ガレージ、ハードコア、グランジ、ロックンロール、パンクなどをベースに現代社会に流されているヤツラにメッセージを強く突きつける3ピースバンド"BlieAN"。目をひん向き、溢れる感情を吐き出すように歌うボーカルのKenji-George。どこか謎めいた雰囲気を持ち、本能の向くままにギターを掻き鳴らすSAM-GON。リズムを忠実に刻みながらも、パワフルなドラムを叩くGenkiという構成。この3人の絶妙なバランスで、激烈なライブを魅せる。
今回リリースされる『puffter』は"男らしくない男"という意味を込め、社会に対する怒りを歌にする。詞に込められたメッセージのさらに奥に潜んでいる本音を探る! 凄まじいライブの裏に潜む温和な人柄も垣間見ることができた。(interview:やまだともこ)
BlieANの結成秘話
──Rooftopは初登場ですので結成の話から伺いたいのですが、結成はいつになるんですか?
Kenji-George:2005年の10月が初ライブ。この時はメンバーがもう1人いて、バンド名が"Bryan David"だったんです。みんな長崎出身で、僕が高2の頃にバンドを始めて、ドラマーを探していた時に友達の紹介でGenkiに出会ったんです。SAM-GONは僕と家が目の前で、7歳と9歳の頃からの幼なじみなんですよ。気付いたらどっちも音楽をやっていて、一緒にスタジオに入ったりしていて、本格的にバンドをやるって東京に出てきたんです。
──音楽性は"Bryan David"の頃も今も変わらずですか?
Kenji-George:はい。
──みなさん普段はどんな音楽を聴いてますか?
Genki:電気グルーブとかYMCKとかですね。
──my spaceに書いてあった"影響を受けた音楽"を見ていたら、一番にスピッツがあって「BlieANとスピッツが結びつかない!」って驚いたんです。
Kenji-George:スピッツはツアーとか車移動の時は必ず聴いてるんですよ。みんな大好きでリスペクトしてますね。
──あと安室奈美恵with super monkeysも影響を受けられたようですが?
Kenji-George:あれは僕です。初めて買ったシングルCDが『太陽のSEASON』なんです。
──そうなんですか! もっと洋楽とか買ってるのかと思ってました。
Kenji-George:そういうのも聴きつつ、ピンク・フロイドも聴いてましたよ。中学校になってきてダンスビート+ハードコアを聴きだして、そこから根本に迫るというかもっと深く追求していくようになったんです。70'sの初期パンというか、クラッシュや(セックス・)ピストルズとかを聴き始めて、パブロックとかも聴いてましたね。
──Genkiさんは?
Genki:僕はパンクから始まってガレージとかパワーポップとか聴いてました。ノリ的には、自分がドラムを叩いたりする分にはダンスビートの曲が好きなので、ダンスを混ぜた曲を聴いたりしてましたね。
──SAM-GONさんは?
SAM-GON:映画のサントラとかも好きですよ。あとは、いろんなバンドが入っているオムニバスを聴いて、良いバンドを見つけてオリジナルを買ったりしていましたね。
──スピッツや安室を聴いてた人たちが、なぜこの音楽に至ったのかというのが不思議だったんです。
Kenji-George:それは地球はひとつ、音はひとつなんです。
──全部同じ音楽だからってことですか?
Kenji-George:もちろん。
──BlieANは、自分たちで言うとジャンルとしては何になると思います?
Kenji-George:ロックです。
──私はハードコアとかそういう感じかなと思ったんです。ハードコアと括られるのは嫌ですか?
Kenji-George:別に何でもいいんですけど、、、全ての音はロックだと思うんです。いろんなジャンルがあるのは音楽を判別するのには役立つけど、全ての音楽はロックだと思います。例えそれがダンスホールで流れてるものであろうと何であろうと、ロックじゃないかと思います。
──CDを聴いてライブを見て、あまりに迫力があるので、すごく怖い人達に今からインタビューするんだとライブ中ずっと思ってました(笑)。
Kenji-George:見た目が大事なのは重々承知ですけど、見た目はどうでもいい世の中を作りたくて頑張ってます。
──Kenjiさんは目をひん向いて歌ってますしね。迫力があってすごくかっこよかったですが、見た目ではなくて魅せ方は考えていたりしますか?
