2008年初頭に結成されたThe JFKが、前作のシングル『HALL bee QUIET e.p.』を経て、ファーストアルバム『1959』をリリースする。結成から1年、さまざまなバンドとの対バンを重ね、ライブハウスシーンにて独自のポジションを確立し始めた彼ら。ハードロックの大先輩が築いてきた道をたどり、敬意を払いながらも、彼らにしか表現できない雰囲気やこの4人ならではのサウンド、心の内に秘められた熱量を充分に込め、現代のハードロック・アルバムが完成した。ハードロックに詳しくなくても、The JFKを聴いてちょっとでも興味を持ってもらえることが嬉しい、とSENSHO1500氏がふと言っていたが、だからこそハードロックを忠実に体現した作品になったのだろう。「ハードロック好きがハードロックのCDをリリースします」と言われたら、意外と気になるものである。
というわけで、今回もSENSHO1500氏にインタビューを敢行。ハードロックについて存分に語って頂くこととなった。(interview:やまだともこ)
『1959』は新しい門出
──The JFKが始動してようやく1年ぐらいですか?
SENSHO1500:今年の2月で1年になりました。
──1年経ってみてどうですか?
SENSHO1500:変な言い方をすれば、よく続いたなって思っています。メンバーのキタ(G.&Cho.)とヒネ(B.&Cho.)は前のバンドの時からそこそこ知ってたけど、全然面識のなかったドラムのリュータがいたり、みんな音楽を続けるかもわからなかったし、ちょっとずつやっていこうと思って、気づいたら1年が経ってました。今は、すごく良い形で進められてますよ。
──昨年の2月に結成して5月にはシングル『HALL bee QUIET e.p.』を出して、『1959』の制作にはすぐに取りかかっていたんですか?
SENSHO1500:作ろうという話は前からあって、年末ぐらいには出したいねみたいな話をしたていたんですが、なんだかんだやってたら秋になってしまったんです。それで、3月から始まるSEX MACHINEGUNSツアーのオープニングアクトの話をいただいたので、このツアーに合わせてリリースすることを目標に年内ぐらいには録り終えようって本格的に始動したんです。
──今回のレコーディングでは、SENSHOさんはご自身でチューブスクリーマーなどのエフェクターを作られたそうですが...。
SENSHO1500:それは日常茶飯事です。趣味なんですよ。自分で作った方が、思い入れも大きくなりますからね。
──いずれはギターも作ってみたり?
SENSHO1500:いや(苦笑)、それは時間がかかりすぎるから...。ギター自体は、スタジオにいっぱいあったんですよ。使ったのは2〜3本ぐらいなんですが、置いてあるだけでテンションがあがるのでスタジオの人に借りたりして置いておきました。
──ところで、アルバムタイトルの『1959』にはどんな意味を持たせているんですか? 何かあった年なのかと思って調べてみたんですけど、ジョン・F・ケネディが暗殺されたのは1963年でしたし、1959年の音楽的なことで言えばザ・ピーナッツがデビューしたとかになるんですが...。
SENSHO1500:アルバムタイトルが全く出て来なくて、どうしようって思っている時に、キタが「"1959"(マーシャルアンプの一番最初の100Wモデル)買いましたよ!!」って嬉しそうに言ってきたんです。"1959"って単語はいいなと前から思っていたんですが、アルバムタイトルにしようとは思っていなくて、作業をしていればタイトルが浮かんでくるだろうと思っていたのに今回は全然浮かばなくて、最終的に"1959"に決めたという感じですね。でも、俺の名前に1500が入っていたり、TYPHOON24だったり、数字は好きなんでどこかでひっかかっていたのかもしれないですが...。今までのキャリアの集大成みたいな、新しい門出的な感じですよ。
──The JFKとしては初のフルアルバムですしね。
SENSHO1500:そうなんです。だからけっこう重要なんですよ。ファーストアルバム自体は今までのバンド歴(smorgas、TYPHOON24、RAINBOW EXPRESS、The JFK)で言ったら4回目になるんです。初めてのファーストがsmorgasで26歳ぐらいの時で、すごくテンパりながら作った記憶があって、当時に比べたら気持ち的には余裕が持てているんですが、フレッシュさはなくなってきますね(苦笑)。あとは、キャリアを追う毎にレコーディングの時間が減ってます。
──それは、キャリアを積んで短時間でも作品ができるようになったということですか?
