Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューItsco('08年4月号)

シンデレラが階段を昇り、見つけた新たな自分=『Its』

2008.04.01

本誌1月号での人生初取材から3ヶ月。ファーストアルバム『Its』を引っさげてItscoがRooftopに再び登場!! 朝本浩文をプロデューサーに迎え、作詞にはサエキけんぞう、土岐麻子、加藤ひさし、ら錚々たる名前が並ぶ。なぜ無名の女性アーティストにこんな面々が? と疑問に持つ人も多いだろう。Itscoはアーティストとしてだけでなく、人間としてもヒヨコ状態である。しかし、目の前のものを素直に吸収し、めきめきと成長していく様子が、たった2度のインタビューからも伝わった。この様子を目の当たりにしてしまったら、彼女の成長に手を貸したいと思う人物が集まるのも納得だ。デビューシングルから彼女に携わるKiyossie(ex.DOMINO88)も飛び入り参加してのItsco対Rooftop2回戦。早速"自分探し"の段階から、"自分"の片鱗を見つけたらしいことがわかった。これからの彼女の成長がどれほど急激なものになるか予想がつかない。(interview:古川はる香)

演奏にもスペシャルメンバーが集結!!

──アルバム完成おめでとうございます!

Itsco:ありがとうございます!

──いきなりなんですけど、『ろくでなし』のカバーが入ってますよね。なぜ『ろくでなし』!?

Itsco:これは私が小学生のときに、梅......梅垣......義明さんが。

──シャンソン歌いながら鼻から豆を飛ばす芸だ!

Itsco:そうです。あれが大好きだったんですよ(笑)。それで、ふと最近思い出したんですよね。「この曲ってもともと誰が歌ってるだろうなー」って調べたら越路吹雪さんだったんです! 全部聴いたら歌詞とかもすごいよくって。「カバーするならこれだ!」って今回カバーさせていただきました。

──小学生のときに「すごく歌詞が好きで聴いてました」だったらどうしようかと(笑)。

Itsco:それは違うんですけど(笑)。ウィッ!ってマネしてました(笑)。

──ところで、前回の取材ではアルバム製作中で、シングルをどう制作したかを忘れてましたけど(笑)。

Itsco:忘れてましたね(笑)。今回は大丈夫です!

──はい(笑)。詞については、それぞれの作詞家さんと話したんですか?

Itsco:全部ではないです。"自分探し"っていうテーマは皆さんに伝えてましたけど。曲は最初に朝本さんに私が「こういう曲がいいです」っていうのをメールで送って、それから曲が先に出来上がって、詞は朝本さんが曲を聴いてイメージする人に、お願いしたって感じですね。

──本当にいろんな曲がつまってますよね。朝本さんとは、曲についてどういう話をしたんですか?

Itsco:レニー・クラヴィッツのこの曲がいいとか、レディオヘッドのギターのこういう感じが好きとか、こういう不安定な感じがいいのでこういう曲にしてくださいとか。そういうことをメールで送りました。

──曲の細かいところまでつめたりしたんですか? ギターはここにもっと入るといいなーとか。

Itsco:それはしてないですけど。

──楽器のレコーディングは?

Itsco:あ、見させていただきました! 演奏してくださったのがパール兄弟の窪田晴男さんだったり。

──えー!! すごいじゃないですか!?

Itsco:泣きのギターでした(笑)。『MOTHER WATER』のアコギのリフとかすごくて。もう、う〜ん!! って来ました。『真紅の魚』もすごく良くて、そのベースがTOKIEさんだったんですけど。『ろくでなし』は名越由紀夫さんに弾いていただいたりして、それぞれ違う感じで。

──ずっと見学してたんですか?

Itsco:はい。見学してました。出られる限り。TOKIEさんがベースを弾く時に、ピックじゃなくてツメで弾くんですよ。「私、ツメのほうが弾きやすいから」って。なのに男っぽいというか、パワフルな演奏をしていて。

──そうやって曲ができて、詞ができて、ようやくItscoさんの仕事が!

Itsco:はい。でもこれ全部作るのに2ヶ月くらいで終わっちゃったんです。

──短いですね! 曲作りの作業がスタートしてからってことですか?

Itsco:朝本さんと出会ってからサヨナラするまでですね(笑)。私、今回朝本さんから学んだことがあるんです。生きることをすごく楽しんでる方だなぁと思って。私、そんなこと思ったことなかったんですけど、もっとハッピーに生きなきゃダメだなって、朝本さんに教えていただいたような気がします。

──思いつめちゃうほうなんですか?

Itsco:はい。何もかも消極的にとらえちゃうような感じがあったんですけど、朝本さんを見て「こんなに楽しく生きられたら素敵だな!」って。

性格悪いか親身になるか。性格はとことん極端

──詞についてはどうでした?

Itsco:特に『スキャッター・ブルー』って曲は、私の不安定な部分が表されていて、自分と重なる部分があったので、すごく入りこめましたね。

──『アネモネバス』は作詞のKiyossieさん(ex.DOMINO88)と話してたんですよね?

