Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー植木遊人('08年12月号)

不器用にしか生きられない男が綴る、8つの愛の歌

2008.12.01

植木遊人のセカンドアルバム『リズム・メロディー・ハーモニー』がリリースされた。前作の『ハート無防備』から1年が経過し、ソロでありながらバンドサウンドに拘った今作は、前作に比べると楽曲のクオリティーが上がったように思う。それは、常にがむしゃらに自分の道を切り開いている植木だからこそできる方法で表現されているからだろう。何にも縛られていない自由さが、1曲1曲に個性的な息吹を与える。今やりたい音楽をそのまま詰め込みましたと1枚が胸を張って主張しているような、バラエティーに富んだ8曲が完成した。
この作品ができた直後、「すごい良いのができたんです。だから聴いて下さい」と、人目も場所もはばからず、聞いているこちらが恥ずかしくなるぐらいとにかく熱弁していた植木。そんな植木のエネルギーとパワーに押されてお話を聞かせて頂くことになった。今回はRooftopでは初の単独インタビュー!!(interview:やまだともこ)

もがいた末に見えた景色

──Rooftopでの単独インタビューは初めてになるので、今更ではありますが植木遊人が何者かを、今までの活動経歴を踏まえて教えてください。

植木:2年ちょっと前にOO TELESAを脱退し、ソロになって活動を始めてギター1本でどこまで行けるかなとツアーを回ったり、1人でどこまでできるかなとライブをしている中でいろんな出会いがあってなんだかんだで今に至ります。ソロになってからの活動が濃すぎてもうちょっと長くやっている気がしたんですけどね。

──1人になってみて気づいたことってありますか?

植木:最初のころはきつかったですよ。前はメンバーに頼ることができましたけど、今は悩むのも1人なんですよね。どうやってやっていけば認められるのかなって、いつも思ってました。バンドの時のお客さんはどんどん離れていきましたから。その人が持っている植木像がくずれてきたのかもしれないし、ライブではお客さんの期待は必ず裏切るようにしていた。そういうプランだったんです。だからいつ見ても違う感じというか、タイミング悪い人が見ると、いつ見てもグダグダだなっていうこともあると思うんですけど、どこまでやれるかを自分でわからないといけない。完成度を高くするためにどうしても必要な時期だったんですよ。1年間ぐらいはもがいたほうがいいと思って、いろんなパターンをやりました。演劇調のライブをしたりとか、曲をやらない時もあった。だけどそれをひとしきりやってきて最近はちょっとやっと見えたかな。

──前のバンドのイメージを壊したいっていうのはありました?

植木:バンドでやってきたことを1人でやったら全然違うわけですからね。あんまり考えてなかったです。逆に1人になっても楽しんでいるよと見せた方が良いと思ってました。

──2006年の秋ぐらいに1度バンド(スクールウォーズ )を組みましたよね?

植木:あの時はあの時で良かったんですけどね。

──1人に戻って、また最近バンド(ワイ・ユー・ジー )を組んでますが、バンドをやりたいっていう気持ちは常に持っているんですか?

植木:バンドをやることを、まだ諦めてないんです。1人でやろうと思ったんですけど、スクールウォーズのギターだった高木と2人で弾き語りをやったりすることがあって、これから俺の表現を広げるためにどうしたらいいかなって相談したら、もう1回バンドしましょうって"ワイ・ユー・ジー"を組んだんです。でもなかなか全員のスケジュールが合わなくて、悩んではいるんですが、バンドをやらないと始まらないかなという気持ちもあるし、楽しいからっていうのもある。ただ、ソロは止めてはいけないと思って今回『リズム・メロディー・ハーモニー』を作ったんです。前回の『ハート無防備』は前のバンドを辞めた時の気持ちを1枚にして、今回はもうちょっと音楽に集中した作品になった。バンドをやることによって広がってきたので1人でやるんだったらこんな感じかなーみたいな。

──でも、ソロ名義でありながら、バンドサウンドなんですよね。

植木:バンドをやったことによってテンションが戻ってきたんです。前のアルバムでは演奏ができてなくて、反省したりお叱りをいただいたので、1年間練習をみっちりやって、ギターや他の楽器がちょっとずつ弾けるようになってきた。こんなに楽器を弾くのが楽しいとは思わなかった。これでまたバンドが軌道に乗っていくといいなと思ってやってます。バンドをやってみて気づいたんですけど、人と一緒にやるということは人に期待するということ。バンドは運命共同体であるべきだと思っちゃうタイプなので、裏切られたと感じることも多かったんです。だけど、今は自然にみんなの気持ちが同じ方向に向くまでは、人に依存しちゃダメだなって思いながらやってます。だから、今回のアルバムでは1人で全部楽器を弾いて、弾けないフレーズはエンジニアさんにお願いして2人でやってます。ただ、植木遊人というイメージが固まって来ているから、そこから抜けたいとはいつも思ってますよ。植木はこうでしょって決められて、僕の曲に耳を傾けてもらえないのは嫌なんですよ。曲もちゃんと作っている自信もあるし、歌詞もいいと思って信じていますからね。

