Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】西村仁志(下北沢シェルター店長)×大塚智昭(新宿ロフト店長)(2008年1月号)- 日本のライヴハウスを代表するロフト&シェルターの店長が今年のライヴハウス・シーンの動向を直言&大胆予測!

日本のライヴハウスを代表するロフト&シェルターの店長が今年のライヴハウス・シーンの動向を直言&大胆予測!

2008.01.01

今年注目すべき新進気鋭のバンド

──あと、去年は“結成○周年ライヴ”という表記が多々見受けられた気がするんですけど。

大塚:そうですね。10月27日はthe 原爆オナニーズの25周年、11月3日はPULLING TEETHの10周年、11月7日はロマンポルシェ。の10周年。それと忘れちゃいけないのは10月1日・2日のルーフトップ創刊31周年!(ヨイショ!)

──ああ(笑)。その節は本当にお世話になりました。

大塚:あれだけ愛情と感情のこもったライヴもそうはないですよ。完全に椎名さんと山田さんの好みですからね(笑)。逆に残念だったのは、9月1日のCLASSIC CHIMES 解散ライヴ。

──あえなく活動休止や解散を選んだバンドも去年は多かったですね。

西村:解散直前に急遽決まったKEMURIのフリー・ライヴ(11月20日)は個人的に嬉しかったですね。タワーレコードとavexのスタッフと話を詰めたんですけど、メンバーの意向なのか「是非シェルターでやりたい」と言ってくれて。

大塚:KEMURIは去年3回ロフトに出てくれて、10月27日が最後だったんです。その時のステージで「ここには凄く思い入れがあって…」と(伊藤)ふみおさんが言ってくれたのは凄く感動しましたね。

──KEMURIはスカコア・シーンの牽引者であり、一番の立役者でしたからね。

西村:“P.M.A.”というバンドの哲学も含めて、相当なインパクトがありましたよね。

大塚:それこそ、これで本当にひとつの時代が終わった感じがしましたよ。

西村:解散を宣言してからツアーで各地を回るバンドには正直きな臭い部分もあるけど、KEMURIの場合は最後の最後まで世話になったファンやライヴハウスに恩返しをするようなライヴを繰り広げていましたよね。今まで解散宣言をしてツアーを回ったバンドの中で一番潔かったかもしれない。解散を表明してからのテンションをキープするのも大変だったと思うし、それを崩さずにやれていたところは大人だなと感じましたね。

──そうした大人のバンドが平均年齢を上げていく一方で、若手のバンドの台頭に関してはどうですか。

西村:やっと最近、20歳過ぎくらいの若くて粋のいいバンドが出てきた感はありますね。俺が今いいなと思うのは、去年我がCRUXからデビュー・ミニ・アルバムを出したa flood of circleを筆頭に、not great men、Far France。その辺りのバンドでひとつのシーンを築けそうな感じですね。この3組は出るべくして出てきたバンドだと思います。パンク系も何処かで育ってきているんでしょうけど、まだシェルターまで届いていないし、俺がそこまでリサーチできていないんですよ。

──若手とは言えないかもしれないけど、シェルター・ツアーズのクラブチッタで観たgroup_inouは衝撃でしたね。ロックの肉体性を孕んだエレクトロ・ヒップホップという感じで。

西村:ああ、確かに。まぁ、若手と言うか何と言うか…(笑)。

大塚:僕は、12月号のルーフトップにもインタビューが掲載されていたSUPER BEAVERが今凄くいいと思いますね。ロフトでずっとやってきてくれたONE OK ROCKとよく一緒にライヴをやっていて、どちらもまだ未成年なんですよ。可能性が凄くあると思う。あと、astrocoastは恐らく今年ブレイクするんじゃないかなと。メンバーが未成年の頃にMighty Duckというバンドをやっていたんですけど。個人的には、去年深夜のバー・ステージでフリー・ライヴを断行していたANOYOをもっとプッシュしていきたいですね。

店の冠におんぶに抱っこじゃイカン!

──シェルターはオーディション・ライヴを今も行なっているし、デモ・テープは各店とも日々絶え間なく送られてくると思いますが、最近のデモ音源はどんな傾向にありますか。

西村:相変わらずシェルターの敷居は高いと思われているのか、デモ・テープの数が減ってきているのは残念ですね。オーディションに出るのは誰だってできるし、そこまで敷居を高くしているつもりもないんですけどね。

大塚:ロフトはキャリアのあるバンドマンを重宝しているせいか、送られてくるデモが未だにカセット・テープだったり、若いのにBOφWY直系の音楽をやっていたりするんですよ(笑)。一昨年まではよくあるギター・バンド系のデモが多かったんですけど、去年は古き良きロフトの看板バンドっぽいデモが多かった気がしますね。どのライヴハウスもそうでしょうけど、ロフトでもやっぱり頑張っているバンドがしっかりと残っていて、そのぶんブッキングのエイジが上がっているのは確かなんですよ。デモ・テープにもそれが反映されている気がしますね。

──店の看板はさておき、全くの個人的な嗜好で注目しているバンドは?

西村:やっぱりgroup_inouですかね。ヒップホップなんだけど、ちょっと土臭いところがいい。

大塚:group_inouは、初期の電気GROOVEみたいな匂いがありますよね。ナゴムで“人生”が終わった直後と言うか。

西村:それはあるかもね。ライヴはいつも衝撃を受けるし、トラックを作っているimaiさんのセンスがとにかく素晴らしいですよ。ヒップホップはウチのスタッフがパブタイムに流しているのを聴く程度だから特に詳しいわけでもないんですけど、inouはそのセンスの良さと拙さが重なっているから面白いですね。明らかに渋谷にはないヒップホップですよ。下北でもちょっと外れのほうにある感じと言うか。実際に何処に住んでいるのかは知らないけど(笑)。あとは、常に進化し続けている54-71がこの先どうなるかに期待ですね。

大塚:54-71は、去年のシェルター・ツアーズにかなり一緒に回っていましたよね。またギターが入った54-71には僕も期待していますよ。

──では最後に、今年はどんな一年になりそうですか。

西村:まぁ、シェルターは激動の一年になるでしょうね、いろんな意味で(笑)。ブッキングは常に3~4ヶ月先、早ければ半年先まで埋まっているけど、本当は3ヶ月先まである程度決まっているのがちょうどいいよね?

大塚:そうなんですよね、本当は。

西村:昔、日本のライヴハウスのブッキング状況を早めたのはロフトとシェルターだと言われたことがあるんですけど、そこまでやっているつもりもないんですよね。常にフレキシブルに対応しているつもりですから。ただ、ライヴハウスがたくさん出来つつある昨今の中で俺もスタッフもシェルターという冠におんぶに抱っこの状況なのは否めないから、それじゃイカンなと今は思っています。

大塚:それはロフトも同じですけど、胡座はかけないですね。歴史のあるライヴハウスだから、そこに助けられている部分はありますけど、胡座をかいたらすぐに潰れますよ。今年はブッキングを充実させながら、誰もが気軽に呑みに来られる店にしたいです。

西村:ここ数年、ビジネスではなく全くの個人でイヴェントを組んでいた人が減ったし、そういうイヴェントを店がバックアップしていくことが増えたらもっと活性化して面白くなるんじゃないですかね。客層もバンドも平均年齢が上がっているし、何か面白いことを仕掛けていかないと。

大塚:ライヴハウスにも少子化の波が来ているんですよ。西村さんも早く擦れ違いの生活をやめて子供を作らないと!

西村:うるさいよ!(笑) …家に帰ってもヨメの帰りは俺より遅いし、これから呑みに行きません?(笑)

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