Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューENGINE(猿人)('08年6月号)

キテレツで痛快なサウンドに乗せたリアルな感情

2008.06.01

ninin(Vo.Gt.&銅鑼)、ハヤシマン(Ba.&スクリーム)、シオリマン(Analog Syth&Piano Cho.)とサポートドラムのバニー板橋で活動中のENGINE(猿人)。人間の奥底に潜む感情とはドス黒いものでもあり、そのリアルな感情をキテレツなサウンドに乗せて痛快に掻き鳴らす!! "中華的宇宙ロック"と喩えられる彼らのサウンドは、確かに宇宙のように果てしなく掴み所がない。そこに銅鑼が打ち付けられるという、まさに未だ謎だらけの銀河系の様。
今回、メンバー3名にお話を伺うことができた。この人なら、このサウンドも納得できると思ってしまうほど、人間的にも摩訶不思議(笑)。エネルギーを生み出すENGINEの様に熱く、どんな状況下でも進化を続けてきた猿人のように力強い彼らのサウンドをぜひ体験して欲しい。(interview:ヤマダマン)

結成は偶然の産物

──最初はnininさんとハヤシマンさんの2人で結成されたバンドなんですよね。

ninin:僕が前のバンドを辞めてどうしようってなっている時に、ハヤシと久しぶりに会って一緒にバンドをやろうかってなったんです。曲はその日から作り始めました。

──そこで運命の再会がなかったら今がなかったんですね。

ninin:そうなんです。それからドラムが入って3人でやっていたんですけど、電子的な音が必要になってきて、ハヤシが買ってきたボタンを押すと音が鳴るコルグのマシーンがあるんですけど、これを押すヤツが必要だと。その時シオリマンは、スタジオの様子をビデオカメラで撮ったりしてくれていて、手が空いてるならボタンを押してくれないかとお願いしたんです。

シオリマン:初ライブの時は、サングラスをかけてボタンを押す以外は微動だにしないスタイルでした(笑)。

ninin:いいタイミングでボタンを押すだけ。僕らも自分たちでリメークしたサングラスでライブをやっていたんですけど、これをかけると黒すぎて見えないからパフォーマンスが非常に悪いんです。サングラスをかけて練習をしたり、キメのところでハヤシがドラムに向かって三角飛びをするいう練習をしていたんですけど、ある時になんか意味わかんないから止めようと。1回ちゃんとやり直そうと。

──楽曲としては最初からこういう感じだったんですか?

ninin:展開はガチャガチャ変わる方が好みなんですが、最初はもうちょっとシンプルな音楽だったんですよ。今は出来た曲を持って行っても、まず理解してもらえないところか始まりますからね。宅録はしないしデモテープも作らないので、その場で弾き語るか弾き語ったやつを聴かせるか。

──それから、みなさんでアレンジを?

ninin:そうです。でも僕の頭の中にある音を完全に伝えようとするのに最初は苦労しましたよ。こっちが「それそれ!」って言ってるのに、弾いてる本人は「これでいいんだ」って半信半疑でしたからね。僕のやりかたがおかしいのかなって、ノイローゼになりそうでした(笑)。

──(笑)紆余曲折あり、いよいよファーストアルバム『Monkey3』がリリースされますが、できてみてどうですか?

ninin:大変でした。今のドラムが入ってから録りだしたんですけど、思ったより時間がかかったなという印象です。

──どれぐらい時間がかかったんですか?

ハヤシマン:1ヶ月に1〜2回ぐらいしかレコーディングをやらなかったので、凝縮しても3〜4ヶ月ぐらいかかりました。こんなに時間がかかるなら、もう次のを録り始めないと来年に出せないよね。

──時間がかかったとは言いつつ、アルバムを通して聴いてもバラついた感じはしないですよ。

ninin:曲的にはやりこんでいたので、それは大丈夫でした。

──まさかボタン押しのシオリマンさんが、今ではキーボードを弾いて歌まで歌うことになるとは!って思いますよね。

シオリマン:今ではライブによっては前半を全部私が歌うこともあるんですよ。

──もともと歌は歌っていたんですか?

