイ・ユー・ジーとして、バンドサウンドにもなりましたし。もともといつ出したいという予定はあったんですか?

植木:期間は決めてなくて、本当に音楽がしたいということしかなかったですね。

──でも、これ以上期間を延ばせば止めどなくアイディアが溢れるから、一度ここで作品にして区切ろうというという感じですか?

植木:そろそろ次の曲のことも考えたいですからね。

──ワイ・ユー・ジーが結成してからは、そんなに時間が経ってないんですが、バンドとしても固まってきましたよね。

植木:やっぱりバンドで活動を始めたら、形に残るものとしてCDは出したかったんです。でも、僕が1人で日本全国をかけずり回っている間に、音楽シーンは変わったみたいで、CDは売れなくなり、CD屋もどんどん縮小されてきていますよね。そしたら、僕が立ち上がるしかないだろうと思ったんです。自分はインディーズの中のインディーズなので、ライブ会場でCDや物販を一生懸命に売ったり、演者とお客さんとの垣根を越えた活動は早くから始めたと思っています。そこで、今回C-LINKさんとやるにあたり、お互い楽しくやりたいじゃないですかって思ったんです。それに、ライブ会場限定販売だけでなく、これまで以上に届く人の数を拡大したくて、今まで以上にお金を使ってこの作品を作ったんです。ここから発展させないといけないですからね。自分だけでやっていたら、CDが売れて得る収入もありますけど、寂しいんですよね。

──1人に限界を感じたわけではない?

植木:1人は1人で面白いんですけど発展がないというか、バンドでやることで生まれる化学反応が楽しいんですよね。その奇跡は人とやらないとわからないんですよ。

大切なのは幸せになりたいという気持ち

──今回のアルバムは、今の植木さんがやりたいことを全部詰めましたという作品になりましたね。

植木:期間も長くて完成してからミックスをし直したりした結果、すごく良いものができたと思っています。

──ピアノの音が入っているというのも今までなかったですし、『エンドレスミュージック』のようなレゲエ調の曲があったりもしましたし。

植木:ピアノは、つるうちはなちゃんが弾いてくれたんです。ギター1本でずっとやってきたから、広がれば広がるほど楽しい。他にガットギターとか、カヴァキーニョ、あとトロンボーンの音を口で鳴らしているのが原田茶飯事くん。彼は、とにかく楽器がうまいんですよ。ピザ1枚でお願いできました(笑)。あと、コーラスにはパウンチホイールの青木(拓磨)くんやザ・ガールハントのマスザワ(ヒロユキ)くんに。こういう感じでレコーディングができるなら、アルバムを何枚でも作れそうですよ。でも、広げるだけ広げたらちゃぶ台をひっくり返すんでしょうね(笑)。世の中の人はブレないことがかっこいいって言うけど、僕はブレたいです。むしろブレることがかっこいいと思ってる。そこに何かミラクルが生まれる気がするんです。

──ブレたいとは言いつつも、1枚を通してキレイにまとまってると思いましたよ。詞に関してになりますが、トータルで読んで、「みんなのことを考えてますよ」みたいなんだけど、最終的には植木さんはみんなに気にして欲しいという人だと思うので、それが曲の中で見え隠れしていて、曲の言葉にウソはないなと思いながら聴きましたけど。

植木:ウソはつけないですからね。

──あと“KIRAMEKI”とか“TOKIMEKI”という言葉はたくさんあるんですが、求めてはいるけど掴めてない感じがすごく表れていますね。

植木:手に入れられないことを楽しんでいる感じがありますよね? そういうものは意識してます。掴んだら終わっちゃうから。追いかけっこがしたいです。大切なのは幸せになりたいという気持ちなんですよ。

──それから“初恋”もかなりキーワードになってますよね。

植木:そういうテーマで作ってますからね。初めて恋をした時って、落ち着かないというか、ずっと浮ついているじゃないですか。だから、タイトルも『ネヴァーエンディングストーリー』。文化祭の前の日みたいなドキドキしたりワクワクしたりする気持ちは忘れたくないということです。『うる星やつら』の映画に『ビューティフル・ドリーマー』というのがあるんですけど、その感じでいたいというか、一番最後に一瞬本音が出るという、その刹那を表現しているんです。

──本音という部分で言えば、『大人2(おとなのじじょう)』は私自身あてはまるところがあって、胸を締め付けられる思いでした。

植木:僕も世間的には大人の年齢なので、たまにこういうことを言いたくなるんですよ。良い曲だけど、歌っていて悲しくなりますね(苦笑)。

──『アーチ』は…野球やったことありましたっけ?