SENSHO1500:そういうわけではないんですけどね(苦笑)。
──レコーディング自体はギュッとやられて、曲作りはじっくり進めていったという感じなんですか?
SENSHO1500:そうです。昨年の2月から作っていたから、曲作りは長くやれてましたよ。The JFKはギター2人のハーモニーが大事なんですけど、同じメロディーの捉え方でもキタと俺とでは捉え方がちょっと違うんです。レコーディングはタイトだから、何回もやり直しができるわけじゃないので、スタジオに入ったら1発で終わらせられるように、家が近いから飲みがてらキタと2人で合わせて、細かいフレーズを作っていきました。
──以前のインタビューでは、キタさんは演歌調のフレーズが得意だとおっしゃっていたように、お互い得意な分野も違いますからね。
SENSHO1500:全然違いますね。でも、俺のほうが上手かった。キャリアの差を見せつけてやりましたよ(笑)。
──...なるほど。
SENSHO1500:キタは、ドメスティックでベタな、マイナーな感じのフレーズが得意なので、お願いするとパッと作ってくれる。一瞬のアレンジ力はすごいんですよ。俺はそういうのは普段弾かないフレーズだから、見えないところでコソッと練習してますけど(笑)。
──曲を作るのはSENSHOさんが多いんですか?
SENSHO1500:俺が多いかなぐらい。俺が持って行くパターンと、ジャムセッションするパターンとキタが作るパターン。ヒネも作りますね、今回は入ってないですけど。
──『1959』には、前作のシングル『HALL bee QUIET e.p.』の曲が1曲も入ってないとなると、今は曲が溢れるくらいできているという感じですか?
SENSHO1500:いや、あとカバーが何曲かあったりするぐらいで、もうないです(笑)。今回は10曲がある程度固まったから、この10曲で制作を進めていったんです。お互いの家に行って細かいハーモニーを決めたりとか、楽曲のブラッシュアップに時間をかけてます。
──アルバムを制作する前に、こういう感じにしたいという何となくのイメージはあったんですか?
SENSHO1500:できれば、70年代とか60年代とかの古い感じの音にしたいと毎回思っているけど、なかなかできないですね。『HALL bee QUIET e.p.』を録った時は、初めてのメンバーとレコーディングをするということで、みんな探り探りだったんだけど、今回はメンバーの性格やスキルもわかってきたので、メンバーの中にあるアツイ部分をもうちょい引き出せる環境だとか音作りを取り入れたいと思ったんです。アツイ部分というのは、練習をしていたり、曲作りの最中だったり、ライブをしている中で見えてくるんですけど、それがCDに入ったらもっと良い形に繋がっていくんじゃないかと思ったんです。あと、曲の大元を作って行ってメンバーに出すんですけど、今までは俺が一番遠慮してたかもしれないです。アレンジでそっち方面に行くんだって、思ってもいない方向に向かう時があって前はそれでいいかと思っていたけれど、今はもう1回考えましょうって言えるようになりました。
小さくまとまってたまるか!!
──The JFKの楽曲に関して、「聴く人が、アレが元になってるのかなってニヤリとするような曲を作りたい」ということを以前おっしゃってましたが、今回意識したものってありますか? もうすぐDEEP PURPLEが来日しますけど、その辺りを意識されているのかなって思った曲もありましたが...。
SENSHO1500:なるほど。意識してはいないですけど、そこはロックの教科書みたいなものですからね。このバンドみたいにしたいっていうのはたくさんありますよ。そういう要素を入れようとするって、ロック好きっぽくて良いじゃないですか。それに今、ベタにハーモニーを出すバンドってあまりいないですからね。
──となると、なぜそれを敢えてやろうと思うんですか?
