Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューLess than TV presents('08年5月号)

目指すべきところはいつも“突飛なハードコア”!
U.G MANとidea of a jokeの編集盤に見る“レスザン”今昔物語

2008.05.01

オーディエンスをただひたすらに失笑の渦へと引き摺り込みつつも、'92年の結成以来一貫して他の誰にも似ていない奇想天外なハードコアを放射し続けるU.G MAN。そのU.G MANの谷口 順とestllera20/20のモリカワアツシを中心に'03年に結成され、破天荒かつ圧倒的なライヴ・パフォーマンスで日本各地に中毒者を続出させたidea of a joke。谷口が主宰する天衣無縫の至宝レーベル"Less than TV"を出自としたバンドの中でもストレンジ・ハードコア血中濃度が際立って高い両者の編集アルバム『U.G LAND』と『We are all making history.』が同時発売された。現在は残念ながら活動休止中であるidea of a jokeの理想的発展形バンド、younGSoundsとして活動する谷口とモリカワにこの2作品について話を伺うべく、デラシネの自主企画『MISTAKE SHOW』に出演後の2人を楽屋に訪ねた。(interview:椎名宗之)

編集盤を出すのが凄くイヤだった

──まずU.G MANの初期音源集『U.G LAND』のほうですが、これは本来バンド結成とLess than TV設立が共に15周年だった去年発表される予定だったんですよね?

谷口:そうですね、見事にズレました。15年経ってもまだズレるという(笑)。

モリカワ:でも、ズレる期間は短くなりましたよね。

谷口:ちょっとずつね。だんだん理想に近付いてきて、最近は余りズレなくなったんですけど。

──こうして改めてU.G MANの初期音源を聴いて、どう感じましたか。

谷口:まぁ...余りの酷さに自分でも感心しましたよ(笑)。

──僕は余りの音のショボさに軽く目眩がしましたけど(笑)。結成当初の頃は特に。

谷口:ショボいですよねぇ。「MINUS AND SLASH」なんて、片方のチャンネルに演奏のみ、もう一方のチャンネルに河南さん(河南有治、元ヴォーカル)の歌っていうメチャクチャなミックスでしたから(笑)。まぁ、何の狙いもなかったんですけどね。単純に演奏と歌に分けたかっただけなので。

──それにしても、全14曲収録でトータル・タイムが20分を切るというのが如何にもU.G MANらしいですよね。

谷口:全部入って18分ちょっとかな。オマケでDVDが付いてるんですけどね。

──'98年に発表された『LIVE IN 20000V』の映像ですね。今回、谷口家の押入から奇跡的に発掘されたという。

谷口:もともとVHSとしてリリースする予定だったんですけど、結果的にそれもズレたんですよ。10年越しにズレたんですね(笑)。 タカヒロ(Naht、GOD'S GUTS、Less than TVスタッフ):未だに通販で問い合わせがあるんですよ。告知してたことがあったから、発売されていないのに「オーダーお願いします」って。

谷口:あのニマンのワンマンって何曲やったっけ?

タカヒロ:48曲。

──べらぼうな曲数ですね(笑)。fOULの学さん(平松 学)が楽しそうにモッシュしているのが笑えましたけど。

谷口:強制的に呼んだんですよ。ライヴ録音するためのサクラですね(笑)。

モリカワ:あの日は確か凄い雨だったよね。余りに雨が酷いから静岡へ帰るのやめたんですよ。

──そのワンマンも、当初予定していた対バンが活動停止になって急遽ワンマンになったそうですね。

谷口:ええ。そうじゃないとワンマンなんてやりませんよ(笑)。後にも先にもU.G MANのワンマンはあの時だけですね。

──そんな『U.G LAND』と同時発売されるidea of a jokeのコンパイル盤『We are all making history.』ですが、改めて聴くと余計に活動休止が惜しく感じますね。ただ、idea〜は解散したわけではないんですよね?

モリカワ:形はもうないけど、活動休止ですね。解散したとだけは言わないようにしてるんですよ、BIG BOYSのように。ティム・カーも「BIG BOYSは解散はしてないんだよ。一度も解散したとは言っていない」って僕に言ってくれたことがあったし。

──idea〜が活動休止に至った理由というのは?

