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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】カリキュラマシーン(2007年7月号)- これぞカリキュラ流ラヴ・ソング! より自由に、より強靱な意志のもと突き進むポップ・カリキュラム!

これぞカリキュラ流ラヴ・ソング!より自由に、より強靱な意志のもと突き進むポップ・カリキュラム!

2007.07.01

De+LAXの榊原秀樹が自らヴォーカルも務めるソロ・プロジェクト、カリキュラマシーンが1年半振りとなるミニ・アルバム『THIS IS LOVE SONG』を完成させた。特筆すべきは、真正面から"ラヴ・ソング"に取り組みアルバムのタイトルに冠したアプローチ、これまで以上にポップであることにフォーカスを絞り込んだ楽曲の完成度、そして何より、結成から7年を経て榊原の突き詰めたい方向性をより具現化していくバンドとしての在り方。カリキュラマシーンが強い信念を持って新境地に達したことが十二分に窺える会心作だ。近年ではゲーム音楽の制作に着手するなど、常に意欲的な活動を続ける榊原にカリキュラマシーンを始めとする様々なプロジェクトについて、また20年選手の目に映るミュージック・ビジネスの現状に至るまでをじっくりと訊いた。(interview:椎名宗之)

思い付いたアイディアをそのまま具現化した

──前作『月光少年』から思いのほか短いスパンで新作が発表されますね。

H:1年半振りになるのかな。こう見えて、カリキュラマシーンは意外とコンスタントにリリースしてるんだよね。De+LAXやいろんなアーティストのサポート活動で忙しなくしていると、どうしてもその状況に流されてしまうから、それはイカンな、と。自分が前面に立つ以上はしっかりとやりたいしね。

──今回のリリースも前作同様、ゲームソフトの開発・販売を母体とするメーカーからのリリースということで。

H:うん。カリキュラマシーンはゲーム音楽のタイアップが付いたり、ゲームソフトへの音楽提供をしてきたから、その縁でね。

──前作のタイトル・トラックは、『咎狗の血』というアドヴェンチャー・ゲームのイメージ・ソングでしたよね。

H:そうだね。ロック・シーンの中では、ゲーム音楽への着手は未開拓の世界なんだよ。結局、ロック・シーンの中で延々と転がして回していっても、どうしても活性しづらいんだよね。それがずっと自分の中では大きなジレンマだった。だったら、ゲーム音楽という新たな領域にも自ら打って出てみようと思って。意固地になってロックにこだわり続けることよりも、もっと幅広い視点で捉えて、常に新たなチャンレジをしていくことのほうが俺はロックだと思っているから。

──ゲーム音楽の制作はやはり面白いものですか?

H:凄く面白いよ。映画のサントラ作りに割と近いけどね。プレステでやっているようなロール・プレイング・ゲームとかじゃなくて、小説を1ページごとにめくっていくような感じなんだ。自分の選択次第で全く別のストーリーが出来上がる。それが凄くよく出来ているんだよ。そのままハリウッドに持って行っても受け入れられそうな完成度の高さなんだよね。

──輸出されれば、そのゲームに使われた音楽は海外の人も聴くだろうし、より多くの人達に聴かれるチャンスですよね。

H:そう、凄く可能性のあるジャンルだと思うよ。年に1回、そういったゲーム系のイヴェントに出ることがあるんだけど、お客さんが凄く素直で、求心力の高いジャンルなんだよね。

──今年は、ミニ・アルバムを7月と11月に2枚に分けて発表するそうですね。

H:有り難いことに、メーカーからそんなリクエストを貰ってね。2枚に分けたほうがクリエイティヴにいろんなことを模索できるから刺激になるし、凄く意味があることだと思った。新曲のストックは常にあるしね。ワン・フレーズや歌詞の断片を日常的にストックしていって、それを最後にまとめて掻き集める感じで。

──まぁしかし…今回のジャケットを含め、随分と思い切ったアーティスト写真に仕上がりましたよね(笑)。

H:笑えるよね(笑)。この歳になってあんなメイクをするのはちょっと本気で恥ずかしいんだよ、今まであんな写真を撮ったことがなかったから。E.O.E(プログラミング&キーボード)なんて、クマの人形を抱いちゃってるしさ(笑)。でもこれも、メーカーやスタッフから「カリキュラマシーンのキャラクターをもっと出したほうがいいんじゃないか?」と言われたのもあるし、これまでの作品はジャケットにイラストを使ったものが多かったから、敢えてやってみようかと思って。

──しかも、タイトルもストレートに『THIS IS LOVE SONG』ですからね。収録曲のポップさも過去随一で。

H:うん。メンバーの顔写真を全面に出すのもそうなんだけど、今までやれてこなかったところをちゃんとやろうと思ってね。曲に関しては元からポップだったんだけど、そのポップ感をもう一段上に持っていきたかった。ここで一度ポップの度合いを極めておけば、年内にもう1枚出すミニ・アルバムのほうは思い切りロックンロールに振り切れるなと思ったしね。

──だからなのか、今回の『THIS IS LOVE SONG』はシンセサイザーが随所に多用された作風ですよね。1曲目の「Sweet Sweet Sweet」はとりわけそうで、敢えてチープな音色のシンセを使っているのが逆に凄く効果的ですね。

H:俺が意識してたのは、シーナ&ロケッツのファーストとか、あの時代の音楽。YMOのシンセのアプローチは今聴いても斬新だし、懐かしいのもあるけど、やっぱり凄くポップなんだよ。そんな時代の音楽へのオマージュ的作品を何とか形にできないかとずっと思っていたんだよね。そういう、ポップでありながらチープな感じのあるアプローチは前作でもしていたんだけど、今回はより一層フォーカスが絞れたって言うのかな。

──2007年の今聴くと、何だかやけに新鮮ですよね。

H:そう、裏打ちのベースとかね。他のバンドは余りこういうことをやってないよね。

──「太陽の季節」というタイトルを堂々と付けるバンドも、今日日なかなかいないと思いますけど(笑)。この曲、誤解を恐れずに言えばドアーズの「Hello, I Love You」とクリームの「Badge」が合わさった印象を受けましたが。

H:ああ、その要素はあるね。コンセプトとしては“日本語のロック”なんだよ。'60年代後半から'70年代にかけての、海外のロックを聴いた日本人が真似て作った曲、みたいなニュアンス。今どき使わないような言葉を敢えて歌詞に採り入れたりしていて、歌詞だけを見ると昔の歌謡曲みたいだよね。サビで日本語の恥ずかしい歌詞を持ってくるっていうのが大事だったんだよ。恥ずかしいのを重々承知で敢えて唄うっていうね(笑)。

──やっぱり、昨今には珍しいバンドと言えますね(笑)。

H:逆に潔いよね(笑)。なんて言うのかな、思い付いたアイディアをそのまま出そうっていうのは今回あったかもしれない。今までは自分達のスタイルに縛られて、バンドとしてやれることの範囲を狭めていたところがあったんだよ。“これはちょっと俺っぽくないな…”と思ったら、その時点で自分からストップを掛けてた。それが凄く堅苦しく思えたんだよね。このまま行ったら形骸化するだけだな、と思ってね。

──他の曲も、割とワン・アイディアから一気に形にするケースが多かったんですか?

H:そうだね。湧き上がってきたアイディアをなるべく止めないようにした。そうじゃないと、俺自身がやるカリキュラマシーンというプロジェクトをやる意味がないんじゃないかと改めて思ったんだよね。

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