シオリマン:バンドで歌うとかはなかったですし、こういう声で歌うのか〜とは思いました。

──かわいらしい女性の声というのは最初から入れたかったんですか?

ninin:野望の中では強くあったんです。残念ながら、僕もハヤシマンも味が濃いのでこれ以上味を濃くしたいわけではなくてですね。実はボタンを押してもらっているときから構想は出来ていたんです。ボタンは第一歩だったんですよ。

──あわよくば的な(笑)。シオリマンさんが歌う2曲目の『エキセントリック・ジャーニー』では、ラストで歌がループしまくりますが、ある意味あの部分が一番エキセントリックですよね。変な中毒性を持ってますよね。

ninin:だから曲を持ってきた時、みんなポカンと聞いてましたね。

ninin、フェチを語る(笑)

──ところで、5曲目の『Love伊豆Order?』はおもしろいタイトルですね。

ninin:これは、心が病んでいた時に伊豆に旅行に行ったんです。そしたら楽しい気分で帰って来れて、伊豆に何があるわけでもないですけど、伊豆に行けばだいたいのことは解決するぜという感じです。

ハヤシマン:愛だの恋だのを歌ってるわけでもないですけど、深く見ると人間愛ですよね。nininが書く詞は好きですよ。

ninin:あと、普通BメロはAメロを引き継いだ感じで、サビはBメロを引き継いだ感じの曲が多いんですけど、僕は場面場面で極端に変えたくなることが多くて、前のノリを引きずらないでアレンジするのは難しかったですね。

──みなさんの今までの音楽経験を全部覆されている感じですね。

ハヤシマン:(笑)そういう感じです。

──アルバム全体としては私は皮肉を歌ってると思ったのですが。

ninin:全体的にはがんばっても救われないっていうのが大きなコンセプトなんです。詞って、がんばったら報われて幸せになりましたっていう結末になることが多いと思うんですけど、今までの人生を考えるとそうでもない気がしたんです。それが現実なんですよね。報われないことの方が比率的には多いと思うんです。だから、どうやって受け止めて生きていこうかって...。まあ、どんだけネガティブなんだって話ですけど(笑)。

──ネガティブだからこそ、吐き出すものはポップな楽曲に乗せられているんだと思いますよ。

ninin:ポップな感じになればなるほど歌詞は逆行していく。楽しいはずなのに、気付いたら切ない感じの曲だったというほうが自分としてはしっくり来るんです。

──100%で楽しいのではなく、裏に何かあると。

ninin:だから最初は曲を持って行っても、なんでそこでそうしちゃうのって思うところはあったみたいです。せっかくAメロBメロがいい構成できてるのにって。

──誰かが考えている裏をいきたいというか。

ninin:思ったように心地良くはさせないぞみたいな。

──ひねくれてますね(笑)。だからENGINE(猿人)は"中華的宇宙ロック"と言われながら、アルバムの1曲目に『国産』を持ってくるわけですね。

ハヤシマン:(笑)ぐちゃぐちゃだ。

──『国産』は銅鑼で始まるから、中華的な楽曲かと思いきやというところはありますね。意外とキャッチーな曲で中国中国しているわけではないんだという印象を持ちましたよ。

ninin:バンドが進化していく中で、もっとうまく中華的な要素を盛り込めるといいなと思っているんですが、今の解釈としてはビジュアル的なものや精神的な部分を中華的にアレンジしていきたいと思ってまして、中国的なものを入れなきゃいけないって曲を作るといつか絶対行き詰まると思うんですよ。

──中国人でもないですしね。この曲のドラムは力強い曲でしたが、曲作りではディスカッションしながら作られているんですか?

ninin:僕はもともとドラムをやっていたので特にドラムに口を出しちゃいます。一番最初に曲が出来た時も、歌と何かの伴奏の音とドラムは頭の中で鳴っているので、このリズムっていうのはイメージの中で決まっているんです。

──nininさんの頭にあるものをそのまま叩いてくれぐらいの感じですか?

ninin:進化していくことはいいですけど、一番最初は僕のアイディアを知って欲しいんです。

──ということは、ドラムの音作りは一番時間をかけてそうですね。それから『CT』は不思議なサウンドですよね。

ninin:これは、他の曲に比べるとイメージベースで出来上がった曲なので、思っていたよりメンバーが理解するのが早かったです。テンポチェンジもそんなにないので、トータルとしてピアノのリフがループして流れていくところは、飲み込みやすかったのかもしれないです。

──シオリマンさんの歌声が、かわいいのに際どいことを言っているのも聴き所ですか?