谷口:一番の原因は赤字ですね(笑)。まぁそれは冗談ですけど、大きかったのはやっぱり、いろんなタイミングですかね。

モリカワ:メンバー間で揉めたとかは全然なかったんですけど、いろいろあったんですよね。誰かが忙しくなったり、バンドを休む要素がたくさん出てきたんですよ。そうこうしているうちにタニさんと僕がyounGSoundsを始めて、そっちでidea〜でやっていたことを織り交ぜてやるようになったから、何となくidea〜をやりづらくなったところもあるんですよ。

──ただ、ボーナスの8センチCDにはyounGSoundsのメンバーでもあるイルリメさんとやけのはらさんによるリミックスも収録されていて、idea〜からyounGSoundsへの架け橋になっている部分もありますよね。

モリカワ:図らずもそういう感じになってますね。完全に後付けですけど(笑)。

谷口:そういう新しい要素を加えないと、編集盤を出すのが俺は凄くイヤだったんですよ。だからidea〜のほうにはyounGSoundsへの橋渡し的なリミックスとエンハンスドでライヴ映像を入れたし、U.G MANのほうには新しい要素がないぶん、"新曲もないし、U.G MANも終わったなって思われるぞ!?"っていうプレッシャーを自分に掛けたくて出すことにしたんですよ。そのプレッシャーがニュー・アルバムへと繋がるように。

younGSoundsは人ありきで始まったバンド

──では、U.G MANの新作の構想もちゃんとあるわけですね?

谷口:ないけどありますよ! だって、今ここで「ある!」って言っとかないとヤバイじゃないですか?(笑) 曲は結構、ちゃんと作ってますから。

──younGSoundsはidea〜の理想的発展形バンドだと思うし、今日のライヴも文句なく格好良かったんですけど、この『We are〜』を聴くとidea〜のストレートかつ野太いサウンドが恋しくも感じるんですよね。

谷口:じゃあ、younGSoundsもぶっとくします! 何せライヴも今日でまだ5回目だから、全然固まってないんですよ。

──それこそ、younGSoundsの音源を作る予定は?

谷口:もちろん作りますよ。今のところ、『PUNK ROCK CONFIDENTIAL JAPAN』っていう雑誌に付いてるDVDにライヴ映像が入ってるみたいですけどね。younGSoundsはまずアナログを作りたいと思ってるんですよ。

モリカワ:こんなダウンロード全盛の時代に敢えてアナログを(笑)。

──そもそも、younGSoundsはどんな経緯で始まったんですか。

モリカワ:idea〜のギターが抜けることになった時に、圏ちゃん(竹久 圏/キリヒト、GROUP、海の家)を誘おうって話になったんですよ。そしたらドラムのタマちゃん(マツモトタマキ)が妊娠して、idea〜が物理的にできなくなって。そうなると僕がヒマになるなと思って、イルリメ君に電話して「バンド一緒にやらない?」って声を掛けたんです。そこからやけ君をサンプラーとして誘って、ドラムはカッキー(柿沼 実)がイイってことになって...トントン拍子で話が進んだんですよ。

谷口:メンバーが増えるだけ増えて、そこからどういう音にすれば個々人が活きるかを考えたんです。だから、younGSoundsは完全に人ありきで始まったバンドなんですよ。バンド名はモリカワさんが考えたんですけど。

モリカワ:idea〜の「オースティン」の歌詞から取ったんです。まぁそれも、よくモータウンのレコード・ジャケットの裏に書いてある"THE SOUND OF YOUNG AMERICA"っていう言葉からインスパイアされたと言うか。ああいう明るい言葉がイイなと思って。

──でも、younGSoundsという呼称は何と言うか...。

谷口:何ですか? 名前の割に若くないって言いたいんですか!?(笑)

──いやいや、まぁ...そういうことなんですけど(笑)。文字通り"GS"っぽいテイストが部分的にあったりもするし。ただ、イルリメさんとやけのはらさんの2MCにモリカワさんの歌が絡むというスタイルは非常に新鮮ですよね。

モリカワ:タニさんのベースは意外に黒っぽいし、ギターっぽいベースを弾くからまたイイ感じなんですよ。

谷口:2MCにヴォーカルっていうのもなかなかないでしょ? フロントに3人いるのが絵になると思ったんですよ。

──ただ、谷口さんとモリカワさんがいる以上、idea〜の音楽性から急に方向転換できるものでもないですよね。

谷口:そこは余り意識してませんね。でも、今は凄く面白いですよ。それぞれがアイディアに溢れ返ってますから。

──今や同じメンバーであるイルリメさんとやけのはらさんによるidea〜のリミックスも、溢れんばかりのアイディアが凝縮されていますよね。

谷口:俺はまだ聴いてないんですけど(笑)。

モリカワ:僕は聴かせてもらいましたけど、どれも凄く良かったですね。永田さん(永田一直)のも面白かったですし。僕自身もともとリミックス曲が好きで、そういうのを聴いて新しい曲のアイディアが生まれることがあるんですよ。"ああ、こういう展開もアリなんだな..."とか思いながら。idea〜の曲も、一度形になったものを自分の家でリミックス的な感じで味付けをして仕上げることが多かったんですよ。


