ファーストアルバム『POP SAVE US』では、ロックンロール、ロカビリー、パワーポップと、様々なジャンルを自由自在に往き来する唯一無比なサウンドで、シーンに強烈なインパクトを与えたHARISS。そんな彼らがはやくも、新作となるミニアルバム『NEW WORLD』を完成させた。タイトルの通り、前作の「POP」をさらに突き進めて、新たな世界への歩みを始めたかのようなこのアルバム。HARISSの快進撃は止まらない!(interview : 北村ヂン)
この二枚で『POP SAVE US』が完成した感じですよ
──ファーストの『POP SAVE US』から約半年でもうニューアルバムということで、かなり早いペースですよね。AKIRAさんはHARISS結成前からかなり曲を作りためてたと言っていましたが、今回もその曲の中からなんですか。
AKIRA:新しく作った曲と作りためてたものが半分づつくらいっていう感じですね。曲は出来てたんですけど、バンドでアレンジをしてなかったんで、すごい短期間ですごい集中してやりました。
TAKAHASHI:ホントに、バンド史上一番絶体絶命の状態でのレコーディングでしたからね(笑)。
──前作のツアーが終わってすぐレコーディング、くらいのスケジュールだったんじゃないですか。
TAKAHASHI:そうですね。AKIRAくんのデモテープをみんなに配って、やりたい曲を挙げていって、それからトライしていったんですけど、その期間が一週間くらいしかなかったという。
AKIRA:それが六月で、実際のレコーディングが七月頭ですからね。
TAKAHASHI:気付いてなかったんだけど、最後まで四人で合わせてない曲まで録りましたからね。
──でも、すごくHARISSらしい曲とともに、ファーストでは出ていなかった側面まで出せたアルバムになったんじゃないですか。
AKIRA:そうですね。ファーストはどっちかというと、それまでライブでやってたイキオイ一発みたいな感じの内容だったので、今回のミニアルバムではそれにプラスして別の面も出したいと思ってましたね。だから『POP SAVE US』と『NEW WORLD』が合わさるとひとつのイメージみたいなものが出来上がるんじゃないかと。「ふたつで一枚」みたいな気持ちで作りましたね。
SEIJI:前作はすごいハッピーなものを出していったんだけど、今回のでもうちょっと違う部分を、スタイル的にはあまり変えずに出せたんじゃないかと思うし、すごい続編的なアルバムと言えるんじゃないですかね。それ故に期間を短く出した意味があると思います。
TAKAHASHI:ホント、この二枚で『POP SAVE US』が完成した感じですよ。
AKIRA:『POP SAVE US』があの時点での「現在」を出したアルバムだとすれば、『NEW WORLD』は「将来」を出したアルバムだと思うんですよ。今までのポップな要素は残しつつ、そこだけじゃない、もっとこういうことも出来るんだよ、というのが見せられたんじゃないかな。
──次の方向性を示したアルバムっていうことですね。
TAKAHASHI:録ってるときは本当にがむしゃらに録ってたからそこまで考えてなかったんだけど、完成してから「よかったー、これで次にいける」って思いましたね。改めてHARISSの四人はすごいなと、あの状況でよく完成させたよ。
SEIJI:まだバンドが前作からそこまでサウンド的に変わっていかない間に録れたから、こういう続編的なアルバムが出来たっていうのもあるかもしれないですね。そういうのもよかったかもしれない。これが一年後だったら、随分変わってたんじゃないかな。
追い込まれたところで流行語が生まれた、みたいな
──曲を作っているAKIRAさん的には「今回はこういう曲を投げかけてみよう」みたいなプランってあったんですか。
AKIRA:実は、自分なりの予定ではもうアルバム四枚目くらいまで出来てるんですよね。それがこれからバンドでどういう風に化学反応するのかはわからないんですけど。面白く変化する曲もあるだろうし、上手くはまらない曲もあるかもしれないし。でも一応、自分としてはそういうラインをイメージして曲を作ってる部分はありますね。
──そのラインっていうのは他のメンバーには伝えてはいないんですか。
AKIRA:全部は伝えてないですね(笑)。
YUJI:それは結構楽しみでもあるんですけど、ちょっと怖かったりもしますね。
SEIJI:その話自体、初めて聞きましたもん。今回のアルバムに関しても、終わったあとに「試されてたな」って思いましたからね。
