これほどまでに酒を愛するバンドが他にいるだろうか? 数々のフェスやライヴ会場で酔っ払った姿を目撃され「千鳥足大王」の異名を持つヴォーカリストと、そのあまりの呑みっぷりに「お酒の妖精」と称されるベーシストを擁する怒髪天の最新作は「酒」がテーマの曲ばかり4曲を収録した所謂「酒シングル」! 聴けばもれなく全員呑みたくなること間違い無し! ライヴでの盛り上がりはもちろん、居酒屋のBGMにも最適! ビールがおいしい今の季節から年末年始の宴会シーズンまで! 酒もってこい馬鹿野郎!(interview:稲垣ユカ)
新曲は「ポーグス・ミーツ・チータ」!?
──今回の「酒シングル」の構想はいつからあったんですか?
増子:もともと「酒爆」をシングルで出したいっていうのはテイチクに移籍したぐらいからずっと思ってたんだよね。出すタイミングを図ってた感じで。
──当初からお酒の曲だけで出そうと決めてたんですか。
増子:いや、そこまでは考えてなかったね。でも「ビール・オア・ダイ」って曲も出来たし、もう一曲作ってまとめて出して、ライヴで続けてやるのも面白いんじゃない? って。
──なるほど。では一曲ずつお聞きしたいんですけど、まず「酒爆」を新録したのは?
増子:何より、ライヴのときとテンポを同じにしたかったっていうのがあって。あと、コーラスはどうしてもやり直さなきゃなんなかったからね。オリジナルのほうは酔っ払いが30人ぐらいでやってたからもうめちゃくちゃで、「男よ呑め! 男よ酔え!」って言えてないんだよね。「男よ酔え!」ばっかり言っちゃって(笑)。
上原子:混ざって「男よヨメ!」に聴こえるんだよね。
増子:そう、嫁になってどうするんだっていう(笑)。だからちゃんとスッキリさせたかったんだよね。
──凄くキレがある感じに仕上がってますよね。コーラスもそうですけど、特に友康さんのギター・カッティングが。
上原子:ああ、そうだね。カッティングはキレをよくしようと思ってやったね。
増子:まぁ今回のはライヴに近いんじゃない? あと、坂さんのセリフね。あれはもう軽い放送事故だから。
──(笑)坂さんだけ別録りで?
増子:何ッ回もやったよね。
坂詰:まぁ、周波数が合わなくてですね。
一同:……。
増子:…面白くないからね。最近の坂さんにはスベり神っていうのがついてるから(笑)。
──(笑)二曲目の「ヘベレ・ケレレ・ヨー」は新曲ですが、これはいつ頃作られたんですか?
上原子:最近だね。シングル作ろうってなってからだから、去年末から今年の1月ぐらいかな?
──初めからこういう明るい曲で行こうと思って作ったんですか。
上原子:そうだね、ライヴとかフェスでお祭り騒ぎになれるようなアッパーな曲がいいなぁと漠然と思ってて。そしたら、エレキを持ったポーグスをバックにチータ(水前寺清子)が唄ってるっていうイメージがパッと浮かんで。
一同:爆笑
上原子:それにイイ歌詞が乗っかって、ホントに素敵な曲が出来たなぁって。
増子:ちょっと「日本全国酒飲み音頭」も入ってるけどね(笑)。でもさ、そういう「お酒の音楽」のイメージってあるじゃない?海外ならポーグスとかトム・ウェイツ、日本なら「日本全国酒飲み音頭」だったり演歌だったりとかさ。そういうのを取り入れてパロディ化したみたいな感じだね。あと、ライブの締めになるような曲を作りたかったの。今「ビール~」から「酒爆」っていう流れがあって、その後の締めでできるような。だから、一杯目はビール、二杯目は焼酎または日本酒、三杯目以降はべろんべろんっていう感じだね(笑)。そういう連作みたいなものをやりたかったんだよ。
──歌詞を書くのはそんなに苦労しなかったですか?
増子:いや、大変だったよ! だって「ぐでんぐでん」の歌詞って、呑んだときのシチュエーションがほとんど全部入ってるからね。それをかわして書かないといけないっていうのは大変な作業だったよ。
──「ぐでんぐでん」は割とシリアスな歌詞ですけど、「ヘベレ~」はもっと日常的と言うか。
増子:そうだね。人の曲っていうのは二の線で出来るから、自分達の曲ではオチをつけないとね。そうじゃなきゃ坂さんの立つ瀬がないし(笑)。
坂詰:スベり止めですから。
一同:……。
増子:思いっ切りスベってるけどね。
──(笑)「ヘベレ~」は音的にこだわった部分とかありますか? イントロの音が面白いですよね。
上原子:あれは最初アコギを重ねたりとか色々やってたんだけど、何か足りないなって思ってて。そしたら家にずっと昔に使ってた打ち込みの機械があったから、これでいいんじゃないかな? って試してみて。使ったのは一応フルートの音なんだけど、オモチャみたいなやつだからチープすぎて全然フルートの音に聴こえないっていう(笑)。それを色々加工してギターを混ぜたりしたら何とも言えないイイ感じになったんだよね。
増子:ちょっとティンホイッスルみたいなね。
上原子:そうだね。で、ギターはバンジョーっぽく聴こえるような音にして。その辺は色々遊んでみたかな。
──なるほど。リズム隊は何かありますか?
清水:坂さん、結構勉強になったって言ってたじゃん。
坂詰:あのー、これはリズムが難しいんですよ。その難しいリズムを叩くのを…何とか頑張りました。
増子:そんなこと聞いてないよ(笑)。どんだけ頑張ったかじゃなくてどういうとこに注意したとか、あるでしょ?
坂詰:やっぱりトリプレットっちゅうか、いわゆる跳ねもののノリっていうのが苦手なんですけど…。
増子:急に専門的になったよ(笑)。しかも大概苦手って言ってるじゃん。得意なのって何なの?
上原子:坂さん、「ヘベレ~」のドラムはそんなところじゃなくてシンバルでしょ。
坂詰:…そこはあんまり多くは語れないんですけど…。あのー、チャイナ・シンバルが必要だってことで無理をして買いまして、それを大変な思いをしてスタジオに持ってったんですけど、どうもスタジオのマイクとか空気と合わなくて鳴りが悪かったんですよ。それでしょうがないから使わないでレンタルして。レンタルしたのはスタジオに合ってたんで、まぁ良かったかなと。
増子:…まぁ、とんでもない言い訳だよね(笑)。もう俺からは何も言いたくないんだけど。坂さんね、レンタル代より安いシンバル買ったんだよ。信じられないくらい、もう「バシャーン」って弁当箱のフタ叩いたみたいな音がするやつで(笑)。そんなもの使えるわけがないっていう。あれは今年かなりやっちゃったランキングに入るよね。
清水:アレもう捨てたの?
坂詰:捨てるわけないじゃん!
──いずれ使う気ですか(笑)。ベースは如何でした?
清水:坂さんに合わせた感じ。でも楽しくできて良かったよ。あんまり複雑にしないようにして。
増子:そうだね。「ヘベレ~」で気をつけたのは、複雑なベースをつけないっていうのと、安いチャイナ・シンバルはやめようってことだね(笑)。
坂詰:じゃあ、これからはコリアン・シンバルにしようかな!
一同:……。
清水:…またやっちゃったよ(笑)。