Kenji-George:気にしてないですね。
Genki:僕はちょっとは気にしてます。でも基本的には自然体にやってますね。
──ドラムのパワーもすごくありますね。
Genki:ありがとうございます。
Kenji-George:パワーは確実に上がってますよ。意識してどんどんどんどん成長しています。これからもプロテインを飲んで...。
Genki:いやいや、見ての通りの体です(笑)。
Kenji-George:ビルドアップしていって欲しいですね。
──お手本にしているドラマーさんっています?
Genki:いないですね。
──ドラムは独学なんですか?
Genki:打楽器としてのルーディメンツ的なものは高校の先輩に教えてもらったりしましたけど、ドラム自体は独学です。
社会に対しての反発
──今回セカンドミニアルバム『puffter』ですが、まずこのタイトルにしたのは?
Kenji-George:ひらめきです。
──『puffter』を訳すと"男らしくない男"ですが、自分自身男らしくないなって感じるところはあります?
Kenji-George:あります。昔の自分にも今の自分に言える部分もあると思うし、だからいろんな人に共感してもらえたらいいと思ってます。6曲とも主人公がいて、それが"puffter"ですけど、「しゃきっとせい!」ってことなんですよ。夢を追うだけじゃなくて実現させるようにがんばれとか、そういうメッセージを込めた6曲になりますね。
──ファーストを聴いてもっとゴリゴリとしたサウンドのイメージがあったんですけど、それが今回聴きやすいというか、シフトチェンジされたというわけではないですか?
Kenji-George:全くしてないんです。ライブとCDは別物なので、CDを聴いてそういう印象を受けてくれるのはすごく嬉しいです。基本はやわらかくて固い、そんなアルバムですね。両面性があるんです。それは好きに聴いてもらいたいです。
──やわらかい部分と固い部分は、CDだったらどっち、ライブだったらどっちみたいなものはあります?
Kenji-George:どっとがどっちとかは考えてないです。できたものはできたものとして。人それぞれ感じ方がありますからね。
──詞は"社会に苛立ちを抱えながら感情を吐き出している"そうですが、普段から社会に対して思うことってあります?
Kenji-George:自分らが生きてる社会だからいろいろ考えてますよ。音楽には普段漠然と頭の中で考えていることを訴えられる力があるし、そういう場だと思うんです。自分が社会に対して思っているリアルな感情を出していきたいんです。社会に反発しているというのはありますね。
──今の社会だったらどんな怒りがあります?
Kenji-George:汚職とかですね。"ずる "ばかりしてる人が毎日毎日高級な料理を食べてますよね。日本ってそんなに貧富の差はないと言われてるけど実際はあると思うし、ずるをしてるヤツって許せないんです。正直にいきたいんです。まだ知らない世界がいっぱいあると思いますけど、そういうことも知っていきたいし、そういうヤツラに"コノヤロー!"っていう気持ちは常にありますね。
──でも実際は、どうやったら変わるんですかね。
Kenji-George:革命を起こすしかないんじゃないですか。
Genki:結果的に変わるかどうかというよりも、言うことが大事なんだと思いますよ。
──曲を聴いてメッセージが伝わって、ちょっとでも考え方が変わってくれる人がいたら、少し社会が変わるかもしれないですね。でも、そしたら日本で活動をしているから日本語でやるほうがメッセージとして伝わりやすいのかなと思うんですが。
Kenji-George:英語は世界語で共通語じゃないですか。僕らの曲に日本語も出てくるけど、歌詞は英語の方が書きやすいんです。日本語で言ったらストレート過ぎるものも、英語だったら比喩表現がしやすい。そんなことを言ったら日本語派の人に批判されるかもしれないけど、僕らのやり方は英語かな。
──Kenjiさんは英語が達者ですけど、SAM-GONさんとGenkiさんはどうですか?