自分が楽しいことしかできないから

──今回も愛や恋を歌っている曲が多いですけど、これは植木さんにとっての永遠のテーマなんですか?

植木:人類の普遍的なテーマですよ。誰かに向けた歌を作るとか、誰かと会って何かを思ったから歌ができるとか、その時に思ったことを曲にしています。なんだかんだ一個一個日記みたいな感じになっていると思います。みんな絶対にこういう気持ちを抱えてるはずだと思うことを真剣に歌っているつもりなんですが、周りからはコミカルに見えているみたいで...(笑)。でも、すごい真面目にやってると、逆に滑稽に見えたりするじゃないですか。 なんでがんばっちゃってるんだろって思うでしょ? だから僕を見て笑ってくださいよって思う。

──1曲目が『愛』ってまたストレートなところに来ましたね。

植木:愛って人それぞれ心のなかにある歪なものだと思っています。とある部分では排他的だし、自己愛とか憎悪も愛に含まれるし、キャパが広いくせに中に入ってみたらバチバチに柵で仕切られているようなライブハウスみたいなもの。全体を愛と呼びますけど、そこにフィットする人が来たらすごく満足して高揚感があるものに変わると思うし、フィットしない人は疎外感に溢れた気持ちになるような怖いものだと思っています。

──ライブハウスで愛を感じたことは?

植木:1人になってからは感じることが多いですよ。"愛"をテーマに、誰でも入って来やすい空気にしたいんだけど、誰でも入って来やすくしすぎて哀れに感じられてる部分もあるかもしれません(笑)。だから、それがたまに不安の元になるんですけどね。

──でも、絶対に楽しませようという気持ちはすごく伝わってますよ。

植木:自分が一番楽しみたいんですよ。俺が楽しんでるのが一番楽しいでしょ? お客さんの感情はコントロールできないんだから。好奇心を持ってくれてる人もいるし、吐き気がする人もいるかもしれない。それは人がいればいるほどいろんな感情があるけど、俺は自分が楽しいことしかできない。そこから先は人に任せないといけないでしょ。コントロールできてたらもうちょっと売れてますよ(笑)。だけどそれをやったら不自然になっちゃう。このアルバムは最高のものができたと思っていますが、1曲目を試しにどこかで聴いてもらってだめだったら謝るしかないですね(笑)。

──今回は"愛"というテーマを元に曲を作っていったんですか?

植木:そう。ただ、昔作った曲も入っていて、今の俺がやったらどうなるのかなっていう曲もあります。

──"愛"って大きなものだから、なかなか答えが出ないものなんですけど、完全に答えを出すというのは新しいなと思いましたよ。

植木:(笑)10年間考えた結果出てきた答えだから良いんですよ。

──音的にはザラザラとした感じがすごくする作品ですね。

植木:これは趣味です。あったかい感じがするかなって。手作り感は隠しても出てしまうので、その手作り感の中でクオリティーをあげてくことをしたいです。立ち止まったら負けですから。立ち止まりたいけど(笑)。でも自分の中で立ち止まらせてくれない。俺がいないところで楽しいことされたくないから。加わりたい。

イメージはいつも壊していきたい

植木:今回聴いてみてどうでした?

──いろんなジャンルあって面白いなとは思いましたよ。ただ、6曲目の『GROUP SOUNDS』は、これってグループサウンズなのかなって思いましたけど(笑)。

植木:違う違う(笑)。自分の心にいろんな奴がいて、そいつらがグループになって手を組んだ曲。パンクロックのようにも叫びたいし、歌謡曲のように涙にも酔いたいっていう曲なんですよ。

