地元・大阪では自主企画"亜米利加村コルトドラゴン"を定期的に敢行し、ロックンロールの危うさに飢えたオーディエンスをただひたすらに鼓舞させ、制御不能な暴走アンサンブルでフロアを酔狂の渦に叩き込んできたZORROが自身初となる公式音源『WANTED SIDEWINDERS』を発表する。かの大盗賊にして真の紳士、怪傑ゾロの名を大胆不敵にも冠した彼らの音楽は、ストリートに根差した粗野でエッジの効いたロックンロールを欲する我々にとってまさに"賞金首のお尋ね者"だ。持ち得るエネルギーのすべてを音の塊として充満させたような『GASOLINE CHILD』一曲を聴いただけで、あなたの胸には"Z"の文字が深く刻み込まれることだろう。"The Mark of Zorro"の"Z"はアルファベット最後の文字だが、それは彼らが血の匂いのするキワキワなロックンロールを容赦なくブチかます最後の刺客であることの象徴なのかもしれない。強きを挫き弱きを助く大盗賊はあなたの感受性を奪い取るべく虎視眈々と目を光らせている。気をつけろ。(interview:椎名宗之)
ライヴ感×臨場感×ヤバさ=ZORRO
──『WANTED SIDEWINDERS』は結成から4年を経て満を持しての初の公式音源ですが、これは今のバンドのコンディションが良いからこそのリリースなんでしょうか。
カズキ(vo, g):自分らの中では自然なタイミング。
ツカサ(b, vo):長いこと経験積んだし、そろそろええもん出せるかなと。
──そもそもどんな経緯で結成されたバンドなんですか。
ツカサ:もともと今のメンバーと4人で違うバンドやっててんけど、ヴォーカル抜けてもたし、3人で一から始めようかって。簡単に言えばこんな感じやったけど、始めるまでは言えへんようなこといろいろありましわ(笑)。
──"ZORRO"というバンド名はジョンストン・マッカレー作の小説『カピストラノの疫病神』の主人公である怪傑ゾロからインスパイアされたものですか。だとすれば、怪傑ゾロに惹かれる部分はどんなところでしょう。たとえば、不当に利益を上げる金持ちを襲って貧民たちに分け与える、日本の伝承における鼠小僧や石川五右衛門のような存在だからとか。
カズキ:小説より小さい時に映画で見てた印象のほうが強い。アラン・ドロンのやつ。神出鬼没でクールなとこがカッコええなぁって思って。黒づくめにハットやしね。でもまぁ、そんなに深い意味があったわけではない(笑)。
ツカサ:ゴロが良かっただけなんやけど(笑)。そんなノリで付けたもんやけど、バンド・スタイルには不思議と怪傑ゾロの雰囲気は合ってると思う。
──無料デモ音源に収録されていた楽曲は本作の収録曲とはまた違った感じだったんですか。
ツカサ:1曲だけ再録して入れてます。雰囲気は基本変わらんかな。ただ、クオリティは上がってるはず(笑)。
──アルバム・タイトルにある"sidewinder"とは猛毒ヘビのことを指しますが、これは自身の音楽性も常に毒を孕んだものでありたいことから選ばれた言葉なんでしょうか。
ツカサ:俺らの場合、ガラガラ蛇。このアルバムに入ってる曲でもあるんやけど、"サイドワインダーズ"っていう殺し屋たちのチーム名、ほんでうちらのサブタイトルみたいなもん。
──レコーディングにあたって特にこだわった点はどんなところですか。
カズキ:スピード感ですかね。
ツカサ:ライヴ感&臨場感&ヤバさ。
──『BAD LUCK RAT』や『WEST QUALTETTE』といった楽曲に顕著ですが、ZORROの音楽は性急なハードコアやサイコビリーを基軸としながらどこかウェスタンな趣きが旋律から感じ取れます。アメリカの西部開拓時代を舞台にした小説や映画がお好きなんですか。
ツカサ:俺的に西部映画は基本あっさりしてて面白ろないんやけど(笑)、時代背景や世界観とか登場するキャラクターは好きっすね。
カズキ:俺は西部劇けっこう好きかな(笑)。日本の時代劇と一緒で、話はどれも似通ってるけど(笑)。