Genki:だいたいわかるけど、わからない単語は辞書を引いて調べてます。
SAM-GON:Kenjiが叫んでいることをわかってないと曲なんて弾けないですからね。
──歌詞を理解して吐き出している感じなんですね。
SAM-GON:そうですね。Kenjiが書いた詞を俺が歌うとかなったら、そこは理解しておかないと歌えないですからね。でもちゃんと気持ちを汲んでくれて作ってくれたりするので。たまに俺に向けてのメッセージかもなとは思うところはありますよ(笑)。「Go! Back to beast.」ってね。
Kenji-George:それ、全然SAM-GONに対して言ってないよ(苦笑)。『ZOO』(M-3)の詞にあるフレーズなんですけど、あれは上野動物園にいるシロクマに対する曲なんです。「he can't stop moving right to left. I don't know. android? Eat or sleep.」シロクマは動物園の動物の中で一番真面目なんです。2匹のシロクマが右から左へとずっと歩き続けてる。猿はキャーって言いながら走り回っているし、ゾウは俺に向かってクソを投げてきたんです。
Genki:なんか病んでるんですよね。
Kenji-George:でも、シロクマさんはまるでロボットのごとく真面目に歩いて、それを見ている人間が"puffter"ですね。その前をカップルだとかがキャッキャキャッキャ言って写メを撮って、シロクマが「Go! Back to beast.」で野獣に戻ったらお前ら絶対やられるぞ。そういうメッセージです。生き物だから絶対に感情があると思うんですよ。シロクマは感情を押し殺して動いているんです。それを見て、僕はシロクマになった気持ちで考えました。
──でも、そういう目線で見ている曲が一番キャッチーでしたね。
Kenji-George:まさにそうですよ。キャッチーだけど中身はドス黒いんですよね。そこをわかっていただけたらすごく嬉しい。
──ドス黒いからこそキャッチーにしたみたいなところはありますか?
Kenji-George:まあ、あるんじゃないすかね。
──逆に『funny days』(M-2)では、"funny"とタイトルが付いているわりに、サウンドは意外とダークだったり。
Kenji-George:『funny days』は淡い恋の歌なんです。叶わない恋の歌。中学校とか高校の頃のことを書いているんですけど、俺あの子のこと好きなのかなって考えれば考えるほど好きになる。そういう淡い恋心。
──いくつぐらいがそんな時期でした?
Kenji-George:中2・中3ぐらいでしたね。『funny days』は誰にでもある時期ですからね。思い出しながら、めちゃめちゃ感情移入して作ってました。
ぶれるな!
──『help』(M-4)では日本語がちょっと入ってますね。私が聴き取れたのは「希望はない」というフレーズで、この曲ではこういったことが一番言いたいのかなって思いましたが。
Kenji-George:そうです、そうです。
──"希望"って言うのは具体的に何に対しての希望ですか?
Kenji-George:未来はない、希望はない。このままじゃ希望はないです。変わらないと。男も女もちゃんとせいや! 好きな人がおるんやったら全力に好けと。ぶれるなと。ぶれちゃいかん。
──こういう言い方は嫌かもしれないですけど、真っ直ぐでまさにイメージする九州男児にぴたりと当てはまりますね。
SAM-GON:Kenjiの先祖は武士ですから。
Kenji-George:江戸時代の人斬り屋なんです。イギリス人の血が入ってると思いきや、先祖は日本の侍。でもSAM-GON は明智光秀の子孫ですからね。
──え!?
SAM-GON:本当なんです。家系図を調べてわかったんですけど。Genkiは?
Genki:うちは詐欺師やった。
──詐欺師の子孫も、今や社会がおかしいという歌を歌っているというわけですね。
Genki:無理にリンクさせなくていいですよ(苦笑)。
──(笑)では、5曲目の『RastafaRice』ですが、このタイトルはどんな意味はあるんですか?
Kenji-George:僕ら自身レゲエミュージックがすごい好きで、リスペクトしているんです。これは知り合いがやっているカフェのメニューのひとつに"RastafaRice"っていうのがあって、ここからもらいました。これはすごくうまいんですけど、お金ないから食べるヤツは少数しかいないんです。たまにそれを食うのは、昔夢ばかり語っていた地元にいる頃の俺ら。夢はあるけれど、実際行動に移そうとしたら準備もいるし、金もいるし、なんともならん現実があって、そうやって夢を語り合った昔の田舎者。その自分らが"puffter"。そういうときの情景。地元長崎の風景も歌ってます。
──その頃に語っていた夢って徐々に叶えられてます?
Kenji-George:何をやりたいか何回も考えて俺は音楽がやりたいって、今はやりたいことの入り口には入ってます。
──なるほど。6曲目の『Hey love!』は?
