WOOHOOだからこそできるもの
──沖縄ムードの漂う『行こーよ』(M-4)は、もともと「沖縄っぽいサウンド」をイメージして作ったんですか?
Akio:それが、自分が何を考えているとかわからないんです(苦笑)。なぜそうなったんだろう。ロックバンドだけど、ボーカルが女の子だからこういう曲があっても良いのではないかと思うし、こういう曲があるからおもしろいと言われたい。だから、僕らにとっては決して別筋の曲ではなくて、もしかしたら本筋の曲かもしれない。『WALK』(M-7)とかもそうだけど。ライブをやっていて、お客さんが楽しんでいるのを直で感じることができる曲なんです。
Lan:『行こーよ』とか『WALK』があるから、『I don't know, I don't care.』(M-3)とか『Thank U Yeah!』(M-2)が生かしあえてるのかなって思ってます。
Akio:パンクロックだけを追求するとかっていうものではないし、いろんなジャンルをどんどん取り入れていくというわけでもなくて、その時に自分たちが必要なものを無理なくやっていくのがいいのかな。そう思うと、『WALK』とか『行こーよ』みたいなものが増えていくかもしれないな。バンとやってバンと終わる曲もあって。普段聴いているものとは違うところもあるしね。
──Lanさんは普段何を聴いてます?
Lan:ノー・ダウトとかはよく聴きますね。レディオヘッドはトム・ヨークが好き。日本人とかだとライムスターが好きです。言葉の力が強い人に惹かれるんです。Mummy-Dさんとか、言葉で遊んでいる感じが最高にロックを感じるし、言葉をみんなに投げかけているところが大好きなんです。
Akio:僕もライムスターは言葉に惹かれますね。大事なところを英語にするのは絶対に嫌だし、日本語の言葉で面白いほうが好きかな。“Thank U”や“WALK”は英語だと思ってないし、どうしてもっていう時は英語にするけど、日本語の面白さってありますからね。日本語の詞が面白くないとロックじゃないと思うんです。ラップとかヒップホップに興味があるのは日本語の情報量がすごく多いからなんだよね。そういう日本語の歌詞に興味を持ってしまう。ヒップホップには歌詞の制限、文字数の制限はないというか、いくらでも言葉を詰め込めるから圧倒的に惹かれる。それはWOOHOOでもやっていきたいな。
──言葉を伝えるためにヒップホップ調の『WALK』を入れたかったんですね。
Akio:『WALK』は一番最後にできた曲で、もともと曲数に入っていなかったけど、これからいろんな作品を作っていくにあたって入れていく必要があるなと思ったんです。自分たちはド・バラードは作れないけれど、バラードに位置づけるもの。ライブでやってみて、こういう曲も必要なんだと思ったんです。ロックのエンターテインメントが大好きだけど、その中でこういう曲も普通にやっていきたいんだよね。
──ライブはお客さんの反応を見れる時が一番嬉しいですか?
Lan:はい。
Akio:だから『WALK』は最初からはっきり反応が見れたかな。地方に行っても反応は良かったよね。
Lan:言葉に想像力があって、メロディーが良いから伝わりやすいのかもね。
Akio:僕は洋楽しか聴かない人間だけど、日本語ラップはすごく可能性を感じるな。日本語でやるようになってからロックとヒップホップの距離が縮まって来ているしね。
──『BUTCHAKE!』はジャンルレスにいろんなものが入ってますよね。それはごちゃまぜというわけではなくて、“Lan”というカテゴリが発信しているからまとまっているように聴こえるのかなって思いましたよ。
Akio:そうありたいんです。それでライブで見て納得させるものだと思うから、この子がこう踊るから楽しそうだなっていうのを一番やりたい。だからCDを作ることもライブを見せることだし、物販でもワクワクしたいし、ちょっとした言葉にもワクワクしたい。Lanがいるんだから、かっこつけても…。
Lan:しょうがない(笑)。
Akio:もともとは自分の音楽を追究する場所で始まってないですからね。アイドル養成所に入るって我々の世代からしたら何だそれって思うけど、今の子達ってそれも普通だったりするでしょ。アイドルもあって、ロックもあって、ヒップホップもあるわけだから、Lanにシンパシーを感じてくれる子もいるかもしれないよね。もちろん音楽が大好きだから音楽だけに集中すればいいのかもしれないけど、僕らでは役不足だし、物足りないのかもしれない。全部含めて音楽だと考えるのが一番合ってるから。
Lan:それを始めて行きたいんです。
Akio:そのためにこのアルバムがあるし、前にも1枚CDを出していたんだけど、全然違うし、今後はもっと発展させて濃くなっていけばいいのかな。
振り回されっぱなしでした
──レコーディングでブッチャケ秘話みたいなものってありました?
