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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】スパルタローカルズ(2007年4月号)-自信なんかねぇよ! それでもいくしかねぇよ! バンドの初期衝動を取り戻したスパルタローカルズの軽やかな新章の幕開け

自信なんかねぇよ! それでもいくしかねぇよ! バンドの初期衝動を取り戻したスパルタローカルズの軽やかな新章の幕開け

2007.04.01

スパルタローカルズの通算6作目となるオリジナル・アルバム『まぼろし FOREVER』を聴いて真っ先に感じたのは、より鋭角的に研ぎ澄まされた瑞々しい躍動感と得も言われぬ昂揚感、そして何より、迷いの欠片もなく吹っ切れた潔さと清々しさである。'98年の結成以来不動のメンバーで勇往邁進してきた彼らに訪れた試練とも言うべきオリジナル・ドラマーの脱退とバンド存続の危機を乗り越え、逞しさと結束力を増して史上最高傑作を生み出した彼らの鮮やかな第2幕は、強い確信に満ちたドラムの音から始まる。お楽しみはこれからだ。(interview:椎名宗之)

ようやく自分の思い通りのクォリティに出来た

──本誌には約4年振りの登場となるので、随分とご無沙汰してしまいましたね。

安部コウセイ(以下、K):どうもどうも、ご無沙汰してました。

──目下、「Tour 2007『スパルタ☆オールスター・クラシック』」に東奔西走している皆さんですが、初日のシェルターは手応えのほどは如何でしたか。

K:凄く盛り上がりましたよ。ギターの弦が異常に切れましたけどね(笑)。「ピース」という大事な曲をやってる時に切れて、“うわー!”と思ってギターを捨ててハンドマイクで唄って、「トーキョウバレリーナ」というこれまた大事な曲でギターを持った瞬間にまた切れて、“こりゃダメだ!”と。ライヴの出来は賛否両論あるのかと思ったけど、ツアーの初日としては手応えが充分にありましたね。ライヴは今、凄く適当になってきてるんで…(笑)。

──適当!?

K:いや、別に走っても恰好良けりゃそれでいいんじゃねぇ? っていうことですよ。いい意味で開き直ってきたと言うか、気が大きくなってきたと言うか。前までは凄くこまごまとしていたのに。

──オーディエンスの反応にそれほど過敏になるようにも見えませんけどね。

K:いやいや、ムチャクチャ気にしますよ、俺。余りに気にしすぎてつまんなくなったんですよ。頭で考えすぎるようになったから、もっと感覚でライヴをやりたいと思うようになって。今は“賛否両論があろうがドンと来い!”って感じですけどね。

──それにしても、この新編成スパルタローカルズの初音源となる『まぼろし FOREVER』。個人的にも久々に快哉を叫びたくなるほどの出来で、これは是非コウセイさんの話を伺いたいと思ったんですよ。

K:ありがとうございます。辛口の椎名さんが珍しいですね(笑)。

──いやいや(笑)。この突き抜け具合は何なんだろう? というのを今日は深く掘り下げていきたいわけですよ。

K:どうぞ何なりと。

──前作『スパルタローカルズ』から僅か7ヵ月のインターバルを置いてのリリースということで、コウセイさんの中では2部作的な意図が当初あったんですか?

K:いや、俺の中では全くなかったです。曲があったけん、「録ろうか?」ってディレクターが言い出して、レコーディングの日にちもすぐに決まって。で、『スパルタローカルズ』の作業が終わって昭ちゃん(中山昭仁)が抜けて、“やっべ! 時間ねぇ!”って思って、そこからドラマーを探すことになったんですよ。

──バンドの屋台骨を支えるドラマーを失うことは、皆さん流に言えばまさに“スパルタマジック”(アンラッキーなことが起こると、「スパルタマジックや!」と言いながらメンバー全員で大笑いするらしい)だったんじゃないですか?

K:よくご存知で(笑)。まぁでも…昭ちゃんが抜けたことはしょうがないですわ。離婚みたいなものだから。“頑張ったけどダメだったね”みたいな感じだったから。とにかく次に向かって進んで行かなきゃいけないって話をバンド内でして、そこでフロントマン3人の結束が凄く固くなったんですよ。それまでは、余り気持ちを表に出さない感じだったのが、“これじゃいかんな”と思ってそれぞれの意識がガーンと上がっていったんです。で、「ドラムどうするか?」って話になって、「池畑(潤二)さんはどうだ?」とか「梶浦(雅裕)さんはどうだ?」とか気の大きなことばかり言って(笑)。

──ルースターズやモッズといった同郷の大先輩を候補に挙げて(笑)。

K:もう完全にギャグですよ。でも、テーマは“同郷”っていうのが一応あったんです。こだわったのはそこだけです、はっきり言って(笑)。

──前作でそれまで以上にビートにこだわった作風へと変化していたから、新生スパルタローカルズの課題としては更なるリズムの強化というのが必須事項だったんじゃないですか?