Itsco:そうです。Kiyossieさんに、私がバスが好きだって話して、詞に"ブザーボタン 押せないまま"ってあるんですけど、私が一歩踏み込みたいのに踏み込めなかった時期とリンクさせて書いてもらったんです。

──この曲はリアルに自分のことが反映されてるんですね。

Itsco:そうです。"旧3号線"とか地元の名前も入れてもらって。 Kiyossie:元々ロンドンの曲だったんですけど、Itscoがロンドンに行ったことがないからってことで、舞台がロンドンから福岡になりました(笑)。

──アネモネはどこから出てきたんですか? Kiyossie:アネモネはうちの母親が好きな花で、花言葉がすごくいい。

Itsco:"儚い夢"とか、そういう意味らしいです。

──ほかの曲は、作詞の方が曲のイメージだけで書いてるんですよね?

Itsco:そうです。

──どの曲も『スキャッター・ブルー』みたいにわかるなーってところがある?

Itsco:そうですね。私、結構性格が極端な人なので、すごい性格悪いというか、がーっとやるときもあるのに、めちゃ親身に思いやるときもあって。真ん中がなくて、そのどっちかしかないんですよ(笑)。このアルバムでは、"自分探し"ってことで、極端に揺れてる部分を、全部違う一面で表せているんじゃないかと思います。

──朝本さんからは、歌い方でアドバイスがあった?

Itsco:それがなくて、全部結構自由に歌わせてもらったんですよ。そこから朝本さんが引き出してくれたというか。私、勢いで歌っちゃうんで、「もうちょっと肩の力抜いていいよー」とかは言われましたけど(笑)。

──歌入れはどのくらいの期間で?

Itsco:1ヶ月ですね。1ヶ月ちょっと越してたくらいで。

──その間、自分のコンディションは保っていかないといけないですよね。風邪ひいちゃいけないし。

Itsco:はい。全然風邪はひきませんでした。でも途中でやっぱりわけわかんなくなっちゃって。終わりに「今日おかしいよ?」って言われて、うえーんって泣いたりしてました。

──精神的にわーってなっちゃって。

Itsco:はい。声がちょっと違うようになっちゃったというか。「いつもと違うよ」って言われても自分ではよくわかんなくって。

──そうか〜。1ヶ月歌い続けたんですもんね。

Itsco:でもこのアルバムを録ってる時に、私まだ技術的に足りない部分があるなと思って。これからもっといろんな表情とか出せたらいいなと思いました。

──課題が見つかりましたか。

Itsco:見つかりました。

──歌に表情を出すための努力はどんなことをしてるんですか? 例えばいろんな人の曲を聴くとか。

Itsco:それやってます! 特に女性を聴くようになりました。

──今まではレディオヘッドとか聴いてたんですよね?

Itsco:そうです。男の人の曲を聴いてました。あと矢野真紀さんのボーカルにすごく影響されてる......。できてないんですけど(笑)。影響されたいので!

そして見つかった"ダーク"が似合う自分

──お休みはできましたか?

Itsco:この前久々に海に行きました!

──ああ、シラス丼を食べたんですよね?

Itsco:何で知ってるんですか!?

──ブログに書いてあったんで(笑)。久々に行ったんですか?

Itsco:今までは寒かったから行けなかったんです。

──あれ? 忙しいからじゃなくて!?

Itsco:寒いから。

──寒いのはキライ?

Itsco:寒いのイヤですねー。外に出る気がしなくなります。

──海に行って、気持ちは落ち着きました?

Itsco:落ち着きました〜。夕日とかキレイで。

──夕方の海が好きなんですか?

Itsco:夕方の海が好きです。夕日に向かってバイバイってするんです(笑)。

──シラス丼はなんで食べたんですか? 魚嫌いなんですよね!?

Itsco:なんか食べたくなって。苦手なものをちょっとずつ克服していこうと。

──それは2008年の課題ですか?

Itsco:そうです。あと人の話もちょっと受け入れていこうっていうのと、忘れないで覚えておこうとか。

──ブログに書いて忘れないようにと?

Itsco:そうですね。

──ブログ書くのは楽しいですか?

Itsco:私、ブログをバカにしてたんですよ。自分大好きみたいだし、絶対書きたくない! 自分の写メも撮りたくない!って。でもやってたらなんだかんだで楽しくなってきて(笑)。しかもコメントいただけるともっと楽しくなっちゃって。

──できあがったばっかりですけど、次の音源に向けての動きは?

Itsco:このアルバムを作ってみて、自分にはダークなことだったりとか、そういう曲調が合うんだなーってことを感じたんです。今の同世代にはそういう方がいないので、そういう方向を狙っていきたいなと。

──ちゃんと自分が見つかったんですね。

Itsco:あ、はい。見つかった感じです(笑)。だから自分探ししてよかったなって。

──『真冬のひまわり』とか、ちょっとダークな感じでよかったですよね。

Itsco:はい。自分でも歌ってて、ぐーーーーってきちゃった(笑)。詞の世界観とか、曲調とか。すべてあの曲のために生まれてきたような感じがするくらい全部合ってて。どれも気に入ってます!

──今後自分でも詩を書きたいとかは?

Itsco:うまく伝えられる言葉がね、出てくればいいんですけど。

──書くのはキライですか?

Itsco:苦手です。うん。今まで作文を提出したことがなくって(笑)。

──えっ? 小中高と?

Itsco::はい。自分の気持ちをあまり知られたくなくって、出さなかったんですよ。

──出さないと怒られるでしょ?

Itsco::はい。卒業文集は書きました。小学校で書いたのを中、高と使いまわして(笑)。

──そうかー。自分の気持ちを知られるのがイヤなのか〜。

Itsco:はい。でもアーティストって伝えていかなきゃいけないので、いずれはこの殻をやぶらないといけないと思います。そんな日がくると思います!


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