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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】CAMPAKEX(2007年8月号)- 2007年6月9日、CAMPAKEX解散── ジャパニーズポルノ・シーンが生んだモンスター・ユニット、その3年にわたる伝説と軌跡

2007年6月9日、CAMPAKEX解散──
ジャパニーズポルノ・シーンが生んだモンスター・ユニット、その3年にわたる伝説と軌跡

2007.08.01

松嶋クロス、インジャン古河という二大カリスマAV監督によるロック・ユニット、CAMPAKEXが"すべてはけじめをつけてから"と言わんばかりにさる6月9日、解散を発表した。BOφWYやCOMPLEXへの限りない愛情をベースに、80'sビート・ロックとアダルト・カウンター・カルチャーを見事に融合させた彼らの壮大な試みはここでひとつの終着を迎えるが、フォークのバンドじゃねぇんだからジメッとするわけにもいかない。灰色の風から生まれ、ボルト&ナットのしくみで組み込まれる街にDreamin'な歌が再びこだますることを今はただ祈るばかりだ──。(interview:椎名宗之)

今こそ語られる“解散の真実”

──6月9日に解散を表明するに至った理由というのは?

松嶋:シャレですよ(笑)。元々僕らはウケ狙いでやっていたわけで、本気で音楽をやっていこうと思っていたらCAMPAKEXなんて名前はまず付けない(笑)。僕らの活動の主軸はあくまでAV監督で、自分達の作品に自分達の作った歌を入れたいと思って音源を出したんです。AVは著作権フリーの曲しか使えないから、だったら自分達で作ろうよっていう感じで。で、モノマネ芸人的な要素をわざと入れて。パクリではなくて、故意に。それはとにかくウケ狙いというのが全面にあった。

──バンドとして本格的にやっていこうとしたつもりは毛頭なかった、と(笑)。

松嶋:2人編成だし、全部打ち込みだからCOMPLEXっぽくやろうよっていう、ただそれだけなんですよ。セカンド・シングルの『HERPES GIRL』はちょっと違うんですけど、ファースト・シングルの『SHOOTING BABY』の収録曲は全部僕らが作ったビデオの主題歌で、歌詞も作品に沿ったものになってるし。作品を観てないとイマイチ笑えないだろうし。そんなところからスタートしたんですけど、気が付いたら徐々にCAMPAKEXの音楽が認知され始めたんですよ。そうなると、ちょっと事情が違ってくるんですよね。“いや、笑って頂きたいんですけど…”っていうところが多々あって。しかも昨今、BOφWY解散20周年でBOφWYのコピー・バンド熱みたいなのも上がってきていて、僕らがコピー・バンド界のカリスマみたいになってきちゃって、そうじゃないんだけど…みたいな(笑)。だから、ここで1回リセットしたほうがいいと思った。ライヴをやっても、僕らがAV監督だってことを知らない人達が増え始めたりもして。

──バンド自体のファンが増えたことで、本末転倒になってしまったわけですね。

松嶋:ええ。それじゃダメだな、と。昔は僕らの作品のファンが面白がってライヴを観に来てくれて、会場で自分達のエロビデオを売りまくっていたのに。

古河:最近は、ライヴで自分達がAV監督だと名乗らないほうがいいみたいな雰囲気もあって。言ったら客が引いちゃったりして(笑)。

松嶋:BOφWYはもちろん大好きなので、その手のイヴェントにもちょいちょい出ていたんですよ。コピーとオリジナルを混ぜつつ。そこで僕らを知った30代半ばから40代くらいのBOφWYファンの人達が僕らのライヴに来てくれるようになったんですよね。だからAV監督としてよりも、BOφWYのコピー・バンドのパイオニアみたいな部分での需要が多くなってしまった。そうなったらもうCAMPAKEXじゃないと思ったんです。

──お二人はもちろん、COMPLEXやBOφWYに対するリスペクトの念はあるんですよね。

松嶋:それでCRφSSという会社も作りましたからね。古河さんとは元々違う制作会社にいて、たまに話をする程度だったんですけど、4年前に氷室(京介)さんが東京ドームでBOφWYの曲をやるって聞いた時に彼が「業界中からBOφWY好きを集めろ!」って言って(笑)。

古河:結局、4人くらいしかいなかったんですけど(笑)。

松嶋:その4人くらいで観に行ったら“やっぱりBOφWYだよね!”って意気投合して、BOφWYのコピー・バンドをやることになって。ホントにジョークですよね、いい大人が昔を思い出して始まったわけだから。古河さんは元々ドラムで、僕がベースだったんですけど、それじゃBOφWYのコピー・バンドじゃないってことで2人でフロントに転身して、全部打ち込みで始めたんですよ。でも、そうなるとサウンド的にはBOφWYよりもCOMPLEXに近いよねって話になって。元々僕らはエロ本とかの誌面に自分達の記事を載せるのが頭にあったんで、2人だとヴィジュアル的にもBOφWYっぽくならないだろうと思ったんです。

古河:だから、思い切ってユニットにしちゃおうと。

松嶋:古河さんがいたV&Rプランニングっていう制作会社はサブカル界のカリスマ的存在で、そこのインジャン古河と松嶋クロスがタッグを組むというのは、吉川(晃司)さんと布袋(寅泰)さんが一緒にCOMPLEXをやったようなAV業界におけるサプライズだってことで。最初は仕事そっちのけで曲を作ったりしていて、それじゃ仕事にならないから2人で会社を作りましょうと。それで3年前に今の会社を作ったんですよ。もう完全に大バカ者ですよ(笑)。

──“空手バカ一代”ならぬ“BOφWYバカ一代”ですよね(笑)。

古河:ホントにそうですね。BOφWYがいなかったら、CAMPAKEXも今の会社もないんですから。

──氷室さんのドームでのライヴを観るまでは、BOφWYを日常的に聴く感じでもなかったんですか?

古河:車の中にCDは入ってるけど、いつも聴いてるような感じでもなかったし、昔からコピー・バンドをやっていたわけでもないんですよ。

──でも、古河さんや松嶋さんの世代には、BOφWYやCOMPLEXはDNAレヴェルで擦り込まれたポップ・アイコンですよね。

松嶋:そうなんですよ。で、僕らは本業が映像作家だからやっぱりオタク気質があって、音楽も凝り出したらいくらでも似せることができる。例えばデモ段階では弾き語りでBOφWYのカケラもない曲でも、如何にもそれっぽくしてみたり、タイトルをパクってたら元になってる曲と全然違ってもブレイクの部分だけ無理矢理似せたり、音色を合わせたりとか。

古河:「ここはあの曲の弾き方でしょ」とかね。

──その徹底したオタク気質が予想以上の反響を呼んでしまったんでしょうね。

松嶋:もうシャレが全然通じなかったですから。自分的には笑うところなのに、ライヴで40歳くらいのお姉さんから普通に「カッコ良かったです!」とか言われるんですよ(笑)。そういうのがちょっとやりづらくなってきたんですよね。

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