しっくりくるバンドが始まったんだ

──すごく基本的な質問なんですが、南の国の音楽にはどんな魅力があると思いますか？

ヒサシthe KID：昔から好きだったんですけど、歳を重ねるごとに惹かれていってますね。パワーを感じるし、何て言うんだろう…、俺にとってはストリートの匂いがする音楽なんですよ。どの国の音楽を聴いても、クソみたいな日常があって、だからこそこれだけ陽気なダンスミュージックがあるんだ、っていう感じがする。旋律とかは違うんだけど意外と共通点も多かったりして。その国・その音楽ごとにそれぞれ違った背景があるんだけどどこか似ているんですよね。で、俺が日本に住んでいてそういう音楽を“目指す”意味は、ーー 本当は意味なんてどうでも良いんだけど ーー、それにチャレンジすることが単純に楽しいというか。俺が今めちゃくちゃ売れてリッチな生活していたら違うと思うけど、残念ながら俺は今クソみたいな日常を送っていて、それでも日々を楽しく生きるためのダンスミュージックがあっても良いんじゃないか、っていう部分でもすごくシンパシーを感じるし。

──ミュージシャンって“南下”する傾向がありますよね。

ヒサシthe KID：不思議ですよね。俺が好きなバンドはみんなビーチを目指しているんじゃないかって思うんですよ。The ClashもXTCもそうだし、パンクとかニューウェーブの時代のバンドってそういう傾向が強い。それよりもっと昔のバンドでも、逆に最近のハウスとかテクノでも、そういう所を感じさせる部分はすごくあるし。ということで、俺も（ビーチを）目指そうかと（笑）。

──目指し方が違うだけで。

ヒサシthe KID：そう、気持ちとして感じてる部分は似ているんじゃないかな、みんな。何がそうさせるのかは分からないけど。

──なるほど。

ヒサシthe KID：俺は元々、家で独りで曲を書くとすごく暗い曲ばっかできるような人間なんですよ。でもそれがすごくイヤだったし、そんな曲を演奏したくないんです。だって、バンドとかDJを観に行ってブルーな気持ちになって帰りたくないでしょ？ 俺は、来た人達がアガって帰れるようなライブをやりたいし、旋律が明るいとか暗いとか関係なく振り切れたものをやりたい。でもTHE BEACHESを始めたときに、俺の好きな暗い感じのメロディーも振り切れたところでやれば意外にハマることが分かって、独りではやれなかったことが少しずつできるようになった。そういう意味で、やっと俺にしっくりくるバンドが始まったんだ、って気がする。

──さて、今回のリリースは夏ですが、今後のTHE BEACHESはやはり夏を中心に活動を展開していくのでしょうか。

ヒサシthe KID：いや、俺の中にひとつだけある揺るぎないメッセージとして「世界は常夏だ」っていうのがあって。そこには本当にいろんな意味があるんですけど。で、俺はそんな中でタフに踊っていくためのダンスミュージックをやりたいんです。だから、季節は夏でも冬でも関係ない。ライブをやる場所だって関係ない。いつでもどこでもやりたいし、やれますよ。

──赤道ツアーなんてどうですか？

ヒサシthe KID：やれたら最高ですね（笑）。勝負できる自信はありますから。