SENSHO1500:The JFKを始めた時のコンセプトが、ギターでハモりたいということだったんです。リフがあってメロディーをハモって、ハードなロックをしているっていう感じ。同じメロディーを違うハーモニーで弾く。それをキタと2人でお酒を飲みながら、夜な夜なハーモニーを作っていくわけですよ。たいてい俺が足を引っぱってますけど(苦笑)。
──今回アルバムを作るに当たって、気にしたところとかってどんなことですか? 音はシングルに比べると重みのある印象を受けましたが。
SENSHO1500:前回がコンパクトに収まったので、『1959』ではラウドな感じというか、広がっていく感じにできたらいいとは思っていたんですけどね。難しいですね。これは、今後の課題でもありますよ。
──1曲目の『When the rain comes』は、低音がズシズシと響いてきて良いなと思いました。
SENSHO1500:でも、すでに録り直したいっていう気持ちはありますよ。どの作品でもあるんです。1週間後にはもう1回やりたいって思う。だから今はライブ練習をすると曲が変わっていったりするんですよ。
──ということは、1年後に同じ作品を作ったら全然違うものになりそうですね。
SENSHO1500:だから、その瞬間がすごく大切で、その瞬間にしかできないものを提示しているんです。ライブになると、1曲の尺も違う。ギターソロを長く弾きたいと思ったらその場のノリで演奏しますから。昔のミュージシャンって、ライブ中に尺が変わるとか多かったんですよ。でも最近は30分ステージとか、イベントだと時間が決まっていて、コンパクトなバンドが多くなっているような気がするんです。俺らはロックバンドなんだから、小さくまとまってたまるかっていう気持ちもどこかに持ってますよ。ロックだったりハードロックだったりをやってますけど、ライブではジャム・バンドっぽい感じを出していけたらと思ってます。俺がリスペクトしているところが、そういうミュージシャンだったりしているので。70年代にはいっぱいいたんですよ。ただ、3曲目の『Right here right now』はテルミンを使っているんですけど、あの雰囲気はレコーディングじゃないと出ないので、ライブではどうしようかと試行錯誤しているところです。レコーディングマジックですよ。
──『Don't Stop』も、リズム隊のパワフルな感じが炸裂してましたが、これはヒネさんとリュータさんでアイディアを出していってるんですか?
SENSHO1500:最初は2人の間でも意見が違っていて、どっちに行くんでしょう? と見守ってました。リズムが早いか遅いかで、ズッシリと行きたいヒネと、軽快に行きたいリュータで全然違う解釈だった。俺も作った時のイメージから軽快に行きたい派だったんですけど、それじゃダメだってなったんですけど、ドシッというサウンドにするのはなかなか難しかったですよ。
──アレンジは4人でやるんですか?
SENSHO1500:はい。みんなうるさいんです(笑)。
──どなたが主導権を握ってるんですか?
SENSHO1500:俺以外みんな。俺はあんまりアレンジにはこだわらない。詞や曲作りがあるし、バンドの舵取りをしなければならないから、アレンジに関しては他の3人に任せておいた方がアツイ感じになる。
"愛"と"車"と"人生"
──そういえば、今回初めて日本語で対訳が付くんですよね!
SENSHO1500:超うれしいですよ。最初から付けたかったんですけど、いろいろあって付けられなくて。今回も、ロックなりのくだらない歌詞もありますけど、そこは微妙に濁しながら強引に訳した曲もあります。くだらないことも力業で人生歌ってますみたいな感じにするのもロック力。人生の憂いを感じている35歳としては、こういうことを歌うところに来たと言うことですね(笑)。ロックには"愛"と"車"と"人生"の基本三大要素っていうのがあるんですよ。
──今回のアルバムには全部入ってるじゃないですか!?
SENSHO1500:沿ってやってるんです。早い曲を作りたくなったら車の曲を書くんです(笑)。
──『So far, so good... so what』とかはモロですね(笑)。でも、『Don't stop』や『Sweet sweet』のように、ここまで"愛"についてちゃんと歌っているのは予想外でした。
SENSHO1500:愛って便利な言葉ですからね。「愛してる」って言えば丸く収まることってあるじゃないですか!?
──......。
SENSHO1500:あれ? 同意できないですか? なんだかんだあるけど愛してるよって言うところに意義があるんです。それがロックの基本。メイク・ラブしようぜっていうのは王道パターンなんです。ぜひ覚えて欲しいなと思います(笑)。
──覚えておきます(笑)。教科書通りというわけではないですが、The JFKでは王道のパターンに沿ってやっていきたいというのはあるんですか?