もっと突飛にならなくちゃダメだと思ってる

──考えてみると、こうした既存曲ばかりを集めた編集盤のリリースはありそうでなかったですね。

谷口:Less than TVで編集盤を出したのは今回が初めてなんですよ。さっきも言いましたけど、それだけは絶対に出したくなかったんです。まとめて古い曲を出すくらいなら他にもっと新しい曲を出したいし、何より停滞してる感じがあるじゃないですか? でも、単にこれまでの曲を集めましたっていうんじゃなくて、そこに+α...たとえば次の動きが感じられるものなら出してもイイかなと思ったんですよね。だから今回のアイテムは、もう完全に人任せだったんですよ。スタッフにも「全部好きなようにやってくれ」って言ってたし。リマスタリングに関しても、その作品のその時の音っていうので作ってあるから、組み直しても何の意味もないと思ってるんです。ただ、自分ではない、U.G MANとidea〜を見ててくれた第三者がこういう編集盤を作ってくれたことに意味があるのかなとは思いますけどね。

モリカワ:idea〜のジャケットは自分でやりましたけど、曲順とかは僕もお任せだったんですよ。エンハンスドの『DO IT!!!』のライヴ映像も観てないし。

タカヒロ:「曲順どうしますか?」って谷口さんやモリカワさんにメールしても、一切返事がなかったですからね(笑)。

モリカワ:僕はこういう編集盤を作ってイイのか凄く悩んでたんですよ。出したはイイけど、もうバンド自体がないわけですから。この編集盤を聴いてライヴを観たい人がいても、もう観られないわけで。idea〜がまだ存在していて、次の展開があるのなら喜んで出したいと思ったんですけどね。

谷口:だからもう...こんなの買わなくてイイですよ!

──いやいや、主宰者自ら何を言ってるんですか(笑)。U.G MANは特に3センチCDや5インチEP、12インチEPといった今や入手困難な音源がCDでまとめて聴けるのがとても意義深いと思いますよ。idea〜を知ってからU.G MANに興味を持った人がまず最初に聴く音源として、その意味合いは凄く大きいでしょうし。

谷口:スタッフからもそう言われたんですよ。俺は過去の音源をみんなにあげちゃって1枚も持ってないから、これでまた聴けるなとは思ったんですけど。でも、この編集盤もまた誰かにあげちゃって聴けなくなるんだろうな(笑)。

モリカワ:これ、「U.G THE MAN」とかも入ってるんだよね?

谷口:入ってますよ。ロング・ヴァージョンもあるんだけど、それがまた酷いんだ(笑)。だって、ただ長くやるしかねぇなってやってるだけなんだもん(笑)。

──確かに、何度も終わりかけているのに"まだ続くのか!?"っていうのはありますよね(笑)。

谷口:弾いてる俺ですら"まだ終わんねぇのか!? まだかよ!?"って思ってましたからね。『U.G IN THE CAR』からシングル・カットした12インチを作ることになって、それに入れる「U.G THE MAN」のロング・ヴァージョンをやろうと。それでその場で無理矢理長くしたんですけど、オリジナルのショート・ヴァージョンを入れるのを忘れちゃったんですよ(笑)。

──谷口さんが唯一のオリジナル・メンバーとなった現在のU.G MANはどんな感じなんですか。

谷口:ちゃんとしてますよ(笑)。メンバーの仲もイイですし。僕の中ではこれまでのU.G MANと変わってるつもりはないんですよ。とにかく突飛なハードコアができればイイなと思ってやってますけどね。

──"突飛なハードコア"というのは、Less than TVの諸作品に通底するテーマですよね。

谷口:でも、ハードコアってどのバンドも突飛じゃないですか? 突飛じゃないハードコア・バンドなんて聞いたことないですから。だから俺達もそんな突飛なハードコア・バンドのひとつになりたいな、と。その思いでずっとやってます。

──まぁ、U.G MANは"突飛 of the 突飛"の称号に相応しいバンドだと思いますけどね(笑)。

谷口:できればそう在りたいですよね。ただ、ハードコアの世界はみんなそれでシノギを削ってますから、今以上にもっと突飛にならなくちゃダメだと思ってますね。なかなか難しいですよ。