ninin:それは大事なことです。普通に聴いたらかわいげな声が歌っているように聴こえますけど、歌詞を見て初めて言葉として認識をした時に、そういうこと言ってたんだなってわかるじゃないですか。それが理想だったんです。まさかそんな言葉を言ってないと思って聴かれていることが大事なんです。それでこの言葉をシオリマンに言わせる事が快感なんです(笑)。

──それって男の人が女の人に無理矢理エッチな言葉を言わせる感じに似てるんですか?

ninin:あ、それに近いです(笑)。

──それはちょっとした性癖ですね。

ninin:バンドの中に持ち込んでしまってますね(苦笑)。でも、この衝動は止められないです。今思ったんですけど、『CT』を作る時は、シオリマンの歌が一番のヤマだったような気がします。

──『逆境エナジー』でも卑猥な単語が出てきますけど。

ninin:あれはどっちかと言うとみんなで叫ぶ形なので、みんなで大きい声で恥ずかしいことを言う。最高ですよね。

シオリマン:変態だね(笑)。

ninin:...俺も自分で変だなって思ったわ(笑)。でも、歌詞カードを見てない人がライブに来た時に何を言ってるのかわからないまま一緒に言わせられてることもあるかもしれないですよね。あの時が感無量なんです。

ハヤシマン:表向きはそんなに変態じゃないんだけど、実は裏に潜んでいるんですよね(笑)。

ninin:それが僕の創意なのかもしれないよね。

最終的には自分自身がやるしかない

──『逆境エナジー』では、楽曲のポップさとは反対に感傷的な詞が歌われてますが...。

ninin:生まれた境遇が不幸だったり、恵まれない環境で育った子供が大人になって成功したという話は素敵だと思いますが、いざ大人になってみるとそんなに幸せでもないし、努力が報われたとも思わないんです。人に助けられることはもちろんありますけど、最終的には自分自身が劣悪な状況に立ち向かって生きていくしか方法はないと思うんですよ。こういう考えって一人っ子だっていうのも関係があるんですかね。

──どうでしょう。でも今の話を聞いていると、曲ではポップに吐き出しているけれど、根底にはネガティブが渦巻いている感じですね。

ninin:いつも不幸とは背中合わせだと思うんです。幸せなことがあってもすぐに不幸がやってきますからね。

──ではnininさんが幸せだと思うところは?

ninin:一人で家で酒を飲んでいる時ですね。俺だけの自由。わかりやすい幸せというのは、一人を満喫している時だけです。

──こんなにネガティブな方も珍しいですが、音楽をやっていて良かったですね。

ninin:若干なぐさめられている感じがしなくもないんですけど(笑)。確かに、どこかで表現ができることはありがたいし、充実感もすごくあるんですけど、全部が幸せを感じたり、楽しいと思わなくてもいいと思うんです。絶望感みたいなものが出ても、それも表現のひとつなんですよね。だからと言って、マイナーコードとかはあまり好きじゃないんです。これだけネガティブなことを言ってさらにマイナー進行だったら、自分で自分を追い込んじゃいそうですからね。だからこそ、『逆境エナジー』みたいに自分を鼓舞している部分が音楽活動なんだと思います。人生的にはこんなだからこそキャッチーだったりポップだったりするんですよ。

──そして、このアルバムを締めくくる『カゼノマチ』は、今までの曲とは雰囲気が一変してのどかな風景を歌った曲でしたが。

ninin:アルバムの最後ぐらいは安堵感で終われたらいいかな。最後のデザートは普通に食べられるシャーベットが出てきましたって感じです。

──はい。では、最後に皆さんが今後挑戦してみたいところってあります?

シオリマン:近いところで大阪のほうにライブにいってみようと思ってます。関西でのウケがどうか知りたいですね。

ハヤシマン:このバンドって僕のライフワーク的なものになっているんですよ。一緒にやってる瞬間に一心同体の時があるんです。あと、具体的には毎年CDをリリースして、印を残していきたいです。

ninin:最終的には1人でも多くの人に聴いてもらいたいですね。なんか聴いてみようと思ってくれたり、何かしら心揺さぶるものがあればいいな。今年はそういう年になっていくといいね。


Monkey3

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LIVE INFOライブ情報

6.07(Sat)大阪心斎橋AtlantiQ
6.28(Sat)Zher the ZOO YOYOGI
7.22(Tue)新宿レッドクロス

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