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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】ASIAN KUNG-FU GENERATION(2008年3月号)-出来れば世界を塗り変えたい新しい世界へ飛びだった『ワールド ワールド ワールド』

出来れば世界を塗り変えたい新しい世界へ飛びだった『ワールド ワールド ワールド』

2008.03.01

アルバムを通してひとつの物語に

──皆さんはいろんな曲を幅広く聴いていると思いますけど、自分たちが作る曲はリスナーを意識したり、わかりやすく発信していこうという感覚はあります?

喜多:というよりは、自分たちがやっている音楽と聴いている音楽が離れていってる部分もあると思うんです。あまりリスナーが聴きやすいとかは考えすぎてはいないですね。リスナーとしての視点から自分たちでどう思うかとか。

山田貴洋(B & Vo):自分がリスナーの気分になることはあります。意識してなるというよりは、客観的に見れてるなという時がありますね。

──1曲目の『ワールド ワールド ワールド』はインストゥルメンタルが入ってますけど、こういうのは初めてですよね。

喜多:こういう始まり方とか、インストみたいなのは初めてですね。昨年、ライブのオープニングで自分たちでPAチェックも兼ねつつセッションをやって、曲にするために整理をして出来上がったんです。

──幕開けとか夜明けの雰囲気が出てますよね。その『ワールド ワールド ワールド』から『アフターダーク』(M-2)、『旅立つ君へ』(M-3)、『ネオテニー』(M-4)はひとつの物語が出来上がっていると思ったんです。この流れは意識されたものなんですか?

山田:『アフターダーク』は序盤に入れるという縛りを作って、でもその前に1曲必要だなって『ワールド ワールド ワールド』を。『ネオテニー』はかなり初期にあって、間に何か欲しいねっていうところで『旅立つ君へ』が一番最後にできた曲です。

喜多:『旅立つ君へ』は3曲目に入れることを狙って作りました。

──アルバム全体を通しても、ひとつの物語が出来上がっていますよね。

喜多:今回は制作期間が長かったので、17、18曲はミックスまで終わっていて、全部入れちゃおうかって話もあったんですけど、歌詞でストーリーが作れるこの13曲でまとまったんです。あとは1時間を越えないように。1曲1曲の長さが無駄に長いのは止めようって、アイディアをコンパクトにまとめられるところはまとめて詰め込んだ感じです。

──後藤さんがもし野球の監督だったら、試合に向けて選手を選びますよね。曲を並べるというのは作業というのは皆さんが監督となって選手を選んでいくということに近いんですか?

後藤:どうですかね。全員が監督でいられても困ると思いますけどね(苦笑)。監督は一人でいい(笑)。

喜多:僕らは打撃コーチと、守備走塁コーチとぐらいの。

後藤:星野(仙一)でいたいっていうのがありますから(笑)。今回は、あまりヤイヤイ言ってくれんなよって思ってました。みんながヤイヤイ言ってなかったから良かったですよ。

喜多:でも、あの曲好きだから入れてっていうリクエストはしましたよ。

山田:『新しい世界』は最後に入れることが決まってたんですけど、大枠みたいな形が見えていたのはそれだけですね。

喜多:でも今回、早い段階から後藤が曲順を意識するように呼びかけてくれたので、それが功を奏して、的はずれの意見は出なかったよね。

──ところで『ワールド ワールド』(M-11)で「Everything must lead to a new world」というメッセージを投げてますね。「全ては新しい世界に通じる」と。

後藤:Everything=全ては、最後の曲にみんなを導くために存在しなければならない。全てが何をさしているかというと、このアルバムの全て。このアルバムに入っている他の曲達は、『新しい世界』へ連れて行くためのものでなければならないっていう。新しい世界=new worldでしょ。そういうことです。

──なるほど。それと、『ワールド ワールド』と『ワールド ワールド ワールド』のタイトルの違いって何ですか?

後藤:言葉遊びみたいなものだからあまり気にしないでもらえると嬉しいです(笑)。同じタイトルでも良かったんだけど、気分で変えてみました。

レコーディングは常に手探り

──これまでに何度もレコーディングを経験してノウハウは身に付いてくると思いますけど、今でも毎回手探りだったり模索したりするんですか?

山田:楽器を新調したり機材を買ったり、サウンドの環境が変わってくると自然とミュージシャン魂じゃないですけどやりたいことが増えてくるんですよ。

喜多:レコーディングはしっかり録るだけですけど、プリプロの時はいろんなことを試したり模索しますね。

──今回レコーディングをしていて大変だったことってありましたか?

伊地知:あまりないですね。全曲音を変えているのは前からやっていたので、なるべくフレッシュなテイクで録り終えるように練習をたくさんしました。手癖が多いんですが、最近は思いついたのがそのまま採用になっているんです。ファーストインプレッションが大事ですね、僕は。後藤が曲を持ってきて、ジャムもやるし、誰かが弾いてるところで乗ってくこともある。ここは8ビートのほうがいいとか、そういう指示は受けますけど、このアルバムの作業中はありえないだろっていうリズムパターンもけっこう採用されたので、あまり悩まなかったですよ。

──『転がる岩、君に朝が降る』のドラムがすごく良いなと思いましたよ。

伊地知:この曲は先に後藤が歌詞もメロディーもできていたので、完全に歌ありきでつくらなければいけないドラムパターンだったんです。どっちかと言ったら歌を引き立てるためのドラムパターンだったんですけど、これが一番難しかったですね。

喜多:僕は今回メンバーに助けてもらいましたよ。長くやってると自分が好きな感じ、悪く言うと手癖みたいなのが増えて来ていたところを指摘してもらったし、他のメンバーが考えるアイディアは自分から出てくるものと全然違うから、自分なりに調理して自分の弾き方でやってみたり。柔軟な頭でやりましたね。あと、プリプロで曲の完成度をかなり高められるようになったので、本番のレコーディングではいかにいい音でとか、ここでピッキングハーモニクスや!みたいな気持ちで楽しんでやりましたね。

──『ナイトダイビング』(M-7)のギターがすごく綺麗でしたね。

喜多:弾きまくりの曲ですね。ありがとうございます(笑)。

──山田さんはどうでした?

山田:曲がだいたいできていてアレンジのツメに入る段階は、個人的に言うと楽しみにしている作業なんです。こういうフレーズに挑戦してみようとかも含めて、それを弾きこなすまでは練習しますし、新しいリズムパターンに対するフレーズを考えましたけど、レコーディングも楽しかったし、楽しんでる中での苦労は苦労ではないですね

──『アフターダーク』で作曲をされていますが…。

山田:『アフターダーク』は作ったと言うよりは、最後のサビ前のちょっと雰囲気が変わるところのフレーズが何もない段階の時に潔とセッションしていたフレーズをギターに渡して、自分は他のメジャーなコード進行で作っていった曲なんです。1曲まるまる持ってくるよりは、メインフレーズになるようなものがあるほうが進みやすいし、メロディーとかフレーズめいたものをバンドに出せばいくらでも広がるんですよね。それは成長してきた部分ですけどね。

喜多:あまり作り込みすぎるとうまくいかない時があるよね(笑)。

山田:そうそう。作りすぎたものは相当な意志がない限り、それか自分で歌いきるぐらいの意志がないと伝えきれない。

──自分で歌ってしまおうとは思います?

山田:あまり自分の声も好きじゃないので。自分が歌ってる姿は想像できない。

喜多:渋いんですけどね(笑)。

山田:痛々しいんだよね(笑)。

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