ハイペースでリリースをしているMICRON' STUFFから、メジャー2nd.シングル『Precious』が届けられた。前作の『STROBO』で聴かせてくれたハイテンションの楽曲とは変わり、今作はスロウでじんわりと胸に響く作品になっている。「他人が見たらどうでもよいものやどうでもよいことでも、本人にはとても大切でかけがえのないものを歌いたかった」とBINGOさんが言うように、今作ではそれぞれの人が持っている大切な思い出が叙情的に描かれている作品。
MICRON' STUFFと言えばライブのステージがとても魅力的で、あちこちに動き回るボーカルの2人の高音と低音が混じり合い、それを支えるギター、ベース、ドラムのサウンドが力強く鳴り響く。それは、花火大会のファイナルを飾るスターマインのように華やかでスピード感に溢れている。この夏は、多くの野外フェスにも出演し、各地で MICRON' STUFFの名を轟かせていくことだろう。(interview:やまだともこ)
誰もが持っているそれぞれの宝物
──1st.の『STROBO』から考えると、今回の『Precious』はかなりしっとりした感じになってますね。
BINGO(mc&vocal):もともと『Precious』はストックの中のひとつだったんですが、「こういう感じもいいんじゃないか」っていう話になって、これを機に煮詰めていった作品ですね。
KENGO(guitar&backing vocal):3曲ぐらいデモとして出した曲がどれもしっとりした曲調になっていて、その中で一番気になるという曲を選んだんです。
──1st.と2nd.ではだいぶイメージが変わりましたよね。
KENGO:僕ら的にはイメージを変えたっていうのはなくて…。
BINGO:まぁ、そう取られるで(笑)。僕らの場合、ほっといとらみんな暗い曲を作るんですよ。切ないコードが好きやし、今までにもそういう曲もあったんです。でも、MICRON' STUFFでやるのは違うかなと思い続けていて、明るい曲を努力して作っていたところがあったんですけど、こういう感じの曲をやってもいいかなって思ったんです。
──詞を書くのに苦労したそうですが、どんなところに苦労されたんですか?
BINGO:この曲は、僕からしたら何て事ないものでも、他の人からしたらすごく大切なものを客観的に書きたかったんです。だから1番に関しては客観的に書いたんですけど、それを主観的にリアルにわかりやすく書き直してすごく時間がかかったんです。自分が最初にイメージしたことと、周りがイメージしたことに食い違いがあって…。書き直すのは大変でしたけど、終わってみてこっちのほうが伝わるんじゃないかなって思えたので結果的には良かったですけどね。でも、もうちょっと具体性を出したかったので、俺にしかわからんかもしれないけどすごく大切なものを表したくて2番を書いたんです。
──1番は幼い時の思い出なのかなって思いながら詞を読みましたけど。
BINGO:そうですね。たわいもない生活や習慣でも、今になって考えたら居心地が良かったんやろうなっていうもの。それも宝物の一つやろって。
──2番の詞は温かくて良いですね。
BINGO:何気にね。そういう女々しいところもあって(笑)。
──この詞にあるように、今でも昔の思い出は取っておいてます?
BINGO:バッチリありますね(笑)。10年ぐらい前に付き合ってた子と、どんぐりとか落ち葉があるところを歩いてたら、「これ持っといて」って何気なく言われたものが捨てられなかったりします。だから10年前のドングリと葉っぱがまだある(笑)。
──でも過去の思い出を捨てないBINGOさんからこういう曲が生まれて、大事なことだと思いますよ。
BINGO:それ!!! 過去のしか書くネタがないねんけどな(笑)。でも、特別なものとか宝物って実物はなくても、記憶として大事にしているものって誰にもあるんじゃないかと思いますよ。
──今までは曲調的に夏っぽい感じが多かったですが、今回は夏から秋にかけた感じのサウンドでしたね。
BINGO:哀愁の「哀」という感じになりました。ちょっとした切なさもありという感じです。
──ゲストボーカルにスガシカオさんも迎え、より雰囲気のある楽曲になりましたね。
BINGO:そうなんですよ。スガさんに歌って頂いているパートは、最初は女性コーラスのイメージだったんです。「コーラスどうしようか」っていう話になった時に、スガさんのような高い感じの声が欲いなぁって、無理だとはわかりながらお願いしてみたらOKを頂いて…。僕らが一番ビックリですよ。しかも、コーラスという役割をスガさんにお願いしても良いのかなーって(笑)。
──コーラスにスガさんは豪華すぎますね。
BINGO:そうそう。ありえない(笑)。
──実際聴いてみると、スガさんのファンクさと、ヒップホップって合うんだなって思いました。
BINGO:僕らの曲でもファンキーなものもあって、やってることは違うけど好みは近いのかなって、うまく合わさったと思いますね。でも、スガさんの声が入ることによって、スガさんの曲になってしまったらどうしようって思いましたけど(笑)。
KENGO:コーラスで、こんなに持ってかれてるでーってね(笑)。
──(笑)全体的にはアコギが響いて聴かせる曲でしたが、アコギのサウンドはKENGOさんが作られたんですか?
KENGO:そうですね。元々アコースティックのイメージで作ったので、構成とか僕が弾いてるものは最初からほとんど変わってないです。
──この曲では日野賢二さんをプロデューサーに迎えられてますが、KENGOさんがすごくファンだそうで…。
KENGO:日野さんが日本にいらしたのは4年ぐらい前で、知り合いのバックバンドをやられていたんです。その頃からすごく尊敬していて、プロデューサーに日野さんが決まったときは「いいんですか?」って思いましたよ。正直めちゃめちゃ緊張していたので、されるがままだったらどうしようって思いましたけど、スタジオに入ったら、みんなでいいものを作ろうっていう感覚は一緒なんですよね。
BINGO:完全にノリがアメリカ人やったな(笑)。ずっとテンション高いしな。あのパワーはすごいなと思いましたよ。逆に気使ってくれて、僕らのテンションを上げようとしてくれてるみたいな。
──楽曲としては、日野さんと一緒に作り上げた感じになるんですか?
BINGO:そうでもないんですよ。ストリングスのアレンジとかは一緒に作りましたけど、大まかには僕らが作っていった。そういうところも日野賢二サウンドにしようっていうわけではなかったです。
──日野さんのアドバイスによって変わったところは?
BINGO:ラップのハモりのラインとか、「もっといいハモリがあるんじゃない?」ってその場で何パターンも録りましたね。ハモリの作り方や英語ののせ方もそうですけど、アメリカで育ってはる人だから向こうの音楽がしみついていて、その部分ではすごくアドバイスしてもらいました。
KENGO:メロディーのラインとか提案はしてくれるけど、ちゃんと俺らにやらせようしてくれるんです。そうしたいと思ってるなら、そうした方がいいよって 。あとは、空き時間にセッションさせてもらったり…。ありえなかったですよ(苦笑)。田舎から出てきた俺が、世界でやってるあの人と!みたいな(笑)。だから、レコーディング以外にもいろいろ勉強させていただきました。音楽的なこともそうですけど、人間的なこととか、バンドとして生きていくにはどういうことが大事かとか。俺自身の考え方もちょっと変わりました。