本人に直接聞いても「好きなようにやってくれ」って
──アツシさんが他人の曲を歌うイメージってあんまりないんですけど、歌う上で一番難しかったのはどの曲ですか。
アツシ:一番難しかったのはTHe ROCKERSかな。
カタル:そう? あっちゃんは難しかったって言ってるんだけど、そんなに歌録りの作業としては大変じゃなかったんだけどね。
──やっぱりニューロティカの新曲を録るっていうのとは感覚が違いますか。
アツシ:昔からずっと聴いてる曲だからね。ずーっと歌詞カード見ないで耳から聴いて覚えてる曲が多いから、逆に全然間違えて覚えてたりするんだよね。THe ROCKERSの「涙のモーターウェイ」なんかは覚えてたのと全然違ったからね(笑)。それが大変だった。BOOWYも結構違ったな。
──THE ROOSTERSの「Let's Rock」は英語バージョンで歌ってたんで、アツシさんが英語を! って感じでビックリしたんですけど、これは当時から英語で覚えてたっていうことなんですか。
アツシ:そう、英語で覚えてたんだよね。当時は衝撃的だったもん、日本人が英語で歌ってるなんて。「なんで英語しゃべれるんだー!?」って。
──カタルさんから見て、一番歌が難航してた曲って何でしたか。
カタル:(笑)うーんとねー、やっぱりG.D.FLICKERSかなぁ。もしくは頭脳警察。
アツシ:ああー(笑)。
──G.D.FLICKERSはアレンジも苦労したらしいですね。
カタル:苦労したというか……、まあ楽しかったんだけどね。でもすごい力が入ってたし、プレッシャーがかかってたからね……ご本人たちから(笑)。一番しょっちゅう会う人たちだからね。だから、一番聴いてもらいたいなっていう気持ちと、一番下手なこと出来ないなっていう気持ちがあったかな(笑)。
アツシ:G.D.FLICKERSはトリビュートでウチのカバーもやってくれてるし、一番の身内だからね。
カタル:そういう意味でのプレッシャーがね。期待してくれてるんだろうなーっていうのをひしひしと感じてましたよ。
──選曲が終わってから、アレンジをする時間っていうのはどれくらいあったんですか。
カタル:結局忙しくって時間があんまりなくなっちゃったんだよね。だから、わりとバタバタしたままレコーディングに入っちゃったな。作業としては、俺が家で大体考えて作ったものを2、3曲づつスタジオに持っていって、3人で合わせていくっていう感じで。あとは現場で、ですね。
──アレンジはアツシさんを入れずにやってたっていう感じなんですね。アツシさん、歌の練習は……。
アツシ:元曲を聴いてたくらいだよ。あとは本人に直接聞きにいってね(笑)。だって、みんなCDで歌ってる内容と歌詞カードが違うんだもん。「どれが本当なの?」っていう曲がいっぱいあったよ。でも、本人に直接聞いても「好きなようにやってくれ」って大体言われたけどね(笑)。
──セルフカバーの『悲しきラガー』も自分の曲なのに歌詞を確認してたみたいですけど。
アツシ:そうそう! 日本語が間違ってたんだよ。
カタル:何年やってるんだっていう話だけどね(笑)。
アツシ:ずーっと「丸みこまれた」って歌ってたんだけど、日本語的には「丸めこまれた」が正しいんだよね。20年やっててやっと正解がわかったよ。
──どうでもいいですけど、このラガーのイントロの猪木のモノマネとか、色々とよくわからないセリフが入ってますけど……。
アツシ:ああ、だってあれはみんなしゃべってるじゃん。本物が言ってることを真似してるだけだから……。全然似てないけど(笑)。
カタル:猪木はまだしも、JOEさんとかHARAさんの物真似しても普通意味わかんないよ。RYOJIは「意味はわかったけど似てない」って言ってたけどね。
アツシ:一番怖いのは柴山さんに会ったときだよね、何て言われるかなぁ~。
──でもやっぱり一番似てないのは猪木のモノマネじゃないかと……。
アツシ:おっかしいな~。あれは似てると思ってやってるんだけどなぁ。
カタル:(爆笑)。好きだからねぇ。未だに何か絵を描けって言ったら猪木の絵を描くもんね、あっちゃんは。
ロティカのアルバムになるように作ったんですよ
──アレンジでいうと、結構ガッツリ変わってる曲と、ほとんど変わっていない曲があると思いますけど、その辺はどういう基準だったんですか。
カタル:最初は正直な話、時間がないのもわかってたから、ライブですぐに出来るようにあんまり極端なアレンジはしないようにしようとは思ってたんだよね。だから最初の方に手をつけた曲は比較的シンプルなアレンジで、あんまり変わってないと思う。でも、やってる内に段々納得いかなくなってきて、色々やりたくなっちゃったんだよね。
──結果的にライブでは演奏できないようなアレンジまで……。
カタル:色々やってたら、もうライブで演奏できなくても別にいいかなって思うようになったんで(笑)。
──やっぱりロティカのオリジナル・アルバムだと、全曲ライブでやれなきゃってことですけど、カバー・アルバムだともっと自由にやれたということですか。
カタル:カバーだからね。ライブ対応を考えるというよりは、アルバムとして聴いたときに面白くしたいっていう気持ちの方が強くなったんで、結果的にそうなったという感じかな。普段出来ないようなことも色々試してみれたしね。
──ところで、ロフトとニューロティカに縁あるということで、「The Loodsをやろう」みたいな話は出なかったんですか。
アツシ:出た出た!
カタル:出てたんだけど止めてくれって(笑)。俺がいないところでやってくれるんなら嬉しいよ、「あっちゃん、歌ってくれたんだー!」って。だけど、それを俺がやるっていうのはちょっと違うでしょ。それに、アルバムとして曲数的にもギリギリだったんで、別に入れなくてもいいんじゃないかなと。
アツシ:他にもまだまだやりたい先輩バンドもいたからね。まあ、それはカバー・アルバム第2弾でってことで(笑)。
カタル:確かにまだあるよね。同じバンドの他の曲でやってもいいしね。
アツシ:やりたいねー!
──ARBなんかはまだ何曲もあるんじゃないですか。
カタル:ARBだけでアルバム1枚出来るんじゃないの? J・OHNO(THE RYDERS)さんたちがDUMBっていうユニットでRAMONESのカバー・アルバム出したみたいに。
アツシ:そうだね(笑)。でも、そんなことするバンドいないよー。画期的だよね。
──まあこのアルバムも、聴いてみると結果的にロティカのアルバムになってますけどね。
カタル:ロティカのアルバムになるように作ったんですよ、そこはね。ラインナップ的にもニューロティカらしい内容になったんじゃないかな。
アツシ:ロフト縁の先輩であり、仲よくしてもらってる人たちばっかりですからね。そこも選んだ基準にあったよね。でも、今の子たちはこれを聴いたらどう思うのかね? みんな、ルーツを追いかけて聴いたりしてるのかな。中古屋でも手に入りづらい音源もあるからね。
──そうですね、CDになってない物もありますからね。そういう意味では今回のアルバムは日本のロックの入門編としてもいいんじゃないですかね。
アツシ:しかもここに入ってる人たちはみんな今でもやってる現役選手だからね。それがすごいんだよ。