植木:1回もやったことない。でも、昔、少年野球のチームに入りたかったの。それで友達に誘われて、町内会のチームの練習にグローブを持って行ったんだけど、その日の朝はどしゃぶりでさ。そしたら誰も来なくて、3時間ただ1人で待ってた。もちろん野球はしてないし、次の日学校に行って「待ってたんだよ」なんて言ったら傷ついちゃうかもしれないって思って、誰にも言えなかったんですよ。変に気を遣う小学生でしたね(苦笑)。それは今でも続いているような気もしてますけど。

気楽に行こう、ケセラセラ

──リード曲となっている『アイラブユーがきこえない』は、ライブでも定番の曲ですね。

植木:俺が言ってることは間違ってないと思いますよ。相当モテてる人にはわからない心情だと思ってます(苦笑)。

──この曲に限らず、モテたという経験が感じられない曲ばかりだと思ってました…。だからすごくリアリティーがあるんです。曲のそれぞれが植木さんそのものなんだなって。ただ、それをドン底のような表現方法ではなくて、笑い飛ばしているような雰囲気だから、聴いてて重くないというか。

植木:重たいことをそのまま言って、「どうだ!」って言われてもって思うんですよ。そんな重たい歌なんて聴かないでしょ? 飲み屋で「今日こういうことがあってさぁ」って話をしているぐらいの感じで良いんじゃないかって思うんですよね。できれば共感して欲しいというのはありますけど、俺は俺の道を行くから、どうか笑って頂きたいって思う。そして、曲を聴いて何かを感じてくれたらすごく嬉しいなとは思います。

──音楽の活動歴もある方なので、いろいろと経験してきた人なんだなというのは感じましたし、それなのに、今でも川に流れている藁の1本でも掴んで生き延びてやろうというしぶとさも感じられるんですよね(笑)。

植木:生命力の強さですね。…その表現って、害虫みたいな表現ですよ(笑)?

──失礼しました(笑)。そしたら…なんとかして這い上がっていこうという力強い感じはすごく歌詞にも曲にも感じられますよ。

植木:はい。自信がある1枚になりました。

──飾らない言葉で表現できるのは、植木さんにしかできないですからね。

植木:愛の歌は売れてる人じゃなくても歌えるんだぞ、と言いたいですね。そういうのを高校生の男子とかに伝えたいですね。

──最近では10代の出演するイベントに、ゲストで呼ばれて、大きな爪痕を残したというウワサは聞いています。

植木:おもしろかったですよ。演奏を一生懸命やったのに、いきなりタメ口で喋りかけられましたけどね(苦笑)。でも、何かしらの刺激は与えられたんじゃないかなと思っています。

──こんなにさらけ出していいんだって思えますからね。

植木:それを脱げばいいみたいな間違った解釈をする人もいますけどね。そうじゃないんですよ。なんでロックシーンってあの感じがあるんでしょうね。モラルってやっぱり大事だと思ってます(笑)。でも、常に夢を与える側ではありたいと思いますね。

──植木さんが音楽をやり続ける理由ってなんですか?

植木:好きだからに尽きますよ。音楽にはゴールがないから、ずっと追い続けていられるんですよね。音楽との距離感を、恋愛みたいに捉えていられるから続いているんだと思います。

──では、音楽を通して人に伝えたいってどんなことですか?

植木:気楽に行こう、ケセラセラですかね。それなりに苦労はしてきてると思うので、そんな自分に言えることって気楽にやるのが一番いいよってこと。あと、すぐに人って死にたいって言うけど、それはやめたほうがいいよね。楽しいことなんて、それ以上にたくさんありますからね。道徳的なところは伝えていきたいですよ。

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