K:うん、そうですね。自分達が恰好いいと思えるドラマーとちゃんとやらなきゃダメだなと思った。今思うと、前作でバンド名を冠したのはバンドの内部が相当ヤバかったからじゃないですかね。ドラムをもっと良くしたいというのは、課題として長い間ずっとあったんですよ。その限界点が前のアルバムだったんです。

──今回の『まぼろし FOREVER』を聴くと、ドラムが替わるとバンドの音の鳴りがこうも変わるのかという如実な変化を確かに感じますよね。

K:そうでしょ? やっぱりそれが一番違いますよね。曲自体は前のアルバムと同時期、去年の今くらいに作ってたんですよ。しかも、『まぼろし FOREVER』に入ってる曲は一度ボツになってるのもあるんです。自分でも凄くいい曲だと思ってたから、そのことが俺には耐えられなかったんですよね。今回こうしていい形でアルバムに入れることができて、いろんな意味で“やっぱりな!”と思いましたよ。ようやく自分の思い通りのクォリティに出来たって言うか。だから、このRooftopを読んでるバンドマンで“演奏が良くならねぇなぁ…”って悩んでる人は、メンバー・チェンジも考えたほうがいいと思いますよ(笑)。時間を掛ければ掛けるほどお互いが辛くなるだけだから。お互いがお互いを認め合える者同士でバンドはやったほうがいい。

シビれるかシビれないかが物事の判断基準

──僕は自分の思い入れも含めて初期の作品が好きなんですけれども、今回の収録曲で言うと「平凡ギャング」や「O.K.」みたいに初期を彷彿とさせる曲がツボだったんですよ。バンドの進化が十二分に見て取れる一方で、ちょっと懐かしいテイストも窺えるのが個人的に嬉しかったんですよね。

K:自分じゃよく判らないですけどね、その戻ってきた感じっていうのが。でも、ドラマーが抜けたことでバンドが一遍ナシになったわけじゃないですか? そこで一旦ゼロになってるから、気持ちとしては初期の頃に戻ってるんですよね。ライヴもそうですもん。気持ちの中でややこしいことをなんも考えてないですからね。はっきり言って演奏はヘタになってますよ。ヘタになってるけど、凄く恰好いいと思う。

──ライヴでは梶山剛さんという敏腕ドラマーがサポートで加入したことで、コウセイさんはより歌に集中できるようになったり、ライヴ自体はやりやすくなったんじゃないですか?

K:梶山君が太陽っぽい人だから、バンドが精神的な部分でいい影響を受けてると思う。まぁ、確かに唄いやすくはなったんですけど、演奏はヘタですよ(笑)。ヘタと言うか、メチャクチャ粗くなってる。粗くていいんだと思ってますよ。ファウルの『ドストエフスキー・グルーヴ』だって、ギターの音は粗いし外しとるけど凄まじく恰好いいし、今聴いてもシビれますからね。そういうシビれるかシビれないかだけで今は物事を判断してますよね。無理に周りに合わせようとか、もうなんも考えるまいと。

──梶山さんのドラマーとしての魅力はどんなところですか?

K:明るくて外向的なところかな。タイコがいいのは当たり前の話ですから。ドラムに味があるし、何と言うか“西のドラマー”って感じ。あと、心の闇が凄く深い(笑)。

──それはフロントマンの3人だって同じじゃないですか(笑)。

K:だから気が合うんですよ(笑)。梶山君の魅力はやっぱり沸点の高さですね。ライヴでウワーッと行った時のテンションがバンドで一番高いですから。

──『まぼろし FOREVER』のレコーディングは、モーサム・トーンベンダーの藤田勇さんが全編ドラムを叩いているんですよね。藤田さんも福岡出身ですが、地元にいた頃から知り合いだったんですか?

K:いや、仲良くなかったから、仲良くなりたいと思ってこちらからお願いしたんですよ(笑)。モーサムは昔からライヴを観て恰好いいなぁと思ってましたからね。ドラムは誰がいいかの話し合いの中でも、勇さんは何人か名前が出てきたうちの一人だったんですよ。ちなみに、その中にはファウルの大地(大介)さんの名前も挙がったんですけどね。

──藤田さんとのレコーディングはスムーズに進んだんですか?

11_ap01.jpgK:メチャクチャ楽しかったですね。なんせレコーディング中の一番のトピックは、勇さんがずっとお腹を壊してたことですからね。それもキシリトール・ガムの噛みすぎで(笑)。今回はレコーディングが全然苦じゃなかった。煮詰まることもなく、ずっと笑いっぱなしでしたね。アルバムの最後に入ってる「ミーハーHer」はドラムから始まる曲なんですけど、もうみんなで大笑いでしたもん。

──「ミーハーHer」のイントロは、“ドラマー脱退なんざ屁でもねぇぜ!”とでも言いたげな豪快な荒くれドラムの乱れ打ちですからね。

K:うん。そういうアルバムだと思いますね。“関係ねぇぜ!”って言うか。1曲目の「リトルガーデン」もドラムから始まる曲ですけど、そういうのも俺としてはバンドの心意気だと思ってるんですよ。ドラマーが抜けた後に、あえてドラムから始まる曲を1曲目に入れたという。この「ミーハーHer」が勇さんの良さが一番よく出てるし、一番アバウト(笑)。レコーディング中に1時間くらいでアレンジしましたからね。そのライヴ感がよく出てると思う。ちなみに、この曲は『お水の花道』のドキュメンタリーを見て感動して作った曲なんですよ(笑)。女の人って儚くて強いなぁ、こりゃ勝てるわけねぇよなぁ…と思って。女性に対する劣等感を唄った曲なんです(笑)。

──それだけ藤田さんのドラムに手応えがあったのなら、いっそのこと引き抜いちゃえば良かったのに(笑)。ピロウズのシンイチロウさんもピーズの活動を並行してやっているわけだし。

K:いや、余りに良かったから実際に引き抜きたいとちょっとだけ思いましたよ。でも、俺達のマネージャーが熱狂的なモーサムのファンで、それだけは絶対にやめろと言われて(笑)。

──藤田さんのドラムで「POGO」みたいな曲を聴いてみたいですよね。

K:いいでしょうねぇ…。一度どこかでライヴを一緒にやりたいんですけどね。

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