TAKAHASHI:今回録っていて思ったのは、メインのソングライターはもちろんAKIRAくんなんだけど、AKIRAくんが作ってきた曲を良くするにはこの三人以外ありえないなっていうところで。じゃないとこの二枚目は出来なかったと思うし、みんなすっごいギリギリの状態でスタジオに入ってたけど、どこか無意識に全員が作曲者だったんじゃないかなって思いますね。
SEIJI:正直、どのアルバムを作っても心残りって必ずあるんですよ。それまであうんの呼吸で出来てた曲でも、録ってみたら結局心残りがあったりとか。最終的には「試される」という状況でリリースしてると思うんですよね。ミュージシャンってみんなそうだと思うんですけど、レコーディングするときって大体、自分の実力以上のことを想定してやって、今回は上手くいったとか、上手くいかなかったからくやしいとか、自分も芸歴長いからそういうことを繰り返してきたんですけど。今回は必然的に土壇場に追い込まれたということで……。芸人みたいなもんですよね、追い込まれたところで流行語が生まれた、みたいな感じで。
TAKAHASHI:「う~ん……もみじまんじゅう!」みたいなもんか(笑)。
SEIJI:今回は、自分の現状でのギタリストとしての底力っていうのはこんな感じなのかなっていうのが出せたと思いますね。インチキなものにはなってないと思いますよ、ちゃんと真実はそこにあります。
──追い込まれたからこそ、逆に全ての力を出し切れたんですね。
TAKAHASHI:お互いのプレッシャーのかけ方もすごかったもんね。今回、結構バラバラに録ったんですけど、自分のドラムを取り終わった後、YUJIくんにはすごいプレッシャーを与えたと思うんですよね。「ドラム録りましたけど!」って。それで、YUJIくんはYUJIくんでバッチリ録って「ウッドベース録りましたけど!」ってSEIJIくんに投げかける。そういう連鎖反応があったというか、結果的にはそれがよかったよね。「俺はやることやったよ、アンタはどうするの?」って感じだったから。
YUJI:まあ、いい刺激でしたね。スタジオに入って初めてドラム聴いて「あれ? こんなドラム知らないぞ」って思うんですけど、もう開き直ってその状況を楽しみながら出来ましたね。
TAKAHASHI:ドラム録り終えたときは本当にガッツポーズしましたからね。「終わったー!」って。大至急ドラム片付けましたね、「絶対に録り直ししたくない!」って。
YUJI:「ベースとドラムを一緒に録ろう」って言ってた曲も何曲かあったんだけど、着いたらもうドラムがなかったんですよ(笑)。
TAKAHASHI:待ちきれなくなっちゃって(笑)。もうすっごいテンションでやってたから、演奏自体はすごいよかったんですよ。だからレコーディングがスムーズに進んじゃったもんで、もうYUJIくんを待てなかったですね。
──全部完成するまで誰にも全貌がわからない……っていう感じだったんでしょうか。
TAKAHASHI:完成形が見えている人はいなかったかもしれない。曲を作ったAKIRAくんですら、俺たちがどういう手を出してくるのかっていうのはわからなかったと思うし、でもそれをみんなが納得する形で出せたっていうのはすごいなあって思いますね。「そこでそのソロはないでしょ」みたいなことはなかったから。
SEIJI:まあ、相当カリカリしてたんでお菓子いっぱい食いましたけどね。
TAKAHASHI:あんなにずーっとスタジオにお菓子があるレコーディングってないもんね(笑)。
SEIJI:若い奴に言いたいですね、いい音録るにはどうしたらいいかって……「菓子を食え!」(笑)。
──まあ、そんな感じで、楽曲が徐々に形になっていくっていうのは楽しかったんじゃないですか。
TAKAHASHI:だからレコーディングが楽しくなかったわけでは全然なくって、すごく楽しかったんですけどね。こういうやり方は初めてだったんで。普通はある程度完成形が見えたところに向かってがんばろうっていうレコーディングなんですけど、今回はゴールが見えない状態で、もう録って完成したところがゴールだっていうやり方だったから。これで四人とも強くなったことは確かですね。まあレコーディングってたくましくなる場なのかなって思いますけどね。でも、これが十代のバンドだったら絶対にケンカしてたと思うけど(笑)。
──この年でさらに成長できたっていうのはすごいですよね。
TAKAHASHI:次を作るのが楽しみになりましたね。……来月って言われたら困りますけど(笑)。でも今回のアルバムを聴いた人も、こういう状態で作られたアルバムだなんて絶対にわからないと思いますよ。もう四人で迷い無くガーンッ! って音を出してるような雰囲気がすごい出ているから。……だから本当はこんなこと言わなくてもよかったんじゃないかと思ってるんだけど(笑)。まあそのギャップも楽しんでいただければ。