Kenji-George:愛ってなんだろう。こんなの難しすぎてわからないんですけど、人それぞれあるけど、愛ってなんだってことを歌ってます。
──愛ってなんですかね。
Kenji-George:愛はすごいですよ。愛があればどこまでも幸せになれます。永遠の力を持っているものですよね。その愛が汚れるのがすごく嫌なんです。彼氏や彼女を取っ替えひっ替えする人っていますけど、いろんな人と付き合うのはいいことだとは思いませんからね。これは全世界の女に言いたいですけど、バカにだまされるな、操は大事にしろということですね。小学校からちゃんと教育してほしいですよ。
──軽い人が多いですからね。
Kenji-George:だからラスト大和撫子を探しているんです。
自分であること
──ところで6曲は順調に作れました?
Kenji-George:別に問題なくですね。
──大変だったところとかは?
Kenji-George:あまりないですね。
──全部3人で作ったんですか?
Genki:エンジニアさんもいましたけど、基本的には3人だね。
──Kenjiさんが詞と曲を書いてきてスタジオで合わせていくという感じですか?
Kenji-George:詞は僕が書いていることが多いけど、曲は3人で試行錯誤してますね。
──詞があって、そこにメロディーをつけるんですか?
Kenji-George:先が曲にできて、詞を後で付けるという感じです。
──各パートの音はそれぞれの人が考えてくるんですか?
Kenji-George:ほとんどスタジオで合わせて、実際録ってみてこうしたほうがいいんじゃない?ってやっていきます。
──レコーディングで気をつけたところは?
Genki:ドラマー的に...この言い方は好きじゃないですが...、バランスは気を付けてますね。
SAM-GON:先輩のバンドでMY WAY MY LOVEがいて、よくライブを見に行くんですけど、すごく圧倒されるんです。だから、今回はセカンドを作る上で、ライブでもやりやすいようにCDを作ろうかなって思いました。ライブでちゃんと表現できるように。確かに音源とライブは違うっていうこともありますが、1個の表現の仕方として音源とライブをちょっと近づかせたいなっていうのはあったんです。
──ライブでも再現できるように作っているということですか?
SAM-GON:ギターを3本入れずに、1本でもちゃんと表現できるようにっていうのは前回より意識しましたね。
──1枚目は初音源だから勢いでいくと思いますけど、2枚目は1枚目を経てわかってきたものもあり、経験という部分ではやりやすかったのかと思いますが。
Genki:ファーストは試行錯誤してましたね。セカンドはノウハウもわかってきたし、ファーストより聴きやすくなった。自分たちを出せたし、ストレート感は出ていると思いますよ。
──次はどんな作品になりそうという何となくの構想はありますか?
Kenji-George:曲はいっぱいありますけど、3人で話し合って今回はこんなかんじでいこうよって決めていこうと思っています。
──『puffter』をリリースしてツアーもありますが、初めての方々にもたくさん聴いてもらえそうですね。
Genki:今回のツアーは密度が高いんです。本数的には多すぎるっていうわけではないんだけど、長崎からスタートして6連チャンやって、そのまま北上していく。こういうツアーは初めてですから。
──体力的なものとかも含め大丈夫ですか?
Kenji-George:大丈夫です。
──喉は? けっこう低めの声で歌われてますが。
Kenji-George:まず2人の副流煙に気をつけます(笑)。
──意気込みとかあります?
Kenji-George:どこでやるにも全力でぶつける勢いでいきます。
SAM-GON:ファイナルのキノトでお客さんを増やせるように回ってきます。
Genki:一番大きな面はメンタルなんですけど、脱ぐし脱がせたい。全裸になりたいですね。服の話ではないですよ。素直に聴いてもらえるように素直にやれればと思います。
──はい。では最後にRooftopを読んでいるみなさんに何か伝えたいことはありますか?
Kenji-George:自分に正直に。視野は広げればいろんな世界はあると思うけど、本当の愛はひとつしかないし、それをちゃんと見極めて欲しいです。本質的な、これが自分だっていうのを持って生きて欲しいですね。
SAM-GON:顔を上げれば、いい音楽とかいい映画とかいい言葉とかあると思うんです。下を向いてる感がすごくあるんです。ふさいでるから見つけきれないだけで、仲間はめちゃめちゃいてるんです。それを音楽で100%伝えるわけじゃないですけど、自分らがやってることはそういうことにも繋がっているものだと思っています。
Genki:自分はバンドをやって、好きなことをやってるわけですよね。だからゼブラにならんといかんなと。白黒はっきりさせて、オカピみたいじゃなくて、ゼブラになりたいと思います。