──『BUNTLINE SPECIAL』は西部劇の小説家はネッド・バントラインが特注した12インチ銃身の拳銃だし、『RED WINCHESTER』は文字通りウィンチェスター・ライフルだし、『APACHE BLOOD』の"APACHE"は(西部の)ならず者、『RAIN & CACTUS』の"CACTUS"はサボテンの総称ですよね。
カズキ:これも子供の時なんやけど、ちょっとガンマニアやったんで、銃が出てくる映画とかを好んで見るようになって、そういうとこから西部開拓史とかにも興味持つようになった。だから小学生のくせにガンベルトとかボウイナイフとか持ってた(笑)。
熱いモノをクールに、クールなモノを熱くカッコ良く
──『APACHE BLOOD』の"APACHE"はアリゾナやニューメキシコといった州に居住するアメリカ・インディアンの一民族を指しますが、彼らは最後まで国家支配に抵抗しました。そうした反骨精神から大きな影響を受けていますか。
カズキ:反骨精神というほど崇高な捉え方はしてへんかったけど、最後まで抵抗したジェロニモの話とかを読んだりして、ネイティヴ・アメリカンズっていうものに興味を持った時期はあった。それがZORROの世界観に影響をもたらしてる部分はある。
──ZORROの音楽からはカウ・パンク的な要素も感じますが、デッド・ミルクメンやM.D.Cといったバンドからの影響はありますか。皆さんにとってのルーツ・ミュージックとは?
ツカサ:その辺の音楽は好きなモノではあるんやけど、影響ってよりも、うちらの根底にあるウエスタンとか暗黒街の世界観みたいなものをカタチにするのに必要不可欠なものやと。
──今回、ジャケットのイラストを『B.Q.』シリーズで知られるカネコアツシさんが手掛けています。以前から交流があったんですか。カネコさんの起用は"ロックンロール以外は全部嘘"だからでしょうか?(笑)
ツカサ:あのブっ飛んだ漫画描くカネコさんがうちらのジャケット描いたら絶対シブイと思って、ダメもとで頼んだら描いてくれはりました。
──自主企画"亜米利加村コルトドラゴン"のコンセプトとは?
ツカサ:昔みたいにジャンルとか細分化されてへんくて、関係なしに遊んでたあの感じにまたできへんかな思ってね。あの頃よりいろんな意味でレヴェル高いもんできるやろうし。
──バンドにとってホームグラウンドと言えるアメリカ村PIPE69とはどんなライヴハウスですか。
ツカサ:実はもう閉めちゃったんすけどね、アメ村中のワル...いやいや、カッコいいバンドが集まるハコやったっすよ(笑)。
──ライヴにおけるモットーとはどんなことですか。
ツカサ:熱いモノをクールに、クールなモノを熱くカッコ良く見せれたらええかな。ややこしいな(笑)。
カズキ:好き嫌いは別にして、何かスゲェな、って思わせれたら最高ですね。
──今もなお大阪に根を張って活動を続ける意義とは? 東京へ進出してみたい気持ちはありませんか。
ツカサ:売れたら行こうかな(笑)。
カズキ:人多すぎるとこ苦手なんで(笑)。
──大阪という街がZORROの音楽性に影響を与えている部分があるとすればどんなところですか。
ツカサ:音楽性ってのはどこおっても関係ないと思うんやけど、ライヴの感じは大阪ならではなんかも。中には偏ったヤツもおるけど、うちらの周りは雑食のヤツが集まってる感じで面白い思いますよ。
──最近はZORROのようなストリートに根差した武骨なロックンロールが減ってきたように思います。これは何故だと思いますか。
ツカサ:そんなんやってもモテへんからや思う(笑)。
カズキ:その通りやわ(笑)。
──本作発表後にTHE RYDERS、ROBIN、AGRESSIVE DOGS等と共演するレコ発ツアーに対する意気込みを聞かせて下さい。どんな内容にしたいですか。
ツカサ:俺らも気合い入れてやるし、遊びに来るヤツも気合い入れて楽しんで欲しい。みんなでライヴハウス汚して帰りましょうや!