モリカワ:それに比べると、younGSoundsは比較的オーソドックスだと思ってるんですよ、自分では。今までやってきたバンドの中では割とオーソドックスなサウンドでやってるんだけど、編成がちょっと変わってるんですよね。でも、今が一番理想的な在り方ですね。younGSoundsはidea〜で進化したかったことのひとつと言うか。

ライヴで自分達が盛り上がる曲を作りたいだけ

──idea〜の末期にもっと突き詰めたかったのはどんなところだったんですか。

谷口:いろいろあったけど、やっぱりライヴですかね。idea〜はとにかく異常な本数のライヴをやってたし、ライヴをやりながら出来てきたサウンドだったんですよ。曲もライヴの音と鳴りに近かったから、ライヴができなくなってそのまま進化が止まってしまったんです。

モリカワ:ライヴができなくなった時点でモチベーションも下がったし、ライヴをやって盛り上がって何となく曲が出来るケースが多かったですからね。

──そういった生粋のライヴ・バンドは、音源の理想形がなかなか見いだしにくいでしょうね。

モリカワ:そうなんですよ。レコーディングも面白いんだけど、SUSPIRIAの西君(西 滝太)がキーボードを弾いてくれたり、外部の人が入るとより面白くなるんです。

谷口:younGSoundsもライヴでは今あんなサウンドになってるけど、音源になるとそれをイイ方向に崩せると思うんですよ。音源で活きてくる音の作り方があるから、そこを目指したいですよね。

──ライヴではイルリメさんとやけのはらさんの2MCがグイグイと引っ張っていて、谷口さんとモリカワさんはそれに身を任せているようにも見えますけれど。

谷口:イルリメ君はちょっとはやってたと思うけど、やけ君はバンドをやったことが一度もなかったから、ライヴが終わってみんなでメシを食ってると「凄く楽しい!」っていつも言うんですよ。バンド全員でメシを食ってること自体が凄く楽しいみたいで(笑)。そんな状態の人と一緒にバンドができるなんて、なかなかないじゃないですか? そういうのはこっちも楽しいですよね。モリカワさんや圏ちゃんはいろんなバンドをやってきたから、ライヴでもある程度バンド・サウンドが自由になるんだけど、それでもフォローしきれないくらいイルリメ君が浮き足立ったりするんですよ(笑)。それが凄く面白いですね。

モリカワ:だから余計に、2MCと自分のヴォーカルが混ざらないほうがイイかなと思ってるので、スタンスとしてはちょっと引いてるところもあるんですよ。

──とは言え、今のレパートリーにはモリカワさんのヴォーカルに特化した曲もありますよね。そういった曲はidea〜が好きだったオーディエンスにも親しみやすいと思いますが。

モリカワ:ああ、なるほど。自分の中でidea〜は、ジョージ・クリントン(Pファンクの創始者)がハードコアをやってるようなイメージで行きたかったんですよね。younGSoundsにはそういうツールが整っていて、自分でもやりたいことが今まで以上にやれているんですよ。

谷口:話を遮って申し訳ないですが、ぼちぼち帰りたいんですけど...。

──はい?(笑)

谷口:すいません、ヨメと子供が待ってるので! お疲れ様です!(と、荷物をまとめて楽屋を出ようとする)

──あの、それじゃ16年目のLess than TVの展望を!

谷口:(焦り気味に)今年もガンガン行きますよ! 毎年○周年で頑張ってますから!

──この間頂いたLess than TVのフライヤーに、「子供が産まれたので皆殺しサウンドを作り続けたい」という谷口さんのコメントがありましたが...。

谷口:(かなりおざなりに)ええ、やっていきますよ! それじゃ、お先に失礼します!

モリカワ:ああ、お疲れ様でした!(笑)

──......ホントに帰りましたね(笑)。まぁとにかく、younGSoundsのリリースが年内中に期待できそうなのが今日の唯一の救いでしょうか。

モリカワ:ただ、今ある持ち曲は8曲くらいで、ミックスCDみたいな感じで最後まで終わらずに次に行くっていうのが多いんですよ。やけ君がサンプラーで持ち込んだのをみんなで聴いて、それをどうやってバンドと同期させるかっていう曲の作り方でやってます。みんなアイディアが豊富なので面白いですよ。

──大所帯の割には整合性がちゃんと取れているんですね。

モリカワ:そうですね。バンドとうまく同期できなければ、すぐに別のサンプラーに行きますからね(笑)。こういうインタビューで、どんなコンセプトでアルバムを作ったかをみんなよく話してるじゃないですか? でも、実はそういうのって全部後付けだと思うんですよ。少なくとも僕はそうだし、実際にコンセプト立てて作ってる人は凄いなと思いますね。僕達はその時々で楽しい音、ライヴで自分達が盛り上がる曲を作ってるだけですから。まぁ、そういう曲を形にするのが一番難しいんですけど。