──自由すぎますね(苦笑)。

植木:でも、いいと思いますよ。自分の中にある決まりは守っているから、あとは委ねても。

──ここまで自由にやれるって、ある意味羨ましいです。

植木:こういう人もいて良いんですよね。そして若い人にこういう姿を見せるのがいいと思ってます。俺のことを音楽じゃないと思う人も多いと思いますけど、俺は音楽だと思ってやっている。MCひとつにしてもそうだし、物販で売り子する時も同じ。それはそれの表現。全部が音楽に通じていると思ってます。あとはやるところまでやって廃人みたくなってもいいと思ってる。やるなら徹底的にやる。俺、ポップにやっている自信があるんですよ。結局ポップスが好きだから。音楽のメロディーでキューンとする感じとか、歌詞を見て耳に入ってこんな符割で来るかとか、こういうリズムに言葉って乗っちゃうんだとか、そこにハーモニーが乗った時の感動とか、そういうのが好きなので、それを追究していきたいんですよ。

──ふと思ったんですが、『リズム・メロディー・ハーモニー』の歌い方は何ですか? 小学生の時に合唱で歌った歌い方を小馬鹿にしているように聴こえたんですけど。

植木:いや、大マジですよ!

──詞はいいし、微妙に韻を踏んでる感じとかメロディーもいいんだけど、歌い方が...。どこに向かっていくのかなって思いますね。

植木:不安な船に乗って大海原に漂流してく感じ(笑)? 安心する旅なんてつまらないでしょ。だけど手みやげ1個持って帰ってこれる自信はありますよ。そういう旅に出たいです。

──その中に『ベイビー・カンバック・プリーズ』とか最後の『はるをたどれば』は良い曲ですよね。ようやく手みやげをもらった気がします。

植木:そういうふうにこれからも生きていきたいですよ。

──植木さんはどんな気持ちで音楽をやっていますか?

植木:いつだって本気だけど笑ってくれて構わない本気でやっています。ロックンロール全部が笑っちゃいけないものである必要はない。笑えない空気がまん延してる気がするけど、そこに抵抗したい。もっと笑いがあってもいいと思う。コミックソングがやりたいわけでもないんですけど、本気すぎて滑稽な感じだと思う。劇画ってギャグに見える時もありますよね。マジであればあるほど変な神経を刺激すると思ってます。

──植木さんのライブを見ると、良くも悪くも何かしら感じますからね。意外とこういう人が求められてる気もします。

植木:ありがたいことにライブのお誘いも多いです。断腸の思いでお断りすることもありますけど。ライブは無茶する必要はないけど、かしこまる必要もない。ソロでやってる俺がこんなに自由にやれてるっていうことは、どこか危機感を持って欲しいですよね。みんな、俺より全然良い曲作るし、良い声をしているし、環境にも恵まれている。でも、本来自分の作品は自分の足で1人1人の手をとるつもりでいかなければいけないのに、誰かにお願いしているとかさ。俺もそういう環境だったこともあるけれど、それだと作り手の愛が100%伝わらない気もするんですよ。そういう状況は羨ましいと思うけれど、不器用にしかできない馬鹿な人間がいてもいいんじゃないかなって思います。きついけど笑っていたいんですよ。

──植木さんって何に対しても100%で体当たりしますよね。

植木:俺のこと嫌いだっていう人にもトライします。そしてあまり諦めない。

──だからああゆうライブになるんですね。

植木:自分が客だったらそういう奴がいて欲しいから。概念を壊していくっていうことをしたいんですよ。

このアーティストの関連記事


リズム・メロディー・ハーモニー

1,800yen / ライブ会場と通信販売

1、愛
2、宇田川町でShall we dance
3、「あ」とのまつり
4、真珠婦人
5、べイビー・カンバック・プリーズ
6、The Group Sounds
7、リズム・メロディ・ハーモニー
8、はるをたどれば

● 通販希望の方は、
1、希望商品とお名前、ご住所を明記の上、遊人社(yujinsha@livedoor.com)までメールください。追って振込口座を書いて返信致します。
2、振り込み!
3、あとは待つだけ!確認後、速攻で発送いたします!!
●タイトルには「植木アルバム通販希望」と書いてくださいませ。
●別途送料並びに梱包料金として¥200かかることをご了承ください。

LIVE INFOライブ情報

ソロライブ
12.12(Fri)新宿LOFT
12.20(Sat)新高円寺クラブライナー
12.26(Fri)高円寺Amp cafe(高円寺HIGHの1F)
12.31(Wed)新宿Naked LOFT
2009.1.16(Fri)宇都宮KENT

ワイ・ユー・ジー(植木遊人グループ)ライブ
12.06(Sat)高円寺HIGH
12.11(Thu)下北沢SHELTER
12.31(Wed)新高円寺クラブライナー
2009.1.08(Thu)CLUB Que

トークショー「遊人概念」
12.18(Thu)新宿Naked LOFT

休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