SENSHO1500:沿いたいとかじゃなくて、そういうもんなんです。愛と車と人生を歌うのがロックだから。The JFKに関しては、この道から外れることはないと思いますよ。
──『Right here right now』の、「Walk the thin hard line I will walk the hard line」(細く険しい道を歩いていく オレは歩いていく)という部分は、SENSHOさんの心の内を表しているのかなと思ったりしましたが...。
SENSHO1500:そうですね。年を重ねる毎に進む道はどんどん狭くなってきてますね。スタジアム型に広がっていく予定ではあったんですけどね(苦笑)。
──自分が進むべき道に対して、腹を括った感じというのが表れてますよね。
SENSHO1500:そんなに重いものじゃないですよ。よくある男の歌です。でも、歌詞は未だに謎が多いですよ。音楽だったら法則があったりするじゃないですか。言葉っていうのは、なかなか自分の思い通りにはいかないもんですなって思います。
──でも、『Don't stop 』にある「You're the one,one for me」のようなフレーズはロックだからこそ、ちょっとキザなことも言えるというところですよね。
SENSHO1500:そういうことも恥ずかしいことも言えるのがロックの良いところ。だから、ロックをやってる時ぐらいはかっこいいことも恥ずかしいことも、恥ずかしいと思わずに言える。「愛してる」なんて普通そんなに大人数の前で言うもんじゃないですからね。そんな言葉を言えるのがロックの魅力だと思います。35歳にもなって音楽を続けてるんだから、その魅力にとり付かれているんですよ。でも、今見るとハードロックってファッションとかダサイんですよね。俺らもそこは目指しているところではありますが、いろんな人がいるんだなぐらいに楽しんでもらえたらと思っています。最初から外れているのかもしれないけれど 、今って一辺倒なものが多いので、そこから踏み外していきたいんです。そういうのが日本に少ない気がします。
──今、純粋にハードロックをやっているバンドっていますか?
SENSHO1500:どうだろうね。ヘビーメタルは多いんだけどね。でも、共感できるバンドは多くなってきていますよ。一緒にライブをやることが多いa flood of circleなんて俺からしたら一回りも下の年齢だけど、ロックを通じて繋がれることっていっぱいありますしね。
──今回ツアーを一緒に回るSEX MACHINEGUNSは?
SENSHO1500:ANCHANGは俺よりちょっと年が上ぐらいで、他は下ですね。すごく若いんですよ。
──そのSEX MACHINEGUNSとのツアーはだいぶ長いですけど。3ヶ月近くですよね。
SENSHO1500:こんなに長いのは初めてですけど、行ったことがないところにも行けるから不安もありつつ楽しみつつ。SEX MACHINEGUNSとも、以前1度一緒にツアーを回らせてもらったけれど、こんなに長くやるのは初めてです。それも含めて、今回初の40本以上ですからね。 いろんなことがありそうですね。俺は今までのバンドでツアーを経験して雑魚寝や車中泊に徐々に慣れていったからいいけど、他の3人は大丈夫かなって思います。
──他のメンバーの今まで見えなかった点が見えるかもしれないですね。
SENSHO1500:そこまで深い連中じゃないですよ(苦笑)。楽しい時間にしたいですね。
──ここまでライブがたくさんあると、次の作品とか作れます?
SENSHO1500:作れないんじゃないかと思ってたんですが、メンバーからは「次の作品どうする?」って話は来てますよ。今まではアルバム作ったら新曲はしばらくは休みたいってなったんだけど、今は「ツアー中に2〜3曲できたらいいですね」って話になってる。みんな飽きっぽいからすぐに何かやりましょうってなるし、新曲があると緊張感が保てるから。そういうところは、みんなクレバーなんです。初めてツアー中に曲ができるっていう荒技に挑戦するかもしれません。
──ストイックになっている分、今までとは違う曲もできるかもしれませんね。
SENSHO1500:そういうのがいいかなって思います。4月の下北沢SHELTERのライブでは1曲〜2曲やれると思いますよ。
──それにしても、TYPHOON24が解散して以降も常に走り続けている感はありますね。
SENSHO1500:TYPHOON24を辞めてから、もうちょいゆっくりしてもいいかなって思ったんですけど、なんだかんだやってますね。しかも、意外といいペースでやれてますから。時代の移り変わりが早い分、忘れられないうちに進んでいかないとね(笑)。