Akio:面白いネタじゃないんだけど普通ボーカリストって1曲やったらヘナヘナなるんだけど、Lanはどんどん歌いたがるんだよ(笑)。こっちはプロデューサーでもあるから長い時間集中しているし、何時間も歌詞カードを見てるから気が狂いそうになるのに、本人がやりたいっていうから止められないし。どうしたんだろう、この人はって思ってました(笑)。あれは、こき使われたな。
Lan:お疲れさま~。
──あはは。この軽さなのかもしれないですね。
Akio:そうそう。だから、最後のほうで苦労させてやろうって思ってたら苦労する曲は最初の方でやっておいたみたいで。
Lan:計画性があるんです(笑)。
Akio:あとは、リラックスしてレコーディングできる場所作りを考えたから、自宅のような感じでできる場所を探したね。
Lan:軽さもあるくせに、急にインモードに入ったりもするから、そうならないためにリラックスさせていたんです。
Akio:「もう一回録るの?」って聞いたら、ひくーい声で返事されて…。うまく歌えない自分にイラついていたらしいんだけど、男は女の子が怒ると怖いのよ。自分のコーラス録りを朝方にやったんだけど、1人でコーラスを録っていて思ったように歌えなくて不機嫌になって。その時にLanが足下にいて「なんか食べるー?」って気を遣ってくれるの。そのくせ、「もうちょっと下がって歌えばいいじゃん」とか、「気合いが入りすぎてる」とか「さっきのほうが良かったかな」とか言うの。今までのバンドは男同士だったからなのか緊迫していたんだよね。もちろん、今も緊迫しているんだけど雰囲気は違うから不思議だなーって思う。1回目のレコーディングがひどかったからね。レコーディングになったらモードを替えてきて、ライブと違う歌い方するの。初めてのデートで気合い入れすぎて男が引くことってあるじゃない。そういう感じ。キャラクターが変わっちゃって、よそ行きモードになっていたから「ちょっと戻してよ」って言っても、家を出た時からモードが違うから戻らないし。
Lan:それが違うということも、ようやくわかり始めたわけです。だから、ダラーってしてる感じをそのまま持って行くようにスタジオもリラックスできるような。
Akio:こっちはLanの気分を気にしながらやってるんだけど、振り回されっぱなしでした。無理にコントロールしようとしたらかえって自分が回ってしまう。
──いいバランスですね。
Lan:私はどっちかっていうと勢いでいくから、冷静なところをAkioっちが補ってくれているので、デコボコな感じでうまくやれてますよ。
頑張ってる女の子達と大きなムーヴメントを起こしたい
──WOOHOOは、どんな風になりたいとかあります?
Lan:どんな風になりたいかっていうよりは、同じように頑張っている女の子達と繋がって、大きなムーブメントを起こしたいですね。共に頑張ってる女の子達と面白いことをやりたい。ガールズイベントとかもいいですよね。「とにかくテンション上がるんだもん」みたいな、そういうワクワク感を女の子は探していたりするから、こういうワクワクがあるよーって投げかけていきたいんです。未知だけどできるんじゃないかな。
Akio:ライブハウスとかロックのコンサートには行かない女の子達が、Lanちゃんがいるからライブに行けてしまうという状況ができたらいいよね。例えば、Lanちゃんがやっているんだったら私もロックを聴いてみようかなっていう感覚。ロックの素晴らしさはわかるけど、ゆるさがあっても良いと思うんだよね。それは中途半端なものではなくて、説明もうまくできないんだけど。
──ライブを見た時にLanさんはすごくかわいいんだけど、いい意味で客席と壁を感じなかったんです。スカートをヒラヒラさせながら元気に踊る姿にも憧れたし、正直羨ましいって思いましたよ。
Akio:見てる側にそういう楽しさがあって良いと思うんだよね。せっかく女の子のボーカルでやるんだから、明るい未来を感じるんです。Lanだからゆるくやれてるところもあるし、いろんなジャンルを入れたいところもある。WOOHOOだったらどんなジャンルでも許される気がする。そういう意味でライブを中心に考えたいな。もっといろいろやってもいいんじゃないかなって思うんです。
──今後はどんな活動をしていきたいですか?
Lan:レコ発ライブも終え、まずはワンマンをやりたいですね。イベントもやってみたいし、そういうものを始めていきたいですね。あとは更に音楽で遊びたいです。
Akio:わかりやすく言えば、人気者になりたいですね。キャーキャー言われたいとかじゃなくて(笑)。やりたいことがいっぱいあるし、人気者になればやれることも増えていくと思うんだよね。10代の子からファンレターもらいたいとかじゃなくてよ(笑)。
──そういう気持ちもちょっとあります(笑)?
Lan:あはは(爆笑)。ちょっとね。
──ちょっとはありますよね。
Akio:ねー、2人とも話聞いてる? そこでガールズトークをするな(笑)。