誰も芽を摘まないのが"レスザン"らしさ

──idea〜同様、younGSoundsでもまずライヴありきなわけですね。

モリカワ:ええ。要するにライヴでキャーキャー言われたいんですよ(笑)。それがバンドを始めたきっかけですからね。

タカヒロ:方向性とか、小難しい建前は全部後付けですよね(笑)。

モリカワ:社会に対して不満がないわけではないけど、それを政府に対して言ってやろうっていう気持ちもないし、他人の人生に共感してもらっても困るし...。だからホントに、僕はジョージ・クリントンみたいに生きたい(笑)。宇宙思想で訳の判らないことを言いまくって、自分だけの善悪を勝手に作って...あれが一番の理想ですよ。

──でも、younGSoundsのライヴでの佇まいは、その大所帯ぶりも含めてPファンクの匂いを少なからず感じますけどね。

モリカワ:そうそう、ああいうのが僕は凄く好きなんですよ。

──estllera20/20やidea〜にもソウルフルなテイストがあったし、一貫していますよね。

モリカワ:estllera20/20は、ヒマだったので一緒にスケートをやってた仲間と作ったようなバンドだったんですよ(笑)。それがU.G MANとライヴをやって、たまたまタニさんに拾われたようなものなんです。いろんな人との出会いがバンドを育んでいったんですよ。僕も普段からいろんな音楽を聴いてますけど、最終的に影響されるのは音楽をやってる人なんですよね。たとえばジョン・コルトレーンの音楽は凄く好きだしよく聴くけど、ああいう音楽をやりたいとは思わない。フィーリングとして影響を受けることはあっても、音的に影響を受けることは全くないですね。それよりもタニさん達と遊んでる雰囲気を音にするほうが面白いんですよ。younGSoundsのメンバーはみんなそんな感じなんですよね。まぁ、Less than TVに関して言えば、タニさんと知り合った時は"こんなにユルいレーベルがあるんだな"って正直思いましたけどね(笑)。

──そのユルいままで16年目に突入しましたからね(笑)。

モリカワ:でも、アメリカでツアーをした時に向こうの人達が結構U.G MANのことを知ってて驚きましたね。「お前の着てるU.G MANのシャツくれよ!」って言われたんですよ。ティム・カーはU.G MANを絶賛していたし、『U.G IN THE CAR』を彼に渡したら、「これ何だ!? 凄いハードコアだな!」って驚いてましたから。あと、ギターウルフやDMBQもアメリカでは凄く人気が高いんですよね。

──と言うことは、そういったLess than TV出身のバンドが種を蒔いてきた意義がちゃんとあったわけですね。

タカヒロ:ただ、種を蒔いて芽が出ても、誰も摘みに行かないんですよ(笑)。「谷口さん、芽が出ましたよ」って言っても、すでに違う種を蒔いているんです。新しい種を蒔くことしか興味がないですからね。

──もしくは、もう全然違う土地で勝手に畑を耕していたり(笑)。

タカヒロ:谷口さんは「こういうの出そう!」っていつも突発的に盛り上がるんですけど、数日経って「あのリリースの話、どうなりました?」って訊くと、もううやむやになってるんですよ。だから、谷口さんのイイところはすぐに盛り上がるところ、ダメなのはすぐに盛り下がるところなんですよね(笑)。

モリカワ:僕が思うタニさんのイイところは人のダメさを許せるって言うか、誰かに対して明確なジャッジを下さないところですね。人の悪口も余り言わないし。あと、ズバ抜けてイイのは凄くイイ顔でライヴをやること。あれは反則ですよ。顔でベースを弾いてますからね(笑)。

タカヒロ:そう、顔でライヴをやるのは谷口 順か大地大介(fOUL、ダイノジ・大地洋輔の実兄)くらいなものですね。バンドは顔ですよ!

モリカワ:逆にタニさんのダメなのは、自分のダメさを判ってないところ(笑)。そういう人が主宰者でも許されるレーベルっていうのが凄いですよ。あれだけリリースが遅れてだらしなくても、それを許せてしまう何かがタニさんにはあるんでしょうね。僕も何か相談するとしたらタニさんが一番だと思ってますから。何の解決にもならないのは自分でもよく判ってるんですけどね(笑)。


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*印刷ミスではありません。ジャケットはご覧の通り真っ白なんです。

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